ボーダー曰く、明日の天気は晴れときどき天晴   作:豊川鮎丸

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今回からAIによる執筆補助を使っています。


墓守り、相対す

太刀川の二刀が暴風のように迫る。

 

上段、下段、逆袈裟、突き。

 

天津気は最小限の動きで躱し、刃の上を踏み、電柱を蹴り、空中で身体をひねる。

 

着地と同時に太刀川が踏み込む。距離ゼロ。鍔迫り合い。

 

火花が散る。

 

太刀川が笑う。

 

「いいなあんた!」

 

その目、その声。命を削る刹那を愉しむその姿に、天津気の脳裏にかつて討った異形の戦士の姿が一瞬、鮮明に蘇る。

 

幾度も死地を越え、笑い、喰らいつき、最後まで牙を剥いた男――だが今目の前の太刀川は、まだ若く、荒削り。経験値の差は明白。

 

(……あの男と同じ目をしている…だがまだ若い)

 

太刀川が膝を蹴る。体勢が崩れる。

 

怒涛の二連斬を叩き込み、天津気は後転、低空回転、地面を滑るように立ち上がる。

 

太刀川、グラスホッパー三枚展開。跳ね、加速、死角から二刀同時斬撃。

 

天津気は振り向かず、刃の風圧だけで軌道を読む。

 

半身で躱し、一刀を肩で受け流し、もう一刀を脇で挟む。

 

踏み込む。至近距離。

 

「——捕えた」

 

左手で太刀川の手首を掴み、右足で払う。

 

「大時化」

 

豪快に投げ飛ばす。

 

太刀川の身体が宙を舞う。着地寸前、グラスホッパーで衝撃を受け流し、立て直す。

 

それでも口元には笑みがある。

 

「投げまであるのかよ! 最高だなおい!」

 

天津気も冷静に体勢を整え、戦闘を続行。

 

(やはり似ている)

 

かつての異形の戦士もまた、敗色が濃くなるほどに笑った。

 

強敵であればあるほど、愉悦を増す。

 

だが――

 

 

 

 

 

かつてあるプロゲーマーはこう言った

 

「あいつはアーミーナイフのようなやつだと」

 

数多の無駄なもの(クソゲー)の中からひとかけらの実用性という刃を集めそれらを手足のように扱う男

 

その予測不能な動きをもってして彼はウェザエモンをはじめとした多くの猛者と渡り合ってきた。

 

 

だが太刀川はちがう。

 

縦横無尽に繰り出されるその斬撃は洗練された素晴らしい技術であり、こと「戦いの才」に関してはあの男すらもを上回るだろう。

 

だがしかし、太刀川慶はゲーマーではなく剣士である。

 

そして純粋な剣による競り合いなれば、ウェザエモンが後れを取ることはまずない。

 

 

 

 

 

 

 

連撃の流れ。必ず最後は“右”。決めに来る瞬間、右肩がわずかに沈む。

 

太刀川が跳ぶ。納刀。

 

「旋空孤月!!」

 

最大出力。路地を両断する一撃。

 

天津気は一歩も退かない。

 

踏み込み、右肩の沈みを見極める。

 

「断風」

 

刃の内側に入り込み、胸を裂く。

 

太刀川は目を見開き、そして笑う。

 

「……まじかよ」

 

その一言とともに上空に向かって一筋の光が上がった

 

 

 

 

太刀川がベイルアウトした。

瓦礫と粉塵の舞う路地には、しばらくの間、沈黙が訪れた。

 

天津気は重く息をつく。

肩の力を抜き、微かに首を回して身体をほぐす。

背後には、両手の上にばらばらに分割したキューブを構える出水の姿。

その視線は鋭く、まだ戦闘の緊張を漂わせていた。

 

「……まだ戦うつもりか」

天津気は小さく呟き、刹那に後方を確認する。

出水の体勢が変わらず、足先の微かな振動から、戦闘準備の緊張が伝わる。

 

その瞬間――。

街全体を包むような気配が、ゆっくりと、しかし確実に現れた。

視線を上げると、初めて目にする人物が立っていた。

肩の力を抜いたその姿からは、戦闘力の高さと同時に、圧倒的な落ち着きが感じられる。

 

「はいそこまで」

明るく、軽やかな声。鋭さと安定が混ざった響きに、空気がほんのわずか震えた。

 

天津気は一歩後退し、相手を見据える。

「……君は?」

「俺は実力派エリートの迅悠一。よろしく。」

 

(迅さんが来たってことは、ひとまず安心か?)

背後で構えていた出水も、もともとそこまで戦意があったわけではないのもあり、これを皮切りに少しずつ警戒を緩める。

 

「大丈夫、こっちに敵意はないよ。これ以上大事にしたくはないし、ここは互いに矛を収めない?」

 

少しの間考えるそぶりを取ったウェザエモンは

「……わかった。君の言う通りだ」

 

天津気はゆっくりと孤月を収めた。

トリオン体を解除し、呼吸を整える。

 

出水もキューブを消し、緊張を解く。

 

粉塵がゆっくりと地面に落ちていく。

戦闘の余韻だけが、路地に残っていた。

 

迅は軽く肩をすくめる。

 

「助かったよ。これ以上壊されたら修理費が洒落にならないからね」

 

天津気はその言葉にわずかに笑みを浮かべる。

 

(この男……強い。だが、斬る相手ではない)

 

「とりあえず本部に来てもらうよ。話を聞きたい」

 

「わかった」

 

隼也も小さく頷く。

 

三人は瓦礫の残る路地を歩き出す。

遠くでパトロール部隊が動き、街は徐々に日常を取り戻し始めていた。

 

天津気は振り返らない。

だがその胸中には確かな感触が残っていた。

 

――あの若き剣士。

荒削りだが、間違いなく一級。

 

(いずれ、もっと強くなる)

 

静かに、そう思う。

 

――その頃、ボーダー本部。

 

ベイルアウトの光が収まり、太刀川慶は作戦室の椅子にどかりと腰を下ろした。

 

国近が慌ててモニターを確認している。

 

「太刀川さん大丈夫!?」

 

「いや〜やられたやられた」

 

そう言いながらも、その表情に悔しさはない。

 

出水の映像ログを見ながら、太刀川は腕を組む。

 

「訓練用トリガーであれかよ……」

 

一瞬、沈黙。

 

そして、にやりと笑う。

 

「……楽しかったわ」

 

作戦室の空気が少しだけ緩む。

 

完全敗北。

だが、その目は次を見ている。

 

「次は負けねぇ」

 

誰に言うでもなく、太刀川はそう呟いた。

 

モニターの向こうでは、迅が天津気を連れて歩いている。

 

嵐は終わった。

だが、本部の中で、新たな波が静かに生まれようとしていた。

 

 




どうもおひさしぶりです。

ゆっくりと連載再開したいと思いますので楽しみにしていただけたら幸いです。
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