愛城恋太郎のことが大大大大大好きな院田唐音 作:しろっこにー
そしてお伝えしなければなりませんが
唐音以外のヒロインは出ません...! 皆んな大好きだし可愛いんだけど今回は唐音が恋太郎を独り占めです!
「あんまり眠れなかったわね……」
普段なら登校時間、でも今日は休日。そしてすっごく楽しみに待ち望んでいた日。何だけど出てきた言葉は後ろ向き。
理由は分かっている。彼氏の家にお泊まりなんて頭の中ででしか思い描かなかった物語が実現しようとしているのだ。そんなメルヘンを布団の中で描いていれば眠気なんて吹き飛んでしまうのも無理はない。
だが悪いことばかりではないと今日の私は前を向く。昨日の夜から騒がしかった胸の鼓動が睡眠不足のせいかなりを潜めている。それに何処か冷静な自分も居る。クールに行こうぜマイブラザー、まだ試合は始まってねぇ。恋太郎の家までまだ距離がある。今のうちに心を整えて行こう。もう1人の自分に助言を貰う。OK私、折角の無礼講楽しまないとね。
眠たい眼を擦りながら歩を進める。心做しか肩に下げてるリュックも右手で掴んでいるキャリーケースも足取りが軽い。子気味の良いリズムを刻んでいる。ありがとう私、チューニングはバッチリーー。
「唐音〜!」
「れ、恋太郎!?」
助けて私、まだチューニングが終わってない。だが返事はない、クールな私でも彼には敵わない様だ。唐突なソロパート。あ、でもこれって迎えに来てくれたんだよね? 好きっ。
恋太郎の家までは曲がり角が3つある。今は2つ目の曲がり角、本来ならまだ居るはずのない存在が唐音の名前を呼んで手を振っていた。そして飛びっきりの笑顔でこちらに走ってくる。
「おはよう唐音、家で待ってようと思ったんだけど居ても立っても居られなくって迎えに来ちゃった!」
「べ、別にチューニングが終わってないのに恋太郎から迎えに来てくれて嬉しいなんて思ってないんだからねっ!」
「ライブ前のカップルの会話かな!?」
当たらずも遠からず、唐音脳内ライブ盛り上がりは最高潮。時にはアドリブも必要なのだ。この恋はメジャーデビューな梳杉町のとある曲がり角、ライブ会場はこちらです。
「でもそれならボーカルは勿論唐音だね。カラオケで聴いた歌もすっごくカッコよかったし」
「何か自己完結しちゃったわ私の彼氏……ってそれは兎も角、わざわざ来なくても、こっちから出向いてたのに」
お陰様で眠気が吹き飛んだ。それと同時に駆け上がってくる幸せの音。突然の試合開始のゴングとも言う。
「あはは、さっきも言った通り我慢出来なくてさ……それに」
「それに……何よ?」
恋太郎の瞳が唐音を映す。トレードマークである金髪はポニーテールにまとめられ、オーバーサイズの長袖ジャケットにショートデニムからスラリと伸びる健康的な太もも、靴は白のスニーカー。カジュアルにまとまりのあるギャル系彼女らしいコーデだ。
まだ肌寒い季節と言うのもあるがやはりオシャレしたい年頃、スカートも考えたがちょっと違う。動きやすいラフな格好で、でも派手すぎず地味過ぎない程度に.。そして何より可愛いと思ってくれる姿をと、唐音が昨日練りに練って考えた服装だ。
似合ってるって言ってくれるかな? と淡い期待を抱いで自宅を出た。私を見つめている彼氏の、『それに』の後に続く言葉に期待と不安が入り交じる。
「唐音が俺の家に来る時どんな可愛い服で来てくれるかなって、想像したら少しでも早く会いたくなっちゃって……会いに来て良かった。滅茶苦茶可愛いぃ! すっごく似合ってるよ唐音」
「〜〜!?」
この彼女たらしめ、唐音が寝不足になるくらい費やした時間全てを一言で達成感に変えやがった。恋太郎の瞳に映っている少女の顔はみるみると紅くなっていく。
「べ、別にアンタの為に……んむっ!?」
そんな唐音が取れる行動と言えば何時も通りのツンデレ文句なのだが、唇に添えられた人差し指に阻まれる。思いもよらない彼氏の一手に驚き目を見開く。
「別にアンタの為に一生懸命考えて選んだ服じゃないんだからね……合ってる?」
「ば、ばかぁ……」
悔しい、言い当てられた事も普段ならしてこない彼氏の茶目っ気にときめいて、ましてや彼氏の指一本で制されて悪い気がしていない自分が悔しい。でもそんな私の事を理解してくれていることがその100倍嬉しい。
しかしながらやられたままなんて許さない、不用意に懐に入ってきた恋太郎の指を掴み、口に咥え噛む唐音。だが恋太郎の目には素直になりきれない子猫が可愛くじゃれてくれている様にしか映っていない。
う〜、う〜、と上目遣いで抗議の声をあげるツンデレ金髪猫。ギャラクシーな可愛さに恋太郎は笑みを浮かべる。
「あはは、ごめんごめん。今日の唐音が可愛くてね?ほら行こ? 荷物は俺が持つよ」
「……うん」
彼氏の反対の手で頭を撫でられながら窘められる金髪猫、素直な返事も出来た所で恋人繋ぎをしながら2人は歩き出す。
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少しばかり歩いたか、恋太郎の家までもう少し。さっきまでの痴話喧嘩が嘘のように2人が歩く先は静けさに包まれていた。微かな鳥のさえずりや遠くから聴こえてくる車の走行音を右から左へ聞き流す。こういう時間も悪くないかなと思いながら唐音は横目に恋太郎を見やる。
フード付きパーカーに下はゆったりとしたボトムズボン。腕捲りをしているのが個人的に刺さる。恋太郎にしては少しラフすぎる格好かなと思う反面、これがオフの日の彼氏......! と自然と胸が高鳴る唐音。互いの服装もお似合いのカップル見たいだなぁなんてと内心舞い上がった所為か、横目で見ていた筈なのに気づけば見惚れていた。そんな熱視線に恋太郎が気づかない訳もなく。
「ん? どうかした?」
優しい声音が耳に刺さる。好きすぎるぞ馬鹿彼氏。
「な、何でもない…….! ぁ、ほら着いたわよ!」
視線を直すと馬鹿彼氏のお家に到着。足早に玄関に向かう。
「あー待って待って!」
「何よ、さっさと入るわよ恋太郎!」
「今鍵開けるからちょっと待ってね」
「……」
誰も居ない家を空ける際は施錠する。当たり前である。
「玄関のドアノブとち、力比べしようとしただけなんだからね!」
「種族の垣根を越えたバトル……はまた今度にして、はい開いたよ唐音」
「うぅ、おお邪魔します……」
恋太郎に促され院田唐音愛城家に到着。そして遂に来てしまったプチ同棲。唐音の睡眠時間を削り取った1番の原因。自覚してしまった瞬間からそればかり考えてしまい今日を迎えてしまった。一体この先にどんな素敵な事が待ち受けているのだろう。意を決して愛城家の玄関に足を踏み入れる。
「唐音っ」
玄関に踏み入った瞬間に聴こえた声に反応する間もなく、唐音は後ろから恋太郎に抱き締められる。
「れ、れれ恋太郎!?」
唐突な愛情に狼狽える唐音に恋太郎は言葉を紡ぐ。
「父さんと母さんにはごめんなさいだけど、今日1日は唐音の家でもあるからお邪魔しますじゃなくて『ただいま』だよ?」
「な、何よそのルール。ていうか今日の恋太郎ちょっと変よ? さっきだって私の口に……」
指で唇を塞いで来たことなんてなかった。それに学校や皆んなといる時の恋太郎と今日の恋太郎の雰囲気が少し違う。ホントに自然体というか年相応な少年、と思ったら歩いている時の横顔がカッコよかったりと唐音の心は普段とは違う彼氏の一面に心を掻き乱されていた。
「実はその、ちょっと寝不足で」
「え?」
「本当に楽しみにしてたんだ。唐音に夜更かしするなよって言ったくせに、唐音とデートしてるのを想像してたら眠れなくなっちゃって...あはは、そのせいかも?」
「(恋太郎も寝れなかったんだ……私と同じ)」
唐音にはそれだけで充分だった。自分が大好きな人も楽しみに待ってくれていた。彼氏の素直な愛情を注がれまくった唐音にはもう反抗する意思はない。
「ああもう! 分かったわよ! れ、恋太郎がそこまで言うなら従ってあげるわよ! ただいま……」
「!! おかえり唐音」
「……ん」
腰に回された手の力が強まる。ちょっとキツイけど心地よい締め付けに思わず甘い吐息が漏れる。今の私の顔は皆んなには見せられないくらい幸せそうな顔をしてると断言出来る。大好きよ恋太郎。
そして『カチリッ』と静かに玄関の鍵がかかる。普段なら気にもとめない何処の家でも聴くような無機質な音。今日ばかりは特別な合図の様に感じ、より一層愛に頬を染めてしまう唐音であった。