愛城恋太郎のことが大大大大大好きな院田唐音   作:しろっこにー

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今更なんですが各話数の台詞風なタイトルについては、唐音以外の彼女達から選んでる形にしています。遊び心で初めた訳ですが分かりずらい等の意見があれば直そうと思います。

なにぶん小説書くのが初めてな小職ですゆえ、他の方の100カノ小説を参考にさせていただいてます。(文字が震えたり点滅したり太字に出来たりビックリだよ)

もっともっと100カノの二次創作が出てきてくれれば嬉しいですね。

それでは続きをどうぞ


第8話 「『ア、アニキー』『相変わらず甘ったるい匂いがプンプンしてやがるぜぇ!』」

 

 

 

 ゲームも一息つき、唐音が窓の方を見やると外の世界は薄暗くなっていた。 熱中している間に、どうやらお天道様は帰り支度を始めたようだ。

 

 

 二人きりのこの世界も例外ではない、お家デートの期限が少しづつ迫っているのに彼女の胸はざわつくが、それを振り払う様に自身のリュックに手を伸ばし、小さなリボンがついた袋を取り出す。

 

 

 中には花の形をしたクッキーが入っていた。彼氏の家に手ぶらで行くのも無粋だろうと前日に作っていたのだ。 大事なのはデートを逆算してしまう事では無い今である。 だからまだ、カーテンは閉めたくなかった。

 

 

「恋太郎、はいこれっ。 別に二人で食べたいなって思って作っただけなんだからね」

 

 

「ツンが不在っ! ありがとういただくよ」

 

 

 袋に入っているクッキーはパッと見て十枚ほどか、どれも食べやすい一口サイズになっており、最初に目に映った一枚を掴み、口に運ぶ恋太郎。

 

 

 それを黙して見守る唐音の視線も彼氏の口元、今日何度も重ね合わせた場所へ。

 

 

「ぁ……」

 

 

 無意識に吸い寄せられた視線の先に、か細い声が漏れる。クッキーに入れた砂糖みたいに毎日甘ったるく褒めてくれる彼なら、今日もきっと美味しいと言ってくれる。 そうやって優しい声音で私の耳も甘く溶かしてくれるからまた恋しくなってくる。さっきもしてただろうに懲りないなと、彼氏の唇から逃げるように視線を下げた。

 

 

「美味しい、甘さも丁度良いし唐音の手作りクッキー最高だよ」

 

 

 ほら、褒めてくれた。 幸せで押し潰されたみたいにくしゃっとした表情で。 そんな笑顔を振り巻かれるもんだから私もそれに充てられて、つい甘い妄想を抱いてしまうのだ。

 

 恋しくなったのだから仕方ないと言い聞かせ、唐音も袋から一枚クッキーを取り出し口に咥える。

 

 

「恋太郎、んっ」

 

 

「えっ」

 

 

 彼女からの可愛い提案に思考が一瞬停止する恋太郎。ポッキーゲームならぬクッキーゲーム。 あの手この手猫の手と、頭から砂糖でも被って来たのか今日の彼女は彼氏の胸をこれでもかと焼いてくる。 オーブンでもここまで焼けないぞと心の中で吐露しながら意を決し、蕩けた顔で見つめてくる唐音の肩に手を添えて、差し出されたお菓子を咥える。

 

 

 が、食べる事叶わず。 恋太郎がクッキーの端を摘んだのを合図に、唐音の口の中へお菓子は吸い込まれていき、一口サイズに保たれていた距離は彼女の唇で埋められた。

 

 

 大胆不敵、一本取られた。 恋太郎の予想を覆す、柔らかな感触とのしばしの触れ合い。そっと終わり、口元に手を添えた彼女から微かに聴こえる咀嚼音に耳を熱く撫でられる。

 

 

「うん、恋太郎味って感じかな」

 

 

「俺はてっきり食べさせてくれるかなと」

 

 

「……食べたい?」

 

 

 しっとりと見つめてくる彼女からリピートのお誘いが舞い込んでくる。触れただけの、一手間にもなりきらない行為が唐音には絶品の調味料だったようだ。

 

 

「う、うん」

 

 

「分かったっ」

 

 

 袋に伸ばされる華奢な手から恋太郎は視線を外せないでいた。 クッキーはあと八枚ほど残っている。これを食べ合わる頃には口から砂糖を出せるようになるのかなと可笑しな事を考えるが、再びお菓子を咥えて顔を近づけてくる彼女の、愛おしい願望にはこっちも願ったり叶ったりだと、甘いひとときに身を委ね唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 ──────────

 ──────────

 

 

 

 

 今日の私凄すぎる……。

 

 

 

 院田唐音一日の総評。 いやまだ終わってないのだが、今日だけで一生分のデレを吐き出してしまったんじゃないかと今後の彼氏とのお付き合いに一抹の不安を覚える。 回りくどく甘ったるい食べ方をせがんだり、発情(冤罪)したり、アメリカンスタイルで特攻ダーリンしたり思い出すとキリがない。二重の意味でのぼせそうだと、誰に見られる訳でもないが隠れるように口元まで湯船に浸かる。

 

 

 でも……。

 

 

 クッキーを食べた後も、取り留めもない会話の中で頭を撫でられたり、仕返しとばかりに撫で返したり、また倍返しとおでこにキスをされたり、どちらからともなく何かしらのきっかけでイチャついて、気づけばすっかり夜である。 そして恋太郎の計らいでこうして一番風呂をいただいている。 何時もより気合いを込めて髪と身体も洗い、後は上がるだけなのだが身体は動かせずにいた。

 

 

 

 終わりたくない。

 

 

 

 ゲームをした後に見てしまった薄暗い窓の景色が唐音の心にじんわりと影を落とす。 一人になると余計な事ばかり瞼の奥にチラつくもんだと自嘲気味に口角をあげるが、今日の唐音はツンデレを通り越してツントロだ。 振り払ったつもりだったのに、迫り来るデートの終わりに目の内側がキュッとなる。

 

 

 朝、高揚とした気持ちで家を出たのが懐かしい。 楽しい時間は何でこうもあっという間に過ぎ去ってしまうのか。 今日のデートが終わってしまえば、面白可笑しい愉快な恋太郎ファミリーの院田唐音に戻るだけ。 頭では理解しているし、皆んなと一緒にいる時間も私にとっては大切な瞬間。それでも手放し難い大好きな彼氏との一時。

 

 

 もっと一緒にいたい。 甘えたい。 こんな気持ちは我儘だろうか?

 

 

 相反する感情に答えが見つからないまま気怠い身体に鞭を打って風呂場を後にした。

 

 

 

 

 ──────────ー

 ──────────ー

 

 

 

 

「ぱぱぱぱぱパージャマー!?」

 

 

「ヒンディー語になってんぞっ」

 

 

 お前インド人だったのか恋太郎。 部屋に戻るや歓喜の悲鳴を上げる彼氏に脳内ノリツッコミを挟んだ唐音の寝巻きは、ベロア生地で黄色のジップアップパーカーにショーツと、同年代の異性には火力が高い姿だ。 そしてちゃっかりチョーカーもつけている。

 

 胸の谷間が見えそうな位置まで下げられたジッパーから無防備に見せつけてくる鎖骨と、ショーツから伸びる彼女の健康的でスラッと伸びる太ももに彼氏が国籍を変えてしまうのも無理はない。 チョーカーは……。 彼氏が着けててほしいって言ってたから仕方なく着けているだけなんだからねと唐音の内心を付け足しておく。

 

 

 

「唐音の寝巻き姿が可愛すぎるんだっ!!! この気持ちを否定するくらいなら俺はインド人になっても構わないっ!!!」

 

 

「はいはい、ほら恋太郎もお風呂入ってきなさいよ」

 

 

「ホアッチャー!」

 

 

「もう……。 馬鹿っ」

 

 

 

 胸の前に垂れ下がった金髪の毛先を指でくるくると弄りながら、こっちの気も知らないだろうインド人兼世紀末男がお風呂へ向かうのを見送りベットへ腰掛ける唐音。

 

 

 肌触りも良いし、動きやすくて可愛かったから買っただけの寝巻きをこうも褒めてくれるとはちょっとした嬉しいサプライズであった。だがふと窓を見やると、カーテンは閉められていた。外はもう真っ暗だろう。溜め息をつきながら後ろに倒れ込み、昼白色に輝く照明を意味もなく眺め、寝返りを打ちおもむろに布団を撫でる。 手から伝わるヒンヤリとした心地いい感触に何処か冷静な自分が顔を出し始める。

 

 

 今日来た服は家に帰ったら洗濯しよう。歯ブラシは晩御飯を食べたらまた使うし、朝ごはんも作ってくれるのだろうか? それはそれで嬉しいし手伝いたい、いやむしろ私が作る。 お風呂セットは明日の朝片付けよう。忘れ物があったら大変だ、そんな事で恋太郎の手を煩わせたくない。 などと、頭の中でつらつらと帰り支度のシュミレーションを始める。

 

 

 そういえば、皆んなは今頃どうしているんだろうか? 恋太郎ファミリーの面々が唐音の脳内を駆け抜けてゆく。

 

 

気を使ってくれてるのか、LINEの通知は胡桃が朝に送ってくれた一件のみ。それとも皆んな仲が良いから、誰かしらと遊びに出掛けているのかもしれない。 私もそっち側だったら楽しさや充実感はあっただろう。でも照れ屋で素直じゃない私がここまで満たされることはなかった。今更ながら罪悪感のようなものに苛まれている。

 

 

 それでも今の唐音には布団を握る手を緩める気概は無い。それどころか握った場所を起点に引っ張り、出来た固まりを抱き締め顔を埋めた。

 

 

 

「すぅ……。 はぁ……」

 

 

 

 恋太郎の匂いがする。そりゃあここで毎日寝ているのだから当然なのだが、凄く安心する香りが唐音の鼻孔を通り抜け、頭の奥を甘美に揺らす。

 

 

 束の間の現実逃避だ。折り合いがつかない感情へのせめてもの慰め。

 

 

 だがそれは睡眠不足で家を出た彼女の瞼にゆっくりとのしかかり、意識を手放す巧妙な罠でもあった。

 

 

 

 

 ────────ー

 ────────ー

 

 

 

 

 再び瞼を開いた唐音をオレンジ色の光が照らしていた。そしてしまったと反射的に身体を起こす、目を向けた先にある針の位置は既に日付を跨いでいた。それは彼女が抱いていた未練に鋭く突き刺さる。

 

 

 

「恋太郎……」

 

 

「あ、起きたんだね。おはよう唐音、なんてね」

 

 

 

 咄嗟に出た唐音の言葉は酷く弱々しい物であったが、「スマホで調べ物してたら寝るタイミング見失っちゃったよ」とベット横に背中を預けて座っていた彼氏がそれを拭いさってくれるかの様に頭を撫でてくれる。そんな優しい彼氏の声音に少しだけ心が軽くなったが、ふと彼氏の服がパーカーから寝間着に変わっていることに気づく。

 

 

 本来なら「彼氏の寝巻ー!」と喜び弾んでしまう所だが、今に限っては過ぎ去ってしまった時間を突きつけられている気がして高揚感の欠片も無い。

 

 

 

「お風呂から戻ってきたら布団で寝てて驚いたけど、もしかして寝不足だった?」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「ふふ、じゃあお互いに今日は寝不足だったって事だね」

 

 

 

「ごめん……」

 

 

 

 笑みを返してくれるがこんなお揃いは望んでない。一緒に晩御飯も作れてない。もっと二人でしたい事があった。恋太郎もあっただろう。それをおくびにも出さず寄り添ってくれる彼の言葉に、持ち直した筈の心は深く落ち込んでいく。いっその事憎まれ口一つでも吐いて欲しいのに……。でもそんな事をしないのも分かっている。だから寝落ちという名の放棄をしてしまった以上、彼女には謝罪の言葉しか紡げなかった。

 

 

 

「ううん、唐音の可愛い寝顔も見れたから俺的には全然問題ないよ?」

 

 

「んなぁ!?」

 

 

 

 言われてみればそうだ。先に寝てしまったのだから寝顔を見られるのは確定である。だが幸いか、彼氏の一言に唐音に纏わりついていたネガティブな感情は一気に掻き消された。変わりにボフッと音が鳴りそうなくらいに顔が赤く染まってしまうが、オレンジ色の照明に溶け込んでいるお陰か即座に申し立てをする。

 

 

 

「恋太郎の変態っ! 馬鹿ぁ!」

 

 

 

 随分と拙い申し立てだ。寝起きの彼女にはこれが精一杯の文句である。

 

 

 

「好きな人の寝顔を見たくなるのは彼氏としては普通だと思うけど」

 

 

「じゃあ私も恋太郎の寝てる顔見ないとフェアじゃ無いわよね?」

 

 

「ん? つまりどういう事?」

 

 

 

 いや、察しなさいよ馬鹿彼氏。何時もの勘がいいお前は何処に行った。

 

 

 

「どういう事って、そういうことじゃん」

 

 

「具体的にって事だよ」

 

 

「恋太郎ならもう分かってるでしょ? 恥ずかしい事言わせないでよ」

 

 

「俺は素直になれるように頑張りたいって言った、唐音の気持ちを組んで上げたいだけだよ?」

 

 

「そ、それは……ああもう分かったわよ」

 

 

 

 つくづく私の為かと、恋太郎の彼女が一番だよってスタンスに諦めと感謝の気持ちが入り交じるが、今日に限ってはそれがちょっと意地悪な方に働いている。

 

 

 だが、それに悪い気がしないのは惚れてしまったが故の弱み。ちくしょう分かったわよ言ってやるわよと、唐音は彼氏の布団で口元を隠しながら呟いた。

 

 

 

 

「一緒に寝て、ほしい、です……」

 

 

 

 

「ありがとう。俺も一緒に寝たいなって思ってたから嬉しいよ」

 

 

「ふ、ふんっ! どっちか先に寝ちゃうか勝負よ。絶対負けないんだからねっ」

 

 

 

 それで言ったらもう俺の勝ちなのでは? と既に唐音の寝顔を見ている恋太郎は内心呟くが、早く来なさいよと言わんばかりに袖を引いてくる彼女にこれを言うのも野暮かなと内側に留めておく。

 

 

 

 かくして、恋太郎VS唐音の寝落ち勝負の火蓋が切って落とされるのであった。





完結までもう少し

唐音が好きな人に刺さってくれますように……。



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