犴と鮫・番外編集   作:鷲谷ヒメリ

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9月初週までは夏判定という事で滑り込みセーフ!


海のから騒ぎ

 漣の音が心地よく流れ、空はどこまでも高く青く澄み渡り、大きくそして見事に白い入道雲は空の青さとのコントラストで素晴らしく映え、砂浜は太陽に照らされ輝いている。

 そこに集まった総勢十七人の見目麗しい女性達と、二十人近い幼い女児ら。そしてうんざりした顔でパラソルやクールボックスを含めた大量の荷物を持たされている、気怠げな男とガラの悪い男の二人組。ほぼ全員が思い思いの水着を着て、波打ち際の白波に期待を膨らませていた。

 そして、とうとう我慢の限界に達した褐色の肌と濃い色の金髪の美女、破面(アランカル)のティア・ハリベルがいの一番に海へと駆け出す。数名がそれに続き、ある者は浮き輪を、ある者はビーチフロートを抱えて走り出した。

「海だーーーーー!!!」

 夏真っ盛りのこの日。女性死神協会と虚圏(ウェコムンド)の合同で、慰安旅行が決行された。

 

 事の起こりは一週間前、尸魂界(ソウルソサエティ)の瀞霊廷。女性死神協会が(勝手に間借りしている)朽木邸にて集会をしていた時まで遡る。

「海行きたくない?」

 十番隊副隊長を務める松本乱菊が、ふとそう発言した事であった。

 十一番隊副隊長であり、女性死神協会会長を兼任する少女、草鹿やちるがそれを耳聡く拾い、行きたい!行こう!と即決した。四番隊隊長兼女性死神協会副会長である卯ノ花烈がいいですね、と自隊の副隊長である虎徹勇音と共に計画を立て、その他大勢……というかほぼ全員であれやこれやと必要なものや個人的に持ち込みたいものなどを話し合った。

 そんな中、諸用で瀞霊廷に来ていたところ乱菊に捕まり、来賓として集会に参加していた破面(アランカル)、エミルー・アパッチがぽそりと呟いた。

「虚圏(ウェコムンド)のみんなも連れて来たいな」

 その場にいた全員が一斉に、アパッチに注目した。びっくりしたアパッチは一瞬固まって、目線を右往左往させながら狼狽える。

 その沈黙を破ったのはやちるだった。

「え!?ミラぴ来るの!?呼んで呼んで〜!」

「ぅえっ!?ま、まあ……ミラ・ローズは呼んだら絶対来るとは思う……ガキども連れて……あとスンスンも現世大好きだから、現世の海行くって言ったら絶対来るし。ハリベル様とアメミト様は大勢で遊ぶの好きだし、無理矢理スケジュール空けるくらいはしそうかな……あれ、結構連れて来れそう」

 わあっ、と歓声が上がった。

 あれよあれよという間に、七緒によって慰安旅行の計画が立てられ、計画書がアパッチに手渡された。一先ずは二日後までに返事持ってくるとだけ約束したアパッチが、急な展開に困惑と慄きとであたふたしたまま集会はお開きとなり、虚圏(ウェコムンド)から帰還して女王たる元第3十刃(トレス・エスパーダ)、ティア・ハリベルに見せたところ。

「へえ、いいじゃないか。行こう行こう」

 二つ返事で了承が返って来た。これに限ればアパッチも想定の範囲内である。想定外はこの直後に来た。

「えー!海行くの!?あたしも一緒に行きたい!」

 たまたま遊びに来たリリネットに、慰安旅行の話を聞かれたのである。連れて行けと駄々を捏ね始める前に、ハリベルが勿論いいぞと答えた為、リリネットの同行が決定。なし崩し的に荷物持ちとして、そしてリリネットの保護者としてスタークと、売上の計上の為に伝票の提出に来たグリムジョーが巻き込まれる形となった。

 

 かくして、ついでとばかりに現世の井上織姫にも声をかけて決行された海水浴。夏の陽気に浮かれ切った美女と美少女の集団が砂浜を駆け出した。

「おいみんな!海入る前に準備運動ー!ピカロ達が真似すんだろーが!」

 ビーチボールを抱えたミラ・ローズが大声でそう言った。その周りを、女の子のピカロ達がくるくる歩き回っている。今回は荷物持ちの二人以外は女性のみということもあり、男の子のピカロ達は虚夜宮(ラスノーチェス)で留守番していた。

 残念な事に、ミラ・ローズの真っ当な呼びかけはほぼ全員にガン無視された。しょうがない人たちだな、と溜め息を一つ吐いたミラ・ローズは、困ったような笑顔でしゃがみ、ピカロ達と目線を合わせる。

「みんな、ああいう風に羽目外しすぎてダメな大人にならないようにな。アタシ達はちゃんと準備運動してから、海に入ろう」

「「「はーい!」」」

 ピカロ達が元気よく返事した。ミラ・ローズは満足げに頷いて立ち上がり、ピカロ達と一緒に声出しをしながらラジオ体操を始める。

 

 さて一方で、真っ先に海に飛び込んだミラ・ローズ曰く"ダメな大人達"はといえば。

「ヒャッフゥーーーー!!」

「イェーーーイ!!」

「元気だなオメエら……」

 ダパァンッ!と水飛沫を上げながら、ハリベルとスンスンが大きく跳躍し、海に飛び込む。破面(アランカル)の身体能力ならば、波打ち際から胸まで浸かる深さまで跳ぶなど造作も無かった。人外の身体能力の無駄遣い。

「エミルーは飛び込まないのか?」

 白とエメラルドグリーンの浮き輪を小脇に抱えたアメミトが訊ねる。まさか、とアパッチは肩を竦めた。

「流石にあの二人みてえなガキじゃないんで……浅瀬でちゃぷちゃぷしてま———ヘブァッ!?」

 アパッチが答え切るよりも先に、横から顔目掛けて水が飛んでくる。敵意も何も無い、完全に意識外から飛来したそれに、アパッチは当然のごとく直撃した。射線の先を首だけで向けば、織姫と乱菊がクスクスと笑って水鉄砲を構えているのが見える。

「油断大敵よ、破面(アランカル)」

「だよー」

「お……お〜ま〜え〜ら〜〜〜!!」

 アパッチは軽く屈んで両手を水面に沈めた。

「それやるって事は、宣戦布告と見做していいよなぁ!?やっていいのはやられる覚悟がある奴だけだかんなぁ!?」

 バシャアッ!とアパッチが海水を両手で掬い上げ、織姫と乱菊目掛けて投げるようにかけた。きゃあ、と悲鳴とよく似たはしゃぎ声が波打ち際を駆け抜ける。

 二対一かつ水鉄砲対身一つで水の掛け合いをするアパッチ達を眺め、アメミトは苦笑した。

「アンタらも大概に子供ではないか……?まあ、折角慰安旅行という名目で遊びに来たんだ。楽しまなければ損というもの」

 アメミトは浮き輪を前に掲げて、深い方へと歩いていく。胸まで水位が来た辺りで、浮き輪に捕まり波に揺られた。

 照りつける日差しはなかなか暑いが、波の音が心地良い。揺籠に揺られるような安心感に身を任せながら、アメミトは周りを一瞥した。

「アメミト!」

 愛するコントラルトが聴こえて、アメミトは声の方を向く。眩しい笑顔で手を振るハリベルがそこにいた。

「凄いな、海!本物の海だ!アッハハ!ちょっとしょっぱい!」

 子供みたいな無邪気さに、アメミトは心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚える。

(かっっっっっわいい……!)

 アメミトも大概に浮かれていた。

 

 他方、砂浜では。

「……あっちいな……眠いし」

「テメエはいつでも眠いだろうが。つーか、何で俺まで……荷物持ちならルドボーンでもいいだろうが。むしろアイツなら一人で俺ら二人よりも大量に運べるぞ」

「たまたまあのタイミングでハリベルんとこに行った自分を恨めよ」

「チクショウ……」

 荷物持ちとして連行されて来ていたスタークとグリムジョーが、パラソルの下ではしゃぎ回る女性陣を眺めていた。

「そういえば、ウルキオラが珍しく付いてこなかったな」

 スタークがスポーツドリンクを一口飲んで、ふとそう言った。グリムジョーは波打ち際から少し離れた場所で、砂の城を作っているリリネットとネル、やちるを見つめたままこう答える。

「ウルキオラの奴なら、男のピカロ達と一緒に映画観てるってよ」

「へえ。何観てるのか知ってる?」

「"ク○ヨンしんちゃん嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦"と"ドラ○もんのび太のワンニャン時空伝"と"ポケット○ンスター結晶塔の帝王エンテイ"と"リロ・アンド・ス○ィッチ"」

「一作観るごとに干からびてそうだな……」

 スタークは苦笑する。今のウルキオラは随分感受性が高いからな、とグリムジョーも頷いた。

「おっ」

 不意にスタークが顔を上げると、海の方でハリベルが自身の能力を使ってウォータースライダーを作り上げているのが見えた。ピカロ達がそれを滑り降りては上に跳ね上がられ、スライダーに着水するとまた滑り降りていく。

 自在に動くウォータースライダーは常にコースが変化して、ピカロ達も飽きなさそうだった。ついでにピカロ達に混じって大人も数名、スライダーを楽しんでいるのが見える。

「独壇場じゃねえか」

「そりゃ、大量の水が最初からある場所なんだしあれくらいはやるだろうなあ」

「人がいないから不問に処すが、そうでなければ止めていたところだがな」

 背後から女の声がした。スタークとグリムジョーが振り返ると、砕蜂が仁王立ちしている。

「破面(アランカル)共、夜一様がアイスを御所望だ。寄越せ」

「渡すのはいいけど、もうちょっと言い方どうにかなんねえのかテメエは」

 溜め息を吐いて、グリムジョーはクーラーボックスを開けた。ボックスいっぱいに詰められたアイスは、スンスンの指示で二人が買い漁って来たものだ。

「どれが欲しいんだ。言っとくが、ダッツは無えぞ高えから」

「なんだ無いのか、ハー○ンダッツ。なら仕方ない。MO○で」

「クソッ。少しでも高いのを選ぼうとしやがって……」

 ほらよ、と文句を言いつつグリムジョーは砕蜂にアイスと使い捨てのスプーンを手渡す。

 そこに、リリネット達の唸り声がグリムジョーの鼓膜を揺らした。グリムジョーがなんだよ、と声の方を向くと、難しい顔をしながらリリネットとやちるが水を含ませて固めた砂を積み上げながら、あーでもないこーでもないとスコップを迷わせている。ネルはせっせと小さなバケツに砂を詰めていた。

「…………だぁー!もう!見てらんねえ!」

 グリムジョーは立ち上がり、パラソルの影から出てリリネット達の方へとズンズン歩いていく。リリネットからスコップを取り上げると、片膝をついてしゃがんだ。

「貸せ!造形ってのはこうすんだよ!」

 そういうとグリムジョーは、リリネットの抗議の声を無視してスコップを走らせる。ザリザリとスコップが迷い無く砂の塊を削り出し、二十分もしないうちに出来上がったのは。

「し……し……」

「シンデレラ城だぁーーー!?」

 某夢の国のシンボル、シンデレラ城であった。本気出しすぎだろ。と遠巻きに眺めていたスタークは心の中で突っ込む。

「ぐりりん!ぐりりん!もっと他にも作ってー!」

「誰がぐりりんだクソガキ!」

「グリムジョー様!ネルはこの前おねえちゃんと一緒に観たハリー○ッターのホ○ワーツ城を作って欲しいッス!」

「しれっと図々しいなテメエはよぉ!?お前実は自分の正体覚えてるだろ!!」

「グリムジョーあたしキン○ギドラ作って欲しい!」

「ジャンルの傾向ギックリ腰か!?」

 子供達にもみくちゃにされながら、グリムジョーはバケツで大きめの砂の山を三つ作る。

 この後めちゃくちゃサンドアートした。

 

 

 太陽が真上を過ぎていい頃、ミラ・ローズと勇音とで長い柱のようなものを二本砂浜に突き立て、それらを繋ぐようにネットを張った。ネットが弛んでいないかを確認して、乱菊がスコアボードとビーチボールを運んでくる。

「それでは、スイーツ争奪ビーチバレー対決を始めます。審判は私、涅ネムと卯ノ花隊長。スコア記録は雛森副隊長で務めさせていただきます」

 ネムがぺこりとお辞儀をすると、周囲から歓声が上がった。アクティビティコンテンツの一つとして持って来たビーチバレーのセットだが、乱菊の提案でおやつのスイーツを賭けて勝負することになったのである。なお、スイーツはゲームの間にスタークに買いに行かせることになった。パシリ扱いされる第1十刃(プリメーラ)とは。

「チーム分けは先程お話した通り、松本副隊長率いるAチームに砕蜂隊長、勇音、夜一さん、朽木さん、アパッチさん、織姫さん。アメミトさん率いるBチームにハリベルさん、スンスンさん、ミラ・ローズさん、虎徹三席、伊勢副隊長、リリネットさんです」

 烈のアナウンスでAチームとBチームに分かれ、それぞれ自陣コートにスタンバイする。観客席として区切られたエリアで、やちるを含む子供達が応援の声を上げていた。

 ルールはバレーの基本ルールとほぼ同じ。十一点先取で三セット中二セット取った方が勝利となる。

 乱菊とアメミトがチームの代表として前に出た。最初のサーブ権の取り合いである。

「「最初は最下級大虚(ギリアン)!!」」

「じゃんけんの掛け声そっちでいいの!?」

 アパッチのツッコミと共に、ゲームが始まった。

 

「乱菊さんそっちいったよ!」

「任せなさい……って!」

「テメエどこ飛ばしてんだノーコン!!」

「アパッチさんナイスフォロー!」

「くうッ!タッパのある人はこれだから!ブロック届かなくてよ!」

「間に合えぇ!!」

「ミラ・ローズさん、お願いします!」

「よっしゃ任せろー!」

 ビーチバレー対決は、夏の日差しに肉薄するレベルで白熱していた。観客席で見ているグリムジョーは、甘いもの欲しさにここまでする女ってよくわかんねえな、と手慰みに足元の砂で小さな像を作る。像のモデルは中級大虚(アジューカス)時代の今は亡き従属官(フラシオン)の一人、ディ・ロイであった。

 果たしてゲームはいつの間にか終盤戦に差し掛かった。お互いに一セットずつ取り合って最終セット。スコアは六対七でBチームが一歩リードしている。Bチームとしてはもう少し引き離したいところだが、Aチームとてそれを許すつもりはない。

「夜一さん!」

「任せよ!!」

 織姫のトスでボールが上がり、夜一が並外れた身体能力で跳ぶ。ネットの上辺から二十センチ高い位置から叩きつけられたボールが勢いよく砂浜に落ちていく。そこにリリネットが飛び込んでギリギリのところで拾い、清音が軌道修正した。

「ティア!」

 アメミトがトスを上げる。呼ばれたハリベルは助走をつけて跳んだ。空中で身体を縦回転させ、打ち上がったボールを足で叩き落とす。

「消し飛べ!!」

「掛け声がおかしい!!」

「ていうかハリベル様それはもうビーチバレーじゃなくてセパタクロー!!」

「ルール的に禁止じゃないけど!禁止じゃないけどさぁ!!」

「超次元サッカーじゃねーんだぞ!!」

 観客席も含めた全員から、総ツッコミを食らった。

 結果的に、一進一退の点取り合戦の末に勝利したのは逆転を掴み取ったAチームであった。アメミトを筆頭にBチームは砂の上に崩れ落ちる。

「いや〜、申し訳ありませんねハリベル様もアメミト様も〜。アタシだけスイーツいただきま〜す!」

「チクショウ煽りよるコイツ」

「おのれエミルー……ここぞとばかりに……」

「絶許」

「覚えとけよお前」

 仲良いなあんた達。乱菊はちょうど買い物から戻って来たスタークからカップスイーツのモンブランを受け取って、早速蓋を開けた。

「なんか多くねえか」

 二つあるレジ袋の片方の中を覗いたグリムジョーが首を傾げる。

「勝ったチームの分とちびっ子共の分だな。お陰でエグい金額飛んだ」

「ああ……ガキ共は無条件で食えるからゲーム参加しなかったのか……」

 よーし、チビ共集まれー!

 スタークはいつもよりも声を張って呼びかけた。それを聞きつけたピカロ達とネル、やちるは一目散にスタークの元へと突撃してくる。

「プリンだー!」

「あたしのは桃のゼリーよ!」

「ネルはイチゴのケーキにするッス!エヘヘ……」

「抹茶のケーキだって!おいしそー!」

 ピカロ達とネル、やちるが美味しそうなスイーツにはしゃいでいるのを、リリネットが羨ましそうに見ていた。ミラ・ローズはなんとも言い難く生ぬるさのある表情で、そっとリリネットの肩に手を乗せる。

「まあ、なんだ。負けたのは普通に悔しいしアパッチに煽られたのはムカつくけど、ケーキくらいまた別の日に食べに行けるさ。スタークの奢りで」

「おい」

 急に刺すな、とスタークが目尻をひくつかせた。グリムジョーは面倒そうに欠伸を一つして、アイスの詰まったクーラーボックスを親指で指す。

「ごちゃごちゃしみったれたこと言ってるくらいなら、アイスでも食っとけ負け犬共」

 そのあんまりな言い方に、アメミト達は一斉にカチンと来た。

「綻び死にたいかこの野郎」

「ぶっ飛ばすぞ」

「ケツの穴まで毟り取りますわよ」

「一護に一生勝てない奴が何抜かしてんの」

「サイテー!」

「事と次第によっては名誉毀損で訴訟も辞しません」

「スターク、帰刃(レスレクシオン)」

「ただの事実陳列罪でここまでボコボコに殴られることあんのかよ。あ、待て、やめ……物理的にボコすのはやめろ!!」

 平和だなあ。ダブルカスタードシュークリームに齧り付きながら、織姫は美女達に足蹴にされるグリムジョーを眺めていた。

 

 日が少し傾き出して、喧騒はすっかり落ち着きを見せ始めている。アメミトは波打ち際をのんびり歩きながら、水平線の向こう側を眺めていた。

「グリムジョーの奴。自分はゲームに参加していないくせに好き勝手言ってくれる……もう二、三度踏んでおくべきだったか」

 やや横暴にも思える事を呟いて、アメミトは溜め息を吐く。波を砂ごと小石のように蹴飛ばし、どこへとも無くフラフラ歩き回った。

「アメミト!」

 不意に名前を呼ばれて、その声が誰のものであるかを一瞬で理解したアメミトは柔らかく微笑んで振り返る。そこには悪戯っぽく笑うハリベルが、両手を後ろに回していた。

「ケーキは残念だったが、アイスならあるぞ。○ピコでよければ食べる?」

 じゃーん、とハリベルが後ろに回していた手を見せびらかす。両手には二つが連なる括れたチューブに詰められたアイスクリームがあった。

「食べるけど、それ2人で分けるやつだろう?ティアはいいのか?」

「勿論。一緒に食べたいからコレを選んできたんだ。コーヒー平気だったよな?」

「ああ」

 プチ、と微かな音と共にアイスの容器が切り離される。ハリベルは左手側のアイスをアメミトに投げ渡し、自分は右手側のアイスの蓋を折り外した。アイスを受け取ったアメミトも、同じように蓋を折り開ける。

「……楽しかったな」

「ああ。楽しかった」

 ちう、と二人とも開け口を咥えて、手から伝達される体温でアイスを溶かしながら吸う。コーヒーのほろ苦さと、ミルクの甘さが口の中に広がった。

「また来たいものだな。今度はメノリ達も呼んでみるか」

「アイツら大人しく来てくれるかな……ロリは勿論だが、メノリは"世紀の大発見中だからパス"とか言いそう」

「ああ……なんかちょっとわかる」

「それでいくなら、私は次があるならリサ達を誘いたいな。まあ、アイツ夏は謎に忙しそうにしているが……気分転換に外に連れ出すくらいはいいだろう?」

「……そうだな。少し妬けるような気持ちも無くは無いが……」

 アメミトの無意識に喉から転がり出た言葉に、ハリベルは碧玉を丸くした。

「……なんだ?どうしたそんな顔して」

「いや……アメミトって妬くんだ、と思って……」

「私をなんだと思っているんだ。私だって、人並みに嫉妬くらいするとも」

「そうか……うん、そうか」

「何でちょっと嬉しそうなんだ……」

 半目になったアメミトにハリベルはクスクスと笑いかけた。

「だって、いつも私が妬いてばかりだからな。そうか……お前はいつもこんな気持ちなのか」

 アメミトは言葉に詰まり、むず痒いような気恥ずかしいような心地を覚える。それらを誤魔化すように、足で水を蹴り上げてハリベルにかけた。

 そうして戯れていると、スンスンが二人を呼ぶ声が聞こえてきた。どうやら、そろそろ撤収するらしい。

「……帰るか」

「そうだな。その前に……パ○コ食べ切ってしまおう」

 夏の熱気と体温でクリーム状になったアイスを一気に吸い上げ、二人はパラソルやビニールシートを片付ける他の皆の元へと引き返した。




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