まほプリ2 母の日シリーズ   作:ヨザリイコイ

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拙作「脱出」の後日談となります。
脱出: https://syosetu.org/novel/374394/4.html

*PIXIVにも投稿しております




杖に縋りつく歳まで生きていたかった。

 

 

それだけが心残りだ。

そうすればアイルに淋しい思いをさせずに済んだし、淋しくならないために必要なことを教えることだってできた。

それができなかったから、あの子は「全て」を失った。

 

 

「でもそれで良かったのかもしれないわね」

 

 

私との思い出に浸りたかった。だから大それたことをした。

とどのつまり諸悪の根源は私だ。その私を綺麗さっぱり忘れてしまえば、前を向きやすくなるだろう。

いや、そうでもしないと生きていけるはずがない。

 

 

「赤いカーネーションも去年でもらい納めか……」

 

 

哀しいが仕方のないことだ。今のあの子に大切なのは、私が完全に「死んでしまう」ことだから。

もう白いカーネーションは届いた。娑婆の世界に私に関わるものはない。

 

 

 

 

 

ドアをノックする音とともに、外から「お届けものです」という声が聞こえる。

 

「はぁい。えっ!」

 

ドアを開けると、その向こうにここに居ないはずの我が子、アイルが赤いカーネーションの花束を抱えて立っていた。

 

「アイル……、どうして?」

 

「母の日だからね」

 

子供の頃のようにはにかんだ顔で、私に花束を渡す。添えられたメッセージカードには、確かにアイルの文字で祝いの言葉が書いてある。

 

「ねぇ、まさか」

 

不安がる私をあの子は手で制した。

 

「それはないから安心して。こういう事ができるのはこれが最初で最後なんだ」

 

「まさか闇の魔法を使ったの?」

 

「うん。でもこれっきりしか使えない。だから……、これでお別れだ……」

 

「そうなの……」

 

「いつまでも……、お元気で……」

 

そう言い残して、あの子は霧の中へと消えていった。

少しだけ温かみの残る花束だけが、あの子がここにいたことを証明してくれた。

 

 

 

 

「ふぅ……、バレなかったかな」

 

カーテンを潜り抜けてからすぐに、あの人のマスクと服を脱ぎ捨て、ゴミ箱に放り込む。後は身体を元の大きさに戻せば、ひーちゃんのお仕事はおしまいだ。

 

「お疲れ様。上手く渡せた?」

 

「うん」

 

「それにしても変わった事するね。自分を手にかけた人のお母さんに、母の日のプレゼントを渡すなんてさ」

 

「お花が貰えないなんて哀しいだろうから」

 

「そういえば、母の日には毎年墓前に供えてたらしいね」

 

「エリナさん、悪いこと何にもしてないから貰えないのは可哀想だもん」

 

「なるほどね。だから嘘をつきに行ったのか」

 

「うん。良い子じゃなくなっちゃった」

 

「いいんじゃない?人を困らせるものじゃないから」

 

「嘘だから悲しませちゃうかもしれないもん」

 

「そうだねぇ。じゃあ今度はひーちゃんのままで何か持っていったらいいんじゃない?贈り物を貰えるのは嬉しいことだから」

 

「そうする」

 

 

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