〈竜〉と呼ばれる異次元からの怪物に支配されかけている世界で、同じ〈竜〉の力を我が身に宿して抗う人類達のお話。



ちな、続くかどうか不明(故の短編)

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竜災害対策機動隊

 

 

 

竜災害対策機動隊とは

 

 

 

2029年に世界各地で同時多発的に発生した、未知の生命体〈〉による生物災害──(通称:竜災害)──に対応する為に生まれた超国家機関のことである。

 

日本での略称は〈竜.災.対〉。

 

国内には、鹿児島・新東京(旧・滋賀県大津)・宮城の3ヶ所に支部を置く。

 

日本における〈竜.災.対〉の構成人数は全支部合わせて200余名。内、竜災害発生時に出動する実動部隊(滅竜士(ドラゴンスレイヤー))は僅か9名である。(注1・2040年4月1日現在)

 

 

ーーーWikipediaより抜粋

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

2042年 5月23日 PM1:12

 

 

旧群馬県 上空

 

 

 

 

 

………少し毛先が紅くなった前髪を指先で弄る。

 

髪の毛の変色は〈適合〉の第1段階だそうだが、このまま髪の毛が真っ赤になってしまうのは困りものだ。……どんな顔をして散髪屋に行けば良いんだろうか?

 

「はぁ…………。」

 

まぁ、そんな事を考えても仕方が無いので、俺は溜息を吐いて椅子から立ち上がった。

 

耳を満たすのは外から聞こえる風切り音と、ローターの音。

 

『──天戸(あまと)、降下の準備だ。』

「了解。」

 

インカムから聞こえる指令の声に頷きつつ、俺は開き始めたハッチへと歩いて行く。

 

その向こうに広がるのは青い…馬鹿みたいに青い空。

 

 

「…………。」

 

 

ハッチから見下ろせば、遥か下に地上の景色が小さく見えた。

 

(………なんて小さい。)

 

空から見下ろす世界(ちじょう)の小ささに苦笑しつつ、俺はハッチの端に立つ。そして吹き付ける風に目を細めながら、機内のランプが緑色に光る(出撃可能になる)のを待った。

 

 

『風向き良し。風力異常なし。──良いぞ。出撃だ。』

 

 

ポーンと赤いランプが緑へ変わる。そして、いってらっしゃいと言わんばかりにハッチが完全に開き切った。

 

「…了。天戸(あまと) (ほむら)──行きます。」

 

開いたソコから、躊躇うこと無く俺は飛び出す。

同時に、天まで届けと言わんばかりに叫んだ。

 

 

 

「竜装!!!!!」

 

 

 

刹那、彼の身体が眩い真紅の光に包まれる。

 

そしてその体を内側から突き破る様に、真紅の結晶が次々と彼を覆い始めた。

 

現れた結晶は、やがて卵か繭の様な形と成り、彼の身体を完全に覆い隠す。

 

 

ドクン…!

 

 

鳴り響く心臓の鼓動。

 

 

ドクン!ドクン!ドクン…!!

 

 

それは早鐘を打つように速まり、鼓動の度に彼を隠す結晶が光って震えた。

 

 

ドクドクドクドクドクン!!!

 

 

──重力に引かれ落ちる真紅の結晶塊。それは、まるで紅い流星の様で────

 

 

バリィィィィンッッッ!!!!
 

 

 

次の瞬間、紅い流星は内側から砕け散り、中から彼の姿が飛び出す。しかし、その姿は人のモノとは最早異なる姿へ成っていた。

 

全身は光る赤い鱗と甲殻に包まれ、その両手両足には鋭い刃の様な爪が生えている。

顔は人の形を保っているが、髪の毛は真紅に染まり、頭からは曲がった角が飛び出していた。

 

最大の特徴は、その背中から突き出す巨大な翼だろう。まるで竜の翼のように大きく広げられた(ソレ)は、流れる風を確りと捉えて力強く羽ばたいていた。

 

 

「ヴオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」

 

 

空に響く人ならざる者の咆哮。

 

 

…苦痛でも歓びでも無い、それは言わば剥き出しの命の叫び。

 

 

 

 

人を守る為にヒトを棄てた者に残された、ただ1つの疑いようなき命の叫びであるのだろう。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

かつてこの世に降り注いだ未曾有の災害〈竜災害〉。

 

 

この世界とは異なる別次元から来訪してきたと思われる〈怪物〉達は、僅か7日間で地上の5割を焼き払い、30億人もの人々がこの7日間で死亡したとされている。

 

後に、怪物達には〈竜〉という名が与えられ、それに対抗するために〈竜.災.対〉が発足。

 

()()()()()から通常兵器が効かない〈竜〉を倒す為、〈竜.災.対〉は人に〈竜〉の力を移植する技術を生み出し、〈滅竜士(ドラゴンスレイヤー)〉と呼ばれる改造人間を作り上げた。

 

 

 

彼───〈天戸(あまと) (ほむら)〉もまた、その1人である。

 

 

 

 

 

(───翼を───開けッ!!)

 

 

 

バサッ!!と音を立てながら、俺は背中の翼を大きく広げた。

 

〈竜装〉してから暫くの間、翼は若干動かしにくくなる。……元々人の身には無いものなのだから、仕方の無い事かもしれないが。

 

(さぁ………目標(ターゲット)は何処だ…??)

 

 

翼を2、3回羽ばたかせてから、俺は縦に開いた瞳孔で地上と空を見渡した。

 

…竜の力が混ざったこの姿は、自らの感覚を再現無く高め、超常的な身体能力を齎してくれる。今の自分なら、1キロ先の景色でもハッキリ見えるだろう。

 

 

『……天戸(あまと) 。聞こえるか?』

 

ふと、耳元のインカムから声が聞こえてくる。

 

 

「聞こえますよ。何です?」

 

『報告と状況が変わっているようだ。───()()()()()()()()()。』

 

「…!」

 

インカムからそんな言葉が発せられると同時に、自分から500メートル程離れた場所の雲が大きく割れた。

 

 

そして、その雲の中から体長20メートルは有るであろう巨大な怪物が姿を現す。青い空に巨大な深紅の翼を広げ、その口元に烈火を宿すその怪物の姿は、正に物語の中から飛び出して来た〈ワイバーン〉の如し。

 

───見間違うことなど無い。あれこそが人類の敵───〈竜〉だ。

 

 

『チッ…言った側からお出ましだ。──気を付けろ…!』

「分かってますよッ!」

 

緊迫感の滲むインカム越しの声。

それを聞きつつ、(ほむら)は空の上で身構えた。

 

「ガォオォオ

 

 

そこへ、現れた〈竜〉が歪な咆哮を上げて真っ直ぐ突っ込んで来る。

 

(───ッ!)

 

亜音速の突撃を紙一重で回避し、彼は自分から遠ざかっていく竜へ右掌を向けた。

 

ボゥッ…!

 

その掌に、真紅に光る炎の塊が生まれる。

 

この『火』こそが、〈滅竜士(ドラゴンスレイヤー)天戸(あまと) (ほむら)に宿る〈竜〉の力───業火を自在に操る能力の顕れなのだ。

 

(さぁ……先ずは一発…!!)

 

生まれた火球(ソレ)を、彼は実体があるかの様に握り締め、勢い良く〈竜〉目掛けて投げた。

 

「───灼けろぉぉッ!!!!」

 

彼の手から離れた瞬間、火球は大気を鳴らす程の速度で飛翔を始め、竜の背中に命中する。そして、閃光と共に激しく爆ぜた。

 

ギャゥゥウゥゥッッッ?!」

 

竜の背中が大きく抉れ、血のような何か──まるで赤い霧の様なモノ──が蒼穹に飛び散る。

 

しかし、それだけで竜は倒せない。…実際、被弾した竜は直ぐに体勢を立て直すと、また此方へ向かって来ていた。

 

グォオォンッッ!!

 

〈竜〉の口がガバッと開き、口元から閃光と共に火炎が迸る。ソレは数多の炎を束ねた業火の息吹(ドラゴンブレス)

 

───そして放たれた息吹は、凄まじい熱気を撒き散らしながら(ほむら)へと迫った。

 

「───っと…!!」

 

弧を描くように彼はブレスを躱し、掌からカウンターの火球を撃ち出す。しかし〈竜〉はその軌道を見切って避け、2発目のブレスを放って来た。

 

「まだまだぁッ!!」

 

渦巻く火炎を避けつつ、彼は両手から火球を連続で撃ち出す。放たれた無数の火球は、空に熱波の尾を引きながら〈竜〉へ迫っていく。

 

「…グルルゥ…!」

 

ブレス攻撃を中断した竜は忌々しげに唸り、翼をはためかせて真上へ飛び上がった。避けられた火球は虚空で次々と爆ぜる。──が、それは想定内。(ほむら)の目的は竜にブレスを中断させ、その隙に接近する事にあった。

 

(遠距離の撃ち合いは分が悪りぃ!!近距離で殴り合うッ!!)

 

接近を妨げるブレスは今は無い。彼は己の翼で勢い良く大気を叩き、1本の矢となって蒼穹を翔け上がった。

 

「うおらぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

そして、竜の懐へ潜り込んだ(ほむら)は、自分の鋭い爪が生えた手を竜の胸元へ突き刺す!

 

ザクッ!と肉と皮を切り裂いたような音が響き、竜の胸から真っ赤な霧のようなモノが噴き出した。

 

ギャアァァアッ!?」

 

噴き出した赤い霧は、チリチリと焼け焦げるようにして消えていく。

 

「もう一発!!」

 

更に彼は左腕を振るい、竜の喉元を爪で抉り取る。

 

再び飛び散る血潮の如き真紅の霧。そしてその一部は、(ほむら)の体へ静かに吸い込まれていった。

 

「────!!」

 

しかし喉元に穴が空いたにも関わらず、竜は何事も無かったかのように翼を広げると、その丸太のように太い後ろ脚で彼を蹴り飛ばす。

 

「うぉッ?!」

 

蹴撃を防御した両腕に凄まじい衝撃が加わり、彼の体は激しく後方へ吹き飛ばされた。

 

(痛えッ……!)

 

蹴り飛ばされた両腕を見てみれば、赤い甲殻が砕けて罅割れている。…その割れ目からは、血の代わりにやはり赤い霧の様なモノが流れ出ていた。

 

「ギャオォォオン…!!」

 

「──ッッッ!!!」

 

其処へ突撃してくる〈竜〉。鋭い翼爪が生え揃った巨大な翼が、超重量の鈍器と化して(ほむら)へ迫る。

 

「なろぉおッ!!」

 

一撃目を咄嗟に回避し、迫る二撃目もバレルロールの様な激しい旋回で避けた(ほむら)は、今度は足で〈竜〉の頭を狙った蹴りを放った。

 

「グルゥッ…!」

 

大袈裟な動きで蹴りを避ける〈竜〉。

 

その動きを見て、彼は()()()()()()()()

 

「お前──〈竜核(コア)〉は頭か!」

 

その言葉に竜は答えること無く、ただ三度目の殴打で応じる。

 

──それを再び避ける(ほむら)。しかし〈竜〉は空振った勢いそのままに一回転し、体から生える長く靭やかな尻尾で(ほむら)を強く打ち据えた。

 

「がッッッ…!!」

 

胸に巨大な鉄骨が激突してきたかのような衝撃が疾走り、息が出来なくなる。

 

「───かは…ッ…」

 

そのまま、彼は大地へ向かって勢い良く叩き落されていった。

 

ルルルゥゥウ!」

 

──そして、竜は低い唸り声を上げながら墜ちていく彼を追い掛ける。

 

「こん……のぉッ…!!」

 

灼ける様に熱い肺へ無理矢理空気を流し込み、(ほむら)は翼を全開にして急制動を掛けた。

 

そうして全身に強い空気抵抗を受けながら、彼は落ちる速度を緩める。

 

しかし、〈竜〉はもう既に目と鼻の先。

 

開かれた(アギト)の奥に生えるギザギザの乱杭歯が、(ほむら)を噛み砕こうとしていた。

 

グォオォオオォォォン!!」

 

一噛みで、間違いなく彼は死ぬ。───が、しかし、彼は不敵かつ獰猛な笑みを浮かべて、その(アギト)を迎え撃った。

 

「──頭を差し出してくれて──ありがとなぁぁあぁ!!」

 

 

ガブッッッ!!!

 

 

固い何かと肉が噛み砕かれる様な音が、空に響き渡る。

 

噛まれたのは(ほむら)───が前へわざと突き出した右翼だった。

 

勿論、その右翼は容易く食い千切られる。しかし、翼を犠牲に差し出したお陰で(ほむら)の体は無事であった。

 

そして目と鼻の先の距離で、お互いの眼差しが交差する。

 

 

「ルゥウ…!!」

「この距離なら──竜核(コア)にも届くよな…!」

 

 

───彼は…(ほむら)は、勝利を確信している目をしていた。そして事実、彼の攻撃を〈竜〉が避ける事は出来なかった───

 

「喰らえドラゴン…!──〈竜炎爪(フレイムクロー)〉ッッ!!!」

 

『技名を格好良く叫ぶと気持ちいいぜ?』と言う()()の言葉を思い出しつつ、(ほむら)は業火を纏って一回り大きくなった右手の爪を、〈竜〉の頭へと勢い良く叩き付ける。

 

同時に()()から『だっさ。何よ?そのセンスの無い技名は?』と冷たくあしらわれた過去も思い出したが、そっちは目の前の〈竜〉と一緒に空の彼方へ殴り飛ばしておいた。

 

 

オオオォォォオォォンッ………?!

 

 

彼の渾身の一撃を受けた〈竜〉の頭が木っ端微塵に砕け、破片と共に赤い霧がドッと撒き散らされる。

 

そして、大部分が消し飛んだ〈竜〉の頭部の中心から、綺麗な赤い宝玉の様なモノが姿を見せた。

 

(露出したな…!!竜核(コア)が!!!)

 

それを見た(ほむら)は、その紅玉へ素早く手を伸ばす。

 

───彼が竜核(コア)と呼ぶその紅玉は、全ての〈竜〉が持つただ1つの弱点だ。

 

〈竜〉達の肉体は、〈竜素(ドラゴンフォトン)〉と呼ばれるこの世界には存在しないモノで構築されている。

 

この〈竜素(ドラゴンフォトン)〉は、同じ〈竜素(ドラゴンフォトン)〉による干渉でしか消滅させる事が出来ないと言う性質を持ち、これによって100%竜素(ドラゴンフォトン)で肉体を構成している〈竜〉達には通常兵器が効かなくなっているのだ。

 

そして〈竜核(コア)〉は、この〈竜素(ドラゴンフォトン)〉が超高密度に圧縮されて生まれた物質であり、〈竜素(ドラゴンフォトン)〉の流れ──ヒトにおける血液の流れを司る心臓の様な役割を果たしている。

 

そこを砕けば、〈竜〉は〈竜素(ドラゴンフォトン)〉を維持出来なくなって死ぬ。

 

……言い換えれば、竜核(コア)を砕かぬ限り〈竜〉は死なないのだ。

 

 

「うおおおおぉおおおッッ!!!」

 

 

気迫と共に振るわれた爪が、逃れようとする〈竜〉の竜核(コア)に突き刺さる。

 

ピシィィッッ……!!!

 

真紅の宝玉は一瞬耐えたものの、直ぐに突き刺さった彼の爪を中心にして罅割れ始めた。

 

一度始まった崩壊は止まること無く続き、一抱えもあるスイカ大の宝玉は瞬く間に塵となって消える。

 

刹那、巨大な〈竜〉の体が真っ赤な濃霧となって、爆発を起こしたかのように四方八方へドッ!と拡がった。

 

 

──この赤い霧の様に見える物、その全てが高濃度の〈竜素(ドラゴンフォトン)〉である。

 

 

「うッ…!」

 

物理的な衝撃波を伴って空に拡散した大量の〈竜素(ドラゴンフォトン)〉に吹き飛ばされ、地上へと真っ逆さまに落ちていく(ほむら)。…右翼が食い千切られたせいで、羽ばたいて体勢を立て直すことも出来ない。

 

(───ちっ…ヤバいか……?!)

 

そんな彼を追いかける様に、倒された〈竜〉から飛び散った〈竜素(ドラゴンフォトン)〉が、渦を巻きながら空を流れていく。

 

───そして、彼の体へ次々と静かに吸い込まれ始めた。

 

(来た…!)

 

こうなる事を見越していたかのように、(ほむら)は翼を広げる。…すると、食い千切られて無くなっていた筈の右翼が、断面からバキバキと音を立てて生え始めてきた。

 

元々は〈竜〉の身体であった〈竜素(ドラゴンフォトン)〉を吸収し、それを自分の翼の再生に使っているのだ。

 

───〈竜核(コア)〉によって維持されていない〈竜素(ドラゴンフォトン)〉──即ち、〈竜〉或いは〈滅竜士(ドラゴンスレイヤー)〉の身体から流出した〈竜素(ドラゴンフォトン)〉は、近くにある〈竜核(コア)〉の持ち主へと流れていく性質を持つ。

 

そして詳しくは後述するが、滅竜士(ドラゴンスレイヤー)の体の中にも擬似的な〈竜核(コア)〉が存在している。

 

よって、〈竜素(ドラゴンフォトン)〉は今この場に居るただ1人の竜核(コア)を持つ者───即ち(ほむら)へと流れ込み、それは彼の翼の再生材料となっているのだ。

 

(───よし…!もう良いかッ…!)

 

ある程度再生が終わった所で、(ほむら)は新生したばかりの両翼を羽ばたかせた。

 

 

バサッ!!!!

 

 

蒼穹に拡がった真紅の翼は大気の流れを掴んで彼を減速させ、そして遂に彼の落下は止まる。

 

下を見下ろしてみれば、地表までの距離は凡そ100メートル程しか残っていなかった。

 

…あと少し翼の再生か、羽ばたく判断が遅ければ、とんでもない速度で大地に叩きつけられていただろう。

 

「ひゅう……。危ね。」

 

その場でホバリングしたまま、(ほむら)は額の汗を拭った。…空での命綱たる翼を犠牲に差し出したのは、我ながら危ない賭けだったと思う。

 

『───天戸(あまと)、大丈夫か?かなり落下していたが。』

「大丈夫です。…ただ…翼を盾にするのは辞めたほうが良いかもですね。」

 

インカムから聞こえる声に、彼は静かに頷きながら答えた。

空を見上げれば、雲海の彼方に黒い点が見える。──アレが自分が飛び降りた輸送機だろう。

 

『──少し警告しておくが、先程お前の〈蝕竜値〉が75を記録していた。……知っているとは思うが、80オーバーで〈蝕竜状態〉となる。気を付けろ。』

 

インカム越しの釘刺しに(ほむら)は小さく頷いた。

 

「分かってますよ。…翼の再生の為に少し多く竜素(ドラゴンフォトン)を取り込む必要があったんです。───それより、付近に〈竜〉の反応は?乱入はありませんか?」

 

『───無いな。〈竜域境界(カーマンライン)〉を越えてきたのはあの1体だけのようだ。』

 

「そうですか…。では、離脱します。」

 

『あぁ。…お疲れ様。』

 

……微かなノイズと共にインカムの通信が切れる。

 

少しずつ近付く輸送機を一目見た(ほむら)は、そのまま視線を地平線の果てへと動かした。

 

そして、()()()()()に広がる景色を眺めながら、重々しく独り言ちる。

 

 

「…………もうこの星は───人類(俺達)の星じゃなくなったんだな………。」

 

 

───彼の視線の先にあるのは、血が滲むような真っ赤な罅割れの入った空。

 

そのヒビからは真紅の光が地上へと光のカーテンとなって降り注ぎ、その光に照らされた場所は草木から地面に至るまで全て真っ赤に染まっている。

 

それはさながら、青い地球の大地を赤い別のナニかが侵食しているようにも見えるだろう。

 

 

───アレの──あの場所の名は〈竜域〉。

 

 

〈竜〉達の住処であり、全てが始まった日に異次元と繋がってしまった場所である。

 

 

(いつか──取り戻せるのかな。……あの空と、大地を。)

 

 

人類が掲げる悲願を胸に、(ほむら)は〈竜域〉のある方角を眺め続けた。

 

……聞こえるはずの無い〈竜〉たちの咆哮が、風に乗って聞こえてくるような錯覚を抱きながら………

 

 

 

 

 

 

 

 

……to be Continue?






滅竜士(ドラゴンスレイヤー)

〈竜〉に対抗するために〈竜.災.対〉が生み出した改造人間。

18歳前後の若い人間の心臓に人工的に造り上げた〈擬似竜核〉を埋め込み、心臓と同化させることで〈竜〉の力を得られるようにすると言うモノ。

但し、誰でも〈竜〉の力を得られる訳では無い。〈竜〉の力との〈適合率(蝕竜値)〉が高くなければ力は得られず、逆に肉体が竜の力に負けて死んでしまう。(失敗時の致死率99.9%)

無事〈適合〉した場合、〈竜素(ドラゴンフォトン)〉を〈擬似竜核〉から産生する事が可能となり、〈竜装〉と呼ばれる戦闘形態に『変身』する事が出来る。(但しその代償として、少しずつ肉体が変質していく(人間では無くなっていく)。)

また、〈竜装〉した姿は〈人竜〉とも呼ばれる。

滅竜士(ドラゴンスレイヤー)〉の翼や竜の鱗などの部位は、竜素(ドラゴンフォトン)によって作られ、それはそのまま生身を守る鎧となる。

また、得られる〈竜〉の力は、適合者の心理的トラウマを元に決まると言われている。


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