客人から教師へ、そして恩師へ。   作:品江四重

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 遡ること数時間前。

 校長室へ向かった闇の魔術に対する防衛術の教授である魔女は、右手で杖を弄び、左手でボウトラックルと遊んでいた。

 「アルバスいるかあい」

「ピーブズから伝言を聞きましたが、何の御用ですかな?」

「ちょっとねぇ、私はこのあとどうしようかなって。別にホグズミードにいたって良いんだけどね。魔法省に戻ったって良いんだけどね。どっちも気乗りしないんだよねえ」

「ほう、先輩ともあろうお方がホグズミードに駆け戻らないとは」

 週末になるたびに「ホグズミード! 今行くよぉ!」と叫びながら自分を抱えて駆け出すかつての首席の姿を思い出しながらダンブルドアは苦笑した。

 

 「私はどうしたら良いかい。アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア?」

 杖もボウトラックルもポケットへ収めるとコトンとわざとらしく首を傾げて魔女は問う。その目にぎらりと挑戦的な光が宿っているのを見逃さず、彼もまた挑戦的に見つめ返す。

 

 「ちょっと遊んであげようか」

 

 

 

 あちこちでガラスが割れる音がし、壁に大穴が空き、数十のピクシー妖精とニフラーが城の中を駆け巡っている。

「アンブリッジ先生! こっちの床に悪魔の罠が!」「先生! こっちで花火が勝手に暴れてます!」

「「どうすればいいですか、アンブリッジ先生!!」」

 悲鳴と破壊音にドローレス・アンブリッジはめまいを覚えながらあちこちへ杖を振っている。それでもなお、ピーブズたちによって城は破壊されていく。

 その中心は、あの魔女だ。

 「花火も爆竹もでっかい蛙チョコレートもまだまだあるよー!!」

 箒で縦横無尽に飛び回りながら、魔女はフレッドとジョージからある限り買い上げたのかというほどの、いたずらグッズを次々に使っていく。皆が悲鳴を上げているが、その顔には一様に邪悪な笑みが浮かんでいた。

 「イモビラス!!」

 死角から飛んできた縛り術に、アンブリッジは対処できず、杖を振り上げたままの格好で動きを止められてしまった。

 

「さて、さてさてさて」

 突如ぽしゅんと軽い音を立てて暴れ回っていた火花は消え、魔女が指をくるくる回すたびに壁に開いていた大穴や散乱していたガラスが元に戻っていく。

「生徒のみんな、ここで私たちから君たちに課題を与えるよ。私たちを捕まえられたら勝ち。一人5点をあげよう。ルールはそれだけ!」

「ん? 私、たち?」

「そうさ! 私たちさ! 始めるよ、よぉーい、スタート!」

 有無を言わさず始まった「全校生徒」対「魔女たち」は、「とにかくあの先生を捕まえる」という至極わかりやすく実に単純なルールによって、すぐさま白熱した戦いに変化した。

 

 「テルジオ! アクシオ、靴下!」

「デパルソ、ディセンド、ヴェンタス!」

 魔女の動きを止めようと、顔にぶちまけられたベッタベタのお徳用メープルシロップを拭いながら、リー・ジョーダンは魔女が履いている靴下を呼び寄せようとするが、跳ね返された挙句に地面に叩きつけられ、何人かの生徒たちと共に、突風に体が浮いた。

 咄嗟に盾の呪文を間に合わせた他の生徒たちが追っていく。

「もし次があるなら靴下じゃなくてパンツにしときな〜!! 九割の人が穿いてるだろうから〜!!」

 おふざけ極まるその返しにリーは「たしかに」と一度納得した後、「先生まさか穿いてない一割じゃないよな」とゾッとした。近くに転がっていた一年生たちも、顔を見合わせていた。

 

 

 「フィニート! アンブリッジ先生、何があったのです?」

 マクゴナガルに縛り術を解いてもらったアンブリッジは、あの魔女が何をしでかしたのかを、事細かに、()()()()()誇張して伝えた。マクゴナガルは一通り聞き終えると、神妙な面持ちで頷いた。

 「……なるほど。とにかく、騒ぎの大きい方へ向かいましょう」

 

 

 「そこまでですよ!」

 甲高い悲鳴に近い声を聞いて、どうにか魔女を壁に追い詰めた生徒たちがげんなりした表情を浮かべた。

 「あなたはホグワーツの各所を破壊し、私の仕事の邪魔をしました! 即刻ウィゼンガモットで裁判です!!」

「んーやだ!」

 子供のようにけろりと答えてみせた魔女に、アンブリッジは堪忍袋の尾を切らした。

 「あなたは! あなたが何を言おうと裁かれるべきなのです!」

「それは違うよ。だって私がしたことは私にとって正しいことだから。あとね」

 つい、と天井を魔女は指差した。つられて天井を見上げたアンブリッジはシャンデリアの近くに浮かんでいるポルターガイストと目があった。

 

 「避けなくて良いの?」

 

 その一瞬をつき、魔女は壁に打たれた教育令の看板を足掛かりに、ひょいひょいと上へ上へ登っていく。魔女が力強く踏みつけるため、足掛かりにされた看板が次々と落下していく。

 

 「ステューピファイ!」

 我に帰ったアンブリッジが放った失神呪文を空中でひらりと身を翻して避けると、突如現れた真紅の炎に魔女は飲み込まれていった。

 

 皆が呆然としていると、赤い何かが複数落ちてきていることに気がついたロンは、ネビルは、フレッドとジョージは、それをよく見て、よく見て、そしてすぐさま耳を塞いだ。

 

 「「「「弟さんは元気かい!!!!」」」」

 

 ドッカン!と破裂した吠えメールは、アンブリッジの醜い傷に塩胡椒を振りかけた。





 パルクールとかボルダリングとか色々調べて、結局はレガ主がトカゲの如く壁を這い回ることになりました。
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