客人から教師へ、そして恩師へ。   作:品江四重

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組み分け帽子の言うことにゃ

 

 ハリー・ポッターはグリフィンドールのテーブルにつくと、なんとなく周りを見渡した。ロンやハーマイオニーとは特急で一緒にいられなかったが、ルーナ・ラブグッドという新たな友人が他寮に出来たのはいいことだと思っていた。

「ねえ、ハリー?どうしたの、ぼーっとして……」

「ここに来るまでもずっとぼんやりしてたよね?どうしたんだよ」

 ロンとハーマイオニーに両側から顔を覗き込まれ、ハリーは慌てて言った。

「大丈夫、少し眠いだけだから」

 嘘だった。本当は、胸の深いところでずっと罪の意識に苛まれていたのだ。

 自分が監督生に選ばれなかった時は少々悔しかったが、昨年のゴブレット騒動やあの墓地での出来事に比べれば些細なことで、セドリック・ディゴリーのあの最期を、ハリーは何度も夢に見ていた。

 何かできたはずだと悔やんで、幾度となく額の痛みに耐えた。

 

 程なくして、マクゴナガルが一年生を引き連れて広間へやってきた。空中に浮かぶ蝋燭や満点の星空を映す天井、辺りを飛び回る半透明のゴーストに一年生たちは目を輝かせていた。自分もあんな風にホグワーツでの最初の夜を迎えたのだ、とハリーは懐かしんだ。

 「見ろよ、あのブロンドの一年生。女の子だけど、マルフォイにそっくりだぜ。つんとして、いかにもって感じ……あれ?」

「どうしたの、ロン?」

「いや、さっきからあの一年生、ゴーストたちと仲良さそうなんだ。手を振ったり、うわ、睨めっこ始めたぞ⁉︎マルフォイ家の人間だったらだったら絶対にやらないな、ああいうことは……」

「睨めっこ⁉︎」

 ハリーとハーマイオニー、そして近くに座っていたシェーマス・フィネガンもそのブロンドの少女を見やった。確かにそのマルフォイ家の一員のような美しいブロンドの少女は、ほとんど首なしニックや太った修道士と睨めっこをして遊んでいた。灰色のレディや血みどろ男爵でさえ心なしか柔らかい表情をしている。頬を膨らませたり、寄り目をしたりと、その少女は楽しそうに表情をコロコロ変えている。少女の相手をしているゴーストを目で追っていたシェーマスは、職員席のある人物に気がついた。

 「見て、あの全身フウーパーみたいにピンクのオバさん」

「うわ、ほんとにピンクだ」

「……僕、僕あの人見たよ、ウィゼンガモットでファッジの近くに座ってたんだ」

「てことは、魔法省の役員か?」

 だろうね、とハリーとシェーマスに返すとまたあの面白いブロンドの少女を探し始めたロンだったが、なぜか見つからず、代わりにやたらと目立つ、爆発したような髪型の、自分と同じような赤毛の少年が増えていた。

 

 やがて組み分け帽子が歌い、それが終わるといよいよ組み分けが始まった。一年生たちに組み分け帽子が被せられ、次々に寮が決まっていく。グリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、またグリフィンドール、ハッフルパフ……。そしてあの爆発的な髪型の赤毛少年が呼ばれ、椅子に座った。

 ダンブルドア校長は見逃さなかった。その少年が椅子に座る直前、こちらを見てニヤリと笑ったのを。

 

 「おや、君は……私を被るのは何度目だったかな?」

 その組み分け帽子の言葉に、その場にいた全員がざわついた。ただダンブルドアだけが困った顔で頭を抱えたのを、ネビルは見ていた。

「三度目だよ、組み分け帽子。久しぶりだね」

「二度目の組分けから、90年ぶりか?」

「87年ぶりだよ。ただ、私を組み分けする必要はないさ。ただアルバスにサプライズをしようと思っただけだから」

 その赤毛の少年が組み分け帽子を自ら脱ぐと、インクが紙に染み渡るように、燃えるような赤毛はたちまちのうちにダークブラウンになり、四方八方に跳ねていた髪は腰まである長いストレートに変わった。自分たちが一年生だったときより小柄に見えた身長はぐんと伸び、五年生くらいの身長になった。

 「やあ、アルバス。どう?びっくりしたかい。組み分け帽子はやっぱりすごいねぇ。すぐに私と見破った」

 たった今目の前で起こった変身と出来事に、皆があっけに取られていた。そして、一人を除いた全員が同じことを疑問に思っていた。

 __今、「ダンブルドア」じゃなくて「アルバス」って呼んだよな?

 「あなたは、あなたはどなたですか?」

「ん、ミネルバ?随分美人になったねえ。覚えてない?君が三年生のときの飛行訓練で一緒に競争したんだよ」

「いえ、私のことはいいですから、あなたのことを」

 なんとか表情を普段のように引き締めて尋ねるが、その答えは隣りに座っていた人物から返ってきた。

「お久しぶりですな、先輩……」

「やだなぁ、昨日会ったばかりじゃないか!ねえ、アルバス。やっぱり私が防衛術の教師になるよ。雇ってくれるかい?」

「そうしたいのは……そうしたいのは山々ですが……」

「すでに私がおりますのよ?」

 ダンブルドアの近くに座っていたドローレス・アンブリッジが、貼り付けたような笑みをなんとか保ちながら口を挟んだ。

「お、可愛いピンクだね、ミス・ドローレス・アンブリッジ。私のフウーパーにそっくりだよ!見てみるかい?」

 いつの間にか白髪で背の高い青年に代わっていたその「ダンブルドアの先輩」は、古びたレイブンクローの制服のどこからともなく、革の旅行鞄のようなものを取り出した。皆がその手品に目を白黒させている中、ダンブルドアとハーマイオニー、そしてセオドール・ノットだけが「検知不可能拡大呪文」がそうせしめているということに気がついた。

 「結構です!私は、魔法生物が好きではありません!!」

 ぴしゃりと言い放ったアンブリッジを、ハグリッドやスリザリンの4年生の少女が信じられない、あんなに可愛いのに、と睨みつけていたが、当の魔女はきょとんとしていた。

 「アレルギーとかかい?でも猫は好きなんだね。服に毛がついてる」

 取ってあげる、と伸ばした魔女の手を払いのけると、アンブリッジはフンとふんぞり返った。

 「私は!魔法大臣直々の命令でホグワーツにやってきたドローレス・アンブリッジです!アナタのような不審者、何かあれば即刻逮捕してやります!」

「ひどいなぁ、そうしたら私はくしゃみをしただけでアズカバンの終身刑になってしまうね!」

 困った困ったと対して困っていなさそうだが、大袈裟に振る舞う様子を見て、アンブリッジは不快感が顔に現れ始めていた。青筋が浮かび、頬がピクピクと引きつっている。しかし、どんな手を使ってこの不審者をホグワーツから追い出すか、策を練り始めるために黙り込んだ。

ダンブルドアは、アンブリッジが黙ったと見て、その魔女を紹介しようとしたが、うまく言葉が出てこない。

 「……皆に、今年度の防衛術の先生を紹介せねばの……。この、こちらの方は、儂がホグワーツ生だった頃に、大変、大変お世話に、なったお方じゃ……。そして、防衛術の先生として、この上なく……ぴったりなお方じゃ……」

 ハリーはダンブルドアのその様子を見て、ダンブルドアが言葉をとてもとても選んで話しているのだと察した。その間も青年の姿の魔女は、これ、スニジェットにあげたいんだけどくれるかい?とマクゴナガルの皿からニンジンのグラッセをもらおうとしている。

 ダンブルドアは、グラッセを先ほどのカバンの中に投げ入れている魔女に向き直って言った。

「先輩、分かっておられるじゃろうが、『防衛術』なのです……。『防衛術』ですから……決して、決して」

「分かったよ、上手くやるさ」

 ダンブルドアがなぜここまで心配そうにしているのか、生徒や教師たちはまだわからなかった。

 

 「おう兄弟、久しぶりだな!待ってたぜ!」

「ピーブズ!会えて嬉しいよ、何して遊ぶ?」

 突如広間の上空に現れた、色とりどりのシルクハットでめかし込んでいるピーブズが、その魔女に__すでに姿が変わり、ロンドンで出会ったらまず自分の頬をつねるだろう鮮やかなグリーンのショートヘアの少年に大層愉快そうに話しかけ、その少年も明るい笑顔で答えた。

「大階段でボルダリングってやつをやろうじゃないか!」

「さんせーい!でも私は君と違って死というギブアップがあるんだ、手加減してくれるかい?」

「さあどうかなー?」

「ま、待ちなさい!」

 アンブリッジの指示も虚しく、あっという間に広間から駆けて出ていったその魔女は、その夜のホグワーツの生徒たちから保護者への手紙の話題を鮮やかにかっさらった。




レガ主の二度目の組分けは1907年
メローピー・ゴーントの生まれた年。

次回、レガ主初授業! デュエルスタンバイッッ!
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