客人から教師へ、そして恩師へ。   作:品江四重

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レヴィオーソの教え

 

 ダンブルドアはかつてない不安に襲われていた。というのも、ある人物によって1994年度の新学期が波乱の幕開けとなったからで、目の前の人物がその元凶であった。

 「『ああは言ったもののやっぱりやめときゃよかった』って顔だね、アルバス?」

「分かっていらっしゃるなら、何故……」

「私は直感と経験に全てを委ねる。ごくたまに顔を出す予感には、絶対の信頼をおいている」

 亜麻色のボリュームのある髪の魔女は、ニフラーを振り回しながら答えた。ニフラーのお腹の袋からは、ガリオン金貨、シックル銀貨、クヌート銅貨、指輪、おそらくマグル世界のものと思われるコイン、クリスタルの小瓶などがキラキラと光を受けながら溢れている。やがて、銀色の杖が袋から飛び出すと、魔女は慌ててキャッチした。

 「アイアンデールのこそ泥く〜ん?これは絶対取らないでって言ったよね〜?言ったよね〜!」

 コイツめこうしてやる、とアイアンデールのこそ泥と呼ばれた青みがかった毛のニフラーの頭を、人差し指でうりうりと撫でるとアイアンデールのこそ泥は、やめて、と言わんばかりに小さな手をジタバタ動かして逃れようともがいた。

 「話を戻すね。アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア、君が、他ならぬ君がドローレス・アンブリッジを差し置いて私を選んだんだ。あのお嬢さんはまだホグワーツにいるから、悔しさから何かと私に突っかかって来るだろう。でもね、私には君という非常に心強い後輩がいるという点で、彼女に勝てる。君は私という頼りになる先輩がいるという点で彼女に勝てる。どうだい、これでも『やめときゃよかった』って思うかい?」

 ぐっと黙ったダンブルドアを見て、意地悪言っちゃったかな、と愉快そうに笑う魔女は、ショーケースに飾られている天体模型に大興奮していたアイアンデールのこそ泥を摘み上げる。

「答えが出たら会いにおいで」

 よく見慣れた優等生と似た姿に変化した魔女は、仕事道具の鞄を持って校長室を去った。

 

 

 

 ドラコ・マルフォイをはじめとするスリザリンの5年生たちは混乱していた。授業を受けるために防衛術の教室にやって来たところ、グレンジャーがドラゴンの目玉を模した珍妙なメガネをかけ、年代物の青いマフラーを巻いているからだった。

 新任教授に恥をかかせてやろう、と思いながらニヤニヤと教室に入ってきたはいいが、珍妙なグレンジャーに出迎えられて、スリザリン生はとてもとても困惑していた。

 「……やってみるか」

 相対してから約5分後、何も言わずにただニコニコとしている目の前の珍妙なグレンジャーにセオドール・ノットが杖を向けた。

「スペシアリス レベリオ!」

 呪文を唱えてみるが、不審者に何の変化も起きない。スリザリン生は困惑した。とうとう勉強のしすぎでグレンジャーは狂ってしまったのだと、誰もがそう思った。

 「うん、使うべき呪文は正しかったよ!スリザリンに5点!」

 珍妙な格好のハーマイオニー・グレンジャーは、スルスルと髪が短くなっていき、190センチくらいの好青年に変化した。

 「この変身はさっきの『化けの皮剥がれよ』が効いたわけじゃないんだ。でもミスター・ノットの判断は正しかったよ!褒めて遣わす!……うへへ、言ってみたかったんだよね、コレ。初めまして、私が今年の防衛術の先生だよ。みんな好きなところに座ってね」

 ぽかんとしているスリザリン生を置いて、新任教授は多種多様な椅子やクッションを気軽に指を振って出現させると、皆に勧めた。全員が座ったのを認めると、最初の授業が始まった。

 

 「この中に、決闘の経験があるものは?遠慮なく手を挙げてね。授業でもいいし、あんまり無いかもだけど、戦地に赴いて、でもいいし」

 全員が手を挙げた。もちろん後者の経験ではなく、前者の、3年前のあのひどい「決闘クラブ」による経験によるものだ。

 「うんうん、よし!じゃあ3つの質問だ。まず一つ目。私が今、このドラゴンのメガネをかけているのはなぜでしょう?どんな回答でもいいよ。片っ端から答えてね、答えた人からハニーデュークスの新作キャンディと得点をあげよう」

 得点に釣られたのか、キャンディに釣られたのか、それとも答えが出たからか、ちらほらと数名が手を挙げた。

「よし、じゃあまずミスター・ザビニ!」

「相手を混乱させるためだ。現に俺たちがさっき混乱した」

「いいね、スリザリンに2点!はい、キャンディ。次は……おお、自信があるみたいだね、ミスター・ゴイル!」

「自分がドラゴンくらい強いんだって思わせるため!」

 ゴイルの少し幼稚とも言える答えに数名が苦笑したが、魔女は__好青年からもうすでに姿が変わり、小柄なアジア系の少女の姿をしていた__ハッとしたような顔になったのちに破顔し、盛大に拍手した。

「そうか!さすがだ、ミスター・ゴイル!スリザリンに5点と、はい、キャンディ2つあげちゃう。そうかそうか、これ威嚇になるのか!」

 先生でも気づかなかった利点を挙げられたことで、ゴイルは上機嫌だった。さっそくもらったキャンディの一つを口に入れると、それは口の中で心地よくパチパチと弾けた。

 「では……ミスター・ノット。締めてくれるかい?」

 指名されたノットは、静かだが確信を持った声で答えた。

「自分の視線を相手に悟られないためだ」

「素晴らしい!その通りだ、ミスター・セオドール・ノット!スリザリンに3点だ!はい、キャンディね。そう、今ミスター・ノットが答えたように、このメガネは相手に視線を悟らせない。戦場において、自分に矛先が向いているかどうかはとても重要だ。狙われているなら攻撃に警戒し、狙われていないようなら味方の手助けをする。ミスター・クラッブ、キャンディ欲しいのかい」

 しまった、という顔をしたクラッブだが、魔女はにこりと微笑んだ。

「『なんでキャンディが欲しいと分かったのか』。な〜んでだ?」

「僕がザビニとかゴイル、ノットを見てたから……?」

「正解!話に集中して欲しかったから点はあげないけど、かわりにキャンディはあげよう。ね?視線ってかなり重要だと分かったでしょう?」

 軽く叱られたが、それ以上に学びがあったクラッブは素直に頷く。

 「では2問目。相手に悟られずに攻撃するには?お、早かったね。ミス・パーキンソン、言ってみて」

「目くらまし術を使う!」

「正解!まずキャンディね。得点はみんなからどれだけのアイデアが出たかで決めるよ。はい次、ミスター・マルフォイ?」

「無言呪文だ。まあ、杖の動きで何が飛んでくるか分かる者が相手なら、うまくいくとは限らないが」

「正解だよ、そしてうまくいかない時まで考えた!これは個人を褒めようか!スリザリンに1点ね」

 思わぬ加点に驚いたが、もらったキャンディを握りしめて得意げな顔になったマルフォイをダフネ・グリーングラスは見逃さなかった。

「他には何かあるかい、ミス・ブルスロード?」

「あの、杖なし呪文……と無言呪文を同時、に成功させる?」

「あってるよ、ミス・ブルスロード!」

 不安そうに答えたミリセント・ブルスロードはほっとした表情になってキャンディを受け取る。

 その後も協力しながら次々にアイデアを出し、全員にキャンディが行き渡ったころ、すっと手が挙がった。

「では、ミスター・ノット」

「呪文を唱えはするが、実際の攻撃は無言呪文で行うこと」

 教師の魔女以外が、信じられない、といった表情になった。

「そんな、そんな器用なことが出来るかは……分かりませんが」

「大正解だ!実際にやってみるには君の言う通り練習が必要だけど、可能だよ。私もやったことがある……まあ、最初のそれはほぼ事故だったんだけど」

 全員の目が魔女に釘付けになった。興味と不信、そして一部は尊敬の眼差しだった。

「そ、それはどういう経緯で……?」

「んーとね。プロテゴを唱えたつもりだったのに、杖はルーモスを示した。なんでか分からなくて、それに気を取られたお陰で痛い目にあった。君たち、斬りかかられたことあるかい?」

 あれは痛いよ〜、とケラケラと笑いながら、その魔女は魔法に触れた最初の頃を思い出した。杖の動きは似ているが、完全な無意識下でなぜルーモスを唱えたのか。未だにそれは分からなかったが、古代魔術の影響だと、勝手に結論づけていた。

「さて、閑話休題。さっきの質問に対する答えは全部で12個!よく考えたね、みんな。スリザリンに15点!」

 得点を聞いて、スリザリン生は誇らしげに笑った。上昇志向の強い彼らは、正しい評価を得られることで満足すると、魔女はしっかり理解していた。

 「では、本日の授業の最後の質問。相手の動きを一瞬でも止めるには?おおっ、みんなすごいぞ!では端のミス・グリーングラスから」

 出てきた答えは、ペトリフィカス・トタルス、アレストモメンタム、グレイシアス、ディセンド、ステューピファイ、靴や服に対してのデューロ、ロコモーターマルティス……全て実践的かつ複雑な魔法であった。

「なるほど、みんな良くやった!では私から一つ教えようか。誰か……いや、全員に体験してもらおう。みんな立ち上がって!」

 一体何をするのか、分からないまま生徒たちは立ち上がった。

「じゃあ行くよ……レヴィオーソ!」

「きゃあ!」「うわあ!」

 その魔女が杖を振ったとたん、教室にいた全ての生徒がぐんと引っ張られるようにして浮き上がった。たちまち悲鳴が上がり、なかなか体勢を立て直せない。

 「どうだい、何かできるかい?」

「む、無理よコレ!動けないわ!」

「この範囲のレヴィオーソ、どうやって……⁉︎」

 パンジーやザビニが驚いている中、マルフォイとノットは考え続けていた。先に動いたのはマルフォイだった。

(そうか、レヴィオーソは生物には効かない。これは、ローブにかけてあるのか!なら……)

 マルフォイの動きを見て、気づいたな、と魔女は杖を持っていない方の手も準備した。

 「エクスペリアームス!」

 ローブの袖からかろうじて右手を抜き、武装解除を放ったが、どうやら見抜かれていたらしく、魔女は無言で杖なしの武装解除をぶつけてきた。

「よく気づいた、ミスター・マルフォイ!スリザリンに2点だ!そのまま私に打ち続けててね!よし、合図で降ろすよ!さん、にぃ、いちっ!」

 合図とともに放っていた武装解除呪文を消し、素直に杖を吹き飛ばされると、ドスンと全員が無事に着地したのを見て、魔女は満足そうに笑った。マルフォイの方に飛んで行った杖を無言で呼び寄せると、魔女はみんなに向き直った。

 「コレで分かったね?レヴィオーソでも人は止まること。空中で何かできるのは羽を持つ者と賢い者だということ。ミスター・マルフォイは良くやった!拍手を!」

 スリザリン生はマルフォイに拍手を送り、マルフォイは恥ずかしそうにしていた。

 拍手が止み、最初の防衛術の授業は終わった。皆が新任教授を気に入っていた。




皆さん経験あると思います。グリンゴッツの12番金庫で。プロテゴやろうとしてルーモスすること。絶対あるはず、絶対。
そして皆様気づきましたか、今回の文字数が前の二話よりも多いこと。
今回頑張っちゃった、テスト前なのに。

次回、グリフィンドールwithアンブリッジ! デュエルスタンバイッッッ!
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