客人から教師へ、そして恩師へ。   作:品江四重

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匂い

 

 ドローレス・アンブリッジはあてがわれたオフィスを自分好みに模様替え済みだった。あの不審者がホグワーツ城にいるというこの上なく不快な状況で、自分のオフィスが心を落ち着けられる、唯一と言って良い場所だった。

 

 ところがそのオフィスは泥棒が入ったように荒らされていた。そして実際、()()()が入っていた。

 

 引き出しという引き出しが全て開けられ、書類や印籠、写真などがそこら中に散らばっていた。そして部屋から宝石や大ぶりなビジューがついた品物だけが無くなっている。もしこのオフィスの主人が魔法生物にほんのわずかでも知識があれば、何があったのかすぐに分かっただろう。

 

 だが、ドローレス・アンブリッジだ。

 「そんな知識を得る暇があったら、自身の昇進のために法令案の一つでも捻り出す」ような彼女だ。魔法動物に関する知識など、無いに等しかった。

 

 「な……なんですかこの有り様は!?」

 アンブリッジの悲鳴は、廊下を歩く古い旅行カバンを持った人物にも聞こえていた。

「ありがとうね、こそ泥くん。いくつかは君に上げるから、残りは質に出しちゃおう。ガリオン金貨、好きでしょ?」

それを聞いて、頭の上でルビーの指輪に頬ずりをしている「アイアンデールのこそ泥」がキュイと鳴いた。

 

 

 

 

 青いマフラーを巻いたもちもちほっぺたの少年は、グリフィンドールとスリザリンの4年生の合同授業の助っ人として校庭へ出てきた。どの寮でもない紫色のローブの胸に「Humungous Bighead(石頭)」と刻まれたバッジをつけて、額には緑と橙の派手なゴーグルを上げていた。

 「ルビウスくん、連れてきたよー」

「おう、ありがてぇ先生!」

「パフスケインが15匹。と、私の相棒。と、ニーズルのミシェル伯爵」

 用意されていた柵の中に入り旅行カバンを開けると、ふわふわに毛並みの整えられたパフスケインたちが転がり出てきた。茶色、クリーム色、暗い茶色、中には灰色のものまで、色とりどりのパフスケインたちで柵の中は賑やかになった。

「伯爵? 出ておいで伯爵ーってわああああ!」

「先生!?」

 旅行カバンに上半身を突っ込んでニーズルに呼びかけていた魔女はバランスを崩して鞄に吸い込まれていった。ハグリッドがまだかろうじて残っていた足を掴もうとしたが、寸先で鞄の蓋が閉じた。

 

 「ッ崖!?」

 崖の上へ放り出され、受け身を取るために転がったところ、方向が悪かった。そのまま真っ逆さまに空間を掻っ切って落ちていく。魔女でなければ、死んでいただろう。

 

 「ァァァァァアアアアレスト・モメントオオオオオ!!!」

 何度も死にかけたことで完璧に杖無しで唱えられるようになったクッション呪文の効き目は抜群だった。

「あ……っぶな……」

 スピードが落ちて余裕ができ、体制を整えながら地面に降り立った魔女は、鼓動が突然戻ってきたかのように感じた。ドンドコドコドコと太鼓のようになっている心臓を収めていると、頭の上が突如火を吹いた。

「あ、オマエちょうどいいところに。ミシェル伯爵、探してきてくれない?」

 

 だが、不死鳥は動かない。見合う対価を示さなければ簡単には動いてくれない。

「……三種のベリー盛り合わせ」

 

 

 「よっこらしょ! およ、ルビウスくん。心配かけてごめんね」

 カバンから出てくると、しょんぼりした様子のハグリッドと目が合い、魔女は無事を伝えた。

 「その鞄、どうなっちょるんか?」

「これは、『検知不可能拡大呪文』がかかってる。友達に15歳のときにもらったやつなの」

「ほー、ずいぶん長いこと使っちょるんですな」

「そーう。お気に入り」

 飼い主を見つけてころころ転がってきたパフスケインを一匹ずつブラッシングし始めた魔女は、もちもちほっぺたがみるみる痩せていき、美形の黒人青年になった。

 「はい並んでローリエ、シナモン、クミン、セージ……あれパセリ、いつ登ったの?」

 パセリと呼ばれた他より少しもじゃもじゃとした毛のパフスケインは、ハグリッドの肩の上でご機嫌そうに日向ぼっこしていた。

「パセリはね、高いところが好きだけど気難しいんだ。気に入られたねぇルビウスくん。よかったねぇ」

 

 「ハグリッドー! せんせーい!」

「お、来たみたいだね」

「あー! パフスケインだあ!」

 わらわらと寄ってきたグリフィンドールとスリザリンの4年生を二人は笑顔で迎えた。

 

 「先生、この子可愛い! なんて名前なの?」

「ナツメグ。そっちはタイムであっちがエシャロット!」

「先生、なんでスパイスの名前を付けてるんですか?」

「匂いが似てるの。だからバジルは3匹、ローズマリーは2匹、セロリーシードは6匹いるよ」

 すごーい、見分けつかない、と口々に言う中、スリザリンの女の子がひとり、パフスケインの毛に顔を埋めていた。その様子を見て、魔女は「ポピーちゃんそっくりだな」と微笑ましく思っていた。

 

 「……ほんとだ。シナモンみたいだ」

 毛から顔を上げたスリザリンの女の子、パメラ・カークパトリックはそう呟く。大発見、とでも言うかのようにしみじみと抱えた「シナモン」を見つめた。大きな瞳とふわふわの毛並みは、やはり可愛らしい。

「ふふ、ふふふふふふふ……」

 撫でていると、自然と笑みが溢れてくる。

 

 そんなパメラの様子を、スリザリンの男の子たちはニヤニヤしながら見ていた。

「見ろよ、カークパトリックのやつ。パフスケインの匂いとか、わかるわけないのにな!」

「本当にな! あいつも、ほんとは純血なんかじゃなくて、パフスケインなんだろうな!」

 ゲラゲラと笑っている男の子たちと笑われているパメラを、遠巻きに見ていることしか出来ない内気なグリフィンドールの男の子、アルゴ・ブライアン=ブラックは「ハグリッドでもあの先生でもいいから、どちらかが気づいてくれやしないか」と祈っていた。

 

 「ッヒィ⁉︎ な、何……?」

 突然、足に絡みついてきた何かに驚き、アルゴは悲鳴を上げた。

「ね、猫? でもなんか不細工だな……」

「ニーズルよ」

「わあ⁉︎」

 目の前に突如現れたパフスケイン、を頭に乗せたままパメラがニーズルを抱き上げた。

「その子、ニーズルよ。猫に似てるけど猫じゃない。悪いものに気づく、とっても賢い魔法生物なのよ」

「あ、うん。わかった、わかったけどカークパトリック、あの、頭の」

「この子、シナモン」

「……ウン」

 続かない会話に、とうとうアルゴが折れた。

 

 「授業を始めるぞ! 集まっちょくれ!」

 ハグリッドが皆に呼びかけ、わらわらと2寮の4年生たちが集まってきた。その周りを跳ねたり、転がったりしながらパフスケインたちがついてくる。パメラとアルゴの周りには5匹のパフスケインとニーズルが伴っていた。




私たちが使えるのは「アレスト・モメンタム」ですが、「死の秘宝」でハーマイオニーが使ってたのは「アレスト・モメント」だったので、今回はそっちにしました。

「なんか二人生えてきた」って思ったことでしょう。オリキャラです。
では紹介しましょう。

パメラ・カークパトリック Pamela Kirkpatrick
純血、スリザリンの女子生徒、4年生。魔法生物>>>ヒトの第二のポピー・スウィーティング。
別にリストアップされてなくても純血の子はいるし、なんならポッター家も純血(ハリーは半純血ですが)です。「ポッター」という名字がマグル界にもいるのでリストに載ってない(公式)。
「最も信頼のおけるリストと言われている『純血一族一覧』を匿名で編集した人物は、ポッター家をさかのぼると汚れた血を持った人物がいるのではないか、と疑っていたのよ」(by J.K.ローリング)

アルゴ・ブライアン=ブラック Argo Bryan=Black
半純血、グリフィンドールの男子生徒、4年生。周りをよく見ているが、助けには入れないタイプ。ブラック家の血が入ってますがシリウスとはだいぶ遠いです。勘当された人たちの子孫と考えていただければ。

次回!もふもふスリザリンパート2‼︎ デュエルスタンバイッ!
あとがき長くなってすみません
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