やっと出来た!
今回の話は昔読んだ神同人誌に影響されて書いたssになります。すごく素敵な作品で、もう10年以上前に読みましたが今でも実家に保管してあります。
投稿頻度が落ちてしまっていますがこれからも少しでも多くのぼ虹を書けるよう頑張っていきます!
ぼっちSide
「リョウ先輩これやりましょうよぉ!」
「えー……」
今日もいつも通りスタ連に来るとリョウさんと喜多ちゃんが何か騒いでいた。どうしたんだろう?
「おはよーぼっちちゃん」
「あ、虹夏ちゃん。おはようございます。な、何かあったんですか?」
「あーあれね。なんか流行りのおまじないの話っぽいよ?」
「おまじない、ですか?」
詳しく話を聞いてみると、どうやら寝る時に互いに枕の下に相手の写真を入れておくとお互いの夢が繋がって待ち合わせが出来るんだとか。
「夢の中で会えるなんて素敵じゃないですか! 試しにやってみるだけですから!」
「夢の中でくらい一人でいたいんだけど」
「で、そういうの大好きな喜多ちゃんがリョウを誘って、リョウが渋ってるって訳だよ」
「な、なるほど」
確かに喜多ちゃんこういうの好きそうだもんね。でも私としてはリョウさんの夢の中でくらい一人でいたいって気持ちは分かるなぁ。ここ最近はバンド関係で人と会う機会が増えたから気疲れが……。やっぱりリョウさんは私の仲間……。
「駅前に新しく出来た喫茶店のカレー奢りますから!」
「良しやろう」
という事は無かった。
「いやいや喜多ちゃん。リョウはね、どうせ成功なんかしないけど喜多ちゃんが交換条件に奢るって言うのを待ってたんだよ。そしたら写真を入れるだけで奢ってもらえるんだから」
「計算高いリョウ先輩素敵です! それに夢の中でデート出来て、現実でもデート出来るなんて最高だわー!」
さ、流石喜多ちゃん。ポジティブな上に盲目過ぎる……! 虹夏ちゃんも呆れて「もう好きにして」って目をしてるし。
「じゃあじゃあ私が写ってる写真持ってないでしょうからすぐ送りますね! あ、でも折角だからお化粧完璧にしてから自撮りを……!」
「郁代の写真なら持ってるから送らなくて良いよ」
「そうなんですか!? 流石リョウ先輩! ……あら? でもリョウ先輩に写真撮ってもらった覚え無いですけどいつ撮ったんですか?」
「えっ、あ、しまっ……」
リョウさんが冷や汗をかいて慌てだす。どうしたんだろう?
「あのね喜多ちゃん、リョウは素直に相手の写真撮るタイプじゃないから自分が良いと思ったらコソッと……」
「郁代早く練習行くよ!」
「誤魔化す為に私の名前をイジらないで下さい!」
リョウさんがバタバタとベースを持ってスタジオに行って、喜多ちゃんが追いかけていく。……あんな反応するリョウさん珍しい。
「リョウは欲望には素直だけどこういう時は素直じゃないからねぇ。カレー食べたかったのも本心だろうけど、喜多ちゃんとお出掛けしたかったんだよきっと」
「そ、そうなんですか」
「そうそう。でも練習しないといけないのは本当だから私達も行こうか」
「あ、はい」
「よーし! じゃあ今日の練習はここまでにしようか!」
「はい! お疲れさまでした!」
「お疲れ。ぼっちもかなり音合わせられるようになってきたね」
「あ、ありがとうございます」
うへへ、リョウさんに褒められちゃった。
「じゃあ帰ったら早速おまじないの準備しましょうねリョウ先輩!」
「うん。でもその前にうちに寄ってご飯作って」
「はい! 何がいいですか?」
「カレー」
「分かりました! じゃあ買い物して行きましょう!」
カップルみたいな会話をしながら帰っていくリョウさんと喜多ちゃん。……おまじないの代わりにご飯奢るのにその前にもご飯作らせるんだ……。
さてと、じゃあ私もそろそろ……。
「ごめんぼっちちゃん、ちょっといい?」
「あ、はい? なんですか?」
帰り支度を始めると虹夏ちゃんが呼び止め来てた。何だろう?
「えーっと、さ。さっき喜多ちゃんが言ってたおまじないなんだけど……」
「おまじない……? あ、夢で待ち合わせが出来るっていう……」
「う、うん。それさ、私もやってみたいなー、って思って」
「あ、そうなんですね」
虹夏ちゃんって結構現実的だからこういうの乗らなさそうだから興味ないのかと思ってたけど、喜多ちゃん程じゃないとはいえやっぱり陽キャだし好きなのかな? でも誰とするんだろう? リョウさんは喜多ちゃんとするみたいだし、やっぱり店長さん? でも店長さんもこういうの興味無さそうな気がするけど。
「それで、さ。ぼっちちゃんとしてみたいなー……、なんて思って」
「あ、私とですか」
へー、私と……。………え!?
「私とですか!?」
「すごいタイムラグがあったね」
だ、だって私みたいなミジンコと夢の中でまで会うなんて絶対時間の無駄だし、まさかご指名されるなんて思っても無かったから……!
「ね、ぼっちちゃんお願い。ちょっとしたお遊びみたいなもんだから」
「で、でも夢の中でまで私に会いたくないでしょうし……」
「会いたいけど?」
「ヴェ!?」
虹夏ちゃん猟奇的なまでに物好きすぎる……!
「それともぼっちちゃんは夢の中でまで私と会いたくない?」
「そ、そんなことありません! 虹夏ちゃんとなら24時間、おはようからおやすみまで一緒にいたいです!」
って、なんか勢いに任せてとてつもなく気持ち悪い事言っちゃった! 私と24時間とか一体なんの罰ゲーム!?
「……えへへ、そっか」
あ、あれ? でも虹夏ちゃん笑ってる。取り合えず嫌がられてはなさそう?
「じゃあ問題ないよね! 早速今日の夜やってみよう!」
「う、は、はい……」
ま、まあどうせこんなの成功しないだろうし、やってみるだけなら良いか。
「ぼっちちゃん私の写真持ってないよね? 折角だから一緒に撮っちゃおうか」
「あ、はい」
虹夏ちゃんがテーブルにスマホを立てて撮影の準備をして、私の隣に並ぶ。
「ほらぼっちちゃん表情硬いよ。折角ツーショットで撮るんだから」
「う、でも……」
隣に並ぶ虹夏ちゃんから良い匂いがして緊張して固まっちゃう……!
「もう、仕方ないな。じゃあ……」
「に、虹夏ちゃん!?」
虹夏ちゃんが私の腕に抱き着いてきた!?
「せめて思い出に残る写真にしたいからね。ほら、もうタイマーの時間になるからスマホの方向いて」
「は、ははははい……!」
虹夏ちゃんの匂いがダイレクトに! しかも腕に虹夏ちゃんの柔らかい膨らみが当たって最高……。大きさも虹夏ちゃんの性格に似て慎ましいサイズで。
「へし折るよ?」
「ごめんなさい!!」
あだだだ! 組んでる腕にすごい力が……!
「まったくまったく。油断するとロクな事考えないんだから」
普通考えてる事なんて分からないと思うんですが……。で、でも虹夏ちゃんのおっぱいなら慎ましいサイズでも大好きなんだよなぁ。
「……もう」
「あばっ」
虹夏ちゃんがもっとおっぱいを腕に押し付けてくれた!?
「ほら、そろそろスマホの方向いて。はい、チーズ」
「ち、ちーず!」
カシャッ、っとスマホが鳴る。
虹夏ちゃんが写真を確認して私に見せてくれた。……んだけど、私締まりの無さすぎる顔してる。虹夏ちゃんのおっぱいが気持ち良すぎたとはいえいくらなんでもこれは……!
「ぼっちちゃんのエッチ」
「ぐへぇっ!!」
「はい、ぼっちちゃんのロインに画像送ったよ。家で印刷できたよね?」
「は、はい」
「家に帰ったらすぐ印刷してね。夢の中で待ってるから会いに来てね。約束だよ?」
「は、はい! 必ず行きます!」
「うん! じゃあ夢の中で待ち合わせね!」
そして虹夏ちゃんとの2ショット写真をニヤニヤとご飯中、お風呂中、ギター中ずっとニヤニヤと眺めていたらいつの間にか寝る時間になっていた。ふたりからキモイとか散々言われたような気がするけど覚えてない。
もう印刷も済ませたし後はこの写真を枕の下に入れて寝るだけだけど、こんなおまじないが成功するわけ無いよね。……でも虹夏ちゃんと約束したもんな。会いに行くって。下手くそなウソばっかり付く私だけど虹夏ちゃんとの約束だけは何があっても護らないとだよね。そ、それに夢の中でくらい一人でいたいって気持ちは確かにあるけど、虹夏ちゃんとならいつでも一緒にいたいって気持ちも本当だし。
じゃあ早速写真を枕の下に入れて、布団に潜ってはいお休み!
「……ん、あれ? ここ、は……?」
目を覚ますといつも通りの私の部屋……? 結局夢を見ずに普通に起きちゃったのかな? 普通に考えれば夢の中で待ち合わせ何か出来る訳ないもんね。虹夏ちゃんとの約束を守れなかったのは悔しいけど、こればっかりは仕方ないか。
それにしても何だか薄暗いな。朝じゃないみたいだけど、時間は……。
「あれ? スマホが無い」
枕元に置いたと思ったんだけどな。取り合えずリビングに行こうかな。時間も見たいし、喉も乾いたからついでにお水でも飲もう……。
そう思って襖を開けると、
「……え?」
目の前に広がったのはモノクロの世界に生い茂った原っぱ、薄暗い空、どこに続いてるのか分からない川、そして空には虹だけが鮮やかな色で掛かっていた。
「ど、どこ!?」
も、もしかして本当におまじないが成功したの!? そんなバカな!
で、でもこれなら虹夏ちゃんとの約束も守れる。こうなったら何とかして虹夏ちゃんの所に行かなくちゃ。
「でもどうやったら虹夏ちゃんの所に行けるんだろう」
見渡す限りモノクロの世界。まさに私を分かりやすく表してる世界だ。でも虹だけが綺麗に輝いてるのは何でなんだろう。
とにかく歩いてみよう。歩いてたらその繋がってる筈の虹夏ちゃんの所に行けるかもしれない。
そう思ってひたすらに歩いたけど景色は変わらず、また私の家まで戻ってきてしまった。
「どうしよう……」
夢の中だからなのか疲れたりはしないけど、闇雲に歩いてても虹夏ちゃんの所には行けない気がする。
……そうだ、私の方から行けないんなら虹夏ちゃんの方から来てもらえないかな? と、とにかく大声で虹夏ちゃんの名前を呼んでみよう。もしかしたら聞こえるかもしれない。
「に、虹夏ちゃーん!! 私来ましたよー! どこですかー!」
虹夏ちゃーん! と何度も名前を呼んでみる。すると、虹の方角から原っぱを歩きながらこっちに向かってきてる人影が見えた。
「ぼっちちゃーん!」
「に、虹夏ちゃん……!」
良かった、私の声聞こえたんだ……!
虹夏ちゃんが私の方に駆け寄ってきて私に抱き着いた。わわ、何だかすごく積極的。幸せぇ……。
「うへへ、会えてよかったです」
「ぼっちちゃんが呼んでくれたからね。ありがとね」
頬にチュッとキスをしてくれる虹夏ちゃん。き、今日の虹夏ちゃん本当に積極的……!
「で、でも良くここまで来れましたね? 私も頑張ったけど全然そっちに行けなかったのに」
「あー……うん。ぼっちちゃんの事だから諦めちゃうかもなって思ってさ。私の方からこっちに行こうと思って色々してたら着いたんだ」
「え、あ。そ、そうなんですか」
「うん。じゃあ会えたことだし何しようか? 折角夢の中なんだから何でもしていいよ?」
「な、なんでも?」
「うん。現実じゃないから本当になんでも」
虹夏ちゃんが私の手を取って虹夏ちゃんの頬に当てる。
「ににに、虹夏ちゃん!?」
「私としたいこと、ない?」
ひええ……、虹夏ちゃんのほっぺスベスベ……。こ、このまま虹夏ちゃん見てるとキスとかしちゃいたくなっちゃうかも……!
「良いよ?」
「え?」
虹夏ちゃんが空いた手で私の頬に手を添えて顔を近づける。わ、わ……!
「ま、待ってください!」
「あ……」
距離を取ると寂しそうな顔をする虹夏ちゃん。うぅ、胸が痛む。でも、でも……。
「あ、あなたは私の夢の中の虹夏ちゃん、ですよね?」
「……どうしてそう思うの?」
「に、虹夏ちゃんは、確かに私が頼りないところをいっぱい知ってますけど、でも」
「私の事、いつも信じてくれるから。だから今も私の事、夢の中で待っててくれてる筈、だから」
だから、会いに行かないといけないんです。
そう言うと、夢の中の虹夏ちゃんが微笑んで
「良く出来ました」
と、優しく言ってくれた。
「ちぇー、気付かれちゃった。ぼっちちゃんが呼んでくれたから来たのになー」
「う。ご、ごめんなさい」
「えへへ、良いよ。じゃあ今度こそ会いに行こうか?」
「で、でも行き方が……」
「大丈夫。夢の中での動き方はは夢の中に住んでる私の方が詳しいから」
「あ、ありがとうございます」
「うん。それじゃあ私についてきて?」
「あ、はい」
虹夏ちゃんが私の手を握って進んでくれる。そしてしばらく川沿いを歩いていると大きな葉っぱを浮かべた。
「ほら、これに乗って川を進んだら向こうに行けるよ。私も向こうの入り口まで着いていくから」
「う、うん」
虹夏ちゃんに手を引かれて葉っぱに乗ると、ゆっくりと川を進み始める。
「あ、あの、ありがとうございます。これで何とか虹夏ちゃんのところに行けます」
「気にしないで。大好きなぼっちちゃんの為だからね」
「へ、へへへ……! 大好きだなんて……!」
現実の虹夏ちゃんも優しいけど夢の中の虹夏ちゃんはもっと優しいです……!
「それはそうだよ。私はぼっちちゃんが思う『こうであってほしい伊地知虹夏』なんだから」
「こうであってほしい、ですか?」
「うん。……ここは夢の中だから、ぼっちちゃんが望んでる私なんだ。だからこの世界にはぼっちちゃんが望んでるリョウや喜多ちゃんもいるんだよ」
「そ、そうなんですね」
だから虹夏ちゃんも呼んだらすぐ来てくれたんだ。……ん? という事は虹夏ちゃんがほっぺにキスしたり、唇にまでキスしようとしてくれたのは私が望んでるって事……!? 私みたいなミジンコがそんな恐れ多い劣情を虹夏ちゃんに抱くなんて万死に値する!
「ふふ、普段の夢の中ならどんなことしてるんだろうね?」
「な、ななな……!」
頬を赤く染める虹夏ちゃん。一体普段何をしてるんだ夢の中の私!!
「夢の中の事は大半は忘れちゃうからね。覚えてなくても仕方ないよ。……でもさ」
「は、はい?」
「ぼっちちゃんにこうして夢の中の私がいるって事は、本当の虹夏ちゃんの世界にも夢の中のぼっちちゃんがいるってことだよね」
……え?
「虹夏ちゃんの夢の中の、私?」
「いても不思議じゃないでしょ。こうして私がいるくらいだし。もしかしたら私がしようとしたみたいに本物を装って今頃向こうも一緒にいるかもね。それも」
「それが夢の中の住人とは気づかずに、ね」
「気付かずに……」
「……ねぇ、どうして私が最初本物を装ってたと思う?」
「え? えっと……」
「行ってほしくなかったんだ。いつもみたいに、私の傍にいてほしかったんだ」
「え、あ……」
「……きっと向こうも楽しくやってるよ。だからさ、いつもみたいに私と一緒にいてくれないかな? ぼっちちゃんがしてほしい事全部叶えてあげる。だから……」
「ご、ごめんなさい」
「……即答なんだね」
だ、だって今日は虹夏ちゃんと約束したから。この夢の虹夏ちゃんと一緒にいたら絶対幸せな夢が見れるかもしれないけど、虹夏ちゃんとの約束は何があっても守らないといけない。だって。
「に、虹夏ちゃんは私の一番大切な人、なので」
「……そっか、じゃあ仕方ないね」
「ご、ごめんなさい」
「うぅん。ぼっちちゃんが虹夏ちゃんをどれほど大切に思ってるかはちゃんと分かってるから。なんたって、あれだけ分かりやすく綺麗な虹が掛かってるくらいだからね」
「え? 虹?」
「うん。あの虹はね、ぼっちちゃんが虹夏ちゃんと出会った時に出来たんだよ。それまではこのモノクロな世界がただ広がってるだけだったの。私もその時に生まれたんだ」
「そ、そうなんですね」
な、なんだかそれすっごく恥ずかしい。虹夏ちゃんがこっちに来なくて本当に良かった。
「さっきは意地悪言ってごめんね? きっと虹夏ちゃんも本当のぼっちちゃんを待ってくれてるよ」
「は、はい」
「……さぁ、着いたよ」
「え? あ、本当だ」
気が付けばいつの間にかさっきのモノクロの私の世界とは違う、ちゃんと虹夏ちゃんらしい色んなものが鮮やかな世界に辿り着いていた。というかここ、STARRY? さっきまでの川と葉っぱは?
「このSTARRYを出たら多分案内してくれる人がいるから」
「あ、分かりました」
「じゃあ私はここまでね」
そう言うと私の夢の中の虹夏ちゃんが薄くなっていく。あっちに帰るんだ……。
「あ、あの!」
「ん? なぁに?」
「あ、明日いっぱい遊びましょう! 明日はちゃんとあなたに会いに行きます!」
「……うん! 待ってるね!」
バイバイ! そう言って消えていった。最後は笑顔でいてくれて良かった。ずっと寂しそうな顔してたから。夢の中の虹夏ちゃんでも笑顔でいてほしいもんね。
さてと、ここを出たら案内してくれる人がいるって言ってたけど、店長さんとかかな?
STARRYの出入り口のドアノブに手を掛けて開ける。するとそこには、私の世界の様に草原が広がっていて、だけど夜空には無数の星が煌めいていた。そして私を待っていたのは。
「あ! ひとりちゃんね。お待ちしてました」
「うひぇ!? え、ど、どちら様ですか!?」
全然知らない優しそうなお姉さんがそこにいた。……あれ? でもこの人どこかで見たような……。
「虹夏と星歌の母です。初めまして、ひとりちゃん」
「え!? 虹夏ちゃんと店長さんのお母さん!?」
そ、そうだ。前に虹夏ちゃんの部屋で見せてもらった写真の人だ。子供の頃の虹夏ちゃんと学生の頃の店長さんと一緒に写ってたあの人だ。
「うふふ、まぁ私は虹夏が思い描いてるだけの存在なんだけどね。さぁ、虹夏の家に案内するわ」
「は、はい。よろしくお願いします……」
ま、まさか虹夏ちゃんのお母さんに案内してもらう事になるなんて。失礼の無いようにしなきゃ……!
「あらあら、そんなに固くならないで。さっきも言ったけど本物ではないんだから」
「い、いやでも……」
「それよりも案内してる間、外での虹夏の話とか聞かせて貰えないかしら。ひとりちゃんが見てる虹夏の話を聞きたいな」
「は、はい! え、えっと虹夏ちゃんは優しくて、天使で……」
虹夏ちゃんのお母さんに案内してもらいながら虹夏ちゃんとのお話を沢山した。虹夏ちゃんと出会った時の事、虹夏ちゃんがすごく頑張ってる事、虹夏ちゃんがお姉ちゃんである店長さんが大好きな事、夢の為に一生懸命な事。
「えっと、つまり。虹夏ちゃんはすごく素敵な人、です!」
「……うふふ。、そう。ありがとう。虹夏の事、たくさん見てくれて」
「い、いえ。そんな」
普段面倒を見て貰ってるのはむしろ私の方なので……!
「ひとりちゃんは虹夏の事が大好きなのね」
「あびゃ!? そ、そんな、好きだなんて! 私みたいなのがそんな恐れ多い……!」
そ、それに好きとかそういうの良く分からないし。す、すごく、それこそ世界で一番大切だってくらいに大事なのは間違いないけど、好きとかそう言うのって今まで経験がないから分からないって言うか……! あ、で、でもさっき夢の中での虹夏ちゃんがキスしようとしたのって私の望みなんだよね。
「う、うぅ……!」
「……いつかきっと自分で分かる日が来るわ。だから私が今言えるのは」
「虹夏の事、よろしくお願いします。……って事だけね」
まぁ、本物じゃない私が言っても仕方ないんだけどね。っと虹夏ちゃんのお母さんが微笑む。
「そ、そんな! ……で、でも、私なりに虹夏ちゃんの事、ずっと支えます」
「ええ。ありがとう。……さぁ着いたわ。ここよ」
「え? でもここって」
STARRYの上の家じゃなくて、一軒家? ここは?
「ここはね、昔私達家族が住んでた家なの」
「ここが……」
「ここで虹夏が待ってるわ。首を長くして待ってるわ。会いに行ってあげて」
「は、はい」
インターホンを鳴らす。すると玄関の向こうからバタバタと走ってくる足音が聞こえて来て、そして。
「ぼっちちゃん、いらっしゃい! 待ってたよ!!」
満面の、どんな星よりも、虹よりも、綺麗な笑顔で私を虹夏ちゃんが出迎えてくれた。
「……んがっ」
……あれ? ここ、私の部屋? 朝? やっと虹夏ちゃんに会えたのに起きる時間になっちゃった?
というか、あれって本当に虹夏ちゃんと夢が繋がったのかな? 普通に考えたらただの夢だと思うんだけど……。
「……あれ? ロイン?」
枕元でロインの通知音がなった。誰だろうこんな朝早くに。……って、虹夏ちゃん? えっとメッセージは……。
『今日ぼっちちゃんの学校の放課後にそっちに行くね』
「やっほー、ぼっちちゃん」
「に、虹夏ちゃん。お待たせしました」
学校が終わって校門へ向かうと約束通り虹夏ちゃんがいた。
「す、すみません、今日掃除当番だったので遅くなりました」
「うぅん、気にしないで。喜多ちゃんは?」
「あ、先に行きました。リョウさんと会う約束があるみたいで」
「そっか。まぁこの後STARRYで会えるか」
じゃあ行こうか。と虹夏ちゃんが言って手を繋いでくれる。うへへ、虹夏ちゃんの手、小さくて柔らかい……。
「ねぇぼっちちゃん」
「あ、は、はい!」
いけないいけない。また考えてる事が読まれちゃう。
「昨日の夜、どうだった? 夢は見た?」
「え、えっと、はい」
「どんな夢?」
「えっとですね」
虹夏ちゃんに夢の内容を話す。夢の中で違う虹夏ちゃんに会った事。私の夢の世界の事。虹夏ちゃんのお母さんに会った事。そして最後に。
「虹夏ちゃんが昔住んでたって言う、一軒家で虹夏ちゃんに会いました」
「……そっか。ねぇぼっちちゃん。私の話も聞いてくれる?」
「あ、はい」
「私はね、夢の中でぼっちちゃんが来てくれるのを待ってたんだ。だけど中々来なくて。やっぱり無理なのかなって思ってたんだけどそしたらインターホンが鳴って、開けるとそこには可愛い私服を来たぼっちちゃんがいたんだ」
「か、可愛い私服!?」
「うん、ぼっちちゃんのお母さんチョイスの。最初はオシャレして来てくれたのかなって思ったんだけど、なんていうか、せ、積極的、っていうか……」
積極的!? 一体虹夏ちゃんの中の私は虹夏ちゃんにどんな無礼を働いたんだ!?
「だから本物のぼっちちゃんじゃないなって気付いたの。それで今日は待ち合わせがあるって言ったらすごく寂しそうな顔して帰っちゃって。それからまた暫く待ってたら」
「本物のぼっちちゃんが来てくれたの」
虹夏ちゃんが立ち止まって私に向き合う。
え? じゃあ昨日見た夢は本当に虹夏ちゃんと会えてたって事?
「ありがとう。約束守ってくれて」
「あ、い、いえ! 虹夏ちゃんとの約束ならどんなことがあっても守るのが私の生まれ持っての使命なので!!」
「ふふっ、大袈裟すぎるよ」
「へ、へへ」
ほ、本気でそう思ってるんだけどそれは言わないでおこう。
「でも会ってすぐ目が覚めちゃったのは残念だったな。いっぱい遊ぼうと思ったのに」
「そ、そうですね」
「……でもあのおまじないはもうしない方がいいかもね。あっちのぼっちちゃんが凄く寂しそうだったし」
「……ですね」
私も、あっちの虹夏ちゃんと約束したもんね。会いに行くって。
「だからさ、ぼっちちゃんとはちゃんと現実で。ぼっちちゃんとの大切な思い出はこっちで沢山作りたいしね」
「わ、私も。虹夏ちゃんの夢は、ちゃんと現実にしたいです」
「うん、ありがとう。それに夢なんて繋げなくても」
虹夏ちゃんが私を抱きしめる。
「こうして、ちゃんと繋がってるもんね」
「……はい」
いつもなら溶けちゃうところだけど、それ以上に胸が温かくて、私も虹夏ちゃんを抱きしめた。
そしてSTARRYに着くと。
「リョウ先輩ごめんなさい! 私も知らなかったんです!」
「うるさいバカ郁代。聞きたくない」
そっぽを向くリョウさんに喜多ちゃんが縋りついていた。……何かリョウさん恥ずかしがってる、ていうか、珍しい表情してる?
「駅前のカレー沢山おかわりしていいですから!」
「そんなんじゃ釣り合わない。郁代に嵌められた」
「ちょっとちょっと、二人ともどうしたのさ」
「あ! 伊地知先輩良いところに!」
虹夏ちゃんが二人の仲裁に入る。
「昨日私達が話してたおまじないの話あったじゃないですか?」
「ああうん、あれね」
虹夏ちゃんの視線が泳ぐ。まさか私達もやってたなんて言えないもんね。
「それであのおまじないなんですけど、昨日私達成功したんです」
「そうなの? 良かったじゃん」
「はい、それは本当に良かったし、嬉しいんですけど。でも今日学校で知ったんですけど、あれって誰でも成功するわけじゃないんです」
「え? そうなの?」
そうなんだ。私と虹夏ちゃんも成功したし、誰でも出来るって訳じゃないのか。
「何か条件でもあったの?」
「はい、それがあのおまじない……」
「本当に想いあってる人同士じゃないと出来ないらしいんです!」
「……え?」
……え?
「それで、あの、意図しない形で私達が両想いって分かっちゃって、それでリョウ先輩が私に嵌められたって拗ねちゃったんですよう!」
私は常日頃からリョウ先輩にアピールしてたからともかくなんですけどリョウ先輩は違うから……、って伊地知先輩聞いてます? 顔赤いですよ? って喜多ちゃんが言ってるけどそれどころじゃない。
え? 両想いじゃないと成功しない? だって昨日私達おまじない成功したよ? つまり、それって……。
虹夏ちゃんの方を見る。虹夏ちゃんと目が合う。すると。
「み、見ないで……!」
首まで真っ赤にした虹夏ちゃんが、そこにいた。