ゴブリンスレイヤーが廃墟の首都(多分東京)でゴブリンを退治して帰るお話。所持アイテムは色々捏造です。

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「ゴブリンか」
「インクブスか」

「「ん?」」


スレイヤーズ

「ゴブリンか」

 

悲鳴に従って歩を進めていた。意識は未だにはっきりしていないが、下品な笑い声に戦意-否、憎悪が急速に回復していく。夜道にしては妙に明るく、闇に慣れた目でなら追撃は容易だった。

 

「なんだ?」

 

 追われている女は、随分と光り輝いて見えた。追う影は全部で七つ、いずれも小鬼である。酷く傷んだ石畳-闇色の継ぎ目のない石畳の上を静かに追う。足音だけは誤魔化せないが、先を行く集団の方がうるさかった。夜目を駆使して地形を把握する。城もどきの廃墟、通りに均等に建てられた柱、白または灰色の両側の石畳、所々残った低い柵。戦うにしても条件は悪い。

 

 

 女が道の穴に躓いて転ぶ。

 

「どうしたぁ」

 

「鬼ごっこはおわりかぁ?」

 

どういうことだ、薄汚れた鎧の男は疑問を浮かべる。奴らが人語を話している。いや、それ以前にこの「音」は聞いた記憶がない、にも関わらず意味ある言葉として分かる。これは何らかの「奇跡」の類いか。

 

「こないで!っ」

 

どうにか上体を起こした女がクロスボウらしきものを構える。それと同時に、彼は自分が認識されたと気づいた。ゴブリンの背後に歩み寄る、幽鬼のごとき鎧に女は視線を向けてしまった。

 

「ああ?」

 

振り向いた小鬼とは違う奴に彼は小瓶を投げつける。ギャ、と悲鳴を上げて二匹の小鬼が炎に包まれた。

 

「これで二…いや」

 

「ああ、畜生」

 

「あちちち、クソっ消えねえぞ」

 

炎に苦しんでいるようだが死に至りそうもない。ただのゴブリンなら転げまわっていずれ焼け死ぬのだが。

 

「どっちにせよただの火だ!」

 

「なんだこいつは」

 

おそらく何らかの加護であろう、厄介だ。

 

「やっちまえばいっしょだ!」

 

景気付けと言わんばかりに一匹が突出する。小鬼を見てゴブリンスレイヤーは二歩下がった。弱腰の鎧姿に嘲笑しながらゴブリンは踏み込んでしまった、僅かな窪みに。

 

「グギャ」

 

転びかけた小鬼の頭に逆手で小剣を突き落とすが、やはり手応えがおかしく刺さらない。とはいえ完全に姿勢を崩せたので盾の縁で殴りつけ、手前に引っかけ倒す。たまらず棍棒を手放したのを見て彼は気付いた。左足で棍棒を後方に蹴り飛ばすと自身も飛び退った。ゲラゲラと小鬼どもがドジを踏んだ仲間を哂っている。

 

「この野郎!」

 

カランとくたびれた小剣を投げ捨てると、転がる棍棒を拾い上げる。

 

「あ?」

 

目の前に転がる小剣に小鬼が疑問の声を上げた。ゴブリンスレイヤーは棍棒を手にしている。

 

素早い動きで小剣を拾い上げると、小鬼は突撃した。笑い顔のまま剣を彼の胸甲に突き立て、そして使い古しの剣が折れた。

 

「あ」

 

鈍い音とともに小鬼の頭が潰れる。

 

「これで一。やはり加護か」

 

加護の為にこちらの武器は通らない。小鬼の持つ武器は同様の加護で打ち消すか、そもそも加護の対象外といったところか。

 

「ふざけやがってっ」

「やろう!」

 

燃えたままこちらに二匹が向かってくる中、傍観する一匹の胸に矢が生えた。女が放った矢だ。

 

「や、やった」

 

二、と声に出さず数える。状況は依然として不利だ。いつものようにあらゆるものを利用した戦いが出来ない。とはいえ、使えるものがない訳ではない。既に目くらましは使っているようなものだ、ただ段差を後ろ足で乗り越えるだけ。追ってきた小鬼は無様に蹴躓いた。

 

「これで三」

 

頭が潰れる音にあとの小鬼の足も止まる。ゴブリンスレイヤーはあまりにも自然にかがむと、死んだ小鬼から短剣を取り上げた。

 

「四」

 

思考停止した小鬼の喉に短剣が突き立っていた。パクパクと血の泡を口から吹き出し、この小鬼も激しく燃え盛る。絶命したことで加護が切れた、と彼は判断した。棍棒を拾い直し立ち上がる。

 

「なんなんだこいつは!」

 

「ただの家畜がっ」

 

女は矢が尽きたのか、じりじりと向こうへにじり下がっている。自分で逃げてくれるなら幾分楽ではある。三方向から小鬼に飛びかかる瞬間、影が一匹を攫う。

 

「な、あが」

 

巨大な影が小鬼を咥えたまま道の端に降りる。グギャと悲鳴とも何とも言えない声を上げてゴブリンは絶命した。野良仕事で見た虫に似ている化け物が小鬼を貪っている。

 

「五」

 

彼ではない者が数えた。

 

「厄災の」

 

巨大な虫を見たまま凍りつく一匹に躊躇なく棍棒を振り下ろす。

 

「六」

 

最後の一匹は虫とは逆方向の路地へと駆け出していた。狭い道に入る寸前、奴の動きが止まる。

 

「な、ななんだっ!糸!?」

 

その首が飛ぶ。曲がった刀身が月光できらめていた。

 

「これで七だ」

 

抑揚のない声で女が最後の数を上げた。

 

「それで見た分は全部だ」

 

「そうか」

 

彼の報告に女はそっけない返事をした。やはりこの言葉は聞いたことがない、にも関わらず意味が分かる。

 

「ウィ、ウィッチ?」

 

腰が抜けているのか追われていた女が座り込んだまま声を上げた。

 

「そうだ」

 

「あ、あの、化け」

 

「私の使い魔(ファミリア)だ」

 

絶句した女の後に、彼は言葉を続けた。

 

「そうか。良い使い魔だな」

 

あとから来た女-銀髪で赤い目の女は無表情のまま彼を見つめた。はて、何か間違えただろうか?

 

「どうした?」

 

「大体の人間は、ああいった虫が嫌いだ。ましてあそこまで大きいとな」

 

それはそうなのだろう。

 

「野良仕事をしていればいくらでも見る。あの種類なら毒虫でもない」

 

そうか、と女は納得する。

 

「ましてゴブリンを殺すのならば文句もない」

 

「…インクブスだ」

 

「…ゴブリンではないのか?」

 

「…インクブスのゴブリンだ」

 

「やはりゴブリンか。ならば皆殺しだ」

 

『なんなんでしょう、とてもおかしな人に見えるのですが、妙な親近感が湧きます』

 

誰の声か分からない声が聞こえた。周囲を見回すがそれらしい姿がない。

 

「こいつだ、私のパートナーだ」

 

女の指が示した、その肩の上にクモがいた。見たことはあるが随分と大きい。のそのそとよそへ歩いていくハンミョウを見、クモを見る。

 

「偵察にはそちらの方がいいな。ゴブリンの巣穴は狭い」

 

『シルバーロータス、多分皆にはこういう風に見えています』

 

「態度を改めろ、と言いたいのは分かる。だが彼となら仕事は捗りそうだ」

 

「ゴブリンか?」

 

「それ以外も多い」

 

「面倒だ。ゴブリンだけでも多過ぎる」

 

「そうか。まあインクブス狩りに男を連れて行くのも問題があるしな」

 

「そうなのか?」

 

「あのゴブリンを含むインクブスの骸は、男を狂暴化させるガスが出る」

 

「そうか。では早々に退散しよう」

 

一時的には共闘した相手を狂乱のせいで襲うわけにはいかない。

 

「帰り道は?」

 

「分からん。スクロールはある」

 

「気を付けて、お帰りを」

 

「そちらもな。後ろのお前も、気をつけて帰れ」

 

追われていた女が這うように遠ざかる。視界の端で、巨大なアリもやってきて小鬼の骸を運び始めた。あれもこの女の使い魔なのだろう。それらを一瞥して振り返ると、小鬼を追った時とは逆方向に歩く。適度に広い場所であれば良かった。スクロールを広げる。

 

 

 足を踏み出した先は、時間さえ違った。

 

 

 

「随分と遠いところだったようだ」

 

以前聞いた時間の差、というものを思い出した。彼も詳しくは覚えていないが、日の高さに兜の奥で目を細める。

 

「なにはともあれ、ゴブリンだ」

 

視線の先にはぐれの小鬼が映る。彼は戦利品の棍棒を握りしめると、音を殺しながら歩みを進めた。

 

 

 

 

 

「転移用の道具か」

 

すぐに消えてしまったが、彼が踏み出した先から日の光が漏れたのは見間違いではないだろう。

 

『いったいどこにつながったのでしょう?』

 

「分からん。正直この世界とは思えないし、あの異界でもないのだろう」

 

全くない訳ではないがエナの気配をほぼ感じない相手だった。つまり只人だ、それでインクブスを殴り武器を奪い、ともすれば立ち位置や行動を誘導して複数体を屠っている。容貌はまるで古戦場から歩いてきたかのような傷ついた鎧姿で、ウィッチとは違った意味で現実感がなかった。

 

「場数を踏んでいるのだろうな」

 

後片付けの最中にファミリアからテレパシーが届く。新手のようだ。

 

「…なにはともあれ、インクブスは皆殺しだ」

 

『そういう言動は慎んだ方がいいですよ』

 

先ほどの彼の言動を真似ると、パートナーの苦言が飛ぶ。言いたいことは分かるが、少しだけ気分が良かった。

 

 

 




ゴブスレさんの道具類は適当、状況が悪いにしても複数回のダイスロールなんで彼の流儀に合わない戦闘をさせています。まあ相手の武器なら通るだろう、は彼ならすぐ試す筈。

書いてみてなんとなく気付いたけれど、ゴブリンスレイヤーもシルバーロータスも感想レベルで「シミュレートやトレースをしにくい」キャラだなと。大体こうだろう、までは書けるけど「はて?」という違和感がなんか他のキャラより大きいです。

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