こういう能力を持つ人がいてもいいなって
「海原先輩か?」
ある人を探してると烏丸先輩に聞いてみる。
「はい、千佳がお世話になったと聞きまして」
「あの人の世話になる?何かの間違いじゃないか?」
そもそもの前提を疑われてしまった。
「いえ、本部の訓練室で設定操作に困っていたところを一緒に悩んでくれたと」
「それはお世話できてないな。でもそれなら納得できる」
「僕もよく分からなくて、どんな人なんですか?」
千佳が言うのだからいい人だとは思うが、いまいち人柄が掴めない。
「悪い人ではないんだが、なにぶん大雑把な人でな」
「じゃあ、今回も」
「多分、『まかせな!』とか言って、上手くできなかったんだろう」
「ええ・・・、でも聞いたことないんですけど、どこかの隊の方なんですか?」
B級帯にチーム員は知っているのでそれ以外のはずだ。
「修、知らないのか?A級2位の冬島隊だぞ」
思ったより上の隊の隊員だということで驚く。
「なんでそんな人が、千佳に?」
「後輩にいいところ見せたかったとかそんなんじゃないか?」
「聞いてるとあんまりすごい人とは思えないんですが」
大雑把な人に狙撃手が務まるのだろうか。
「何言ってるんだ。狙撃手で唯一弾を曲げる人だぞ」
「そ、そんなこと出来るんですか!?」
「だからA級なんだ」
「先輩たちみたいな専用トリガーの使い手じゃないんですよね?」
「ああ、そうだ。ノーマルトリガーで曲げてる」
「どうやって、そんなことを」
「本人は『気合いだ』って言ってたけどな」
「気合いで曲がるんですね」
「そんなわけないだろう」
「じゃあ、なんで曲がるんですか?」
「それはな」
◇◆◆◇
「ぶぇっくしょい、あぁあ」
「汚いわよ、優」
口うるさいマキリッサに注意される。
「誰かが噂してんのよ!この海原優様の!」
「自意識過剰でキモいわよ」
鋭すぎる刃が刺さるがこんなのノーダメだ。
「ぐすっ。か、歌歩ちゃんに言いつけてやる」
「なっ!それは卑怯よ!」
隊室の扉が開いて当真先輩が入ってくる。
「なに、どうしたのよ?」
「バシリッサ、間違えた。マキリッサが虐めるんです!」
「ああ、いつものやつか」
バカリーゼン当真が私の抗議を流しやがる。
「誰が処刑人バシリッサよ」
「それで、アシクッサはさぁ・・・」
「マジで殺すわよ」
やばい、踏み込み過ぎた。
「ダメだぜ、海原。真木ちゃんを怒らせたら。冬島さんが泣いちゃうだろ?」
「冬島さんなら『俺のために争わないで』って言ってくれますよ!」
「いや、ありえねぇだろ。誰なんだその冬島さんは」
私の脳内イケメン冬島さんが否定されてしまう。
「やっぱりあなたのサイドエフェクト嘘なんじゃないの?本人と合ってなさすぎじゃない」
「あーあ、言っちゃいけないこと言ったぁ!ねぇ、ダメだよねぇ!?」
「俺に聞くなよ。まあ、性格には合ってないな」
みんなして私のサイエフェちゃんを貶してくる。
「だったら私はサイエフェなんて持ってないもん!」
「なんだその略称。センスなさすぎだろ」
リーゼントをアフロに変えてやろうか。
「じゃあ、なんで弾が曲がるのよ」
「気合い、勇気、そして愛があれば曲がるんだよ!!」
「はいはい」
「とうましぇんぱーい、りさーがー」
「だから、俺に振るなっての」
役に立たなすぎだろ。狙撃手か。
「でも開発室の調査で結果出てるんだろ?」
「ええ、間違いなく〝精密操作〟のサイドエフェクトだそうよ」
なんか文句でもあるんかい!!
◇◆◆◇
「〝精密操作〟ですか?」
「ああ、身体を正確に動かせるらしい」
すごい狙撃手向きのサイドエフェクトだ。
「だからA級にいるんですね」
「いや、海原先輩は狙撃センスがあんまりないらしくてな、最初は、並の狙撃手だった」
サイドエフェクトあるからと言って適性があるとは限らないのか。
「そもそもなんで狙撃手に?」
「・・・攻撃手と集合時間を間違えたと聞いたな」
こんなところにも性格の弊害が。
「それで狙ったところに行くのに当たらないのがむしゃくしゃしたらしくてな、弾の飛び出る瞬間にライフルを振ったらしい」
「そしたら曲がったと」
たまたまとはいえすごい発見だ。
「すごいって話になって、いろんな人が試したんだが、曲がらなかったり、曲がっても変な方に飛んで行ったりしてな、そんな不安定なものが使えるわけがないって話になったんだが」
「それで〝精密操作〟なんですね」
ようやく結論に辿り着いた。
「ああ、引き金を引いて弾が出る瞬間に何センチ何ミリと正確に動かして曲げ幅を操作してるんだ」
「遮蔽物があるのに狙撃されたらとんでもない事になりますね」
咄嗟に隠れても、関係ないってことだ。それに狙撃位置が分かりにくくなる。
「まあ、本人が大雑把だから読めたりするからあれなんだが、違ったらもっとやばかっただろうな」
性格が違ったらか。
「でも、その場合は曲げる方法見つけてないんじゃ」
「確かにそうだな」
やっぱり、そんな上手い話はない。
◇◆◆◇
「じゃあ、曲げてみなよ!バイパーみたいに!」
「まあ、それは出来ねぇけどよ」
ほらみろばーか。
「やっぱ愛と勇気だけが友達なんだ!」
「なんでアンパンマンなのよ。成長しなさい、恥ずかしい」
こいつ、マジ絶許。歌歩とのデート写真送ろ。
「あんたにもっとセンスがあれば、こんな当真なんか使わないのに」
「真木ちゃん、俺にもささってるぜ」
センスは磨くものだと、ばあちゃんが言っていた。けどないものは磨けない。空気でも磨くんか?
「新技術を生み出してる時点で、あの出水と一緒だし、他にパクられてない私が1番センスが上でしょ!?」
「他のやつにも使える技術を生み出したのがすげぇと俺は思うけどな」
「その通りね」
あー言えば、こー言う。こいつらとはやってられん。冬島隊解散!
「うー、ばーか、ばーか」
「おい、ついに馬鹿しか言わなくなったぞ」
「幼稚な子供そのものね」
もうだめだ。歌歩ちゃんと帯島ちゃんに癒してもらおう。全肯定してくれるはず。
「そうだ、三雲が海原のこと探してたぜ」
「だれイズだれ」
「なんかチカ子のことで礼が言いたいんだと」
「なに、迷惑かけたの?」
お礼だと言ってるだろうが!
「それもだれイズだれ?」
「ひと間違いじゃないの?」
こいつのボールペンのインク出なくしといてやる。
「ああ、チカ子は雨取千佳のことだ」
「ああ、あのちびっ後輩」
かわいかったなぁ。また癒されたい。
「で、何したのよ」
「設定操作で困ってたから、手伝った。ドヤッ」
「あんたにできたとは思えないんだけど」
「それは・・・気持ちが大事なんだよ」
「むしろ迷惑かけてるじゃない、謝ってきなさい」
いや、なんでやねん!
「ちかちゃんに癒されにいーこお!」
「ちっ、恥を晒さないでね」
これだからバシリッサマキリッサは。
槍でも降らしてやりたい。
あーした天気にしておくれー♪