持たざる少年 作:交渉人
火華の工房は、以前と変わらない場所にあった。
クガマヤマ都市から車で半日程度――地図上には何も記されていない座標。
レイたちは火華のアプリに従い、赤茶けた大地を進む。
レンタルバイクは既に返却していた。
ダグは若干不満そうだったが、今は車両だけで十分だ。
車両が指定座標に到達すると、火華のアプリを操作する。
空間が、揺らぐ。
光学迷彩が解け、移動式工房の姿が現れる。
外壁は無骨な装甲板で覆われ、所々に旧世界の技術が散りばめられている。
「……変わらないな」
マルが呟く。
車両を降りると、工房の奥へ向かう。
「ようこそ、元気だったか?」
火華はいつも作業服姿で佇んでいた。
相変わらずの軽い調子――だが、その目は鋭い。
「……世話になる」
レイが軽く頭を下げる。
「ま、入りな」
火華の隣に、見慣れない人影があった。
少女――いや、少女の姿をした何か。
じとっとした目線で、レイを見ている。
レイは一瞬だけ視線を向けたが、何も言わなかった。
(……仲間か? 前はいなかったが)
火華が椅子に座り、端末を操作する。
「素材売却って感じじゃないな」
「保留にしてた車の強化の話だ。主砲が通じないモンスターがいたんだ」
レイが答える。
「ああ、その件か。……戦闘ログ、あるか?」
レイは端末を操作し、先日の甲殻類型モンスターとの戦闘ログを送信する。
火華は戦闘ログを確認し、にまにまっとした笑顔を浮かべる。
『スーパー最強火華弾使ってるじゃん!!法的問題なし!ドロップがないだけ!最強!!』
火華が画面を見ながら、小さく口笛を吹いた。
「……専用弾使ったんだな」
「……まずかったか?」
「いや、好きに使えばいい」
火華は戦闘ログの確認を続ける。
「こいつか――装甲が硬いな」
「ああ。角度を付けて砲弾を逸らされた」
「なるほど。対策は色々あるが――レーザー砲を使うのがよいだろう」
「レーザー?」
マルが反応する。
「ああ。レーザーなら、装甲の角度は関係ない。貫通力も高い」
火華が端末を操作し、設計図を表示する。
「主砲をレーザー対応に改造できる。ただし――」
「ただし?」
「追加料金が必要だ。流石に大掛かりな改造になるしな」
レイは端末を確認する。
画面には、コロン残高が表示されていた。
820万コロン。
「……いくらだ?」
「全額だ」
火華が即答する。
「……は? 八百万コロンあるんだけど……」
「足りない。残りはサービスしてやる」
レイは黙り、決断した。
(相場は良くわからないが……。悪い取引ではないだろう。また、稼げばいい)
「……やってくれ」
火華が満足そうに笑う。
「よし、じゃあドッグに車両を入れてくれ。あっちだ」
◇
工房の奥にある改造ドッグ。
車両がリフトに載せられ、天井へと吊り上げられる。
火華と助手が車両の下に潜り込み、作業を始めた。
工具の音と、溶接の光が工房の中に響く。
レイたちは待合スペースで、ぼんやりと作業を眺めていた。
「……ちなみに、バイクとかって取り扱ってるか?」
レイがふと尋ねる。
火華が車両の下から声を返す。
「バイクは三千万コロンからだな」
「いや、たっか!」
レイが思わず声を上げる。
「普通だぞ? サイズの制約があるから結構大変なんだぞバイクは」
素人はこれだからと言うように頭を振る。
『自動人形はもっとヤバイけど……。はっきり言ってコスパは悪い』
「……じゃあ、貯まったらまだ相談するわ」
レイは諦めたように言った。
ダグが小声で呟く。
「……三千万、か。いつになったら買えるんだ?」
「まあ、気長にな」
マルが肩を竦める。
◇
しばらくして、レイは改めて火華に尋ねた。
「……ところで、隣の人は?」
火華が車両の下から這い出してくる。
「ああ、助手だ」
助手が無表情のまま、レイを見る。
「……ふん」
レイは微妙な表情になる。
「……そうですか」
(……態度悪いな)
「……じゃあ終わったみたいだからこれで」
レイが立ち去ろうとすると、火華が呼び止めた。
「待て。車のメンテナンスしてやる。むしろさせてくれ」
「……え?」
「お前の車、状態やばいぞ」
レイが眉を顰める。
「え、そんなにか? てか、メンテ要らないだろ? 修理キットで自動修復機能あるし」
火華が溜息をつく。
「メンテが要らないものなどこの世にはない。エネルギー効率1%下がってるぞ」
「……誤差では?」
「あのな」
火華が真剣な表情になる。
「命中率100%と99%じゃ、大違いなんだぞ?」
リンがすごい勢いで頷く。
その様子を見て、レイは頭を抱えた。
「……ゲームの話はやめてくれないか」
「ゲームだけじゃない」
火華が続ける。
「何かあってからでは遅いんだ。メンテナンスってのは、予防なんだよ」
レイは少し考え――頷いた。
「……わかった。じゃあお願いする」
そして、少し間を置いて尋ねる。
「……定期的にメンテしたほうがいいか?」
「理想で言えばそうだな」
火華が端末を操作しながら答える。
「銃と違って、車両は個人でメンテするのは難しい。整備場とかでやるべきだ」
しかし、と火華は続ける。
「まあ、この車だと――中々、市中の整備場で任せるというわけにはいかないが」
レイが苦笑する。
「だよなあ……。見た目はそうでもないけど、中身は普通の車じゃないもんなこれ」
「そうそう。だから――」
火華が隣の助手を見る。
「メカニックのあてはあるのか?」
「ない。そんな概念があることを今知った」
火華が助手に視線を向ける。
「……助手よ」
助手が嫌な予感を感じたように反応する。
「……まさか」
「実地研修だ」
「ええ……?」
レイが即座に反論する。
「勝手に話を進めんな」
火華が笑顔で告げる。
「お前が何を気にしてるかはわかる。無料だ」
レイの態度が一変する。
「え?」
「タダ」
「是非お願いする」
助手が呆然とする。
「ええ……?」
火華が説明する。
「メカニック見習いってことで、要は修行だ。お前たちは、車両のメンテナンスをタダで受けられる」
助手が溜息をつく。
「……はあ、まあメンテはいいよ。戦闘とかはしないから当てにするなよ」
そして、無表情のまま付け加える。
「あと、何か頼むならコロンね」
レイが困惑する。
「ええ……? まあ何も頼むことはないが……」
助手がわずかに不満そうに言う。
「少しはあるでしょっ。少しは」
『で、ボス、マジなの?』
『マジ。いい機会だと思うよー?
『全部吐き出させた癖に良く言う……』
◇
作業が一段落したところで、火華が真剣な表情で言った。
「……レイ、一つ忠告だ」
「何だ?」
「コロンは、旧世界の存在とのやり取りで稼いでるんだろう。やりすぎるなよ」
レイが眉を上げる。
「……どういう意味だ?」
「便利だけど――危険だ。自己の目的のためなら、人間を駒にする」
レイは黙って聞く。
火華が続ける。
「管理体は根本から人間とは考え方が違う。モンスターを誘導して――ハンターに駆除させる、なんてこともする」
レイは端末を見た。
画面には、複数の管理体からの依頼が表示されている。
「……気をつける」
「うん。まあ、やめろとは言わない。上手くやれよ」
火華が笑う。
『上手くやりすぎても危ない』
『それはそう』
◇
改造が完了し、車両が降ろされる。
主砲の形状が、わずかに変わっていた。
「改造完了だ」
レイが車両に乗り込み、確認をする。
兵装パネルに表示されるのは――
『主砲:通常弾 / SSFF弾 / レーザー』
「……おおっ」
「チャージ時間に応じて威力が変動する。チャージした分だけ車のエネルギーを消費する。使いながら感覚を掴んでくれ」
「レーザー……レーザー……」
リンが呟く様子を横目で見ながら、レイは一息付く。
(どこまでいってもエネルギー管理が必要だな)
(だけど、これで……少しは余裕が出るといいな)
◇
帰還の準備を終え、工房を出る前に、レイは助手に尋ねた。
「……なんて呼べばいい?」
助手が無表情で答える。
「……ハチミネ地下維持路α9管理体、だった」
レイが眉を上げる。
「長いし、過去形?」
「ふん、好きに呼べばいい」
ニナが軽い調子で言う。
「じゃあ、ハッチンね」
助手――ハッチンが反応する。
「……は?」
「ハチミネから取って、ハッチン。可愛いでしょ?」
「……ふん」
ハッチンは無表情のまま、車両に乗り込んだ。
◇
工房を後にする。
光学迷彩が再び展開され、工房の姿が消える。
車両の中で、レイは端末を見ていた。
「……コロン、全部使ったな」
「でも、強くなったよ。あいつにも効くんじゃない?」
ニナが言う。
「ああ。じゃないとあの得体の知れない弾をまた使うことになる。……そういえばあれいくらだったんだ」
レイは窓の外を見た。
荒野の向こうに、クズスハラ街遺跡の影が見える。
(……次は、どうなる?)
その問いに、答えはまだ見えなかった。
車両が、静かに走り出す。
後部座席には、新しいメンバー――ハッチンが座っていた。
◇
拠点に戻ると、ハッチンは車両の点検を始めた。
「お前、ついてこい」
リンが振り向く。
「……え? わたし?」
「そうだ。メインドライバーだろ。お前もメンテのやり方を覚えろ」
リンが困惑したように首を振る。
「いや……、興味ない、し……」
「何言ってんだ、お前ハンターだろ」
「え? ハンター? みんな、そうでしょ?」
ハッチンが無表情のまま告げる。
「適性診断結果は火華から見させられて知ってるんだ」
レイが割って入る。
「どういうことだ?」
だが、ハッチンはレイの問いを無視して、全員を見回した。
「お前は――」
ハッチンがレイを指す。
「どっちかというとハンターだな」
次にダグを指す。
「お前はソルジャー」
そして、ニナとマルを見て――
「お前とお前はわからん。好きに生きろ」
ニナとマルが顔を見合わせる。
「……? 好きに生きてるが? 何?」
ハッチンは二人の反応を無視し、リンに視線を戻した。
「で、お前はサブにメカニックを付けろ」
「……ああ、そうゆうこと」
リンは渋々、ハッチンについていった。
「何だったんだ一体」
「……意味わからん」
「ハッチンもリンの同類なんだろう。任せよう」
◇
拠点、夜。
テーブルを囲んで、レイたちは次の装備について話し合っていた。
「……武器だけど、硬い敵が増えてきた」
レイが切り出す。
ダグが頷く。
「そうだな。徹甲弾連射でギリギリって感じだ」
「
レイが続ける。
「カタツムリがそれだな。正確には似た別物らしいが」
マルが端末を見ながら言う。
「それと――」
レイの表情がわずかに曇る。
「あの、主砲が効かなかったやつ」
リンが軽く言う。
「多分、体勢崩せばイケそうだったけど、ね」
ニナが呆れたように言う。
「……誰が崩すのよ」
リンがダグを見る。
ダグが即座に手を上げる。
「無茶言うな。体当たりでもしろってか」
レイがダグに視線を向ける。
「火華の改造銃は?」
ダグが少し考える。
「あれなー。強いんだけど、ピーキーすぎるんだよ」
「ピーキー?」
「連射には向いてないし、リソース管理が難しい。一発の威力は凄えんだけどな」
「……そうか」
レイが短く答える。
「じゃあ、銃の購入と弾薬がいいか」
ダグが尋ねる。
「どれくらい予算を使うつもりだ?」
レイは少し考え、端末を確認する。
「そうだな……。一億オーラムだな」
「……一億? 全額行かないんだ」
ニナが目を丸くする。
「ああ。何かあった時の再起分は残しておかないと詰みかねない。でも、一億程度なら――使ってもいいだろう」
(金銭感覚が順調におかしくなってるな。でもハンター稼業ってこうゆうもんだろ)
ダグが端末を操作しながら言う。
「なら……CWHあたりか。それと、
リンが意外そうに言う。
「ダグ、詳しいじゃん?」
「俺も少しは調べてるさ」
ダグが肩を竦める。
レイがマルに視線を向ける。
「……マル、即日購入可能な店、調べられるか?」
「ああ、調べてる」
マルが端末を操作する。
数秒後――
「……、ヤバいぞ?」
「何が?」
「一発500万オーラムだって」
場が静まる。
「……マジか」
ダグが呻く。
「在庫があるところは――」
マルが画面をスクロールする。
「一店しかないな」
画面に表示されたのは、『ハンター向け武装総合取扱店:アームズコープス クガマヤマ支店』。
「来店申請しておく」
「ああ、頼んだ」
レイが頷く。
「行くぞ」
ハッチンが口を挟む。
「私は行かないぞ」
「……ああ。好きにしてくれ」
◇
翌日。
レイたちの車両は、クガマヤマ都市の下位区画を走っていた。
向かったのは、アームズコープス。
銃火器から車両まで扱い、遺物の買取まで実施している――ハンターオフィス提携店だ。
「……でかいな」
ダグが呟く。
ビルの一階全体を占める店舗。
外壁には、各種銃器のホログラム広告が浮かんでいる。
マルが端末を確認する。
「来店申請、受諾されてる。モンスター駆除依頼の依頼コードを添えたのが効いたな」
「……本来なら、俺たちのランクじゃ入店できないのか?」
レイが尋ねる。
「ランク20以上って書いてあった」
「……門前払いか」
レイが呟く。
車両が店の駐車スペースに滑り込む。
リンがエンジンを切ると、店の入口から人影が現れた。
スーツ姿の男。
端末を持ち、レイたちの車両を一瞥する。
「ゼロご一行様、ご来店ありがとうございます」
男の声は丁寧だが、どこか値踏みするような響きがあった。
レイたちが車両を降りると、男は改めて全員を見た。
(若い。装備は――強化服に、AAH突撃銃。武器はともかく、強化服は低ランクには似つかわしくないな)
車両を横目で一瞥する。
(そして――車。外見は普通だが、見た目通りじゃないな。……この車とこの装備で、このランク)
男は内心で呟く。
(ランク詐欺一歩手前だな。さて、何を買うのやら)
だが、表情には一切出さない。
プロの商売人として、笑顔を保つ。
「本日のご用向きは?」
レイが端末を見せる。
「CWH対物突撃銃一丁、A2D突撃銃二丁、
男の目がわずかに見開く。
(……
「……かしこまりました」
男は端末を操作し、在庫を確認する。
「CWH対物突撃銃、在庫あり。A2D突撃銃、在庫あり。
男が一瞬だけ間を置く。
「在庫ございます。ただし――」
「何か問題が?」
「お客様のハンターランクですと、一発五百万オーラムとなります」
だが、レイは動じなかった。
「問題ない」
男は一瞬、レイを見詰め――端末を操作した。
「……かしこまりました。では、店内へどうぞ」
(あの依頼でそんなのがいるようなのが出てくるのか? ……まあこちらは売るだけだ)
◇
店内は広く、整然としていた。
壁には各種銃器が陳列され、奥には車両用装備のコーナーが見える。
男が先導し、レイたちを奥のカウンターへと案内する。
「まず、CWH対物突撃銃から」
男が棚から銃を取り出す。
黒光りする長銃身に収納可能なバイポッドを備える大口径の対物銃だ。
「試射されますか?」
「できるのか?」
ダグが尋ねる。
「ええ。店の奥に試射場がございます」
「……お願いします」
◇
試射場。
ダグがCWH対物突撃銃を構え、標的に向けて発砲する。
銃声。
弾丸が標的を貫く。
「……いいですね、これ。バイクに乗っても使えそうだ」
ダグが満足そうに言う。
(バイクに乗りながら使うのか? ……珍しい)
内心は隠し、男が端末を確認する。
「貫通力は申し分ございません。クガマヤマ都市近郊のモンスターならほぼ対応可能かと。お買い上げでよろしいですか?」
「はい」
「専用弾はいかがしますか?」
「それなー……」
ダグがレイをちらりと見る。
(財布を扱ってるのはこの男か)
「CWH対物突撃銃を扱うなら専用弾を使ってこそです」
「……でもお高いのでは?」
「その高さで命を救うと考えたら安い方です」
「……いくら?」
「ワンカートリッジ百発で五百万オーラムです」
(高いよな。でも一発五百万オーラムに比べたら……?)
「わかった。二百発頼む」
「お買い上げありがとうございます」
(判断が早い。これは良客候補か?)
◇
次に、A2D突撃銃を試す。
レイとマルが試射し、反動制御の向上を確認する。
「……悪くない」
レイが頷く。
「ああ、AAHと使用感は近いな。これなら使えそうだ」
男はレイたちの様子を見ながら思案する。
(メインアタッカーはあいつか。車両メーカー系列の徒党なのか? 使用武器にメーカーの制限はない? そういえばバイクのレンタル歴があったな……)
男は購入処理を進めながら、端末を操作し、経歴を調査した。
◇
そして――
男が専用ケースを持ってくる。
中には、黒光りする弾丸が10発。
「こちらです。取り扱いには十分ご注意ください。購入履歴はクガマヤマ都市へ通知されます」
レイがケースを受け取る。
ずっしりとした重み。
「……全部でいくらだ?」
男が端末を操作し、合計金額を表示する。
「CWH対物突撃銃、八百万オーラム。
A2D突撃銃二丁、四百万オーラム。
CWH対物突撃銃専用弾二百発、一千万オーラム。
その他消耗品で――」
画面に表示される金額。
「端数は勉強させて頂きます。しめて、八千万オーラムになります」
男がレイを見る。
「……お支払いはどうされますか? 分割払いにも対応しておりますが」
「一括で問題ない」
レイは端末を操作し、支払い処理をする。
男が確認し――わずかに表情を緩めた。
「……ありがとうございました」
(本当に払いやがった)
男は内心で驚く。
(ランク14で、八千万オーラムをポン払い)
(企業子飼いか? それとも――)
「お買い上げありがとうございました。……ところで」
「……何か?」
「うちの系列店でバイクをレンタルされていたようですが、ご興味がおありで?」
「ああ、系列店だったのか。そうだな、興味はある」
(いけるか? もしや車も制限ないのか?)
「そうなのですね。……弊店でもバイクの取り扱いがございまして、即日納品可能なものがございます。見て行かれますか?」
レイが口を開く前にダグが前のめりで返事をした。
「見たい!」
レイは苦笑を浮かべた。
「……お願いします」
「承知しました。……こちらでお待ちください」
男は応接スペースにレイたちを案内すると、端末でメカニックに指示を飛ばした。
(在庫処分できるかもな。商機は逃せん!)
結果、五千万オーラムのバイクを購入することになり、支払いが一億三千万オーラムに達した。
ラインナップ全体では入門クラスだが、レンタルバイクより高性能のバイクだ。
バイクは拠点に直接届けられることになった。
満面の笑みを浮かべた男に見送られ、レイたちは店を後にする。
◇
店を出ると、ダグが呟いた。
「……あの店員、最初は舐めてたよな」
「まあ、そうだろうな」
マルが肩を竦める。
「でも、最後は――」
「金を払ったら、態度が変わった」
レイが淡々と言う。
「……商売人ってのは、そういうもんだ」
ニナが苦笑する。
「……レイ、冷めてるわね」
「事実だろ」
「まあ、ね」
車両に乗り込み、エンジンをかける。
後部座席には、新しい装備が積まれていた。
レイは端末を確認する。
「……まだ三億ある」
「……使ったな、色々と」
マルが呟く。
「ああ。でも――必要だった」
車両が静かに走り出す。
窓の外には、下位区画の雑踏が流れていく。
レイは、遠くに見えるクズスハラ街遺跡を見詰めていた。
(……準備は、整った)
拠点に戻ると、ハッチンがバイクを受け取り、調整をしていた。
「おい、受け取りをやらせるな。次からコロンだからな」
「ああ……。悪かった、ありがとう」
「ふん。おい、お前、調整しておいてやったからその辺走ってこい」
「わ、わかった!」
「違和感を感じたら言えよ」
【今回の収支】
- **車両の改造** → **-820万コロン**
- **武器代** → **-1200万オーラム**
- **バイク代** → **-5000万オーラム**
- **弾薬代** → **-6000万オーラム**
- **消耗品代** → **-800万オーラム**
【現在の貯蓄】
チーム口座:
3億7270万オーラム
個人口座:
680万オーラム
0コロン
「一段落したら分配もしないとな」