たぶん、次から時間を飛ばしつつ巻き気味に突っ走ることになると思います。
いやぁー、砂漠と山脈と海と火山は強敵でしたね。
収穫?まぁ、ネタはそれなりにあるかな・・・。
苦労に見合うかと言われたら、まぁ・・・無い寄りになっちゃうかなぁ・・・。
特に火山がひどかった。
あの辺にはドラゴンが多く生息している山岳地帯があるんだけど、遠目で見ていただけのはずなのにめちゃくちゃ追いかけ回された。
縄張りには入ってなかったはずなんだけどなー、まさか餌として認識されていたとか?
最終的に魔法を引き撃ちし続けたことで事なきを得たけど、また来たいとはあまり思えなかったな・・・。
とまぁ、それなりに苦労しながらもおおよそ大陸を一周したところで、
「しばらくはこちらで過ごそうかと思うのですが、よろしいですか?」
「うむ、好きなだけゆっくりするがよい」
さすがに色々なことがありすぎたから、当分はルミナス様の屋敷で休むことにした。
渡り鳥だって休息が必要なんだから、小鳥の私なら尚更必要に違いない。
すでに基礎スペックが違う?
そんなの知ったことか。
私だってたまには長めにぐーたらしたい時もあるんだ。ルミナス様に甘やかされて何が悪い。
「それで、いつまでおるつもりじゃ?」
「具体的には決めてないですけど、長くても1年を越える前には発つつもりです」
せめて、一度くらいは再会を約束したあの少女に会っておきたい。
あれから随分と年月が過ぎたし、立派に成長していることだろう。
私の容姿がほとんど変わってないことは怪しまれるだろうけど・・・その辺は適当に誤魔化そう。
「そうか。長居を強いたりはせんが、出立の際は声をかけるのじゃぞ」
「分かりました」
それから一言二言会話を交わしてから、つい最近用意された私の自室に向かった。
今まではだいたいルミナス様の抱き枕にされていたけど、歌を纏めるための時間や空間も必要だろうというルミナス様の気遣いによるものだ。
たまに私だけルミナス様の部屋に残されて気まずくなることもあったから、けっこうありがたい。
ベッドを始めとした家具や調度品の数々は、当然のように全てルミナス様セレクト。どれもちょっと、いやだいぶ気が引けるくらいの高級品ばかりだ。
タンスに収められている服も高級品ばかりだし、金銭感覚が麻痺しそうになる。
とはいえ、その辺はルミナス様と接していればある程度は次第に慣れる部分もあるわけで、細かいことは気にせずに思い切りベッドに飛び込んだ。
(ゆっくり休むとは言ったものの、やることがないわけじゃないんだよなぁ)
今までの歌やネタも整理しておきたいし、機会としてはちょうどいい。
手帳にこまめにまとめていたとはいえ、さすがに数十年分となると量も膨大になる。
やる気がある内にさっさと・・・
(・・・そっか、もうそんなに経ったんだ)
小鳥に生まれ変わり、ルミナス様と出会ってから、もうそれだけの年月が経っていたのか。
生まれたばかりの頃は20年も生きられないと思っていたのに、案外長生きできるものだね。
それも、ルミナス様と出会えたおかげか。
今となっては、ルミナス様と出会えなかった自分の姿が想像できない。
まぁ、十中八九早死にしてただろうとは思うけど。
肉声で歌うこともできず、ピーピー鳴いてるだけで一生を終えたのだろうか。
老衰で死ぬか、それとも他の魔物に食われるか。
・・・本当に、こうして歌に生きるきっかけを作ってくれたルミナス様には感謝しかないな。
時折開催される着せ替えショーに関しては、言いたいことがないわけじゃないけれど。
(せっかくだし、ルミナス様に贈る歌も考えておこう。月と夜・・・初めて出会ったときの歌)
私にとって特別なものだから、ルミナス様に胸を張って披露できるようになるまで大切に残しておいた、思い出の歌。
今なら・・・うん、いけそうな気がする。
偶然、私とルミナス様が出会った日も近いから、タイミングとしてはちょうどいい。
問題は、今さら感がすごいということか。
別に今までも意識したことがないわけじゃないけど、木っ端の小鳥の私に対して、ルミナス様は誰もが畏れ敬う魔王だ。とてもじゃないけど、毎年個人的に呼び出して祝うなんて畏れ多くて出来ない。
一応、旅に出ている間もその日だけは必ずルミナス様のところに一時帰宅していたけど、だからと言って特別なことをしていたわけではない。あくまで『一緒にいれるだけでいい』という私の自己満足だ。
だけど・・・たまにはね、たまにくらいなら特別なことをしてもいいはず。
「銀・・・月の光・・・紅と蒼・・・」
うーん、どうにも表現が安っぽくなってしまう。
たしかにルミナス様の魅力は言葉で表しがたいほどだけど、それを言語化できずして何が歌人か。
今までの旅の集大成にもなるんだ、頑張れ私。
出会いの日まで、あと1ヶ月ちょっとか。
ルミナス様に贈る歌なんだから、気合いをいれて作ろう。
* * *
それから数週間後。
私は机の前で盛大に頭を抱えることになった。
「やっべぇ未だに纏まんないどころか思いつきもしないどうしよう」
期日まで一週間を切ってこれは相当不味いのでは?
いや、別にルミナス様に申告したわけじゃないけれど、それはそれとして自分で決めた期限を守れないのは非常によろしくない。
私の理想が高すぎる可能性もあるけど、だからといって妥協は絶対にしたくないんだよね。
妥協はしたくない、んだけど・・・このままではマジで突貫作業になってしまう。
普段ならぱぱっと思い浮かぶんだけどなぁ。
もしくは、あれか。今までの即興スタイルに慣れたせいで、じっくり考えるのが逆に苦手になってる可能性があるな?
(・・・いや、待てよ?ここは発想を逆転させるべきでは?)
別に歌を即興で作ることが悪いわけではない。
特別なものに時間をかけること自体は間違いではないけど、時間と込められた気持ちが必ずしも比例するとは限らない。
とにかく、まずは思いつく限り歌を並べよう。
作った中から添削と切り貼りを重ねればなんとかなるはず!たぶん!
我ながら限界感がすごいと思うけど、もうこうするしかない。
この方法以外だと、きっとたぶんおそらく間に合わない。少なくとも間に合わせる自信がない。
まず間違いなく徹夜作業になるだろうけど、背に腹は代えられない。
そこからは、地獄のデスマーチとなった。
歌詞を紙に書いては積み重ね、繋ぎ合わせては書き直しての繰り返し。
確かに、狙いはあながち間違っていなかった。
この方法なら、たしかに思考が止まらずに案を出し続けられるだろう。
ただ、出した案が纏まるかどうかは別問題なわけで。
なんかもう、途中から時間感覚も曖昧になっていた。ギリギリ記念日までの残り時間は把握していたけど、部屋に籠っていたせいでご飯とか昼夜の概念は完全に崩壊していた。
一応、いつの間にか用意されていた軽食を口の中に放り込んではいたものの、そのタイミングは不規則で健康的な生活からはかけ離れていたに違いない。
エナドリはないけれど、締切や納期に追われる漫画家や会社員ってこんな感じなんだろうなぁ、というのを頭の片隅で思いながら、ひたすら手と頭を動かし続ける。
そして、五徹か六徹くらいキめて記念日の前夜になって、
「で、できた・・・!!」
ようやく、うたがかんせいした。
あとは、これを、るみなすさまに・・・
「む、起こしてしまったか?」
「んぇ・・・?」
柔らかいものに包まれながら髪を梳く心地よい感覚を覚えて、ゆっくり目を覚ますと・・・ゆっくり目を覚ますと?
ゆっくりしてる場合じゃねぇ!
バッと起き上がると、いつの間にかベッドに寝かされていた私の横にルミナス様が座っていた。
視線を下に向ければ、いつの間にか普段着ている服から薄手の寝間着に変わっている。
「これ、急に起き上がると危ないぞ」
「すみません。それで、その・・・私、どれくらい寝てました?」
「妾が見つけてから、一日と少しじゃな」
いちにちとすこし。
最後の記憶は、歌が完成した辺り。あれはたしか、日付が変わる少し前くらい・・・。
やらかしたやらかしたやらかしてしまった・・・!!
歌の製作に夢中になりすぎて記念日を寝落ちとか、本末転倒もいいところじゃんッ!!!
もう頭を抱えるしかない。
本音を言えば死にたいけど、ルミナス様の許可なく死ねないからそっちは選択肢から除外する。もし目の前で死んだら即
「なんじゃ、起きて早々頭を抱えおって。忙しないのう」
「言いながら迷わず甘やかしにきましたね・・・」
ルミナス様にされるがまま、ギュッと抱き締められつつ頭もナデナデされる。
うぅ、このままではダメ人間、いやダメ小鳥にされてしまう・・・。
「それで?何があったのじゃ?」
私を甘やかす手を止めずに、ルミナス様が問いかけてきた。
まぁ・・・今さら隠すことでもないか。
「・・・昨日、私とルミナス様が初めて出会った日、だったので、特別な歌を作ろうと、思ったんです」
「うむ」
「でも、全然納得できる歌が作れなくて、特にここ一週間くらいは寝る間も惜しんで、それで何とか完成したんですけど・・・完成した直後に、たぶん、寝落ちしました」
「なるほどな。道理で机に突っ伏していたわけじゃ」
それはまた恥ずかしいところを見られて・・・いや、待てよ?
「その・・・もしかして、見ました?」
「アリアを運ぶときに少しな。安心せい、全部は見ておらん」
それは良かった・・・いや、気を遣わせてしまった、とも解釈できるか。
これ、ギュンターさんから後でネチネチ言われるやつかなぁ。ルミナス様の手を煩わせるとは、みたいなことを延々と。あと、この世界では高級品である紙をまぁまぁ浪費したから、それについてもか。
その辺に関してはぶっちゃけ反論しようもないほどの事実だから、甘んじて受け入れよう。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ありません。すぐに起きますので・・・」
「ダメじゃ。ここ一週間、睡眠はおろか食事も満足に取れておらんじゃろう」
「どちらもスキルでどうにかなりますから」
「それはそれ、じゃ。何より、しばらく妾を蔑ろにしておったのじゃ。ならば、今は妾の言うことを聞くべきだとは思わんか?」
参ったなぁ、それを持ち出されると何も言い返せない。
一週間引きこもってたのもそうだけど、その前の数週間だって歌の制作を優先しがちになっていた。
なんかもう、何がなんでも言うことを聞かせるという気迫を感じる。
元より命じられたら断れる立場でもないけど、それを抜きにしてもここは言われた通りにした方がよさそうだ。
「・・・そう仰るのでしたら、私もルミナス様に従います」
「うむ。では、まずは横になっておれ」
そう言って、ルミナス様は優しくも抗いがたい力加減で私を寝かせた。
そして、そのままルミナス様は私の上に覆い被さった。
「????????」
あまりにも唐突すぎて、思わず宇宙猫状態になってしまった。
小鳥なのに猫とは、これいかに。
いや、そうじゃなくて、
「えっと・・・?」
「言ったであろう?妾の言うことを聞くべきじゃ、と」
「それは、その、そうですけど」
「じゃから、これはアリアが昨日妾にお預けをした罰じゃ」
なんというか、手付きがちょっとやらしいような・・・?
つつつ、と頬から顎、首筋へと流れる指の動きと力加減は、経験がないながらも完全に
本当に休ませる気あります?あぁいや、横になれって言ってたな。
もしかして、大人しく餌になれって意味だったんですか?
「心配せずとも、無暗に貪り尽くすような真似はせん」
「そ、そうで・・・」
「じゃが・・・
あっ、これガチだ。
ルミナス様と接してきた中でたびたび片鱗だけ見せていた、獲物を狩る獣のような眼差し。
今まではからかい以上の意味を持たなかったそれが、今回は逃がさないとばかりに本気で私のことを捉えていた。
本当につまみ食いだけで済むのか、ちょっと怪しんでしまう程度には。
「えっと、その、う、歌!作った歌を披露するのはダメですか!?」
たしかにルミナス様に逆らえる立場じゃないけど、それはそれとしてこれ以上はヤバい気がする!!
せめて、少しだけでもお慈悲を・・・!
「ダメじゃ」
なぜ!?
「妾と出会った日の、特別な歌なのじゃろう?ならば、その日以外に歌うことは許さん。それに、寝落ちするような状況で作った歌で、妾が満足すると思うたか?」
「それは、その・・・」
「じゃから、これは命令じゃ。その歌を披露するのは、次の旅が終わった後の出会った日とする。それまで思う存分制作に励むが良い」
「分かり、ました」
そう言われたら、私に断るという選択は残っていなかった。
それにしても、次の旅が終わったら、か。
私なら生きて戻ってくるという確信があるからこその言葉か。
そこまで私のことを信頼してくれているのは、素直に嬉しい。
「さて、弁明は済んだな?もう待たんぞ」
この状況から目を逸らすことができたらの話だけどね!
せめてお手柔らかに、と懇願する暇もなく、ルミナス様との距離がグッと縮まり・・・
結論から言うと、唇を奪われたり衣類を脱がされるところまではいかなかった。
その代わり、その二つを守る範疇で存分に愛でられ、啄まれ、貪られた。
あの、本当につまみ食いのつもりだったんですか?あれで・・・?
実はこっそり軽食を用意していたのはルミナス様なので、アリアが何をしていたのかは最初から完全に把握していました。
もちろん記念日のことも認識していました。
それはそれとして、帰ってからしばらく付き合いが悪くなり、一週間も放ったらかしにされた挙げ句、記念日に寝落ちされたのは気にくわなかったのです。
だから押し倒して愛でるのは当然の権利(ルミナス談)。