エンデヴァーのデバイスの情報からついに出久を見つけた。ダツゴクの操る民間人のせいで身動き取れなくなっているところだった。爆豪がダツゴクを倒したから良かったものの、あんなボロボロの姿でどうするつもりだったのよ……
「ダツゴク確保!やりましたね、バクゴーさん!」
「大・爆・殺・神ダイナマイトじゃ!」
「失礼しましたわ!」
あのダッサイヒーロー名、そのまま名乗るのね……それはともかくこうしてここまで来たからには彼を連れ戻さないとね。
「皆……何で……」
「心配だからだよ」
「僕は大丈夫だよ。だから……心配しないで……離れて……」
お茶子の声にも出久は拒絶してしまう。今までの彼なら彼女の言うことにもう少し耳を貸すはずだ。すっかり意固地になっている。そこで拍手の音が聞こえてくる。
「そいつぁよかった!さすが
「……笑う為に、安心してもらう為に……行かなきゃ……だから……どいてよ、皆……!」
爆豪の煽りにも耳を貸さない出久。
「どかせてみろよ、オールマイト気取りが!!」
「君が変わらないのは知ってる。やるぞ諸君!」
ええ、もちろん。彼を一人で戦わせはしない。
「聞いたぜ!四・六代目も解禁したってな!すっかり画風が変わっちまったなぁ⁉クソナード!」
「……ありがとう……来てくれて……」
そう言って紫色の煙を体から出す出久。これは逃げる気満々ね。
「テメーら絶対逃がすなよ!」
「煙幕!」
「これは六代目の!」
爆豪の爆破によって煙幕は晴らされたが出久はもう空に浮いている。やっぱりもう浮遊は使いこなしているわね。
「話もしねーでトンズラか。何でもかんでもやりゃできるよーになると周りがモブに見えちまうなぁ⁉」
爆豪の言葉を無視して逃げる出久にたくさんの鳥たちが襲来。それはもちろん口田の操る鳩だった。というかアタシも準備しよう一気に灰を生み出す。
「校長先生が戻っておいでって!ね⁉だから逃げないで!」
普段大きな声を出さない口田の叫び声が聞こえてくる。校長室でもエンデヴァーのデバイスに飛びついていたものね。彼はとっても優しい子だ。
「黒鞭垂らしっぱにしてんのコエーよ、警戒するわ!」
瀬呂が黒鞭と出久をテープで引っ掛けて勢いを止める。そして一瞬止まりかけたところを響香が音の壁を作る。ただそれでも彼は止まらない。
「はっや……緑谷ぁ!どーでもいーことなんだけどさ!文化祭の時にノートのまとめ方教えてくれたのかなり助かったんだよね!些細なことだけど……すっごい嬉しかったんだよね!」
かなりの移動速度で動く出久だが、訓練し続けて操作スピードが上がった今なら捕らえられる。前世の鬼道、六杖光牢を参考に作った、六杖灰牢。帯状の灰の塊で拘束する。
「出久!アタシは今でも職場体験でのこと忘れてないわ!あのときアンタは皆に助けを求めた!だからアタシたちはあそこで共に戦った!それで救えた命もあったはずでしょう⁉なら今もアタシたちに助けを求めなさい!困っている、大変な思いをしているアンタを一人で戦わせるようなこと、出来るはずないでしょう!」
雨と風の中、アタシは必死に言葉を届けるがそれでも彼は拘束を抜け出そうとしてくる。というかもう持たない……!灰の塊を破壊され抜け出した。そこを尾白が捕まえる。
「体育祭の心操戦、覚えてるか⁉おまえが俺の為に怒ってくれたこと、俺は忘れない!お前だけがボロボロになって戦うだなんて見過ごせない!」
「僕がいると……皆が危険なんだ……!
「押せ、
尾白の尻尾も振り払ったところを常闇が押してビルに突っ込む。その尾白はアタシが灰でキャッチする。
「大丈夫?」
「ああ、ありがとう。にしても緑谷……」
「あいつ強くなりすぎ!」
近くにいた響香が言う。
「意志もね」
「そうね。意志は元々強いとは思っていたけど、あそこまで頑なだとは……」
「松本、緑谷どうするかな……」
「とりあえず、ビルに突っ込んだからアタシたちはまた出てきても追えるようにしておきましょう」
響香の不安気な声に答えながら移動しようとしたら、出久がビルから飛び出てきた。そして焦凍の氷壁に激突した。アタシたちも追わなければ……!
出久は氷壁を壊して飛び立つ。梅雨ちゃんや峰田が捕まえようとするけどパワーとスピードに振り切られる。
その頃にはアタシたちの準備が終わっていた。焦凍が氷でジャンプ台を作り、三奈が保護用の粘液で天哉を包む。
「溶解度0.1%保護被膜用アシッドマン!」
「行け、轟!」
力自慢の皆が焦凍たちを押し出す。そして膨冷熱波で勢いをつけ、お茶子が浮かせて爆豪の爆破でよりスピードを増した。あっという間に凄まじいスピードで飛んでいく。
「アタシたちも追いかけるわよ!」
出久が飛んで行った方に向かって移動する。流石にあんなスピードは無理だけど、アタシたちだって速く移動できる。
飛んで行った先に到着すると、出久と天哉のことを切島が上手くキャッチしてくれていたみたいだった。
「緑谷……!もう誰かがいなくなんの嫌だよ。一緒にいよう⁉また皆で授業受けよう」
「……そう……したいよ……けど、怖いんだ……!雄英には……!沢山の人がいて……!人に迷惑かけたくないんだ……!もう、今まで通りじゃいられないんだ……」
三奈の言葉にも帰れないと語る出久。そこに爆豪が皆から一歩前に出る。そこから爆豪はイジメていた理由を語り最後には謝った。
「今までごめん。
「ついて来れない……なんて……ついて来れないなんて酷い事、言って……ごめん……」
「わーってる」
出久は謝りながら倒れてそれを爆豪が受けとめる。気絶している?近くで観たら生傷はあるし体はボロボロだしでだいぶ無理が祟っていたみたい。こうしてアタシたちは出久を連れ戻すための第一歩が終わった。
ただし問題はここからだった。出久を死柄木たちが狙っているということを避難民が知っているみたいで、彼を雄英に入れることへの反発が強まっていた。
教員やベストジーニストの声にも避難民は耳を貸さない。罵詈雑言の嵐だった。たしかに守れなかったのはアタシたちヒーローで、たくさんの人が被害に遭った。だからこそ今度こそ守り通さないといけない。そのためにも出久には安全な所で休んでもらう必要があるのに……
不安が伝播して恐慌状態になる中で、お茶子が拡声器を持って校舎に上がる。そこから出久をここで休ませて欲しい、彼のヒーローアカデミアでいさせて欲しいと必死に訴える。その心からの叫びに胸を打たれた洸汰くんや大きな女性が出久に駆け寄る。お茶子の言葉が伝わったのか理解してくれる人もいて説得してくれる。そうして出久は雄英に帰還することができた。
出久のことは男子がお風呂に入れてくれるみたいだから任せて、アタシたちもお風呂に入る。雄英を出てからバタバタしていたけどやっと一休みね。
「それにしてもお茶子がああも熱くなるなんて思わなかったわ。あ、でも出久のことには前からあんな感じだったかも?」
「そ、そうかな?そう言われるとなんか恥ずかしい……」
湯船に浸かりながらアタシが茶化す様に言うと、お茶子がドギマギしている。
「麗日かっこよかったなー!B組との対抗戦を思い出しちゃった!」
「お茶子ちゃんのおかげで避難民の皆が受け入れてくれたよね!」
三奈と透もテンションが高い。やっぱりA組が全員揃ったというのは大きいわ。
「今頃男子たちは緑谷と何話してるんだろうな……上鳴とかテンション上がってそう」
「きっとお疲れの緑谷さんの疲れを取ってあげているに違いないですわ」
響香の呟きに百が答える。まぁ天哉とか障子とか常識的なのもいるしバカ騒ぎにはならないでしょうけど。
「あら?お茶子ちゃん、眠い?さっきからウトウトしてるわ」
「うん……安心したら……なんだか眠くなってきちゃった……」
梅雨ちゃんの言葉でお茶子が眠そうなのに気が付いた。というかその梅雨ちゃんも眠そうにしているし、透もさっきからあくびしているわね。
「ではそろそろ上がりましょうか。今日は大仕事でしたし」
百の一声でアタシたちはお風呂を上がり、談話スペースへ。お茶子と梅雨ちゃん、透は眠いのか自分の部屋へ戻ってしまった。ソファに座って話していると男子たちもやって来る。
「麗日さんは……?寝ちゃった。安心したら力抜けちゃったみたい。他の子もそんな感じ」
「そっか……皆、ありがとう。そして迷惑かけてごめん」
出久が感謝と共に謝るが、決してそんな必要はないと思う。
「ありがとうだけでいいわよ。アンタが謝る必要なんてないんだし。皆を思っての行動なんだから」
「
「ホークスに電話に出るように言って欲しかった」
「無個性からトップオブトップなんて大変だったろ」
「そりゃ骨折れますわ」
皆が口々に出久に話しかける。それは不満とかじゃなくて心配の裏返しだ。
「緑谷が一番眠いだろ。寝かせてやれよ。何のために連れ戻したんだよ」
「アンタはちゃんと髪の毛乾かしてきてから出てきなさいよ。将来ハゲるわよ」
焦凍がタオルで髪を拭きながら来たので注意する。後ろで峰田が焦凍のポーズ云々言っていてうるさい。
「大丈夫……っていうかまだ眠れなくて」
「なんで」
「オールマイトに酷い事をして……そのままなんだ。謝らなきゃと思ってるんだけど、連絡がつかなくて」
出久の後悔するような言葉を聞いていると、焦凍が窓を指さしている。そこには骸骨……じゃなくてオールマイトが。オールマイトが入って来て力になれなかったことを出久に謝って、少し話をしたら出て行ってしまった。それにしても気になるのは、近いうちに答えが分かるってのはどういうことなのかしら?
その二日後、オールマイトからスターアンドストライプが死んでなお残してくれた猶予が一週間あることを伝えてくれる。
敵の戦力は最凶のヴィラン、死柄木弔と
なのにヒーローは減っている。護廷十三隊なら命を懸けて戦う死神ばかりだったってのにヒーローときたら……
そんなわけで寮の中庭で訓練中だ。今もアタシは切島を相手に首から下を灰に埋めて拘束できるか試している。
「抜けねー!ギブギブ!窒息する!」
切島がギブアップとのことで拘束を緩める。うん、いい感じね。前は殺さないように斬るのが難しかったから、大規模攻撃は避けて出来るだけ小規模で攻撃していた。灰塵の太刀もそのために生み出したものだし。でも制御が良くなって細かいコントロールができるようになった結果、大規模攻撃でも問題なさそう。これなら思い描いていたアレができるかもしれない……そう思っていた時だった。
「皆!訓練中だろうけど、一旦集まってついて来てくれる⁉ちょっと緊急で話があるから!」
良く分からないけれど、透がただならぬ様子でいつもの明るく元気な感じではない。皆顔を見合わせながらついて行くと、視聴覚室だった。
何やら物々しい雰囲気でオールマイトに塚内さん、プレゼントマイクに校長先生までいる。そして……青山が椅子に座らされてる?一体何が……?
そこからの話は衝撃的だった。というか信じられない……どうして青山がそんなことを……?
「個性を与えてもらい……支配されるに至ったと……付与は十年前か……今無事ということはナガンの様な裏切ったら爆発する仕掛けはないようだが……」
「できれば……君たちは下がっていなさい……」
校長先生の言葉に、そんなことを言われても従うことはできない。
「下がってられる……」
「道理がねえよ……」
「葉隠さんが見つけてなかったら……何するつもりだったんだ……」
「青山……!嘘だって言えよ……!」
この世界でも裏切りか……青山とはあまり親しくしていなかった。でもクラスメイトだ、仲間だと思っていた。それなのに……アタシは思わず拳を握り締める。
何か理由があったのよね?どうしても従わなければならなかったとか、強制的に動かされて無意識だったとか…………アタシは譲れない理由があって裏切った人を知っている。だから青山も彼のような、何か訳があったと信じたい。
出久が青山たちを利用しておびき寄せることも発案したが、結局は保留となった。こんなことがあってもアタシたちはやることをやらねばならない。決戦の日は迫っているのだから……