遅くなり大変申し訳ございませんでした。完結させるつもりはあります。最終盤なのであと2話くらいで終わると思います。
青山が内通者だったことが発覚しても、やることはやらねばならない。連日に渡って死柄木たちの行方を探るために捜索に出ているが、明確な手掛かりは見つからない。
そんな日々を過ごしながら今日も捜索から帰って来た。皆の様子を見ると疲れ切っている。捜索範囲が広いのと、いくらかヒーローが減ったことが響いているのかもしれない。
「わたしが‼ 毎日のように来た‼」
さっさとお風呂に入って寝ようと思っていたところにオールマイトと塚内さん、校長までやって来た。一体何の用かしら?
「青山さんの件でしょうか」
「更にその先だ。現在限られた者にのみ概要を伝えている。第二次決戦の最終プラン、その協議を行う」
百の問いかけに対してオールマイトはそう答える。どうやら作戦が決まったことを伝えに来たようだ。
翌日、アタシたちA組は雄英を出てそこから約30kmにある仮設要塞トロイアにいた。ハイツアライアンスとほぼ同じ構造になっているっぽい。寮や避難民の居住場所を作るのノウハウが活かされてそうね。
先ほど家族と別れを済ましてきたけど、あまり何も言ってこなかった。危険だからどうとか、怪我したこととか言われるかと覚悟してたんだけど。アタシが思っている以上に家族はアタシのことを見てくれているんだなと思った。
だからこそ、この子の家族には頑張ってるこの子を見ててほしい、気持ちが伝わって欲しい、そんな風に考えてしまう。それもアタシのエゴなのかもしれないけどね。
「気分はどう? 体調に変化は?」
「気ィ遣わせちまってわりィ、大丈夫だ」
焦凍に割り当てられている部屋にアタシ、天哉、爆豪、切島が集まっている中、焦凍は心配いらないと言う。
「気を遣ってるっていうか、そりゃ心配もするでしょう。たとえ最善手だとしてもアンタは実の兄と戦わなきゃいけないんだから。ねぇ、天哉」
連合幹部がいるであろう所はどこも激戦になるだろうけど、荼毘の火力は熱に耐性があっても厳しいはず。それとまともに戦える戦力は限られる。
「そうだな……それに俺も兄がいるからな」
「おまえんとこと比べられちゃあ堪んねえよ。俺は燈矢兄の好きなモンも知らねえ」
「ぜってーうどんだな。煮えたぎったやつ」
「ハッ……だったら一緒に食ってやるさ」
爆豪にしては良い事言うわね、焦凍と真逆の好みってことはそういうことよね?というか爆豪って焦凍の好みちゃんと把握してるのね。まだツンツンしてるけど以前のように怒鳴ることは少なくなった。彼もしっかり成長してる。
「ところでよう……言うタイミングなかったんだけど、なんで松本は轟の膝の上に座ってんだ?」
そう、切島の疑問は最もである。何故かアタシは焦凍の膝の上に座らされている。さっきまで色々考えていたのもこの男の膝の上でのことだった。最初は床に座ろうとしたのに、彼に手を引かれて気づけばここにいた。
「俺も椅子は一人で座る物だと注意すべきか迷ったが、轟くんの心理状態を考え特に言わないことにした!」
「今更だろ。つかインターン中の空き時間も轟はこんな感じだぞ、ったく」
天哉の真面目さも良く分からないけど、爆豪に自然と受け入れられているのが少し怖いわね……インターン中はこんな感じじゃないと抗議したいが、休憩時間中は近いかもしれない。今後は周りの目も気を付けよう。
「アタシ、結構身長あるし重いと思うんだけど。もうどいていい?」
「いや重くない。それに何だか落ち着く気がする」
そう言って焦凍は息を吸っている。そう……いや重くないならいいか。別に恥ずかしいとかないけど、こういう場面を友達に見られるのは微妙な気持ちになる。
「ハァ……これならわざわざ俺らが来る必要もなかったんじゃねーか?帰るか」
「たしかに、松本くんがいれば轟くんは心配無さそうだ。そろそろお暇しよう」
「じゃあな! 轟! 松本!」
そう言って天哉たちは部屋を出ていく。え、アタシは居残り?ちょっと、アタシは……って行っちゃった。というか二人にしてくれたのよね。ならご厚意甘えましょうか。
「ねえ、本当に何ともないの?あの子たちがいる前じゃ言いにくい事でも、アタシには言えるでしょ? ほらさっさと言いたいこと言いなさいよ」
アタシが焦凍の膝の上から肘をぐりぐりしていると、自然な笑顔で否定してくる。
「ねえよ。むしろこれで蹴りが付けばいいなと思ってる。燈矢兄を捕まえて一件落着、だなんてこの状況で言えないけど、俺が捕まえなきゃいけない。それがヒーローとして、家族として、弟として俺ができる最善だろうから」
なるほどね。焦凍も色々考えた末にもう覚悟が決まったてわけか。励ましは不要みたいだわ。
「じゃ、アタシもそろそろ部屋に戻るわ。アンタの元気そうな顔が見えたし」
「乱菊、お前こそ無理してねえか? 燈矢兄は俺とエンデヴァー事務所の面々で対応するが、燈矢兄に接触があったってことでお前も神野の配置だろ?」
そう、アタシの配置はどこだろうと思っていたら、荼毘との接触があるということで神野になった。ただ直接戦うかと言われるとそれはないだろう。焦凍やバーニンさんたちが抑えるはずだから。アタシは脳無やダツゴクたちの相手だろうし、そのための訓練をしてきた。
焦凍がそれでも言及してきたってことは……背中を撫でる手から何となく分かった。蛇腔でアタシが荼毘の炎を食らったことを気にしてるのだろう。
「まだ気にしてるの?もう火傷は痕もほぼなくなってるのに」
「気にしてるっつーか、もうあんな光景は見たくねぇ。それに髪はまだ前のように長くねえし」
「いや髪の毛ってそんなすぐに長くならないから。というかショートカットでもアタシは綺麗じゃないの?」
焦凍はアタシの髪を触りながら不思議そうにしていたから短い髪について尋ねてみた。アタシ自身はショートカットでも似合っていると思うんだけど。
「いやそうじゃない。短いのも可愛い。ただやっぱ長いのが乱菊って感じがして落ち着く」
「じゃあ……これからも髪は伸ばすわね。戦闘には少し邪魔なんだけど」
恋人の好みに合わせるのも恋人としては普通の事。決してさっきの言葉が嬉しかったわけではない。うん、そのはずだ。鼓動が早いのも落ち着かせながら立ち上がる。
「絶対勝ちましょうね。アタシたち、皆の力で」
「おう」
振り向いたところを当たり前のように抱き締められる。最初はぎこちなかったのも最近は手慣れてきたように感じる。慣れてなかったのはやっぱり幼少期から抱き締められるような行為が無かったからだろうか? そうだとしたら不憫だ。
だからだろうか? アタシは気づけばそうしていた。共に無事でいられるように、またずっと同じように過ごせるように。そんな願いを乗せて。少し背伸びした体勢で数秒間が過ぎる。そしてドアに向き直り手を掛ける。
「じゃっ、お互いベストを尽くしましょう。バイバーイ」
ドアが閉まる時に見えた焦凍は唇に手を当て顔を赤くしていた。
作戦決行日。アタシたちは出久と青山が上手くやっていることを祈りながら待機していた。そこに黒い靄が現れる。物間がコピーしたワープゲートだ。
「いくぞ! 手筈通りに!」
プロヒーローの声に従ってワープゲートに突入すると目の前には大量のヴィランが。灰を一気に流して足止めしつつ敵の出鼻をくじく。
「ハーッハハハ、フィィクサァアアアア!!!」
物間のテンションがおかしいのはいつもの事として、焦凍も蒼炎を防いでいたのが見えた。この場にヒーロー側とヴィラン側が出揃う。
とここでシステム
ワープゲートをくぐるともうそこは戦場だ。いきなり襲い掛かってきたヴィランを灰塵の太刀で切り伏せる。事前に言われていた情報では、凶悪犯のような厄介な存在もいればチンピラ擬きのようなものもいて、ヴィラン一人一人の質はバラツキがあるとのこと。今のはどう考えてもチンピラの方だ。
それにパッと見た限り厄介そうなのは荼毘と脳無くらいで、振り分けとしては当たりと言っていいのかもしれない。ただそれは他の所に厄介なのが行ったということでもあるので喜べることではないのだけど。
『全体通信、全体通信! ワープによる分断作戦は成功だ! 予定通りの振り分けとなっている! 各自の健闘を祈る!』
分断に成功したのなら、問題はそれぞれの戦場で勝利できるのか、その一点だけね。死柄木、AFO、荼毘、この3人は中でも厄介だわ。もしギガントマキアが目覚めたらそこもか。ただし考えてもやることは変わらない。
「松本くん、無事か!」
天哉に声を掛けられた。そっちもヴィランを倒しているようだ。
「ええ。ただあっちは凄そうね」
アタシの視線の先では蒼い炎が渦巻いている。あの中に荼毘と焦凍がいるのだろう。
「ああ。さっき近付こうとしたんだが異常な熱さだった。エンジンがやられて近づけそうもない……!」
「わかってるわ。焦凍の様子も気になるけどアタシたちはこっちのヴィランに集中しましょう。まだまだヴィランはたくさんいるんだから!」
話している間にもヒーローとヴィランの入り乱れての戦闘に。数ではヴィランの方が多い。しかし質の面ではヒーローが確実に勝っており、確実に抵抗するヴィランを沈黙させている。ただ問題は……
「くそ! こいつ硬すぎだろ! 攻撃が通らん!」
「近づきすぎるなよ! 棘に刺されれば重傷を負うぞ!」
脳無一体に何人ものヒーローが掛かりきりだ。蛇腔での経験から、ヒーロー側は脳無とは言え絶対に勝てない相手だとは思っていない。ただし何人ものヒーローが必要なうえ、怪我人も多数出ることが予想される。それならここはアタシの出番なのかもしれない。
「天哉! ここは任せるわね。焦凍の様子も見ててあげて」
「君はどうするつもりだ!」
「あのデカブツを止めたいのよ。アタシの個性が向いてるでしょう?」
「しかし斬れるか?かなりの硬さと大きさだと思うが」
たしかにそう思うのも当たり前だ。最近のアタシは灰を刀状にした灰塵の太刀を使うことが多い。後は移動の時か。だからその印象が強いのだろう。でもこの個性は本来それだけではない。使い道は色々ある。
「考えがあるの。それに早くこっちを片付けて焦凍のカバーをできるようにしないと。彼が負けることは考えていないけど、アクシデントはつきものだから」
「わかった! だが無理だけはするなよ! 委員長としてクラスメイトの傷つく姿は見たいものではない!」
天哉と別れて脳無の下へ。近くで見るとデカいわね。そこにプロヒーローから声を掛けられる。
「雄英生⁉ ここは俺たちが抑えるから無理せず他の援護を頼む!」
「いえ、考えがあって来ました。奴は硬くて大きいうえに棘があって近付くのが難しい、ですよね?」
「ああ……あっているが……どうするつもりだ? 接近戦は不利だぞ?」
アタシが手に持っている刀を見ながらプロヒーローはそう言った。
「小手先の技は通じそうにありませんので、力で叩き潰します」
卍解の名前は期待しないでください。ネーミングセンスってどうやったら身に付くのか……