※※注意!※※
この作品は著しく精度のひくいエミュ、キャラ解釈、キャラ口調が含まれています! そういうことをお気になされる方はブラウザバックをお願いします!
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「問おう。あなたが、わたしのマスターか」
初めてその姿を目にした時、雪ノ下雪乃はとてもきれいだと思った。
黄金の髪に青い瞳。その凛々しい顔だちをした少女はまるでおとぎ話から飛びだしてきた騎士様のようで。
その夜、雪乃は運命に会った。
「あ、あなたはいったい……」
一言二言ほど言葉を紡ぐのでせいいっぱいな雪乃に、その騎士様はゆるりと笑う。
「クラスはセイバー、あなたに従うサーヴァントです。あなたが人の道を歩む限り、わたしはあなたに必ずしや聖杯をもたらしましょう」
「セイハイ? さーばんと? せいばー?」
もしも雪乃に同学年の某オタクのようなサブカルの知識があるのならば、もしくはその言葉の意味を推測することもできたかもしれない。
だが、すくなくとも今の雪乃は眼前でなにが起こっているのかわけがわからなかった。
「……もしかして、ご存じないのですか」
「し、知らないです」
……冷静になって考えてみると、夜更けの教室にあきらかに場違いの甲冑を身にまとった少女。これは不審者とか、異常者とかそういうものではないだろうか。
いきなり床が光って現れた神秘的なこの少女にあっけにとられていた雪乃は我にかえる。
あいにくと一人で部室の掃除をしていた雪乃のまわりには誰もいない。つまり、ここで襲われたり殺されても誰も気づかないわけで。
「まさか、そんなことが……、いえ、でももしかしたらただ巻きこまれただけの……」
「そ、その」
なにやらブツブツと呟いて考えこんでいるセイバーに、雪乃は恐る恐る尋ねる。
己が異常な事態に巻きこまれてしまっていることはわかっていた。恐らくはもっとも正しい道はここからすぐさま逃げだすことであることも。
だが、雪乃はその道を選ばなかった。
「いったいなにが起きたのか教えてもらっていいですか?」
「……いいでしょう、お教えします。わたしがあなたの前に召喚されたのはただひとつ、祖国のためこの魔術の祭典にて勝利をおさめるためです。その魔術の祭典の名は聖杯戦争」
古今東西、ありとあらゆる時代の英雄たちが覇を競いあう奇跡の戦い。
「そして、わたしはアルトリア、アルトリア・ペンドラゴン」
――――――かつてブリテンを治めし、古き王です。
◆◆◆
「セ―ハイセンソー?」
由比ヶ浜結衣は首を傾げた。
眼前で結衣が買ったばかりのお菓子を頬張るひとりの子どもは得意げに笑う。
「そうであるぞ、人よ! この我は大江山にて悪名を轟かせた悪鬼、さあ恐れよ、捧げよ!」
「ははー、それではこちらのチョコも捧げまする」
子どもの言葉に結衣は大袈裟にしながら懐からチョコバーをさしだす。
「む、現世の甘味はすばらしきものばかりだな! これは鬼たるこの我がひとり占めにするにふさわしきものだ!」
口のまわりをベタベタにしている子どもに、結衣は微笑ましい思いになる。
やんちゃな小学生だ。実にらしいともいえる。
恐らくは最近流行っている某ジャンプの鬼狩りのアニメでもみて、影響されたのだろう。これぐらいの歳の子にはよくあることだ。
なぜ敵役の鬼を名乗っているのかはよくわからないが。
さて、と結衣はたちあがった。
いつのまにかそばにいたこの子どもは、恐らく迷子になったのだろう。そろそろ交番にでもいって親御さんを探さなければならない。
「恐れ入ります、鬼さま。お名前をお教えいただいてもよろしいでしょうかー」
「よい、よいぞ! そうだ、人はそうして吾を恐れればよいのだ!」
結衣は子どものごっこ遊びにつきあって、ははーと平伏する。それに気を良くした子どもはガハハハとかわいらしく大笑いした。
「吾が名は大江山は鬼の大頭目! 茨城童子である!」
……あんまり子どもっぽくない難しい名乗りだ。
◆◆◆
「おい、マスター! べつに貴様がマスターでないならそうやってベッドで腐って人生を無為に終えたとしてもかまわんが、曲がりなりにもマスターだというのならオレにネタを提供しろ!」
ああ、まただ。高校生にしてはずいぶんと濁った瞳をしている比企谷八幡はため息をついた。ベッドから顔をだすと、青い髪の口の悪いクソガキが口をとがらせている。
「うるさいな、幽霊だって言うのならもっと静かにしろよ……」
「死んだとしても作家というものは締め切りに追われるものだ、それがくそったれな神の定めた性なのだからな」
このキャスターと名乗るクソガキは、いつのまにか八幡のそばにいた。
初めは警察を呼ぼうとした。だが警官が家にやってきた時にはなぜかこのクソガキは跡もかたちもなく消え去っている。
さんざん赤っ恥をかいた後、幻覚だったかとベッドに潜ると、また現れたのだ。
そうしてその科学では説明のつかない、と八幡は信じたくないがだがそうとしか考えられない、魔術のような技でこのクソガキはずっと八幡につきまとうのである。
「はっ、人間不信もここまでくると傲慢だな! それほどまでに自意識過剰な思春期真っ盛りの男子などネタにもならん」
今だってそうだ、微妙に心にぐさぐさ突き刺さる罵詈雑言をなげつけてくる。
八幡はちょっと涙目気味の顔を隠しながら、先ほどまであのクソガキが独占していた自らのスマホに目をやった。
あのクソガキは文才だけはあるようでネットに小説をあげてはそこそこ人気になっているようだった。ただ、作者を知る八幡にとってはそのペンネームは笑いものだったが。
なにがハンス・クリスチャン・アンデルセンだ。
あんなこの世でもっとも高名な童話作家とこのクソガキに一パーセントでも共通点があるのなら鼻からスパゲッティ食ってやる。
◆◆◆
材木座義輝は、その日運命と出会った。
「みてくだされ、このラノベを! 我がおすすめする最高のtueeeでございますぞ!」
「ほっ、こ、これは! 現代においてもかのシャルルマーニュ十二勇士に勝るとも劣らぬ騎士譚にお目にかかれるとは!」
義輝の眼前にてライトノベルの単行本にかじりつくひとりの老人。
大振りに手を振り回しながらその興奮を伝えてくる老人は、まさに義輝の同類、英雄譚に憧れる童心をもったまま歳を重ねたひとりの男であった。
かつての自分からしてみれば、こんなことになるとは思いもしなかっただろう。
義輝はふと考える。
義輝にとって、こんなに話のあう老人、いや人間には今まで会ったことがなかった。まさに目をあわせたとたん意気投合してしまったのである。
この老人は、まさになにを打っても響く。
普通の人ならば顔をひきつらせて遠ざかっていくところを、このランサーと名乗る老人は身を乗りだしてくるのだ。それは、義輝にとっての初めてであった。
突然目の前に現れた不審者とはいえ、こうして家にあげてしまうほど義輝は気を許している。
が、なにもかもが義輝にとって嬉しい話ではなかった。老人にはもうひとりつれ人がいたのである。
そして、なぜか義輝はその女性が心から嫌で嫌でしかたがなかった。
「はい、どうぞ」
話しをすればなんとやら、老人の従者と名乗るその女性がジュースの入ったガラスのコップをもってくる。その頭ではロバの耳がぴくぴくと動いていた。
大好きなライトノベルを熱弁する義輝をみつめるその瞳はいつもどこか冷めている。まるで、それは現実から逃げる己を責めたてているようで、どうにも好きになれなかった。
「そういえばワシの名を名乗っておらなんだな、マスターよ」
ふと、老人が義輝に向き直る。その瞳には真剣な色があった。
マスター? 義輝は首を傾げた。老人はたしかに己のように創作物に熱をあげるオタクだが、しかしそんな中二病な言葉は使わないはずだった。
「わが真名はドン・キホーテ。妄想にとりつかれし凡人であり、マスターにつかえるサーヴァントじゃ」
◆◆◆
「悪を、僕は許さない。僕は君に従うサーヴァントであるとともに君を量る天秤でもある」
それが、己のサーヴァントと出会った時の最初の言葉だった。
葉山は眼前で神に祈りを捧げる一人の処刑人をじっとみつめる。現代の日本人らしく信仰にうとい男子高校生であっても、その祈りにこめられたひたむきな思いは疑いようがなかった。
葉山は、この男の人生を知っている。
名乗られてからしばらくして、密かに調べたのだ。勉強が苦手というわけでもないが、世界史にそれほど興味があるというわけでもない葉山は、初めて革命の舞台裏を知った。
はたして己があの時代にいたとして、いったいなにができただろうか。
暴走する正義に、悪と断じられていながら感情も友人も良心もあった罪人。己がこの男と入れ替わったとして、心を正気で保つことができるとはとても思えなかった。
彼は、己はマスターを量る天秤であると語った。
では、己は、葉山という男は、その天秤に適うことができるのだろうか。いい顔しいで、いつも選ぶことのできない己は、はるか昔を生きた静かなる処刑人の目に適うのだろうか。
シャルル=アンリ・サンソン。
たとえそれが敬愛する王とその妃を殺し、友すらも首をはねることになろうとも、それでも処刑人という己を貫き通したこの男のマスターに、葉山はなれているのだろうか。
◆◆◆
「はっ、はっ、はっ……」
暗い居間に、荒い息が響く。床にへたりこみ、眼前の真っ赤な血を目にする陽乃はなにかがおかしかった。
いつもは友人にむけられていたはずの楽しげな笑みはみる影もない。ただひたすらに恐怖に震えおののいている陽乃に、サーヴァントの暗い影が覆いかぶさった。
むきだしになった白い歯が、にやりと弧を描く。ぐしゃぐしゃに折りたたまれたその顔には、深い愉悦が刻みこまれていた。
「いったろう、サーヴァントってのはマスターの同類が呼びだされるって。俺もマスターも、ただ自分の夢に嘘をつけない、正直者だってことさ」
「これが、こんなものが、わたしなはずが……」
泣きだしそうな顔をした陽乃が、後ずさる。だが、その背後にたつサーヴァントは陽乃が現実から目をそらすことを許さない。
優しいその手が、陽乃の肩に触れる。びくりと震えたその耳もとに、黄金で彩られたその船乗りは囁く。
「自分に嘘はついちゃいけねえ、ほんとはずっとこうしたかったんだろ?」
マスターとサーヴァント。その眼前にひろがるのは、酸鼻を極めた惨劇であった。
内臓が飛び散り、噴きだした血が床にたまっている。暖かな家族の歓談が響いていたはずのその居間には、ただ死の静寂のみがあった。
その中心。
碇、それも大昔の帆船の時代のものがころがっている。現代の日本にあまりにも不釣り合いなその異物は、なにかを圧し潰していた。
人だ。歳は中年といったところか、男女ふたりが折り重なるようにして死んでいる。そして、それはくしくもマスターの親であった。
「うっ」
ほかの誰でもない、己のサーヴァントがひきおこした虐殺に、陽乃は吐き気をこらえきれない。胃酸ごと床にぶちまけた吐瀉物は血とまざりあってなんともグロテスクなモザイクを描いている。
人がみてよいものではなかった。
親が惨殺される、その始終を目にしたのだから陽乃は気を失ってもよい。むしろそちらのほうが幸せなまであった。
だが、恐るべきことに陽乃は己のなかにもうひとつの感情が渦巻いていることに気がついていた。決して認められるはずのない感情、開放感、自由であるという思い、喜び……。
陽乃は己が笑っていることに気がついた。
こんなはずではない、こんなものが己の本性であるはずがない。
そんな、ほんのわずかの理性が溶けてゆく。悪逆へと堕ちてゆくマスターを目にして、そのサーヴァントはより笑みを深めた。
ああ、思ったとおりだ。信心深い己に神はよい運を恵んでくれたものである。
「ハッハァーッ! さあゆこうぜ、信念と夢の果て、お宝だらけの新天地によォ!」
そのサーヴァントは虚ろな瞳でみつめてくるマスターに微笑む。
かつて虐殺に強奪、おおよそこの世のありとあらゆる悪徳を、ただ異教徒であるからというだけで許した男、偉大なる航海者。
クラスはライダー、クリストファー・コロンブスが略奪の祝砲を鳴らした。
◆◆◆
「役者はそろったようじゃの」
その者が生きている時、この世界最大の都市は東国の田舎、しなびた漁村であった。不夜城と讃えられる灯りの絶えない街、その礎を築いたのは彼女のかつての同盟者である。
「フランスのギロチン落としに童話作家まで、よくもまあ人を集めたもんじゃ。この聖杯とかいうやつはマジですごいのお」
ここに魔術師がいたならば目をひんむいたであろう、そんなてきとうな手つきで一人のサーヴァントが黄金の杯をもてあそぶ。
人類の英知、東京スカイツリー。
その頂上に君臨するはこの国でもっとも名の知れた大英雄。
「それでは、始めるとするかの。魔術のありえぬこの世にて、それでも集いし七騎のサーヴァントと七人のマスターによる、殺しあいを」
第六天魔王、織田信長が笑う。
「聖杯戦争じゃ」
比企谷八幡 → アンデルセン (キャスター)
雪ノ下雪乃 → アルトリア・ペンドラゴン (セイバー)
由比ヶ浜結衣 → 茨木童子 (バーサーカー)
材木座義輝 → ドン・キホーテ (ランサー)
葉山隼人 → シャルル=アンリ・サンソン (アサシン)
平塚静 → 織田信長 (アーチャー)
雪ノ下陽乃 → クリストファー・コロンブス (ライダー)
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