転生したら織田信広だったので信長(妹)をコマそうと思う。   作:鴉の子

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あまりにも生活が上手く行かなすぎててやばいぜ!!!!(言い訳)
というわけで桶狭間まではさっさとやるよとかほざいておきながらこの体たらく、許してください……


十五話:THE WINNER

 

 原初の飛び道具とは、投石であったとされる。手を持って生まれた生物が生み出した、最初の殺傷手段。

 

 それは投石器に形を変えて、かつて巨人を狩る奇跡を成したと伴天連の宣教師が言った。

 

 当然、戦国の世でも投石は基本的な攻撃方法である。安くて、誰でも出来て、人が死ぬ。

 

 さて、しかして雑兵が行うそれと、鬼の膂力を持つ者が行うそれはまた異なるわけだ。具体的にはそう、火縄銃の弾丸を超えるスピードで岩石が飛んできたら? 

 

 総重量3kgの物体が、握りつぶされながら、音を超える速度で投げつけられる。当然、岩は耐え切れずに砕け散るが、礫は一つ一つが人体を水の入った風船のように破裂させるに足りる威力を持つ。

 

()()()

 

 だが、天下を手にしようとする男、今川義元は怒りに染まった信広の表情、怒号の音でその威力を把握した。

 

 声は、人体の構造を推し量るのに重要な要素である。理論上は声を解析すればその人間の体格、筋力を数値的に割り出すことも可能なほどだ。そして、武人というものは経験と勘でそれを成す。

 

 そして、選ぶのは回避でも防御でもない。

 

「────阿呆め」

 

 弓につがえる矢は三本、それにて十分。放たれたそれは、正面に迫り来る礫の数々を風圧と衝撃で迎撃する! 

 

「鬼神何するものぞ! 物怪の一つや二つ、わしが殺せぬと思うか!」

 

「思わねぇよ」

 

 怒気に満ちた声が、義元の頭上より響く。そして、落ちる雨の雫より疾く、焔を纏った刃が振り下ろされた。

 

「(礫は目眩し……! あの一瞬で跳躍したか!)」

 

 抜刀、即座に防御。迫り来る熱を受け流し、火花が散った。

 

 直後、空中で無防備になった信広の身体を渾身にて蹴り飛ばす。まるで鉄塊を蹴り飛ばしたかのような感覚に、薄らと冷や汗をかくが、すぐに雨に流された。

 

 信広は血を吐く。筋肉と骨を超えて、内臓が損傷した証、初めてのことであった。

 

 大太刀を構える。すでに、怒りは閾値を超えて脳は冷え切っていた。極めて冷徹な思考で、織田信広という男は彼我の戦力差を理解する。

 

()()()()

 

 厳密に言えば出来なくはないが、少なくない被害を受ける。そして、それは己の命か、自身を助けようとするに違いない今も半死半生の妹の命が必要だろう。

 

 だがそれは敗北と同義である。

 

 少なくとも、信広はこう考える。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 ならばどうする? 加速する思考は盤面の存在を数え直す。潰走する兵士たち、倒れ伏す妹。

 

 足りない、一手が。どんな攻撃でも、一撃を凌がれた後に己か妹が絶命する。

 

 そう考えた時、視界に、光が映った。

 

 冷たい雨の中で、僅かに暖かな光。そう、雲間に光る太陽のような光だった。

 

 目線を動かせば、親指を立てている藤吉郎(バカ)。思わず笑みが溢れそうになるが、噛み殺した。バレたら終わりだからね。

 

 がちん、と歯を噛み合わせて鳴らす。焔が弾けて散った。

 

「三手、足りたな。今川義元、殺させてもらう」

 

「ほざいたな、若造」

 

 戦化粧か、白粉と紅の薄く塗られた義元が凶暴に笑う。弓をしまい、太刀を両手で構えた。

 

 一手。

 

 踏み込み、間合いを詰める。歩法も何もない、瞬発力だけで行われる一撃。だが振り下ろしではなく、喉元を狙った平突き。直撃ならば間違いなく絶命する一撃が音を超え、衝撃波とともに撃ち込まれる。

 

 だが、当たらぬ。紙一重で太刀で受け流され、兜を掠めるのみ。

 

 だが、構わない。

 

 義元ならば体重を乗せすぎた突きに反撃をすかさず行う、油断せず、俺の首を断ち切るに違いない。ならばこそ! 

 

「サルゥァ!!」

 

 背後に、泥に塗れて伏せているのはこの瞬間まで懐に火縄と火薬を、雨から油紙で隠していた藤吉郎。

 

「合点でござるよ!」

 

 着火、爆裂、発射。

 

 鉛の弾丸が義元の胴体を貫いた。決して、神秘ならぬものであるが、何故か、旭の光を纏っているかのような一撃。

 

 ……だが、仕留めるには足らず! 

 

「これで、仕留められると思うたかぁ!」

 

 一切の怯みなく。痛みすらも切り捨てる、武人ならば誰でも行える戦闘思考。即ち、直径五分(13mm)の傷が体を貫いていたとしても。あるいは、体内で膨れ上がった鉛が肉体をそれ以上に損壊していたとしても、急所でなければ、目の前の織田信広を殺すには十分に肉体の機能は残されている。

 

 故に、義元の太刀は振り下ろされ、信広の肩を裂く。首よりはズレたものの、そのまま肉体を両断しようとした。

 

 だが、瞬間、信広は大太刀を手放し、前のめりになった身体を、そのまま転ぶ寸前まで低く落とす。そして、あらかじめ空けておいた片手で義元の片足を掬い上げる様にさらに踏み込んだ。

 

 遠い未来においては、ローシングルレッグタックルと呼ばれる、マウントを取るための技法。そして、組討においてはさらにもう一つ。

 

「くたばれや……!」

 

 全身体重に重力をのせた、肘打ち。胸骨、あるいは喉元へ行われ、人体の急所を砕く。そして、これは胸骨より左、心臓へ! 

 

「がっ……!?」

 

 衝撃、圧力、破壊的な一撃により、心臓は即座に停止。その後に一瞬遅れて、損壊。

 

 二人、泥と血に塗れて、倒れ伏す。

 

「…………見事!」

 

「見事、じゃ、ねぇよ。くそっ、しんど……」

 

 なんで心臓潰されて元気そうなんだこのおっさんは。血反吐を吐きながらそんなことを思う。焔で自らの傷を焼結しながら、痛みに悶えて立ち上がった。

 

「勝ったぞ、俺たちは」

 

「わしの首は重いぞ」

 

「あいつに天下取らせるんだ、それくらい構わん」

 

「……ふ、あの男の息子と女らしい、ならば成し遂げよ」

 

 仰向けに倒れ込んでいたはずの、致命傷を受けた半死人が、起き上がり、正座を組む。

 

「さぁ、やれい!」

 

 瞑目して、太刀を拾い上げて、振りかぶる。

 

「……あんたすげぇよ」

 

 感嘆と共に、一呼吸おいて。

 

「……織田信広、その首、貰い受ける」

 

 暗雲と雷の下で、勝鬨が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ────────ー!!!!!!!!!! 死ぬかと思った!!!!!!!!! 三回くらい死ぬかと思った!!!!!!! 

 

 なんで矢がソニックブーム出すんだよ!!!! (自分も突きで出していたのは棚に上げる)。

 

 もうやだ!!!! おうち帰る!!! 

 

 ボロボロの吉法師を背負って、調子こいてるサルをボコボコにしながら家路に就く。

 

「吉法師ー? 生きてるかー」

 

「生きとる……なんとか……」

 

 応急処置はもう既に済ませた、焼酎で洗って縫っただけだからそこそこ不安だが、まぁ丈夫だし出血さえ止まれば大丈夫だろう。

 

はえはひえはいへほはる(前が見えないでござる)

 

「うるせぇ、お前がちゃんともっと腰骨とか狙わなかったから俺の肩が裂けたんだぞ」

 

 顔がパンパンに膨れ上がった藤吉郎を横目に、陣へ辿り着く。

 

「勝ったぞ!!!!!」

 

 首を掲げて帰宅、いや帰陣。陣には聞きつけたのか、潰走した今川の軍を跳ね除けて戻ってきていた竹千代。

 

「……勝ちましたね」

 

「おう、勝ったぞ。2度言わせんな」

 

「……正直、死ぬ気で居ましたが、なるほど。藤吉郎殿ですね」

 

「お、わかる?」

 

 流石、人を見る目なら俺にもそこそこ追いつきそうなだけある。

 

「ところで、何故顔が腫れ上がっているのでしょう」

 

「俺が10発殴った」

 

「よく生きてましたね?」

 

 俺もそう思う。

 

「まあ、それはともかくだ」

 

「はい、今後の事ですね」

 

「違う」

 

「えっ」

 

「軍の撤収、兵士に温かい飯と、酒!」  

 

「あっ、確かに」

 

 戦争は勝った後が大変なのだ、親父見てたからよくわかる。しかもこんな大きい戦だ、雨も降ったし、兵士の疲弊は相当なものだろう。

 

「今川義元を討ち取ったことはもう伝わってるじゃろ……ごほっ、軍は敗走してる兵を出来るだけ虐めたら一度後退するように伝令に渡しておけ」

 

 背負われた信長が、細々と指示を出している。胸に穴が空いているというのに元気なものであった。

 

「よし、帰るまでが戦争だ。怪我人拾って飯食わせたらさっさと寝るぞ!」

 

 

 

 ────これにて、織田信広の初めての大一番は勝利にて終わる。

 

 傷跡は残ったが、失うものは少なく、得るものは大きい。だが、時代はうねりとなって全てに襲いかかる。

 

 この後、今川の領地を勢い付いた織田軍が簒奪、過程で竹千代、松平元康率いる三河武士達が大いに活躍、今川の有力な武将を討伐。

 

 そして、最後に残った鳴海城の開城。ここで岡部元信による強硬な抵抗に遭うが、織田信広率いる軍勢と、それに伴った元康により城内の生き残りを残さぬ凄惨な所業により制圧。

 

 これにて、決着となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、少しだけ時は流れて。

 

 織田信広私室にて、畳の上に並べられる無数の茶器。茶入れ、茶碗、匙、それらを前に、頭を抱えて唸る信広と、その正面に座る男が一人。

 

「………………違いが……わからん……!」

 

「“へにょっ”としとる方です……!」

 

「左介……! 俺には“ずにゃっ”としてるようにしか見えん……!」

 

「いえ、“へにょっ”としておるのです!」

 

「なんだよ“へにょっ”って!!!!!」

 

 茶器を熱く語る男、古田左介を前に、苦戦を強いられる。戦争の方がマシだったかもしれない。そう頭を抱える信広であった。




へうげもの、めちゃくちゃ面白かった(摂取したものをそのまま出力する怪物)
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