現時点では、書籍版が圧倒的でした。
web版ほどすぐ見れないので、少し更新が遅くなってしまうかもしれませんが……よろしくお願いします!
オーガ編から変えていこうと思ってます。
ではどうぞ!
視界を埋め尽くすのは、狂った様に踊る赤。
空から降り注ぐのは、希望では無く、全てを焼き尽くす焼夷弾。
『HAHAHA!見てごらんよ、この燃え盛るキャンバスを!4歳の子供が握るには、お母さんの手はあまりにも軽くなりすぎちゃったね?』
シズの意識の底、暗い記憶の淵に、黄金の三角形が浮かんでいる。
ビル・サイファーは、彼女の凄惨な過去を特等席で眺めていた。
「……あ……ああ……」
幼い静江は、炎に囲まれ、絶望に立ち尽くしていた。
生きたい。その一念が、異世界の「声」を呼び寄せる。
だが、答えたのは天使でも神でもなく、一人の魔王だった。
召喚の光が収まった先。そこにいたのは、プラチナブロンドの髪をなびかせた、透き通るように美しい男。
魔王、レオン・クロムウェル。
「ああ……また、失敗だ」
『ひどい言い草だね! 命懸けで時空を越えてきた女の子を「失敗作」呼ばわりかい? レオン、君の美的センスは相変わらず極端すぎて笑えるよ!』
ビルが空中で嘲笑う。
レオンは死にかけてる静江をゴミと呼び、暇つぶしに
それが彼女の
皮肉な運命の始まりだ。
時は流れ、シズは「爆炎の支配者」と呼ばれる英雄となった。
魔王に捨てられ、勇者に救われ、仮面で素顔を隠しながら、彼女はこの世界のために戦い続けた。
彼女には二人の忘れられない弟子がいた。
一人は太陽の様に明るい少年、
もう一人は、闇を抱えた天才少女、
『おやおや。ヒナタ・サカグチ! あの娘は最高にクールで、最高に壊れていたね! 君の強さを一ヶ月で追い越して、振り返りもせずに去っていく……。三次元の師弟愛なんて、才能という濁流の前では砂のお城も同然さ!』
「……ヒナタは、寂しい子だった。私に似ていたけれど、私よりもずっと、世界を拒絶していたわ」
そうして時が経ち、彼女は最後の旅をすることになった。
とても、とても明るいチームだった。
魔物に助けられ、連れてこられた不思議な町。
しかも、スライムが一番偉いときた。
そこで焼肉を食べて、談笑して——
そんな楽しい時間は、唐突に終わりを迎えた。
まだ……、ここでは迷惑に……
そんな意識を嘲笑うかのように、魔人は顕現する。
彼女の意識は暗転した。
◆
『ああ、見てごらんよ。あの救いようのない
私は建て直されたテントの上で、足をブラブラと揺らしながらリムルとチェスをしていた。
視線の先には、回復薬でお肌ツルツルになったと騒ぐエレン、ガルムの試作品を「家宝にする」と拝んでいるカバル、そして牙狼の毛皮を執拗になで回しているギド。
三次元の連中っていうのは、本当に面白いくらい単純だ。
ついさっきまで死を覚悟し、「もうダメだ、俺の人生は終わりだ……」なんて絶望してた奴らが、ちょっとした魔法の薬と、光り輝くガラクタ——彼らにとっては至宝らしいが——を与えられただけでこれだ。
彼らの脳内では、既に恐怖の記憶はラッキーな報酬という記憶に塗り替えられている。
『リムル、君ってやつは本当にお人好しだね。貴重な
リムルはスライムの体をプルプルと揺らしながら、満足気に彼らを見送っている。
「いいんだよ、彼らには情報を伝えてもらうっていう大役があるんだから。それに、あんなに喜んでくれたんだ。悪い気はしないだろ?」
『悪い気はしない、ね。彼らに渡したあれらを売れば、田舎に豪華な別荘を建てられたはずだよ。……まあ、いいさ。私はこの世界の退屈な物理法則が、彼らの浅ましい喜びでどう歪むかを観察させてもらうとしよう』
カバルたちは「旦那! 旦那!」と、リムルを神か何かのように崇め奉りながら去っていった。あのマヌケな背中。三日も経てば、自分が死にかけた恐怖なんて酒の肴に変えて、「いやー、あの時は俺の剣が唸ってよぉ!」なんて吹聴するに決まっている。
恩義なんてものは、一週間も持てばいい方の記憶のゴミさ。
*
一週間が経った。
ついに、運命の時計の針が不吉な音を鳴らして動き出したんだ。
テントの中で、ずっと眠りについていたシズが目を覚ました。
彼女の魂は、すでに燃え尽きた紙屑の様にボロボロだった。
イフリートという強引な熱源を失い、かろうじて保っていた肉体の均衡が、砂時計の最後の砂のように崩れ始めている。
私はシズの枕元にゆっくりと降り立つと、彼女はぼんやりとした、しかし確かに警戒心を含んだ視線を私に向けてきた。
『やあ、爆炎の支配者。……いや、今はもう賞味期限切れの英雄さんかな?気分はどうだい?君の中に居座っていた炎がいなくなって、ずいぶん静かになったろ』
「……あなたは?夢の中で……見たような……」
『私かい?私の名前はビル・サイファー。夢の支配者であり、
「ビル、やめろ。……シズさん、こいつの言う事は気にしないでくれ」
リムルの静止を無視して、私は彼女の顔を覗き込む。
『
シズは力無く微笑んだ。私の無遠慮な言葉を、否定する気力すら残っていない様だった。
「ええ……、わかっているわ……。スライムさん、ごめんなさい……迷惑を……。夢を、見ていたよ……。懐かしい夢。もう戻れない……、町の」
「日本の事か?」
リムルの問いに、彼女はそっと頷いた。そして、核心に触れる。
「なあ、スライムさん。君の名前は、なんていうの?」
リムルは「リムルだ」と答えたが、彼女の視線はそれを許さない。魂の深淵に触れるような、死の間際にだけ許される鋭い直感。
「本当の名前は、教えてくれないのかい?」
リムルは一瞬、深い沈黙に沈んだ。だが、彼は決めたようだ。
「ふん。どうせ、貴方は長くない。教えよう、三上悟だ」
「やはり、日本人だったのか…。そうじゃないかと、思ったんだよ。雰囲気が…ね。」
「わたしの弟子達にも、聞いたんだ。綺麗な町になったんだって? あの、周りを見回しても、火の海だった、町が…?」
「ああ。何なら、見せてやるよ。」
「ああ……」
彼女の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
その涙は、彼女が長年抱えてきた「爆炎」を、ようやく冷やすための慈雨のようだった。
「……ねぇ、そこの、黄金の三角形さん」
『おやおやおや、私に御用かい?遺言なら、面白いのを頼むよ』
「あなたは……スライムさんの、味方なの?」
私は単眼を細め、ニヤリと笑った。
『味方?悪魔にそんな安い概念を求めないでほしいね。私はただの観客さ。だが、この三上悟……リムル=テンペストは、この世界で一番面白いショーを見せてくれそうだからね。今は彼の隣に座っているだけさ』
「そう……なら、安心ね」
シズはリムルに向き直った。そして、彼女の人生の最後にして最大のエゴイズムを口にする。
「ねえ、スライムさん…いや、悟さん。お願いがあるんだが、聞いてくれないかい?」
「なんだ?」
さあ、くるぞくるぞ!
何を望む?莫大な富か?それとも「もっと生きたい」っていう、いつものつまらない生存本能かな?
「私を、食べておくれ…!」
私は思わず杖を落としそうになった。
『……ほう?』
「私にかけられた呪いを、君が喰ってくれた……。嬉しかったよ。私はね……、この世界が、嫌いなんだ。それでも、この世界が憎めない……、まるで、あの男の様だよ……。だから、この世界に還元されたく、無いんだ」
「……」
「お願いだ。どうか、私を、食べておくれ……!」
ああ、最高だ。
なんで歪んでいて、なんて美しい愛と拒絶の形だろう。
彼女は死を受け入れる事で、この世界に還元される事なく、リムルという「個」の中で眠ろうとしているんだ。
『リムル、聞いたかい?彼女は君を墓場であり、「ゆりかご」に指名したんだよ。こんなに重たい贈り物、君に背負えるのかい? 彼女の記憶、彼女の業、彼女の未練……そのすべてが、君の胃袋の中で永遠に消化されずに残るんだよ』
リムルは沈黙していた。
だが、彼の纏う雰囲気が一変した。
静かな覚悟が立ち上がったんだ。
「いいよ。お前の憎しみは、俺が引き継ぐ。お前を苦しめた、男の名前は?」
彼女は火傷の痕が残る顔を引き攣らせ、涙を流しながら、その名を絞り出した。
「レオン・クロムウェル。最強の"魔王"の一人…。」
魔王、か。いいね。舞台が整ってきた。
物語ってやつは、敵役がいないと締まらない。
リムルは、彼女を安心させるように力強く宣言した。
「約束しよう! 三上悟…いや、リムル=テンペストの名に於いて!レオン・クロムウェルにきっちりと、貴方の憎しみをぶつけて、後悔させてやるよ。」
「ありがとう……」
シズは安らかな顔で目を閉じた。
彼女の呼吸が止まり、魂の重みが消えていく。
《ユニークスキル『捕食者』を使用しますか?YES/NO 》
リムルがYESと念じると、彼の体が広がり、シズの全てを優しく包み込んだ。
『ああ……いいね』
私はその光景をじっと見つめる。
『終わりと始まりが、こんなにも綺麗に重なるなんてさ』
リムルの中で、彼女は眠りにつく。
幸せな、幸せな夢を見ながら。
読んでいただきありがとうございました!
早くビルの戦闘を書きたい……でも攻撃手段をどうするか……。
そうだ!オリジナル技考えまくったろ!(バカ)
原作再現は勿論しますとも、ええ。
ただ、アニメではそんなに特別な技使ってなかったんですもの!
それではまた次回!