伊地知虹夏はやり直す   作:BB

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Re:結束バンド

「ぼっ――、ひとりちゃんはなんかあだ名とかないの?」

 

 ぼっちちゃんの勧誘に無事成功し、下北の街を二人で歩く。今回は喜多ちゃんがばっくれたわけではないのでもしかしたら断られるかも……と思ってたがどうやら杞憂だったららしい。吃りながらもなんとか会話してくれて、ライブの件は承諾してもらえた。

 

「あ、あだ名とかは特に……友達も結局できなかったので……へっ」

 

 お、おう……今のこの状況、ぼっちちゃんの命名権をリョウから盗めるんじゃなかろうか……と言うわけで質問したらなんか悲しい答えが返ってきた……まあそれはともかく、せっかくだし命名権をもらっておこう。リョウには悪いけど。

 

「それじゃあさ、ぼっちちゃんとかどう?」

 

「えっ……」

 

 あ、あれ? ちょっなんで泣いてるの!? も、もしかして嫌だったとか……? でもリョウがこれ言った時は喜んでたよね!? 私か? 私が言ったからダメだった!?

 

「ご、ごめん! べつに悪い意味じゃなかったんだけど……! 傷ついたんなら謝るよ……あだ名の話は忘れ――」

 

「ぼ、ぼっちです! ぼっちがいいです! うへ、うぇへへへへ」

 

「そ、そう? 泣くほどいやだけど無理してるとかなら全然正直に言ってもらっていいんだよ?」

 

「あ、いえ、全然無理してるわけじゃないです……! ただ嬉しくて……そ、その私――」

 

「もう友達いないトークはおしまい! もうぼっちちゃんはひとりぼっちじゃないんだから!」

 

「あ、はい。うへへ、友達……!」

 

 なにこの可愛い生き物。こんな可愛い癖にあんなかっこいいギター弾くんだから反則だよ反則! まあ最初の頃はそれを拝聴できないわけだけど……私たちがギターヒーローを育てるって言うのも乙なものじゃないかな!?

 

「と言うわけで早くスタジオ行って合わせよう!」

 

「どう言うわけですか!?」

 

 

「まさか本当に野良ギタリストを連れてくるとは……虹夏、侮れない女」

 

「あ、後藤さん……」

 

「き、喜多ちゃん? どうしてここに……? て、てっきりバックれたのかとばかり……」

 

「うっ……そ、そんなばっくれるわけないじゃない! ただせっかく教わったのに結局間に合わなくて……」

 

「まあまあ喜多ちゃん、なんとかライブは出来そうなんだから気にしないで! これからできるようになってけばいいんだよ!」

 

「伊地知先輩……!」

 

 あれ、この子、こんなに繊細だったっけ? 少なくとも当日にバックれるくらいのメンタルはあるはずなんだけど……今回はしてないけど。

 

「それじゃあ改めて紹介するね! 後藤ひとりちゃんことぼっちちゃんです! 拍手ー!!」

 

「虹夏、ぼっちって言うのは?」

 

 拍手しながらも怪訝な顔でリョウが問いかけてきた。まあ普通に考えたら酷いあだ名だよね……

 

「”ひとり”だからぼっちちゃんってあだ名にしたんだ」

 

 ほんとはリョウがつけるはずだったけど……まあいいよね!

 

「虹夏、それはどうかと思う」

 

 こ、こいつ……! 本来は自分がそのあだ名つける癖に……! ただこっそり命名権を奪った手前なんか強く言いにくい。

 

「ぼ、ぼっちがいいんです! な、なのでリョウさんもぼっちって呼んでください……!」

 

「あれ……私名前言ったっけ? 虹夏、伝えた?」

 

「あ、あ、き、喜多ちゃんが言ってたので……! あ、合ってますよね!?」

 

「まあいいや、よろしく、ぼっち」

 

 少し怪訝な顔をしながらもリョウは会話を流す。まあ現状そこまで興味ないんだろうな。

 そんなリョウを見てぼっちちゃんは安堵の表情を浮かべていた。やっぱ可愛いな。

 

「そ、それじゃとりあえず合わせてみよっか!」

 

 今回は私がぼっちちゃんをリードしてあげなきゃ! 合わせ限定とはいえぼっちちゃんより上手なのなんて今しか体験できないんだから楽しむぞ……!

 

 なんて思ってた時期が、私にもありました。待って……!? なんでこの段階でこんなに上手いのこの子!? ソロでやってる時ほどじゃないけどそれでも上手すぎる。でもワンマンって訳じゃなくて私たちをちゃんと引っ張ってくれるような演奏。ほら、リョウも喜多ちゃんも放心状態じゃん。

 

「後藤さんってこんなに上手かったんだ……」

 

「うん、確かに上手い。非常識なほどに。ぼっち、ほんとにバンドやってないの?」

 

「う、うへへへ、ば、バンドはや、やってません。ほ、本当に」

 

 リョウからも喜多ちゃんからも褒められてぼっちちゃんは有頂天だ。それに対して私は少なからずショックを受けていた。アドバンテージがあったはずなのに……

 

「それに虹夏も急に上手くなってない? リズムが安定してて私も演りやすかった」

 

 え、えへへへへ、思わぬところから来た褒め言葉に、私はだらしなく頬を緩める。自信を喪失してたところに対しこの褒め言葉は心にクルものがある。

 

「も、もう一回だけ合わせませんか? な、なんかすごい楽しくて…….!」

 

「うん! 時間の許す限りやろ! ほら、喜多ちゃんもせっかくギターあるんだし一緒にやろ!」

 

 こちらを寂しげな目で見てる喜多ちゃんにも声をかける。やっぱ仲間外れは良くないよね。

 

「あ、は、はい!」

 

 喜多ちゃんも目を輝かせてギターを手に取り私たちの輪に混ざってくる。彼女の演奏もぼっちちゃんがくる前とはえらい違いだ。まだまだ荒削りだけど……やっぱ結束バンドはこうでなくっちゃ! せっかくだし結束バンド初ライブ、四人で大成功にしてやろう!

 

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