嘘と言うよりこっちを書きたくなったというかなんと言うか...やむを得ずこっちになりました。
一応今回で紅魔郷、紅霧異変は最後です。
さて、式は助かるのか?※助かります
それでは
「まずいぜ、式...」
魔理沙が青ざめた顔で、壁を砕きながらただただ落ちてくる天井だった石を見つめながら言った。その言葉には勢いがなくそんなことは百の承知だが、式もただそれを見つめる他なかった。何を考えようにも『死』が頭を埋め尽くし、まったくもって役に立たない。
「どうしよう、まりさ」
震える唇を懸命に動かし魔理沙の良き返答を願ったが、そんな都合よく答えが帰ってくるわけも無く返答はなかった。魔理沙は自分の声が聞こえていないのか、ぼーっと上を見上げて動こうとしない。次第に石と石が隙間を埋め光りも無くなっていく。そこで止まってくれないかな、と思ったがその思いも空しくガリガリと音を立てている。
このままじゃ二人とも死ぬ!自分がどうにかしないと!!
といってもどちらかが死ぬことは望めない。式は一枚のスペカを取り出した。
「纏符『土怨』!」
土のことで知っていることは数少ない。このスペカになったのも咄嗟の思いつきで、今更変更するのも時間が惜しい。それでも式は覚えていて、なおこの状況で役に立つ物を薄れつつある過去の記憶から搾り出す。そうしていると、式の大きな声が聞こえたのか、魔理沙は急にハッとした表情になり上を見上げておもむろにいつかのミニ八卦路を取り代し、叫んだ。
「恋符『マスタースパーク』!」
ミニ八卦路から虹色のビーム?かレーザー?かが勢い良く飛びだし、崩れいく岩を徐々に削っていく。それが数秒続いた後、光りが差し込んだ。式はロボットのようにかくかくとそちらの方に顔を向けると、マスタースパークはすでに終了していて、少しずつ塞がれようとしている隙間に向かって魔理沙が全速力と言わんばかりのスピードで飛んでいた。その最中に魔理沙は何かを思い出した様で、真下にいる式に顔を向けると、顔の前で片手を立てて、ごめん、とジェスチャーをして笑いながら魔理沙は岩の向こうに消えた、と言うか隠れた。
「それは無いよ!」
一人取り残された式は岩に阻まれて聞こえないであろう魔理沙に向かって叫んだ。勿論返事はない。式は何で考えてたんだろうと一人虚しくなりつつも、溜め息を一つ漏らし、気を持ち直して上を向く。岩に視点を移し見つめる。大したスペカを持っていない式だがその能力は『自然現象を操る程度の能力』。
だから、スペカが無くても...いける!
式は意識を集中させ一度もやったことの無いことを実行する。いわゆる冒険だ。式の動作の後、空気は岩を削り、徐々にその形を変えさせる。そう、風化だ。
音も無く感覚だけで岩を削っていくと、次第に岩が壁を削るガリガリと言う音はしなくなっていった。それでも光りは差し込まなかった。静寂のなか式がぽつんと立っていると何かサリサリと音がし、それは次第に大きくなった。
「え、何のおt、うええ!」
式の上降りてきたのはほとんどチリと化した元岩だった。頭に当たったそれは次に肩に当たりそして式を飲み込んだ。
このままじゃまずい。
そう思った式は完全に飲み込まれてしまいあんまり身動きが取れなかったが、その中で懸命に上に向かって掘り続ける。
いま今更だけどこれが砂や砂利じゃなくてちりで良かったと思う。
そうしているとほとんど真っ暗だった式の視界にも光りが射し込み、手は更に軽くなる。気合を入れるために
「あと少し!」
と大きく声を上げる。そして力強く手を突き上げると、手首から上にかけてちりの圧力は無くなり、土を掴もうとする手は空をかいた。手足を器用に動かして足をその上に這い出しやっとの思いで立ち上がる。あんなにも広かった部屋は、そのほとんどがちりに埋まってしまい広い部屋だったことををまったく感じなかった。
「式!大丈夫だったか!いやあ、心配したんだぜ?良く頑張ったな!」
「他人事だね」
少々皮肉っぽく言ってみるが、魔理沙はそれを察しなかったようで「他人だからな」と言い放った。無残にもその言葉は式に軽く突き刺さった。
まあそうだよね...
疲れでだんだんと立っているのも少し辛くなりふらつき、そして倒れてしまった。
「あー、もうふらふらだよ!魔理沙や霊夢は異変があるたびにこんなことしてるんだね、尊敬するよ...」
「いやそんなこと無いぜ?と言うかそんなにたくさん異変はないし、今回が特別だな。こんなに厳しいのは初めてだな。まあ大体は霊夢が活躍して私の出番は無いんだぜ...」
最後の言葉は措いておいて、それが慰めか真実かは分からないが、それを聞いたらすこし希望が湧いたような気がした。
「ねえ魔理沙。あれ何?」
そう言って降りてきたのは他ならぬ霊夢だ。噂をすれば何とやら、かな。
「ああ、手出しは無用だぜ」
霊夢と魔理沙は同じところを見つめた。式もそれに便乗してその方向に目を向けて見ると、すっかり忘れてしまっていた、フランとレミリアだった。二人は剣と槍を絶え間なくはじき合っている。
「どっちかがこの異変の首謀者よね?そいつを倒そうとしてくれてるの?」
「まあそうなんじゃないか?それとあのピンクの方が首謀者だぜ。その妹が姉と敵対してるみたいだな」
魔理沙の説明を聞いた霊夢はなにやら下を向いてわなわなとし始めた。
霊夢って自分の仕事を他人に取られるのが嫌なのかな?いやでもそんな性格じゃなかったはず...
式が勝手な考えをめぐらせていると霊夢が急に頭を挙げた。式は怒っているのかな、と思ったがその予想を裏切るように霊夢の目はきらきらと輝いていた。
「それならいいじゃない!その妹はいい奴なのね。これで私も休めるわ...じゃあ後はよろしくねー」
そう言って伸びをしながら館に背を向けて飛び立とうとした。マジか、と式は霊夢の心を疑った。
そんなのでいいのか!
そんな中、霊夢ははっと何かに気づいた様に周りを見回し始めた。そんな霊夢を見ていると不意に目が合った。
「ああ式、おつ..かれ?...あんた...式よね?」
「え?」
「容姿は式だけど...まさか式に化けた妖怪じゃ...いやでもそうだとしても...」
数秒間目を合わせていた二人だったが、霊夢が突如考え始めたため、最初の質問の意味を理解することが出来なかった。
霊夢の質問は自分が起きたときに魔理沙に言われた物と一緒で自分の目に変化が起きている事を指しているんだと思う。しかしそれだけのことなら、勘のいい霊夢ならそんなことは聞かなくてもわかるはず、
もしかして...自分は何処かおかしくなったのかな...?
と疑心暗鬼になっていると、考えがまとまっていない様子の霊夢が未だに仰向けになっている式に向かって問うた。
「あんた、何者なの?どうして『力を2つ持っている』のか、説明しなさい。ことによってはあんたを退治するわ!」
式は全くと言っていいほど霊夢の言葉を聴き入れることが出来なかった。霊夢は目を点にしている式に向かってお払い棒を突きつけ、いつどう動いても対処できる姿勢にあった。その状態で数秒間、沈黙が続いていると、それを見かねた魔理沙は、二人の間に割って入った。
「こいつは正真正銘の式だ!」
「証拠はあるの?もしかしたら容姿を似せることが出来る妖怪の仕業かもしれないじゃない」
「何いってるんだぜ!」
と、二人はこの状況で口喧嘩を始めてしまった。原因は式のせいなのだけれど、話を良く分かっていない式にとってはそれが他人事のように思えてしまい、疲れた頭を重力に任せてそっぽに傾けた。すると意識していた訳でもなく、交戦中のフランとレミリアが目に入った。あの二人は忙しなく武器を交え、そしてはじきあっている。
のけ激戦をただただ眺めていると、弾き合い、間合いを取ったフランと不意に目を合わせてしまった。
「しき!生きてたんだね!」
そう叫んだフランは嬉しそうに笑った。気持ちがほぐれたせいなのか、フランからは先程までの緊張感はなくなりすっかり力が抜けてしまっていた。式はどう反応していいものか分からずにいると、間合いをとっていたレミリアがチャンスとばかりにフランに向かって突撃した。式は戦っていることをすっかり忘れてしまっているフランに、急いでジェスチャーで伝えた。しかし、それに気づいて剣を構えようとした時にはもう遅く、炎の剣にも関わらずガィン!と鉄っぽい音を響かせ、弾き飛ばされてしまった。再び剣を生成しようとするフランだが、それよりも早くレミリアが第二撃を放とうとしている。レミリアの持つ槍は先程より一回り大きくなり、その力はレミリアのその華奢な見た目からはとても想像できないようなものだった。
「フラーーン!!」
式が出したその大声に、今まで言い争いをしていた霊夢と魔理沙はびくっと肩を揺らし式のほうを目を丸くして見た。レミリアは何も躊躇することなくフランに向かってその大きな槍を振り下ろそうとしていた。フランはそれに恐怖を感じたのか白い顔は更に蒼白になり、あの赤い目を手で覆い隠してしまった。そこにレミリアは一切迷うことなく槍を振り下ろした。あれほどの力であればいくらフランでも無事じゃすまないだろうことを考えると、式も思わず目を覆ってしまった。その状態のまま十何秒間いたが、そうしていればいるほどフランはどうなったのかと言う疑問とそれを知りたいと言う感情が溢れてきた。
恐る恐る疲れてきた手を下ろし、きつく結んでいた瞼をゆっくりと開いた。
「え...?」
式は思わず目を擦ってしまった。それも無理はない。何故なら、先程まで完全にフランをやる気でいたレミリアがそのフランを『抱きしめている』のだ。それにフランも驚きを隠しきれないようで大きく目を見開いていた。
レミリアは笑いかけながらフランに何か話しているが式の位置からでは聞き取ることが出来ない。
「何...?どうしたのあれ?」
「さ、さあ?私にも分からないんだぜ」
ついさっきまで喧嘩していたということをまったく感じられなかった。それほどこの光景が衝撃的だったといえる。そのまま二人を見ていると、何も言わず飛んでいってしまった。それを目で追っていくと、その先に話し終わったのか笑顔で手を繋いでいるフランとレミリアの姿があった。それにひきつけられる様に体を起こし、あぐらをかく。そうしているとフランが突然こちらを向いたかと思うと式の前まで降りてきて言った。
「私お姉さまと仲直りしたよ!私、お姉さまのことちゃんと分かってなかったわ...でも、今度はちゃんと分かった。私お姉さまと一緒に戦うわ!その前に...しき、ありがとう!」
その言葉に式は顔に出てしまうほどにほっとした。言葉だけでなくそれを言っている彼女の表情は、図書館にいたときの心情を忘れさせるくらいに輝いていた。
式は小さく、背中を押したのは魔理沙なんだけどな、と小さく言い苦笑した。フランが?と首を傾げたのに合わせて式はフランに言った。
「よかったね。でもその戦いに自分は混ざれないかな...疲れたよ。じゃあお姉さんと一緒に頑張っておいで」
式はそういって笑顔でフランの金色に揺れている髪を撫でた。するとフランは嬉しそうにレミリアの所に戻っていった。敵になってしまった相手を応援したことを反省したが、その後のフランの笑顔に後悔はしていない。
さっきの疲れたと言うのは、情けないかも知れないが霊力がほとんど持っていかれてしまったのだ。少しとはいえこの半日の間に三回も纏符を使い予想以上に霊力を消費してしまい
まだまだ修行が足りないな...
つくづくそんなことを考えてしまう。
「やっぱりあんた達は退治されたいみたいね。そうだと思った」
「そう言っていられるのもこれまでよ!私、レミリアは博麗の巫女に勝って、この幻想郷を手に入れるわ!」
レミリアが霊夢を睨み付けるが、霊夢はかゆくもないようで溜め息を吐くほどの余裕を持っている。その態度が癇に障ったようで突然大きな声で宣戦布告をかけた。
「行くわよ!フラン!」
「お姉さま!」
その言葉と同時に二人の後ろに魔方陣が現れ、そこから大量の弾幕が放出された。それを軽やかに避ける霊夢と魔理沙だが、そんなことを見ている場合じゃない。式は霊力を回復すべく瞼を深く閉じ、精神統一に入った。これはずいぶん前からしていることだが、これはいくらやっても伸びないようで直ぐには戻らず、じわじわと回復していくためけっこう時間がかかる。
精神統一中でも耳は単純で、ドーンとフラン達の戦う音が聞こえる。魔理沙のなんとも表現しにくいマスタースパークの音も聞こえてきたりもする。そんな感じで気を休めていると、ある声が式の耳に響いた。
「夢想封印!」
これは確か霊夢のスペカだな。となるともう終わりも近いのかな?
気楽にそんなことを考えていると、霊力も半分ほどまで回復した。体の疲れが癒えていることにも安心していると、なにやら少しずつごうごうと風が吹き荒れる音が鳴り始めた。しかもその音は次第に大きくなっている。
そのことに不審を抱いた式は瞼を持ち上げた。
「え、え、ちょ。何これ」
式の目に映ったのは、視界を全て埋め尽くし、空気を押しのけ風を起こしている紅魔館の何倍もの大きさがある陰陽玉のようなものだった。あまりにも突然のことで体が追いつかない。式が戸惑っている間のも陰陽玉は着々とこっちに近づいてくる。
「うわあぁぁぁぁ!」
案の定式はどでかい陰陽玉に飲まれてしまった。
いかがだったでしょうか?
少し微妙なところで終わってしまいましたが紅霧異変はこれで終了です!
宴会は紅霧異変とは別に、ぶっちゃけ次回くらいに出します。
それでは