銀鏡イオリ、倫理観ゆるふわ概念   作:雛烏

8 / 9
 一応、本作は今あるストーリーが全部終わった後の出来事としてますが、ゲヘナ編の後に本作があるわけで。

 いや、だってヒナって曇らせ易いし興奮するんだもん。

 あ、読み返したらデカい文字とか振動とかがくどかったのでちょっと控えめにしてます。


殺人脚と魔王

「…何よ、これ…?」

 

 あの後無理矢理アコを押し退け、身体的・精神的に鈍った身体を動かして現場に急行した私が見たのは。

 

「痛いぃ…っ!!い゛だい゛ぃぃぃ…っ!!」

「ち…血が…!早く、止めてぇ…!!」

 

 文字通りの死屍累々。

 手足が人間では考えられない方向に折れ曲がり、皮膚が深く裂けて鮮血がドバドバと流れ落ち、気絶して倒れた温泉開発部の部員たちが、そこら中に転がっていた。

 先に現着していたセナをはじめとする救急医学部、チナツ指揮下の風紀委員たちが忙しなく動き回っているが…。

 

「うぷ…っ!!」

「ひぃ…!?だ、大丈夫、大丈夫です、から…!」

 

 銃撃戦による負傷者といえば、痣や軽い火傷、血が滲む程度。

 このような重傷者ばかりが転がる現場は、キヴォトスでも類を見ない。今のように凄惨な状況はセナたちも初めてだ。

 部員たちは顔をひきつらせ、時折吐き気を催しながら処置に当たっている。

 かく言う私も、この状況には血の気が引いた。

 

「あ、い、委員長…!!」

「ナミ、ご苦労様。落ち着いて」

 

 顔を青くさせ、半泣きになりながら首が右を向いたまま動かない温泉開発部員を介抱している風紀委員…イオリが率いる第1中隊麾下の第2小隊隊長の来間ナミが、私に気付いて話かけてきた。

 

「い、イオリ隊長とジルが…2人して温泉開発部の奴らを、こんなに…!」

「ジル、が…?ホントに…?」

 

 イオリはまだ分かる。

 "外"の世界で過ごす中で出会った組織に囚われるなり何なりして非人道的扱いを受け、常識改変されてしまったのだろうから。

 イオリは真っ直ぐで真面目な後輩。自分からあのような行為を積極的に行うような娘ではない。私たちが『雷帝』の置き土産で洗脳されたときだって、チナツたち共々自らの危険を顧みずに立ちはだかり、止めてくれた。

 

 しかし、ジルは分からない。

 あまり関わりのある娘というわけではなかった。180センチを越える長身が羨ましいと思ったり、常に細目で瞳が見えないことが微かに気になっていた位。

 よくイオリの補佐をし、職務と規律に忠実な、風紀委員として極めて模範的な生徒で、実力も申し分ないと認識していた。精鋭が揃う第1中隊、その隊長にイオリとジルどちらを据えるか悩んだのは記憶に新しい。

 

「…2人はどこ?」

「すみません…怪我人の対処で手一杯で、そこまでは…」

 

 申し訳なさそうにナミが応えたその直後。

 

「――意外と遅かったね、委員長」

「っ!?」

 

 声のする方を向けば、大型のライフルを背負ったイオリが何かを引きずってゆっくりと歩み寄ってきていた。

 戦闘の砂煙が舞う中、無表情のままコツコツと距離を詰めるイオリ。…あの騒動の後、彼女が泣きながら言っていた「委員長たちの私たちを見る冷たい目」とは、今彼女がしているような目だったのかもしれない。

 

「前よりちょっと撃たれ弱くなったんじゃない?…それはそれとして、カスミは捕まえておいたから」

ドサ…ッ

「お゛…ぐ…っ!??」

 

 イオリが無造作に私の方へ投げ落としたモノ…それは紛れもなく鬼怒川カスミ。私でなければ対処に困る曲者が、ボロ雑巾のような有様になって転がっていた。

 

「ひぃ…っ!?」

「っ…!?!?」

 

 ただでさえ半泣きだったナミが、口元を抑えてとうとう気絶し、力なく横たわった。私も思わず言葉を失う。

 右足首があらぬ方向に折れ曲がり、開放骨折を起こしたらしい屈曲部の皮膚が破れて骨が覗いている。

 それだけでなく、彼女の横顔には爛れたような跡。火傷かと思ったが、傷を見るに何か薬品を掛けられたようだ。

 

「…あ」

 

 虚ろな目をしているカスミが、呆然と見下ろす私に気付いた。その瞬間。

 

「――ひっ!?!?!?」

 

 以前取り締まったときのような珍妙な叫びとは違う…絶望に怯えているような声色で一声叫んだ…と思ったら、満足に動かせる両手と左脚で這い、私の足元に縋りついた。

 

「ごめんなさい…っ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…っ!!も、もう温泉を掘りたいなんて言いませんっ!!入りたいなんて言いませんっ!!風紀委員会には逆らいませんっ!!逆らわないからっ…だ、だから、い、痛いこと、しないでください…っ!!」

 

 カスミが絶対に漏らさないであろう言葉に、私は絶句した。

 

「ひ、ヒナ委員長…っ、そうだ…あ、足を、足でも何でも舐めます…から、何でも言う事聞きますから、どうか…!!う、うえぇぇぇぇぇぇ…っ!!」

「や、止めてカスミ…!!そんなことしないわ!だから止めて…!!」

 

 鼻水・涙・涎…あらゆる液体を垂らしながら私の足に縋りついてくるものだから、ニーソも靴もベトベトだ。しかし、本気で靴を舐めようと口を近づけてきた為、それを気にする余裕はない。

 傷に障らないよう、何とか引き剥がす。カスミの膂力はそうでもないので簡単だった。

 

「温泉開発部はカスミの存在で成り立ってる組織。総大将が再起不能になった以上、残りは自然崩壊する」

 

 必死に訴えるカスミを、まるで炎天下に放置された生ごみを見るような、極めて冷徹な目で見つめながら、イオリは誰ともなくそう言う。

 

「これでゲヘナに巣食うゴミの一角は排除した。…『自由と混沌』っていうのも、考え物だよね。それを免罪符にして、自分たちの欲求解消の為に好き勝手暴れて、正しく生きている生徒や民間人の平穏も、財産も、尊厳も奪う。『それが嫌なら出て行けばいい、ゲヘナなんてそんなもの』って言う奴もいるけど…馬鹿馬鹿しい」

「――そうだよね~隊長。…ほんっっっっとに、その通り」

 

 全くの唐突に聞こえた別の声。

 振り向くと、黒髪ロングで今のイオリと同じ黒づくめの長身…緋脚ジル。

 

「じ、ジル…?」

 

 しかし、いつもの細まった目は真円に近い程開かれ、初めて見る鮮血のような真っ赤な瞳が露になっている。

 愛想よく私の指示を聞き入れ、時折差し入れとしてお菓子をくれたり、ニコニコと業務をこなしていた模範生の姿はない。

 ガン開きの目、妖しく微笑んだ表情は正しくサイコパスだ。まるで、嬉々として非人道的実験を行っていた雷帝(あいつ)のような…。

 

「正しく真面目に生きてる人たちが、何で極悪人の為に引き下がらなきゃいけないわけ?…そいつ等は家を爆破したり、財産を燃やしたり…命を奪っても(・・・・・・)、『ここで反省しろ』って何日か拘留しておしまい?あははっ!もう笑えてきちゃうよねぇ…!!」

 

 愉快痛快だと言いたげに声色が上がる。だが、瞳の奥は全く笑っていない。ハイライトの無い"赤"だけが存在していた。

 

「…委員長、私たちは風紀委員会。校訓である『自由と混沌』は許すけど、悪党、犯罪、邪悪を赦してはならない。勿論、道を外れた生徒たちは正しい道に引き戻す。だけど、私たちが差し出した手を叩き落としてまで、無辜の弱者相手に邪知暴虐を働く連中には、相応の制裁を与えなくちゃだめ」

 

 イオリは一呼吸置いた。

 

「――私たちは、泣いて苦しむ被害者を適当にあしらってまで規則違反者を守る、張りぼての偽善者集団なんかじゃない」

 

 …一理ある。一理あるのだ。

 だが、やはりそれはダメ。『自由であるゲヘナを一線を越えないように見張ること』が風紀委員の役割だ。

 イオリもチナツも…ジルを含めた彼女らの部下たちも、嘗ての自分やアコが言っていることを遵守してくれている。

 

「イオリ、ジル!正気に戻って!貴方たちも風紀委員会の方針を覚えていてくれたでしょう!?『力があっても守るべき一線は…!!」

「その方針を守ってた結果がこれなんだよッッッ!!!!」

 

 ゲヘナ中に響くのではないかと思わされるボリュームで、怒声が響き渡った。

 イオリではない。ジルだ。のほほんとしたいつもの声からは想像もできないドスの効いた、怒り・失望・怨念を極限まで凝縮させたかのようなそれに、思わず言葉を止めてしまう。周りの委員たちからも短い悲鳴が上がる。

 

「落ち着いて、ジル。…委員長、逆に訊くけどさ…」

 

 そんなジルを制したイオリは一歩前に歩み出てきた。

 いつもの無表情で、死んだような目つきで此方を睨みつけてくる。心臓が握られそうな心地を覚える。

 

「――治安も、秩序も、民間人の心身も、財産も、尊厳も…何もかも守れない方針とやらを行儀よく守って何になるの?」

「――ッ!?!?」

 

 常日頃から、私やアコが口にしている方針を記憶・遵守して業務に励んでくれていたイオリからの、風紀委員会の全てを否定するかのような言葉に、私は脳みそを直接殴られたかのような衝撃を受けた。

 

「イオリ…!!」

 

 私たちのやり取りを遠巻きに見守っていたチナツが小さく声を荒げるが、内乱騒ぎを共に解決に導いた同志の言葉にも、イオリはピクリとも表情を変えない。

 無意識に目元が震え、涙が滲み出てきた私は、ゆっくりとイオリに歩み寄り、彼女の両腕を掴み、揺さぶった。

 

「……お願い、イオリ。元に…元に戻って…貴女は、ずっと私が言ってきたことを忘れないでいてくれたじゃない…!私たちが洗脳されたときだって、貴女は…!」

 

 なんとか反論の言葉を絞り出そうとするが、結局発せられたのは説得に必要な論理も何もない、感情的な訴えだけだった。

 

「う…!?」

 

 だが、イオリが僅かに身を捩った直後、無情にも掴んだ手から力が抜ける。

 淀みなく、一切の力みを感じさせることなく、逆に私の膂力を利用して、思い切りぶん投げられた*1。

 地面に叩きつけられる寸前、翼をはためかせて一瞬ホバリングした後、着地する。

 

「何度でも言う。今の生温くて弱い風紀委員会には…委員長にはゲヘナも、何もかも救えない」

「そ…そんな、そんなこと…は…!!」

 

 相手の無力に怒るでも、嘲笑うでもない感情の籠らないイオリの言葉に見えざるプレッシャーを感じた私の内臓が悲鳴を上げ、また胃の中のものを戻しそうになった。

 

「風紀を乱して、無辜の弱者を甚振るようなゴミ共は、地の果てまで追ってでもこの私が消し去る。どんな手を使ってでも」

「く…!!そうは、させないわ…!!」

 

 これ以上、イオリたちに過剰な取り締まりをさせるわけにはいかない。

 以前、洗脳された私たちの前に立ちはだかったイオリたちのように、少々手荒だが武力で黙らせる。

 愛銃『"終幕"デストロイヤー』を両手で構え、イオリに向ける。

 

「へぇ…?」

「待ってジル。…私がやる」

 

 にんまりと口角を吊り上げて背中の巨大なリボルバーに手を掛けるジルをイオリは片手で制すると、銃は構えずに両手の人差し指と中指を結び、親指の先端に合わせる*2。

 同時に右足を前に、左足を後ろに出すと膝を折り、姿勢を低くした*3。

 

「…今の委員長じゃ私に勝てないよ。まぁ、万全の委員長と戦ったとしても、私は負けないけどね」

 

 それがただの驕りでも強がりでないことは、私も薄々察していた。

 ここに来る前の執務室での軽い一戦でも、今のイオリが侮り難い実力を持っていることが察せられる。

 そして何より…怖い。今まで無縁だった死の影を感じる。数多の強敵と相対してきた私も、相手を見るだけで怖じ気付くことはなかった。

 

「――っ!!」

ギュィィィィィ…!!

 

 恐怖と大事な後輩に銃を向ける行為への忌避感を押し殺し、私は引金を引いた。

 ヘイローが紫色の輝きを発し、神秘の光が銃口に集約。

 

ズドドドドドドドッ!!

 

 刹那、神秘を纏って紫色に光る7.92×57ミリモーゼル弾の暴風が放たれた。

 "終幕"デストロイヤー(MG42汎用機関銃)の発射速度は毎分1200発だが、神秘の加護により性能が底上げされた愛銃は、まるで発射速度毎分3000発のガトリング銃(M134"ミニガン")のような濃密な弾幕…いや、弾丸の"壁"を形成し、射線上のイオリを押し包むように迫る。

 

「ふぅー…」

 

 ゆっくりと息を吐いたイオリは、地面に無数の穴をあけながら迫る破壊にも表情一つ変えず…あろうことか銃弾の暴風に正面から向かってきた。

 

「な…っ!?!?」

 

 しかし、ライフル弾の猛射をイオリは避ける。

 姿勢を低く保ったまま、右構えと左構えを常に切り替えながら、まるで風に流される雲のような滑らか且つ、私でも目で追うのに苦労するほどのトリッキーな動き*4で縦横無尽に動き回りつつ、途中倒れ込むように屈んだりバク転を織り交ぜながら、弾幕を正面から掻い潜ってくる。

 イオリの顔に焦りは全くない。相変わらずの無表情のまま、弾丸を見切って回避運動を続ける。

 

(効かない…!?…痛みを感じないの、イオリ…!?)

 

 流石にミニガンレベルの弾幕を無被弾で切り抜けるのはできないらしく、何発か胴体や頭に命中するのが確認できたが、微かに体勢がブレるだけで苦痛に呻く表情も、動きを止める様子も見せない。

 以前のイオリなら、1発で蹲るまでは行かないまでも、被弾の激痛で顔を歪ませる位はしていた。

 しかも、私の神秘が乗って威力が底上げされている弾丸の直撃を「風でも吹いた?」とでも言いたげな無表情で済ませているのが信じられない*5。

 

――ガキンッ!!

「くっ!?」

 

 あっという間に距離を詰めたイオリが、竜の鉤爪を思わせる右手を突き出してくる。打撃を放つ瞬間は確認できたのだが、反応できなかった*6。何とか愛銃を前に出して防ぐことに成功する。

 銃身が手を受け止め、驚くことに火花が散った。 

 あの手技の軌道は間違いなく顔面を…眼球を狙っていた。一切の躊躇なく、私の視力を奪おうとしてきた*7。

 そのまま銃身を掴んだイオリに対抗するように、私も腰を落とし、両腕に力を込めて銃を奪われないよう踏ん張る。

 

「――ガァァッ!!」

「……ひっ!?」

 

 銃を奪い合いつつ睨み合っていた次の瞬間、イオリが大口を開けて身を乗り出してきた。分かりやすく言うと噛みつき攻撃。

 キヴォトスで過ごす中で様々な相手と戦ってきた私だが、流石に噛み付かれるのは初めてだ。

 チナツが言っていた通り、鮫のような鋭い歯が並んでいる。突き立てられたら流石に痛そうだ。

 自分で鑢をかけたとのことだったが…。

 

「――ふん…っ!!」

ゴッッッ!!

 

 咄嗟に、私も頭を前へ思い切り突き出す。イオリの口元目掛けて頭突きを叩き込んだ。

 口元を一撃されたイオリは飛び退いて距離を取る。

 

「痛…っ」

 

 頭突きの衝撃とは別に、額に鋭い痛みとぬるりとした感触を覚えた。

 おでこを指で撫でると、真っ赤な生温かい液体が付着しており、拭っても止めどなく溢れ出てくる。

 頭突きした際、あの鋭い歯が額に刺さったようだ。それも、かなり深く。

 

「ちっ、石頭…」

 

 口元を軽く抑えてそうぼやくイオリ。歯を折ったりはしていないようだ。そこそこ強く頭突きしたというのに、頑丈だ。

 口元に付いた私の返り血を舐め取り、彼女の唇がリップを塗ったかのように赤く染まった。

 その様子にゾワリとしつつ、再び銃を構える。

 イオリも、背負っていた大型ライフルを手に持ち、折り畳まれていたそれを展開、更に銃口へ屈曲したナイフ*8を取り付けた。

 

「…ぶった斬ってやるよ、委員長」

ドゴォッッ!!

 

 地が割れるほどの踏み込みで、刃物を取り付けたライフルを振りかぶって飛びかかってきた。

 

「正気に戻りなさい、イオリッッ!!」

 

 私もありったけの神秘を愛銃に込め、発砲した。

 濃密な弾幕を構成する紫色の光弾がより合わさり、1本の光芒を形成。忙しすぎて観る機会はないが、SF映画で出てくるようなレーザービームを思わせる。

 

 私の最大火力に対して、イオリは左手を翳す。

 鉤爪のような手は、見るだけで背筋が凍るような、どす黒い炎を思わせるオーラを纏っていた。

 そのまま、禍々しい瘴気を発する左手を…巨大な光芒へ突き立てた。

 紫色の光芒とイオリの左手がぶつかり、眩い光と衝撃波が発生し、土煙と瓦礫が舞い上がった。

 

「……はぁっ!!」

 

 数秒せめぎ合ったものの、イオリは左腕をそのまま振り抜き――なんと押し寄せる光芒を掻き消した。紫色のビームは霧散し、拡散した残滓が周囲に着弾、小爆発を起こした。

 

「――は…??」

 

 頓狂な声を漏らしてしまった。

 私が撃てる最大火力。小鳥遊ホシノですら、慌てて盾の陰に隠れてやり過ごすレベルの攻撃を、あろうことかイオリは片手で撥ね退けた(・・・・・・・・)のだ。

 異常なほど強くなっているのは察していたのだが…ここまでとは思わなかった。今のをモロに胴体や頭へ直撃させない限り、彼女は倒せないのだろうか。

 

「はぁ、熱っ…」

 

 呆然としている私を他所に、イオリは自分の左手を軽く見る。煙を纏った左手は軽く爛れていた。

 無傷でいなせるわけではないことに一種の安堵を覚えたが、あの攻撃をピンポイントで受け止めた割にはあまりにも軽すぎる傷だ。少なくとも「熱っ…」で済ませられるレベルではないはず。

 

「呆けてる場合じゃないよ」

ドゴォッッ!!

 

 再び、ライフルを両手で振りかぶりながら地面を踏み割って飛びかかってくるイオリ。

 あまりの出来事に反応が遅れてしまった。

 引き金にかけた指を緩め、剣戟を受け止めようと銃身を前に差し出した瞬間。

 赤い光弾が、私とイオリの間の地面にめり込んだ。

 これ以上の争いは許さんとばかりに、着弾地点に爆炎が沸き立つ。

 この攻撃には見覚えがあった。

 

"2人とも、そこまでだよ"

 

 キヴォトスでは聞く機会のない、若々しい低い声。その方を振り向くと、4人の生徒を傍に置いた、連邦生徒会の制服に身を包んだ成人男性が立っていた。

 

「先生…!!」

 

 連邦捜査部"シャーレ"顧問の先生。これまで数多の事件を解決に導いた大人で…個人的に異性として気になっている人だ。

 キヴォトス全土の学校の生徒がお世話になっている人物。ゲヘナ風紀委員も例外ではない。

 流石のイオリも、武器を置いて先生の説得に耳を傾けてくれるだろう…思わず安堵のため息を吐いた。

 

「…便利屋」

 

 ――先生の周りを囲む生徒を睨み付けているイオリに、私は気付かなかった。

*1:
ハプキドー(突き・蹴り・寝技・関節技・武器術を加えた韓国版合気道)の技術

*2:
蟷螂拳の構え

*3:
躰道の基本姿勢

*4:
躰道のフットワーク『運足』

*5:
精神鍛練で超強化されたメンタルのおかげで被弾の激痛が気にならない。要は気合いで耐えてる()

*6:
虚実の"虚"。打撃を放つ際の起こりや気配を消している

*7:
蟷螂拳において眼球責めは基本

*8:
グルカナイフ




 拙者、対物ライフルに銃剣を取り付けて薙刀みたいに使うの大好き侍。

 カスミ推しの皆さん、申し訳ない<m(__)m>。
 彼女は湯船に浸かれなくなりました。先生直々のカウンセリングによって治るかも?

 ヒナビームを片手ではね除けるイオリ…ちょっと強くし過ぎたかな感はありました。
 神秘を脚に集中させた蹴りと同様、神秘を集中させた手技も使います。
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