『禍憑の祓い手 ― 神祓府玖番隊・赤嶺左内の記録 ―』 作:サモア リナン
(まがつきのはらいて ― かんばらいふ きゅうばんたい・あかみねさないのきろく ―)
人に憑き、物に宿り、時に世界すら喰らう存在──
その名は、禍憑(まがつき)。
人知を超えた脅威を祓うため、国家が総力をあげて設立した超巨大組織、神祓府(かんばらいふ)。
その戦闘部隊のひとつ、玖番隊に新たな隊長が任命される。
──で、その人選が。
「えっ、俺でいいんですか?」
名家出身でもなく、平民でもない。
いわゆる“ほどほど貴族”な出自の地味系青年、赤嶺 左内(あかみね・さない)。
戦闘力:上の中。
性格:温厚。
存在感:薄め。
上層部の評価も
「まぁ、優秀っちゃ優秀。ミスしないし……うん、可もなく不可もなく」
と、まるで学級委員長の通信簿レベル。
──なのに、現場じゃやたらと重宝されていた。
「おい、あいつまた禍憑封印してね?」
「しかも強化再生してた奴だぞ、どうやって封じたんだ……」
「え、特別強くはないのに……あいついないと現場回らなくね?」
他部隊のエースたちが口をそろえて言うくらいには、頼られていた。
その正体は──異世界からの転生者。
中世ヨーロッパ風のファンタジー世界で、かつて“勇者の相棒”として魔王を討伐した経験を持つ男。
現代の陰陽術と言霊と、異世界の魔術詠唱をミックスした独自の術式を構築。
しかも、身体能力強化の技法も三つ持っている。
氣功、シン呼吸、経脈路──。
異能と体術を組み合わせた、誰にも真似できない戦闘スタイルで戦場を駆ける!
──でも、基本使ってない。
なぜなら、「使うとバレるから」。
「色々とめんどくさい」から。
なのに、なぜか来た。
「隊長昇進の推薦状──!?」
「え、いや別に……上に行きたいとかないんだけど……」
──ダメだ、来なさい。
九十五歳の大ベテラン前任隊長から「ようやく譲れる」と涙され、
周囲の先輩や同期たちからは「まぁ、そりゃお前しかいないよな」と納得される謎の支持率。
「なんでだーっ!」と叫びながら就任した隊長職だったが──
いざ始めてみたら。
討伐任務も封印作業も、部下の得手不得手を見て的確に振り分けるだけ。
簡単な書類をパパっと仕上げて、報告書を添削して、
ちょっと手ごわい禍憑が出たら自分で片づけて、
たまに訓練で一緒に汗を流すくらい。
「……あれ? 意外と楽……」
今ではすっかりウキウキで、日々の隊長業務をこなす左内であった。
副官:「普通、隊長業務ってそんな簡単にできませんよ……?」
部下:「あの人、やっべぇ(語彙力喪失)」
上層部:「いやもう、最長老がいなくなってくれればそれでよかったし……」
上と下で食い違う評価、無自覚すぎる才能、
地味だけど確実に結果を出していく、異世界帰りの“ほどほど貴族”隊長。
誰もが驚く“地味無双”な和風バトルファンタジー、今ここに開幕!