とある科学の帯電現象(プラズマスター)   作:鹿羽

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星噛切札②

ここは長点上機学園。

学園都市内で五本の指に入る学校で、一言で言えばエリート校である。

書類上ではレベル5も数人籍を置いており、実質、ランクで言うと頂点に君臨する学校なのである。

そしてその長点上機学園の特徴と言えば、何と言っても一芸に秀でた人物を優先的に強化するカリキュラムである。

勿論総合的に優秀であれば尚良いが、例えば勉学はからっきしでも大能力者であるとか(普通は能力に応じて成績も上がるのだが)、無能力者でも研究者として多大な功績を挙げた人物であるとか、そういう『才能』を助長させる事に長けた学校なのである。

さて、そんな所で切札はなにをしているのかと言うと、

 

「はあ……アルバイト代も出ないのに発電に勤しむ俺って、一体何なんだろうな……」

 

頭に電極をぶっ刺して、冷蔵庫程もあるドデカいモーターをギャンギャン回していた。

モーターを回せば電気が起こる、というのは小学生にも分かることだが、モーターを回すのに電気を使うというのは一体どういう了見なのか。

学園都市に一年も住めば自ずと分かることである、この街に馬鹿と阿呆しかいないということは。

 

「そんなこと言わないものよ、星噛くん?一応カリキュラムには則っているものだからね」

 

カリキュラム。

どの口がそんなことを言うのか、切札はほとほと疑問に思う。

脳に電極ぶっ刺して得体の知れない薬を呑み、脳の血管千切れる一歩手前までスプーン曲げさせようと頑張らせたり、神経がショートしそうになるまでトランプ54枚を透視させようとしたりする、これの一体どこがカリキュラム(お勉強)だと?

切札はそんなことを平然とやっている人間、させられている人間を何人も知っているし、そもそも切札だって一度は通った道だ。

しかし気に入らない、偶然出来たレベル5を嬉々として研究材料にしたがる彼らの考えと、明らかに学園の教員ではない科学者共が関わってくるのかなんて事が、全く納得できない。

如何に高い演算能力と電気操作が出来ても基本的に切札はただの高校生でしかない。

この街の基本理念である『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着く者』――通称SYSTEMには遠い身である事だって周知の事実である。

 

スキルアウトとしてワルぶってみせても、まだまだ世間を知らないガキでしかないと思い知らされる。

 

「……マージーでー。金でも貰わねえとやってられねえよな」

「あら、何か言った?」

「なにも言ってねえ。独り言だよ」

「そう言えば、独り言が多くなるとストレス性の若ハゲになりやすいって聞くわね」

「マジで!?」

「冗談よ」

「………」

 

そんな会話をだらだらと続けながら、切札と女の研究者――芳川と名乗った――はカリキュラムをこなして行く。

今日は一年の内に数回ある、能力テストの日だ。

文字通り能力をテストするこの日に限っては、切札のテンションはだだ下がりになる。

切札は基本的に、細かい作業が嫌いだ。

しかしこの能力テストという日は、切札の能力の特性もあり、電子顕微鏡クラスの精密な作業を求められる。

無論出来ないわけではないが、しかしストレスが溜まるのも事実なのだ。

 

「はい、じゃあ次は、モーターのコイルを毎秒1500回転に留めて」

「面倒臭えな畜生……」

 

電極に流す電流を多少強くする。

すると耕運機みたいな音を立てるモーターはその回転を速め、ギャンギャンギャリギュル!!という凄まじい音を立て始めた。

芳川はそれを特殊なスローモーションカメラ越しに見て、感心したように頰に手を当てた。

 

「……すごいわね。毎秒回転数1500.000000014。ズレは数学的に言えばないに等しい。操作性能だけで見たら御坂美琴より上かもしれないわ」

「そうかい、そりゃ良かった。そんで、何時まで続けりゃいいんだ?」

 

正直興味はない、とばかりに素っ気ない態度を取る切札。

切札にとってみれば、『同じレベル5なのだから』当然なのである。

能力名『帯電現象(プラズマスター)』。

操作精度が極端に高い事以外は大体『超電磁砲』の劣化版みたいな能力で、別段希少価値もない。

だからこの結果だって大してすごいと思っている訳ではなく、右手と左手、お箸はどちらが扱いやすいか、といった程度の認識である。

 

(レベル5ってだけですげえんだろうけど、だからなに?って話だな。磁力線が視えて電気が操れるってだけ)

 

切札はつまらなそうに溜め息を一つ吐き、ただ無心で演算を繰り返しながら、テストが終わるのを待っていた。

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