とある科学の帯電現象(プラズマスター)   作:鹿羽

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星噛切札③

「あー……しっかし暑いなおい」

 

切札はあまり独り言などは呟かない人間だが、今日ばかりはここぞとばかりに呟いた。

季節は夏。

世間は今日から夏休み。

すれ違う学生も私服姿が多く、制服を着ている人間など、数えるほどしかいない。

とは言え数えられる程度にはいるという事で、切札もその一人なわけだが。

 

(ん、あの制服、超電磁砲の……)

 

と、ふと切札の視線が一点で止まる。

ツインテールの小柄な中学生と、その先輩と思われる茶髪の中学生が着ている制服である。

何の変哲もない制服だが、しかし切札は微妙に思い入れのある制服。

そう、切札は実は制服フェチで特にベージュのサマーベストとプリーツが大好きであり、やべえあの制服たまんねえはぁはぁ、などと鼻の下を伸ばしている――というわけではもちろんなく、ただ、「そういやあの制服は超電磁砲がいるっていう常盤台の制服か」としみじみ眺めていただけなのである。

 

常盤台には、最強の電撃使い『超電磁砲(レールガン)』がいる――という話がある。

これは有名な話で、恐らく知らない者はいない。

星噛切札も電撃使いであり、その関係から、幾度となくその『超電磁砲』にまつわる話は聞かされてきた。

曰く、完全無欠の電撃姫。

曰く、レベル1からレベル5に成り上がった。

曰く、彼女のDNAを利用して軍事目的のクローンが作られている。

 

(まるで安っぽいSF映画みてえだ)

 

切札はそう断じ、切り捨てる。

若干自嘲も含まれていたかもしれない。

それに、思うところが無いわけではないが、たかが中学生に執着する気もないのだ。

いかに似通った能力とはいえ、電撃使いなんぞこの街ではざらにいるし、結局はお互いの顔も知らない、赤の他人なのだから。

 

もう一度、常盤台の中学生二人を一瞥すると、切札は踵を返して家路を急いだ。

昼間という時間帯にも関わらず、学生寮が多く存在するこの第七学区は人でごった返している。

ただでさえ暑いこの季節だというのに、学生たちの熱気も混ざって、オーブンで蒸し焼きにされている気分になる。

あまり長くいたい場所ではない。

 

切札は、制服の上から着ているライダースのジッパーを、下まで下ろし、少しでも風通しを良くしようとする。

 

「あー暑っちい」

 

意味はないと思うものの、そう呟かずにはいられない。

こういうときに空力使いがいてくれたら、そよ風程度は起こしてくれるんだろうなー、と切札はしみじみ思う。

そして、傍らにその空力使いがいない事が、とても残念である。

アイスでも買って帰ろうか。

取り敢えず冷たいものが欲しいところだ。

 

(冷たいもの、か)

 

そういえば、スキルアウトのアジトにある冷蔵庫は直ったのだろうか。

スキルアウトには機械に強く、手先が器用な奴もいるし、もしかしたら既に直っているかもしれない。

ひょっとしたら新しい冷蔵庫を『貰いに』行っているかもしれない。

まあそうじゃなかったら冷蔵庫の一つや二つ、買うぐらいの財力はあるし。

 

(いや、それより気になるのは…)

 

それをやったのが、電撃使いの仕業かもしれないと駒場は洩らしていた。

ただ冷蔵庫が壊れただけでは切札はここまで気にしたりしない。

電撃使いが関与している疑いがあるというのが、切札にとっての問題なのである。

自分がやったかもしれないと疑われる状況――それこそが、問題なのだ。

もちろん切札は無関係だが、ただでさえ無能力者集団(スキルアウト)の中に超能力者(LEVEL5)が混じっているのだ。

ともすれば、内部分裂を招きかねない。

それだけは避けなければ。

 

切札はコンビニのアイスコーナーをガン見しながら、思考を巡らせていたが、店員さんの怪しげな目線に気がつく。

苦笑いで誤魔化しつつ適当なアイスをごっそり見繕い、切札はそそくさとコンビニを後にする。

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