新・覇王体系リューナイト・神変 「ペガスルーンの聖女騎士」   作:さけのうえのふらち

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第1話 ラ・フィーンとラ・フィーネ

皆さん、ただいまピンチです。

目の前に、凶悪な化け物がいる。野生の、えぐい筋肉モリモリで、毛だらけ異臭のそれだ。爪を振り上げ襲ってくる。

熊か。熊だ。

いや、顔が違う。具体的に言うと、フクロウの顔が乗っている熊の化け物だ。

 

「逃げて下さい、オウルベアです!」

 

名称説明ありがとう。欲を言えば、状況説明もして欲しい。

場所はと言えば、ここは隣国パフリシアとの境界、ダンジョン「燭光の迷宮」の前だ。

 

オレの名は、デュラム・デュナハン。騎士だ。

今このときはそういう職業。

人に仇なすモンスターと戦いの最中、私は、「オレ」であることを唐突に思い出した。

えっ、こんなときに。

いや、やめて。命をかけた戦いの場で、そんな将来の人生にかかわることを思い出させないで。

そして、目の前のこいつ。オウルか、オーラルか知らないけれど、歯を剥き出しにして、威嚇しないでもらいたい。え、クチバシなのに歯があるぞ。フクロウじゃなかったの?

 

十数年生きてきた記憶は頭にある。危機的な時の対処の術(すべ)も身体に染み付いている。

ワンドの能力を持つ剣を構え、詠唱して、魔法を使う。

「ウィンドエッジ!」

近距離からの風の魔術、真空刃のかまいたちだ。世間一般に言う現象としてのかまいたちも最近では、発生のメカニズムが違っているというが、この世界ではきちんと発動した。怪奇フクロウグマの、二種混合な巨体をメッタメタに切り裂く。

オレは咄嗟に飛び退く。怪物に比して、人の身の膂力はひ弱である。いくら魔法で強化したとしてだ。切り結ぶなんて、とてもとても。

 

「デュナハン様、お引きください。御身に何かあっては、王国は」

護衛の騎士が、最後まで言うことができない。

先のオウルベアを踏み潰し、「巨人」が現れたからだ。何もないところからのいきなりの出現に驚く。

瞬間移動のような素早さだ。違う、これは武具から現れたのだ。

召喚? いや、最初から武具に魔法的な力で収められているのだ。

頭の中で自分の記憶が冷静に呟く。

そんな思考をするオレを尻目に、皆が叫ぶ。

「リュー!」

「もしや、この一件、騙されていたのか、我々は」

別の騎士が呻くように言う。

「スタンピードの兆候ではなかったのか!」

オレは思った。放映当時にはない言葉ですね。

そうか。ここは、あの子供の頃、憧れたアニメ、リューナイトの世界だ。

剣と魔法の世界だ。ええっ。

 

思い出した。数多くの魔物達が集まり、海に飛び込むレミング的な、暴走族モンスターの爆走を防ぐために派遣されたはずだった。この地の領主の依頼で、だ。

オレの父たる王は、このときだけ自分に聖騎士の位階を授け、王国騎士団最強、第三隊を護衛につけたのだ。

 

突然、大きなガラガラ声があたりに響きわたる。拡声器をつけているのか、念話なのか。敵のリューから放たれていた。

「姫、愛しているのです!」

おおっ。

「我が求愛をお受け下さい」

どういうことっ。

敵、領主のリュー、騎士達が集まる大会で見たことがある。あれは、リューナイトだ。その機体がオレに向かって、巨大な機械の手を伸ばす。

 

「すでに私のリューナイト・グラスゴトンは、クラスチェンジを終えております。聖騎士となった我がリューは、まさに無敵! 世界最強! ラ・フィーネ姫のリューメイジ・アルスヴェインと組めば、このアースティアの征服も夢ではありません」

つまり、数十年ぶりの魔物の暴走阻止という依頼を王都に出して、その対処の方法を持っているオレが派遣されるのを待ち、無防備なところを狙って捕まえる。

ゲルなんたらの怪人フクロウグマは、多分錬金術製で、こいつの手下で、護衛の騎士達を釘付けにした。隣国と接する領主のこの男は、すでに相手と通じていると見ていいか。なるほど。

これ、失敗するフラグ立ってるよね。穴、多いよ。

 

でも、これだけは理解できる。男である自分には関係ない、と。

「聖女騎士・ラ・フィーネ・デュラム・デュナハン王女よ」

そう言って、敵のリューは手のひらを、オレに向けて開く。

 

汗がだらだら流れ出した。ゾゾッと背筋が怖気ってる。

帰属する王国への裏切りへの誘い、からではない。男から、オレへの常軌を逸した愛情表現からでもない。

つまり、そういうことか。

そういうことなのか?

「私の愛を受け入れねば、力付くでモノにするまで。ぐへへ」

欲望がダダ漏れだよね。

 

鋼鉄の腕が迫ってくる。あまりの気持ち悪さに硬直して、オレはその場から動けなかった。

そんなオレを救ったのは、飛び込んで身を伏せさせたメイド服の少女だった。

 

「ご無事ですか。ラ・フィーネ様、ケガはございませんか!」

 

彼女は、オレを立ち上がらせ、腕をつかんで逃がそうとする。

「走ってください。この場は、私が囮になりますから」

必死な顔の彼女を見て、ああ、この娘は、オレの侍従のシズクだと思い出す。乳姉妹であり、幼馴染、物心つく前から一緒にいるのだ。

 

「どくがいい、下賤な小娘! 高貴なる我と姫の間に、シャシャリ出おって!」

 

その言葉を聞いた瞬間、自分の頭の中で、ふっといゴムを束で持って、力任せに思いっ切り、引っ張ってちぎった音がした。

すなわち、ぶっちーん、だ。

 

オレは、優雅にシズクの腕を取ると、優しく自分のそれから外させる。黄金に輝く自分の髪を細い指でかき上げ、顔を上げる。

そして、慈愛の笑みを込めて、妹にも似た少女に瞳を向けた。

 

「ありがとう、シズク。ですが、激昂した殿方からは、逃げられませんね」

オレは言った。ふふっと笑い声をたて、騎士服のマントを翻した。

相手方のリューに向けて、姿勢を正す。

 

「さて、ギャランドゥー殿。私への求愛、まことに見事です。このラ・フィーネ・デュラム・デュナハン、感服致しました。国も領土も領民も考えず、私を求めるその一途さにただたた心震えます」

ですが、とオレは言った。

「貴方の敗因はたった一つ。私、全然、まったく、これっぽっちも、貴方がタイプではないのです。興味もないというか、ええ」

にっこりと笑顔でトドメを刺す。

「一昨日来やがれ、クソ野郎」

中指を立てることも忘れない。

 

「ひ、姫さま〜」

ひえぇえ、という顔で至近距離でシズクが真っ青になっている。周りの、護衛の騎士団もドン引きだった。

でも、もーまんたい。妹とも言うべき彼女を蔑まれ、オレはブチギレの極致にあったのだ。

オレは命じる。

「クラナバル騎士団長、そして我が騎士団の精鋭よ、しばし私を守りなさい」

「ははっ!」

さすがエキスパート。間髪なく唱和する。

 

オレは、騎士服の胸元からカードを取り出す。ぼいん。

ぼいん?

だが、だ。目の前に立ちふさがる窮地を前に気にしない。生き残れたら、盛大に突っ込んでやる。

「ミストロット!」

皆様ご存知、指に挟んだこのカード、これこそがオレがこの地に派遣された理由だ。広範囲に浄化のスキルを持つオレのリュー。だが、今の姿は魔導士(メイジ)ではない。

「疾くあれ、我がリューよ」

魔法の力が溢れる。原理不明。理由のわからない謎パワーだが、今は頼もしい。

光の奔流が溢れ、収束して巨大な人型を取る。

フォルムは見ようによっては星型、すらりとした立ち姿が美しい。白銀の優美な鎧を身にまとう巨人、頭部に名前の由来となったペガサスの兜をかぶる。騎士の姿を持つリューだ。フェリスティス聖王国の最強の機体、頼もしきオレの相棒、その名も、

「リューナイト・ペガスルーン!」

仮面が太陽に反射して光り、両の瞳がキラリと輝いた。

演出過多かな。

 

オレは、ペガスルーンの背中の宝玉へと吸い込まれる。これで搭乗者として、オレと彼女は人機一体となる。

敵が叫ぶ。

「これが、噂のペガスルーン。遺跡から発掘された、原初のリューか。ナルホド、騎士型だったとはな。人の噂はあてにならん」

設定紹介、ありがとうございます。ちなみに、別のうにゃうにゃも入ってませんか。

ペガスルーンは、細身の剣を鞘から抜き、敵と対峙する。

敵リューナイト・グラスゴトンが、斧を構える。

巨大なマシンの駆動音があたりに鳴り響いた。

 

敵のリューの装甲は、ペガスルーンの剣を弾き返す。

しかし、相手の斧は一撃が入れば、容易く機体をへし折る。スピードで翻弄しても相手を倒せねば、いずれジリ貧になる。オレ達の負けだ。

それは、オレがあのセクハラ領主の妻になることを意味する。

汚嫁(およめ)さんだ。そんな薄い本展開は避けたい。

「ははっ。重装型の私のリューと、軽装型のあなたのリューでほ勝負は見えています。敵いますまい。降伏をオススメしますぞ」

「過剰な配慮痛み入りますが。さて、どうでしょう。勝負は水物。油断は禁物ですよ」

とは言え、仰る通り。力押しでは敵わない。搦手が必要である。

ちなみに、オレの必勝パターンは、力押しでも実は搦手でもない。詐欺だ。その仕込みの一手を今から打つ。

 

「お願いです、ペガスルーン」

このリューはオレの「きゅるん、やーん、泣いちゃう。うるうるお目々」的なものに弱い。チョロイ機体なのだ。

オレの操作を受けて、ペガスルーンの鎧の色が変わる。白銀から、黒い、マットな色へと。邪悪な魔法使いのマントの色だ。

私は言った。

「属性変換(チェンジ)、リューメイジ・ペガスルーン」

どーん。機体の背景に、光が飛び、アルスヴェインは見栄を切る。

敵が叫んだ。

「機体がジョブチェンジするだとぉ!」

解説、痛み入ります。

 

これがペガスルーンの秘密だ。今は左手に魔法使いの杖を持つ。

そう、時と場合、状況に応じてスキルを使い分ける。遠距離では魔法、近距離では剣と。

ジョブ職業変換、リューメイジモード。

だが、驚きが過ぎ去り正気に戻ったのだろう、男が鼻で笑う。そりゃ単なる手品に見えるよね。

「一対一の戦いの場において、何の意味がある。前衛から後衛に変わっただけではないか。他に護衛がいるなら、ともかくな」

ですよね~。そう思うだろう〜。違うんだなあ、これが。

「フハハ、笑止千万。近距離で魔法使いに変わるとは。やはり姫は戦の素人。その手足をすっ飛ばし、機体を黒いダルマとしてくれよう。姫を中から引きずり出し、生涯の伴侶としてくれるわ」

いちいちモラハラ発言やめてください。パワハラですよ。

 

左手に杖を持つ、オレのリューが動いた。間髪入れず、敵も動く。

高速で敵リューナイトとすれ違う。このとき時間遅延の魔法を掛けられた敵リューナイトは、動きがディレイし、ペガスルーンの「剣」をかわせない。瞬間、敵は手足を切り飛ばされる。

「剣」を振り抜いた状態で動きを止めたペガスルーン。

機体はすでにリューメイジではない。いや、半分はそうなんだけどね。

 

澄ました声でオレは言う。

「さて、ギャランドゥー卿。詐欺師のスキルは私が上のようでしたね。私の侍女を蔑んだように、女を馬鹿にしたのがあなたの敗因です」

「くっ!」

仕込みはこうだ。

今のペガスルーンは、身体の正中線を境に、右半身が白銀に、左半身が黒に色が変わっている。その意味すろところは、すなわち、右手に騎士の剣、左手に魔導士の杖を持つということ。魔法を使いながら、近接能力も持つ。

原初のリュー、ペガスルーンは、兄弟のリューが融合したものだ。

兄としてのリューナイトと、弟としてのリューメイジが、身体の正中線を境にフュージョンしているレッドブルー状態なのだ。若い子、ついてこれてる?

そう、剣士と魔法使いどちらのスキルも等分に使うことができる。

いわば、器用貧乏職と言われる魔法剣士の、ちょっと上位互換というところか。ペガスルーンは、意図的にその姿を取る。これこそ、

「リューマジックナイト・ペガスルーン」

どやっとポーズを取るペガスルーン。右手に剣、左手に魔法使いの杖を持って。

本当に、ノリがいい性格をしている。リューながら。

 

機体の中、モニター画面を見れば、メイド服のシズクが手を振り、騎士達が歓声を上げ、アルスヴェインとオレの勝利を喜んでいる。

敵国パフリシアと通じ、ウソの情報を流し、未遂に終わったとはいえ自国の王女を拐かし、騎士団を害そうとした領主は、きっと極刑を免れぬことだろう。

領民達には罪が及ばないように口添えするとして、オレは、これまで目を逸らし続けた真実にやっと向き合う。

勇気だ、オレ。勇気だ。

胸を押さえると、弾む感触。

ぼい〜ん。

ぽよんぽよん。

もう、我慢できない。俺は、心の中で盛大にツッコんだ。

 

どうして、オレ、女なんですかねっ。

 

私、ラ・フィーネ・デュラム・デュナハン。

リューマジックナイト、「ペガスルーン」の操り手に転生しちゃいました。えへ。

(続く)




(次回予告)

求めに応じ、ウィンドウを開けば、ステータスのスキル欄に「種付けおじさん」の文字を見て、オレの目が点になる。
指先で何度触れても変わらない。スマホのタッチパネル方式だ。電位の変化で変わるあれだが、魔法の世界でどうなってるの。
頭を抱えて、何度も見直す。種付けおじさん。隠しスキルであることが救いだ。誰かに見られたらドン引きだ。
隣で眉目秀麗な女神様が大爆笑している。
「あは、あは。種付け。あは、あは。宝の持ち腐れですねえ~」
笑いすぎだ。これがガチャという概念か。

という、記憶をすっかり忘れていたオレ。いわゆる女神様のチュートリアルである。
ちなみに、これでオレは、神殺しを決意するのだが、それは本編とは別のお話しなので、割愛!
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