もしプロムン作品のT社が異世界転移をしたら、という話。

1 / 1
第1話

T社 視点

 

T社、タイムトラック社の本社内にある会議室で複数の人間が周りの人たちと議論をしていたり、外部にいる人と連絡を取り合っていたりしていた。

 

タイムトラック社が管理している地域、通称20区と呼ばれる地域で大地震が発生し、気がついた時には20区の周りには海が広がっていたのだ。

 

他の翼や協会と連絡が取れなくなり、タイムトラック社は前代未聞の事態に状況確認を大急ぎで行っているというわけだ。

 

「代表、調査部隊から報告がきました。やはり20区の周囲は海で囲まれています。海面の色は大湖があったエリアも含めて全てのエリアが青色とのことです。」

「報告ご苦労様。どの方向も水平線まで海が広がっていて陸地や船舶は見えない、か…。」

「『頭』からは何の連絡もありませんか?」

「今のところは何も。何らかの禁忌に対する処罰だとしても、調律者どころか連絡の一つすら無いのは不自然だね。まあ、頭が関与してないなら、それはそれで厄介な事態だけどね。」

 

タイムトラック社の代表はいつも通り動じない態度で情報を整理している。焦っている気持ちを部下に見せないようにしているのか、あるいはこの状況すらも面白がっているのだろうか…。

 

「巣の運営に問題はあるかい?」

「食料や資源は20区で生産している供給量だけでもなんとかなります。一番の問題は、やはり時間の貯蓄でしょう。他の巣と連絡が取れなくなったということは、W社のワープ列車から供給される時間が無くなるということです。」

 

その言葉を聞いてタイムトラック社の職員たちは沈黙する。

 

タイムトラック社では時間が資産であり、技術の動力源である。

特にワープ列車は一回発車させるだけで2000年分の時間を稼ぐことができる。それが都市の各巣で人々の移動手段として発車されている。

 

一日だけでもかなりの時間がタイムトラック社に提供されていて、それが途絶えた。

 

タイムトラック社の収入の大部分が突然入らなくなった。

事態が好転しなければ経営破綻は確実だ。

 

「・・・とりあえず、時間の支出はできる限り抑えて。周辺海域の調査を最優先で行おう。」

 

代表の指示で職員や発明家が意見を出す。

 

「レーダーを搭載した船を複数造りましょう。」

「海の規則が分からない。誰を犠牲にさせる?」

「まずは無人船で様子を見ましょう。」

 

しばらく経った後、今後の方針が決まる。

 

「それじゃあ、レーダーを搭載した無人船を全方位に発進させて陸地を探す。陸地が見つかったら、今度は人間を探して接触を試みる。まずはこの方針でいこうと思う。ハナ協会はどう思う?」

 

代表は白いスーツを着た人物を見る。

 

ハナ協会のフィクサーだ。転移時に偶然20区で仕事をしていたため、一緒に転移していたのだ。

 

「ハナ協会としてはしばらくの間はT社に20区の運営を任せる。私たちは他の協会員の保護とフィクサーの管理に専念する。」

「分かった。親指の考えは?」

 

今度は暗赤色の外套を着た人物を見る。

 

裏路地を牛耳っている五本指の一つ、親指。その幹部であるカポと呼ばれる役職に就いている人物に意見を伺う。

 

その人物はタイムトラック社の代表から発言の許可を貰ったことにより初めて発言をする。

 

「親指からの要求はただ一つ。裏路地での親指の活動に口出ししないでもらいたい。それさえ約束してくれるなら、親指もT社の活動に口出ししない。」

 

その言葉を聞いてタイムトラック社の職員たちは安堵する。

 

本来ならこの会議に親指は招待したくなかったのだが、また前兆なく都市に転移する可能性がある以上、あまり放置していると都市に戻った時に親指からいちゃもんをつけられて面倒ごとが起きる可能性があるので仕方なく招待したのだ。

 

だから、親指が無理な要求をしてくることなく会議を終えられそうなことに安心したのだ。

 

「分かった、約束しよう。他に言いたいことがある人はいるかい? ・・・特にないなら、今回の会議はこれで終了ということで。」

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国 視点

 

公国軍の飛龍隊は公国の北東の海上をワイバーンに乗って哨戒飛行していた。

 

「・・・船!?」

 

海上を小型の船が航行している。

 

その船は木製ではなく鉄でできていて、兵装らしきものは見当たらないが、その代わり艦橋部分が丸く膨らんでいた。

さらに、その船はとんでもない速度で海上を進んでいた。

 

「50ノットは出ているぞ・・・。」

 

哨戒騎は通信用の魔法具で司令部に報告する。

 

「我、不審船を発見。これより接近し、確認を行う。現在地、・・・。」

 

司令部への報告が終わると哨戒騎は不審船に近づく。

 

不審船は攻撃の予兆どころか、人が動く様子さえない。

 

「こちら、クワ・トイネ公国軍第六飛龍隊。貴船はクワ・トイネ公国の領海を侵犯している。貴船の所属と航行目的を明らかにせよ。応答が無い場合、敵対的な船舶と判断し、攻撃する。」

 

応答は無い。

 

「司令部、不審船はかなりの高速で本土へ向けて進行中。警告を行ったが不審船からの応答は無い。」

 

その後、司令部から威嚇射撃の指示が出て不審船の近くに向けてワイバーンの火炎弾が発射されるも不審船からは何の反応もなく、司令部から攻撃の指示が出る。

 

火炎弾を不審船に直撃させる。

不審船は炎上するが速度や進路に変更はない。

 

今度は不審船の前方に向かって火炎弾を発射する。

火炎弾の着弾で不審船のバランスが崩れ、転覆する。

 

 

 

翌日、クワ・トイネ公国では政治部会が開かれていた。

 

国籍不明の不審船について報告が上がる。

 

対応した飛龍隊員の報告では、不審船は50ノットもの高速で航行していたという。

 

さらに、不審船を回収した海軍によると、不審船は未知の金属で造られていて、内部は謎の装置が入っており乗組員の姿はなかったという。

 

「皆のもの、この報告について、どう思う?」

 

議論が行われるが、明確な回答は出ない。

 

その時、若手幹部が会議室に入ってくる。

 

報告によると、本日再び不審船が現れて海軍が接近したところ、船から大きな声で対話を求めてきたとのこと。

対話の結果、

・不審船はタイムトラック社というどの国にも属していない会社が所有しているもの。

・敵対の意志は無い。

・タイムトラック社は突然この世界に転移した。

・無人船による哨戒を行って公国軍と接触した。

・クワ・トイネ公国と会談を行いたい。

という情報を得た。

 

その場にいた全員が不審船の言うことを疑いつつも、未知の存在なのは間違いないため会談が行われることとなった。

 

 

 

 

 

T社 クワ・トイネ公国 視点

 

会談から2ヶ月。クワ・トイネ公国とクイラ王国は急速に発展していた。

 

生活基盤に関する各種技術に加え、簡易的な発明品や武器も輸出され、初歩的な強化施術も一部の軍人に提供されている。

 

これだけの技術を提供したからには、相応の途方もない要求をしてくるはずだと2ヶ国の首脳部は身構えたが、タイムトラック社は現在開発中の『列車』という交通機関が配備された際に常に乗車率100%の状態で運営できることを約束するよう求めてきただけだった。

 

列車というものもクワ・トイネ公国とクイラ王国の発展に大きく貢献するようなものであり、タイムトラック社の利益以上に2ヶ国が受けるメリットの方が大きいはずだと首脳部は考えたが、タイムトラック社の代表は列車の運営はタイムトラック社にとって最重要事項だと言った。

 

なぜ最重要事項なのかは答えてくれなかったが、ロウリア王国という脅威が目前まで迫っている情勢でタイムトラック社の真意を探っている余裕はなかった。

 

 

 

クワ・トイネ公国内の町で最もロウリア王国に近い町、ギム。

 

この町には現在、クワ・トイネ公国軍の西部方面隊が集結していた。

 

ある日の早朝、国境にいる部隊からロウリア王国軍侵攻の合図が出る。

 

西部方面隊の飛龍隊が迎撃に向かう。

 

しかし、数分で全滅。ロウリア王国の飛龍隊75騎がギムに飛来する。

 

その時、ギムから聞きなれない音を出しながら何かが飛び立つ。

 

タイムトラック社の発明家が対ワイバーン用に開発したドローン兵器だ。

 

正式名称:対ワイバーン用振動爆発振動-鎖振幅変換モジュール搭載時間猶予モジュール非搭載自爆型ドローン。

要は、自爆してダメージを与えると共に相手を弱体化させる特殊な振動を付与する自爆ドローンということだ。

自爆ではなく戦闘を行う案も検討されたが、開発された後で再び都市に転移して頭の禁忌に抵触する可能性もあるため今回は銃器や賢すぎるAIを搭載する案は却下された。

 

ワイバーンが火炎弾を発射する。

ドローンはそれらを軽々と回避するとワイバーンに肉薄、自爆する。

小型で機動力の高いドローンを振り払えず、ロウリア王国のワイバーンは程なくして全滅する。

 

ロウリア王国軍に明らかな驚愕の様子が見られるが、再びギムに進軍し始める。

 

タイムトラック社の技術提供でギムの防御陣地は強化されていた。

 

ロウリア王国軍の攻撃を防壁がせき止め、クワ・トイネ公国軍との戦闘になる。

 

ロウリア兵はクワ・トイネ兵を蛮族と侮っていたが予想以上の抵抗に驚かされる。

 

しかし、ロウリア王国軍は歩兵だけでも8倍の兵力差がある。

にもかかわらずクワ・トイネ公国軍が戦線を維持できているのはタイムトラック社から派遣された援軍のおかげだ。

 

南部リウ協会。

炎を纏った格闘技がロウリア兵の鎧を抉る。

強化施術を全く受けていないロウリア兵は一撃で死に至り、周囲のロウリア兵に炎が降りかかる。

 

たった数十人のリウ協会員にロウリア王国軍先遣隊の全戦力が集中する。

 

しかし、リウ協会員はそれを凌ぎきった。

 

ロウリア王国軍は僅かな兵だけが撤退していく。

 

クワ・トイネ公国軍にも少なからず戦死者は出たが、ギムの町は無事だった。

 

ロウリア王国は4400隻の大艦隊を出港させ、第二次クワ・トイネ公国侵攻作戦を開始する。

 

 

 

クワ・トイネ公国の政治部会では、ロウリア王国軍の戦力について報告が上がっていた。

 

「スパイの情報によると、作戦兵力は50万に達する模様です。また、列強国のパーパルディア皇国が彼らに軍事支援をしているとの未確認情報もあり、現に今回500騎のワイバーンを投入してきております。また、4000隻以上の艦隊が港を出航した模様です。」

 

軍務卿からの報告に首脳部は重々しい空気になる。

 

タイムトラック社の代表もリモートでそれを聞いていて、ロウリア王国の本気度を実感する。

 

代表と共に報告を聞いていた発明家が何かを思いついて端末に作戦案を書き、代表に見せる。

 

「良い作戦だね。今から準備して間に合うのかい?」

「クワ・トイネ公国領にある資材と人手なら、十分間に合います。あとは建造に必要な時間さえ頂ければ。」

「分かった。向こうにある銀行に話を通そう。」

 

代表はクワ・トイネ公国の首脳部に作戦案を提示する。

 

 

 

マイハーク港ではクワ・トイネ公国海軍第2艦隊が出港の準備を進めていた。

 

総数、50隻。

 

提督は敵との戦力差に不安を漏らす。

 

そこへ側近が海軍本部からの魔伝を伝える。

 

「本日夕刻、タイムトラック社の増援艦2隻が援軍としてマイハーク沖合いに到着する。彼らと共にロウリア艦隊に攻撃するよう指令する。」

「何!? たったの2隻だと!? 200隻か2000隻の間違いではないのか?」

「間違いではありません。」

「やる気はあるのか、彼らは・・・。」

「しかし、ギムの防衛には成功しています。今回も何らかの算段があるのでしょう。」

 

夕刻、増援が到着する。

 

2隻の艦を見て、提督は怪訝な顔をする。

 

2隻のうち片方は小さく、歯車を複雑に噛み合わせた装置が載っているだけだった。

もう片方は今までの物流で使われてきた貨物船で、軍用船ですらない。

 

「本当に大丈夫なのか・・・?」

 

翌日、艦隊が出港してロウリア艦隊と会敵する。

 

事前の打ち合わせ通りにタイムトラック社の小型船が単独でロウリア艦隊に接近する。

 

ロウリア艦隊から火矢やバリスタが発射されるが、急に敵の攻撃の連射が遅くなる。

 

小型船が引き返してきて、それと入れ替わりにクワ・トイネ艦隊が交戦を開始する。

 

水夫がロウリア艦隊になだれ込み、ロウリア兵に斬りかかる。

 

ロウリア兵は異常なほど反応が遅く、クワ・トイネ兵は無双状態で次々とロウリアの艦を攻略していく。

 

やがてロウリア艦隊の旗艦にもクワ・トイネ兵が乗り込み、ロウリアの海将シャークンは剣を鞘から抜いてる途中で斬り殺される。

 

「歴史に名を残せるほどの大戦果だが、敵がこれほどまでに遅くなるとは・・・。」

「これがタイムトラック社の特許技術の威力なんですね・・・。」

 

敵が異常に遅かったのは、最初の小型船に搭載されていた装置にロウリア兵が持つ時間を奪われていたからだった。

 

一人当たり10万時間が奪われており、今のロウリア兵は一日を1時間で生きている。つまり、ロウリア兵の視点だとクワ・トイネ兵が24倍速で動いているように見えているということだ。

 

一方、艦隊の上空では、貨物船から飛び立ったドローンがロウリアのワイバーンにダメージを与えていた。

 

ロウリア王国軍は4400隻の艦隊と350騎のワイバーンを失った。

 

 

 

その後、ロウリア王国は残った戦力で第三次侵攻作戦を行うも失敗に終わり、とうとう王は捕縛されることになる。

 

ロウリア王は南部ウーフィ協会立会いのもと、クワ・トイネ公国とクイラ王国との間に停戦条約を結ぶこととなる。

 

 

 

 

 

T社 視点

 

ロウリア王国の騒乱が終わった後、タイムトラック社では待ちに待った朗報が上がった。

 

ワープ列車の量産・運営ができるようになったのだ。

 

もともとワープ列車はW社とタイムトラック社が共同で整備していたので、ワープ技術だけなら使えていた。

しかし、目的地に到着した後の『乗客の整理』の技術はW社の特異点なので解析に時間がかかっていた。

 

ワープ列車の運営でクワ・トイネ公国、クイラ王国、ロウリア王国の物流はさらに活発になる。

 

さらに大陸の外にある他の国々、具体的にはパーパルディア皇国に屈辱的な外交をさせられている国々にもタイムトラック社は進出していった。

 

タイムトラック社の外交方法は定型化していた。

1、タイムトラック社が技術提供を提案する。

2、相手国の首脳部は警戒し、即断してくれない。

3、タイムトラック社が勝手に技術提供を始める。

4、首脳部は怒るが、パーパルディア皇国以上の技術に何も言わなくなる。

 

かなり強引な外交だが、結果的に複数の国が急速な発展を遂げていた。

 

当然、そのことに気づいたパーパルディア皇国が穏やかな顔をしているはずがなく、タイムトラック社に隷属を要求してくる。

 

パーパルディア皇国第3外務局の一室でパーパルディアの外交官とタイムトラック社の職員が話し合っていた。

 

「・・・つまり、貴殿は私たちに、貴国の許可なく他国に技術提供することを禁じ、貴国に全技術と大量の奴隷を提供しろと仰るのだな?」

「皇帝のお怒りを考えれば、これでも穏便なくらいです。」

「はあ・・・。」

 

タイムトラック社の職員は懐から煙草を取り出し、吸い始める。

 

「この要求には従えませんな。」

「ほう。蛮族の国をいくつか従えただけで強気になっているんですね。蛮族よりも我が国を大事にした方がいいですよ。それとも、蛮族すらも大事にする慈悲深い人たちだと思われたいんですか?」

「慈悲? ハッハッハ! まあ、そういうことにしておきましょう。」

 

パーパルディアの外交官はどこがおかしいのか分からなかった。

 

外交官は魔導通信の映像をタイムトラック社の職員に見せる。

 

「これは・・・、行方不明になった職員たちですね?」

「我が国の属国で生意気なことをしていたので捕まえました。もう一度聞きます、この要求を飲みますか?」

「さっき答えたはずだ。」

「そうですか。」

 

外交官が合図を出すと、映像に映っている職員が虐殺される。

 

「これはこれは、懐かしい光景ですな。」

「うん?」

 

相手が全く動じなく、外交官は用意していた台詞を言い損ねる。

 

「状況を理解してないのか? お前の同僚だぞ?」

「少し平和ボケしかけていたので良い刺激です。」

 

タイムトラック社の職員は懐かしいものを見たような顔をしている。

 

「最初はこの世界の国が持つ力を知らなかったのでクワ・トイネ公国やクイラ王国とは対等な同盟を結びました。しかし、今は情報があります。特異点を持ってない上に軍事力も大したことのない国を相手にこちらが下手になる理由はありません。どうせ最初から戦争を起こすつもりだったんでしょう? こちらは既に準備を終えています。」

 

 

 

宣戦布告が行われた直後、パーパルディア皇国領内には既に軍勢が集結していた。

 

パーパルディアの属国として扱われていた国から志願して参戦した義勇兵がほとんどの義勇軍である。

 

進軍する彼らの前にパーパルディア皇国軍が立ちはだかる。

 

パーパルディアの地竜が義勇軍に襲い掛かる。

 

像の2倍ほどの大きさの地竜はただ突進するだけでも大きなダメージを義勇軍に与える。

 

地竜を相手に義勇軍は最初は劣勢だったが、義勇兵の攻撃を食らうごとに地竜は自分の体に異変が起きているのを感じる。

 

地竜の体内に振動が溜まっていく。

振動が強くなるほど、地竜の攻撃力は目に見えて下がっていく。

 

義勇兵が強力な一撃を放つ。

その一撃で地竜の体内の振動が爆発する。

 

致命傷にはならなかったが、地竜は体勢を崩して無防備な状態を晒してしまう。

 

地竜を倒すと、義勇兵の小隊がパーパルディア皇国軍に突撃する。

 

それに対してパーパルディア皇国軍はマスケット銃の一斉射撃で出迎える。

 

「ぐぅ! 痛ぇ!」

「な、何!?」

 

パーパルディア兵は敵の反応に驚愕する。

 

マスケット銃とはいえ、銃は銃だ。直撃して痛いで済むはずがない。

 

彼らはアルタラス王国から来ていて、それなりに上質な強化施術を受けている義勇兵だ。

 

義勇兵はタイムトラック社から補助金が出て初歩的な強化施術を受けられるが、彼らは借金をしてより上質な強化施術も受けていた。

 

もちろん、この戦いで活躍したからといって、タイムトラック社が借金を帳消しにするという話は無い。

 

それでも上質な強化施術を受けたのは、それほどの憎しみがパーパルディア皇国に対してあったということだ。

 

銃弾の直撃を耐えた義勇兵がパーパルディア皇国軍に襲い掛かる。

 

 

 

一方、上空では・・・。

 

「まさか、品種改良の余地があったとは・・・。」

「まさか、互角の戦いになるとは・・・。」

 

義勇軍のワイバーンとパーパルディア皇国軍のワイバーンオーバーロードが空戦をしていた。

 

数は同数。戦闘能力は均衡。戦況は互角だった。

 

タイムトラック社の技術者がワイバーン用の強化施術を研究し始め、好奇心が過ぎて過剰な戦闘能力向上になったと思われたが、意外にもパーパルディア皇国軍の新しいワイバーンも同じくらいの戦闘能力をしていたのだ。

 

両軍から1騎ずつ撃墜されるワイバーンが出て、戦況が均衡したままお互い半数になった時、パーパルディア皇国軍のワイバーンロードを殲滅し終えた義勇軍のワイバーン部隊が加勢する。

 

やがてパーパルディア皇国軍の航空戦力は全滅する。

 

 

 

この戦争の一番の不安要素は海上戦力だった。

 

地上戦力はどうにでもなる。航空戦力は強化施術で対応できる。

 

しかし、船は強化に時間もお金もかかる。

 

だが、タイムトラック社には切札があった。

 

タイムトラック社は転移前にとある会社からモノリスという物体を買っていた。

 

モノリスは人間が怪物になる『ねじれ現象』を人為的に起こせる物体だ。

 

実験の失敗を無数に繰り返して、とうとうタイムトラック社に都合の良いねじれが誕生してしまった。

 

艦隊を相手にできる戦闘能力を持ち、攻撃対象を選ぶ理性も持つねじれ。

 

パーパルディア皇国の領海では、パーパルディア皇国艦隊が海の底に引きずり込まれる怪奇現象が発生していた。

 

 

 

義勇軍は皇都まで進軍し、皇帝と首脳部を追い詰めていた。

 

「待ってください!」

 

誰かが大声でその場にいた全員を呼び止める。

 

声の主は南部ヂェーヴィチ協会の配達員だった。

 

配達員は義勇軍を監督していたタイムトラック社の職員に1通の手紙を渡す。

 

手紙を読んだ職員は「面倒くさいことが起きた」というような顔をして義勇軍に指示を出す。

 

「皇帝と皇族レミールはこちらで身柄を預かる。」

 

 

 

それは、少し前の20区のとある路上でのことだった。

 

パーパルディア皇国監査軍艦隊は皇帝と皇族レミールの命令で先遣隊として20区に侵攻していた。

 

その提督ポクトアールはとある人物の前で座っていた。

 

「・・・つまり、T社に戦争を仕掛けてこの地域を手当たり次第に攻撃していたら、俺たちの倉庫にも手を出してしまった、と。」

 

ポクトアールは目の前の人物が出す威圧感に完全に萎縮していた。

 

「それで、俺たちのことは知っているか?」

 

ポクトアールは首を横に振って答える。

 

なぜ言葉で答えないかというと、下顎と両腕が無くなっているからだ。

 

「そうか。親指の所有物に手を出したのは本当に偶然だったんだな。」

 

親指のカポが今回の処遇について語りかける。

 

「本来であれば許されない重罪だが、親指を知る機会がなかった事情を考慮して、特別に俺たちが礼儀を教育してやることで許そうじゃないか。それで、お前に出撃命令を出したのは誰だ?」

 

その後、親指から解放された皇帝たちは語る。「タイムトラック社と敵対しても、親指とは絶対に敵対するな」と。




とりあえずここまで

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。