原作と違って自宅に戻ってます。(原作だと篝と小鳥と一緒に森の結界に篭る)
こういうバッドルートもあるんじゃないかという妄想です。
小鳥は家のドアを閉めるまで俺の方を振り向いて見ていた。
心配そうな、申し訳なさそうな、――それでいてホッとしたような複雑な表情を浮かべて。
「…おやすみ」
見届けてから家へと向かいつつ、唇の端を思い切り強く噛んでいることに気づいた。
「…っ痛」
乱暴に唇を拭って駆け出す。
距離的にはわずかなのに、自分の家がひどく遠く感じる。
ドアノブを壊す勢いで開けてから、そのまま玄関にしゃがみ込んでしまった。
「く、そっ…!」
また、だ。
また小鳥の本音を引き出せなかった。
2回目だ。
これで2回も告白した。
タイミング的にいっても別に言ってもおかしくないし、俺の本心だってちゃんと伝わっているはずだ。
なのにまたカワサレタ。
ゴマカサレタ。
カクサレタ。
思わずカタカナになってしまうほどショックが隠せない。
「いっそ……」
今から小鳥ん家に忍びこんで寝込みを襲ってやろうか。
無理やりあの細い腕と身体をおさえつけて犯してやろうか。
最初は嫌がって抵抗するかもしれないけど、本気で迫ったら受け入れてくれるかもしれない。
「ははっ…」
あまりに魅惑的な暗い考えに酔いそうになる。
最悪だ。
だけどもう、それくらいのことでも考えないとどうにかなりそうだ。
好きなのに。
いなくなったオカ研のみんなより小鳥のことしか考えられないほど好きなのに。
「なんであいつは、俺を受け入れようとしてくれないんだよ……!」
バンッ――!
思わず弾みで壁を叩き壊してしまった。
陥没した穴が不自然についてしまったが、構うものかと自室へとあがった。
自分の中に凶悪な気持ちが膨れ上がる。抑えがきかない。
俺はこんな苛立ちを隠さないやつだったろうか。
小鳥に二度振られた、たったそれだけのことで。
「たったそれだけの、こと?」
……そうだよ。
以前は、そう思っていたんだ。
そりゃ、たとえようもなくショックだった。一世一代の告白で、絶対にうまくいく自信があったのに、振られて。
楽しみだった高校入学もどこか上の空になるくらいに。
だけど、俺、小鳥が当たり前のように側にいることで安心して。
そんなたいしたことじゃないって、思うようになっていた。
小鳥に告白したことなんか、たいしたことじゃないって。
「そんなわけ……あるか」
なにぬるま湯みたいな日常に満足してたんだ、俺は。
いつか別れが来るのは予感していた。
卒業したら、とかじゃない。それぞれ別の道を進むときがくる。それはそう遠くないこと。
小鳥が……遠くへ行ってしまうだろうこと。
そしてそれは、森での出来事ではからずも訪れた。
その後たった数日小鳥と連絡とれなくなっただけで、死ぬほど恐れた。
もう二度と会えない予感をできるだけ考えないようにしていた。
まだあの日常に戻れるって、バカな期待を抱いてたんだ。
「小鳥……」
小鳥だけでいい。
他のものなんかいらない。
こんな能力も本当はいらなかった。たとえあの森で一歩間違えれば死んだのだとしても。
小鳥さえ無事であれば、それで良かったのに。
ぎゅっ、と胸の前で拳を握りしめる。
決意を固めた。
これからは積極的になろう。
あいつが嫌がることでも、みっともなく縋りついてでもねだろう。
一緒の登校が嫌でもついていく。
校内でも手を繋いで歩く。
周りがどう思おうと構うものか。
小鳥は俺のものなんだと見せつけてやる。
今までの俺はアホだった。バカだった。お人よしだった。
なんであいつに気遣って遠慮なんてしていたんだろう。
小鳥にずっと見舞いに来てもらっていたから、引け目があったのか?
入院中ずっと世話になっていたから、その気持ちが恋に変わっても、遠慮?
ホント、バカじゃないだろうか……。
――瑚太朗君。
いつかきいた小鳥の声がよみがえる。
――いろんなもの……見てね。
あれは、どういう意味だったんだろう。
寝ぼけながら言った小鳥。だけど本音のような直感がした。
自分を確立して、とか視野を広げろ、とか……。
まるで今の俺がなんの自我もないような言い方じゃないか。
「だから、とかだったらふざけんなよ」
そんなのが振った理由なら違うってこと思い知らせてやる。
俺が昔の俺とは違うんだってこと、小鳥にわからせてやる。
昔の……俺…って…どうだったっけ。
なんだろう。
小さい頃の記憶とかはあるのに、昔の自分が思い出せない。
曖昧になってる。入院する前の記憶はいつもこうだ。
頭に靄がかかったみたいにぼうっとなって。
そもそも俺、なんで入院してたんだっけ……?
病気……だよな? いや、怪我? どっちだ?
変だ。
普通じゃない。
なのに、なんでそれほど危機感がないんだ。
仕方ない、とかどこかで思ってしまっている。
「……いっ」
ズキン、と頭が痛くなった。
いつもこうだった。昔を思い出そうとすると、頭が痛くなる。
これ以上踏み込んではいけないとでもいうかのように。
何も考えなければ、痛みはひく。
そしてそのまま気絶するように眠りに落ちた。
天王寺家の周りを、黒い服の男達が取り巻いていた。
闇にまぎれて目立たないように立っていたが、やがて黒いリムジンから一人の男が降りると、彼らは敬礼して道をあけた。
「彼は?」
「記憶制御は解けていないと思われます」
「確かか」
「サーモグラフィと心拍数、脳波データはここに」
資料を受け取り、男はふうっと小さくため息をついた。
「かなり元に戻りつつあるようだな」
「いかがなさいますか」
「能力に関しては制御できないのだから仕方あるまい。だがこの数値だと人格制御プログラムをもう一度組みなおす必要があるな」
「すでに数人のエージェントを踏み込ませています」
「さっそく取り掛かろう。必要な機材とスタッフをここへ。天王寺瑚太朗に埋め込んだ生体チップは?」
「先ほど起動しました」
「よし、始めろ。今回は下方修正程度で済ませたい」
「よろしいのですか?」
「これ以上は彼の人格を破壊する。危険人物であることに変わりないが出来れば殺したくない」
かなりの人数にも関わらず、闇で動く影は音もなく住居に侵入した。
ある者は玄関から、ある者は2階から瑚太朗の自室へ。
それを見るものは誰ひとりいなかった。
「……あれ?」
朝日が窓から差し込むのを見ながら、寝ぼけ眼で目を拭った。
「昨日…」
小鳥が、帰ってきたんだよな。
ずっと行方不明だったけど、昨日小鳥が戻ってきて、そして抱きしめて。
告白して、振られた。
「ははっ」
でも、戻ってきてくれた。
オカ研のみんなはまだ戻ってこないけれど。
小鳥だけでも戻ってくれたんだ。
せめてそれだけでも良かったことにしよう。
なんか、すげーイラついてたような気がするけど。
小鳥がいるんだ。
収穫祭だってきっと一緒に回れる。
デートくらいしたっていいよな。
「よしっ!」
さっそく小鳥と一緒に登校したい。
いそいそと電話をかけた。
案の定、起きたばかりの寝ぼけ声だったけれど、いるとわかっただけでもホッとした。
なんか振られたこととか、どうでもよくなるくらい、柔らかであったかい声だった。
久しぶりの投稿です。
小鳥ルートをもう一度プレイしてみたのですが、この小鳥ルートの瑚太朗が一番人格があやふやだなぁ……と思いまして。
まあ小鳥によって再教育されたようなものなので仕方ないのですが。
あと江坂さんに人格改造……orz
こういうふうに彼は消されてはまた再生され、それを繰り返されたのですね。