それでも僕は生きているー死と化物が跋扈する世界でー 作:抹茶露
(さて、どうしたものか)
青白い光を灯す菱形の結晶については何も聞かされていない。
取っても良いのか、悪い物なのか、それすらも判別が難しいが、化物を生成している一因であるのは間違いはない。
(取れるか、試してみるか)
そう思いつつ結晶に触れた瞬間だった。
キィィンと耳の奥に響く高周波の音とともに、眩い光が結晶から発せられる。
「っ! 罠!」
選択肢を間違えたこと、教官に聞かなかった浅慮を悔やみつつも、目を焼かれないよう咄嗟に腕で視界を塞ぐ。
まばゆい光と共に、一瞬の浮遊感が全身を包むが、それが消えると洞窟の外、荒れ果てた大地が視界に映る。
「は?」
理解が追い付かないまま、後ろを振り返ると先ほどまで居たはずの洞窟が影も形もない。
まるで始めからなかったかのように、荒れ果てた大地だけが、続いていた。
(どういう、こと?)
誰かに説明をしてほしかった。何が起きたのか、どういうことなのか、混乱が頭を支配する中、手に硬い何かがある事に気づく。
視線を向ければ、青白い光を放っていた菱形の結晶が握られている。
ここには何も残ってはいない、なら――
(帰って聞くか)
あの皮肉が大好きな教官なら何かしら教えてくれるだろう。
そう思いお役所への道へ歩き始め、歩を止め振り返った。
(中で死んだルーキーはどこに行くんだろう)
無意味なことだと理解しても、ぼんやりとした思考で考え、そして顔も名前も知らない、ただ国家へ資源を献上するというくだらない仕事のせいで死んでしまった人間の為に一度だけ手を合わせると、今度こそその場を立ち去った。
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「ほぅ、戻ってくるのが早かったなルーキー?」
お役所に戻ると、日は昼を過ぎて、数時間もすれば夕暮れに成るだろうという所だった。
朝と同じように教官が居た。こちらを一瞥するも、その手にはクリップボードと数枚の書類が挟まれており、面倒くさそうにボールペンを走らせている。
「ええ、おかげさまで、ところでコレは何ですか?」
そう言って先ほど手にした菱形の結晶を差し出すと、初めて、教官の瞳が感情を表すようにピクリと動いた
「ほぉ、震度0とはいえ、そいつを拾ってくるとは、やるじゃないかルーキー」
「そいつは――」
そう言いかけたところで、ドタドタと外から何かが駆け込んでくる音、そしてボロボロの探検家と日向と一緒にいたルーキーたち2人が遅れて到着する。
3人共肩で息をしている。
「騒がしいな、どうした?」
「た、大変だ、姉御! 震度が、震度が上がりやがった!!」
その言葉の意味は分からない。だが、不吉の予兆の始まりだけは理解できた。