好奇心で首を突っ込んだら攻略難易度ルナティックの黒幕美少女に目を付けられた件 作:ああああああ
来年もきっと続きます。たぶん、きっと。
逆ナンされちゃった!
1:イッチ
修学旅行をこの時期にやるのおかしくね?文化祭終わってから数週間やぞ!?いやー、高校生は忙しいな
2:名無しのパンピー転生者
は?
3:名無しのパンピー転生者
勢いでごまかす気?
4:名無しのパンピー転生者
無理
5:名無しのパンピー転生者
何でそうなる
6:名無しのパンピー転生者
突っ込み待ちか
7:名無しのパンピー転生者
修学旅行って九州?
8:名無しのパンピー転生者
突っ込んでやるよ。ナイフを
9:名無しのパンピー転生者
ギャルゲーの世界で逆ナン………あり得るか?
10:イッチ
まあ、知ってる人だけどな。白崎無垢先輩。
11:名無しのパンピー転生者
あっ
12:名無しのパンピー転生者
ふーん
13:名無しのパンピー転生者
この時期に会える感じか
14:名無しのパンピー転生者
草
15:名無しのパンピー転生者
仲良くなった?
16:名無しのパンピー転生者
マジかよ
17:イッチ
今先輩の家にいる
18:名無しのパンピー転生者
うん?
19:イッチ
まだ家の前だけど。街中で会って何か送る流れになったから。すごいぞ、服とかを飾っているショーウィンドウって時々鏡を併設している場所があるじゃん。あの鏡を眺めながら5分くらい微動だにしてなかった。で、声を掛けたら何故か家に誘われた。行かねば不作法というもの、拙者侍故。
20:名無しのパンピー転生者
21:名無しのパンピー転生者
22:名無しのパンピー転生者
23:名無しのパンピー転生者
え?情報が飽和している。斬り合いしますか?
白崎先輩はどんな人?教えて有識者
24:名無しのパンピー転生者
あまり、仲良くすると朝凪からの感情が怖いぞ。好感度読めないから。(2敗)
25:名無しのパンピー転生者
芸大の1年生。他人の感じていることがなんとなくでわかる特殊技能持ち。朝凪シナリオのお助けキャラ
26:名無しのパンピー転生者
ネタバレはデキナイヨ
27:名無しのパンピー転生者
是非攻略しようぜ。未知の領域だからさ。
28:名無しのパンピー転生者
顔がいい。声がいい。巨乳、言動が天然、姉属性かつ年下みを感じる。性癖にジャストミートです!!!!!
29:名無しのパンピー転生者
草
30:名無しのパンピー転生者
知らんよ。
白崎無垢の家は、築年数の経ったマンションの二階だった。階段を上がり、古びたドアの前に立つと先輩は鍵を開けながら言った。
「ごめん、散らかってるから足元は気を付けてね」
「いえ、大丈夫です」
ドアが開いた瞬間、外の夕日と廊下の湿った空気とはまったく異なる、濃密で独特な世界が語の鼻と目に飛び込んできた。
廊下を抜けた先のリビング、その部屋は、生活空間というより文字通りアトリエだった。
壁の一面は鮮やかな緑色の布で覆われ、その上から無数の紙片、絵の切れ端がピンで留められている。床は、白と茶色の絵の具が飛び散ったキャンバス地で半分以上が埋め尽くされており、歩く場所を選ぶ必要がある。
イーゼルが鎮座し、途中まで描かれた大きなキャンバスがその世界を支配している。
窓際には古い木製の棚がありそこには様々な瓶やチューブ、石膏像の破片、そして動物の骨のようなオブジェまでがまるで美術品のデパートのように雑然と並べられていた。油絵具の匂いと、そして微かに線香のような何かの香りが混ざり合った、複雑な臭気。それは、嗅いだことのない白崎無垢の匂いだった。
無垢は、床に散乱したものを避けながら木製の椅子と折り畳み可能な小さなテーブルを持ってきた。
「座って。コーヒー飲める?」
「ええ、飲めます」
語は促されるまま座り、持ってこられたコーヒーを一口飲む。暖かさがこのひんやりとした冷気を纏う場所の中で、唯一の現実との接点のように感じられた。
無垢の露出した肌や黒髪に目を引かれつつも、やはり部屋の雰囲気が語の好奇心を刺激していた。
「まさにアトリエという感じの一室。ある意味で生活感のない部屋で正直驚いてます」
「狭いとは思ってるよ?もう少し広い家を借りてもよかったんだけど、汚してもいい家って中々ないから」
語の視線は、無意識のうちに部屋の中央にあるキャンバスへと吸い寄せられていた。
それは、まだ製作途中の油絵だった。描かれているのは塗り込まれた海辺に佇む細身の女性。ただの人間ではない。女性の背中からはいくつもの透明な翼の骨格が生えており、その翼の付け根からは鮮やかなコバルトブルーの鳥の羽根が無数にある。すぐ近くには一凛の花が咲いており、それに手を伸ばしている。
女性の顔はまだ塗り込まれておらず、背景の海も未完成。しかし、目を引かれた。
「これ、先輩が描いてるんですか」
語の問いに、先輩はテーブルの角に肘をつきながらぼんやりとした調子で応じた。
「そう、だよ。芸大の課題………でも完成はできない、かも?」
「どうしてですか?あと一息ですよね?」
「そうあと一息、でもその一歩が、届かない」
白崎無垢は、語が発した言葉を反芻するように目を細めた。
「どう思う?」
「どう思う、とは?」
「この絵の感想を、聞かせて?」
「………引き込まれました」
彼女は語がその絵を見て単なる驚きだけでなく共感と嫌悪感に近い感情を抱いたことを即座に捉えていた。しかし、なぜその感情を抱くのか、理解できない。ただ、語はそういった感情を抱いたという結果だけを把握する。
「ねえ、この女の子は伸ばした手を、どうすると思う?」
無垢は立ち上がり、キャンバスの前に立つと青い羽根が落ちている部分と花を人差し指でそっと撫でた。
「ひっこめると思います」
「………フフッ、そういうと思った」
無垢はふわりと寂し気に、仲間を見るように笑みを浮かべる。
「たぶん、ね?普通の人は伸ばした手で花を触ると思うって答えるよ」
「どうでしょうね。それは」
「きっと、私が臆病で君も同じだから、そう見えるんだ」
「………」
「今だって、君は納得しちゃってる」
「随分知ったような口を聞きますね?」
低い声が出た。そう気が付いた語は、慌てて訂正しようと顔を上げると無垢の視線とかち合った。
「私の描く絵、私自身をどう思う?」
部屋の隅には他にも数十枚のキャンバスが立てかけられていた。中央の絵を除き現実の論理を無視し、無垢の夢の中の論理だけで構築されたような絵ばかりだった。顔の代わりに花を咲かせた人、何十もの目を持つ深海の魚、顔を塗り潰された人形………それらは彼女の持つ欠如がもたらす世界の解釈を、無理やり表現しているように思う。
「君は私が、変、だと思う?」
無垢は、語の顔を見ずに尋ねた。彼女は知っている。人間はこれを変か異常と捉えること、これが理由で避けられることを。それは、彼女が他者から向けられる感情を瞬時に理解できる癖に、その理由をまるで理解できないからだ。
「他人と見ているものが、世界が、尺度がズレてるとは思います。そうですね…孤独な人だと思います。でもまだ不可解な部分も多いです」
語の返答は、一般的な評価とは僅かにずれていた。語が自分に対して警戒心や嫌悪感ではなく純粋な探求心と畏敬の念を向けていることを知覚した。だが、なぜ少年が他人と同じように嫌悪しないのか、その理由だけが彼女には曖昧なままだ。
「そっか。君は正直だね」
無垢は外を眺めながら目を閉じる。
「風見君。実は、ね?今日、家に誘ったのは、君が私とちょっと近いところにいる人だと思ったから、なんだ、よ?」
「近い、ですか」
「そう、近い。君、みんなといる時もどこか一人で何かを観察しているような透明な壁を持っているような、そういう子。触れたいけど、触れたくない、飛びたいけど、飛びたくない、できるけどできない。そういう感覚が、私に似てると思ったの」
無垢は、聞きかじった語の周囲の人間関係と文化祭と街中で見た彼の仕草や視線の動き、会話の頻度など、徹底的な観測によって把握していた。
語が抱える『ソレ』を彼女は僅かに知っている。
「私、ね?大学で、すごく仲良くなりたい子が一人いるの。絵の才能も感性も、私なんかよりずっとずっと眩しい。私みたいに生まれる前に落っことしてきたわけでもない」
無垢の声には、羨望と深い諦念のようなものが含まれていた。
「その子と、もっと話したい。一緒に制作したい。でも、全然ダメなんだ。私が話しかけてもその子は優しく応えてくれるけどすぐに他の友達のところへ行っちゃう。私が何かを言うと、その子はすぐに背を向ける。私の話が意味不明なんだと思う。私もあの子が何でそうするのかわかってない」
街で出会った時、彼女はショーウィンドウにある鏡を見ながら微動だにしなかった。5分以上、そうしていたのではないだろうか。商品ではなく、鏡を見て何を感じていたのか、鏡越しに世界をどう見ているのかは知らない。きっと彼女にしかわからない物があるのだ。
無垢は両手で顔を覆い小さなため息をつく。
「勇気をもって想いを伝えれば、あの子は応えてくれるかな?君ならどうする?」
その問いかけは、語へ向けられたものでありながら自身の内側へ潜り込んでいく独り言のようだった。