勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

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「これでも神に愛され、勇者に愛されまくってるアイドル聖女ちゃんですので」

「王よ、完全に言葉が崩れておりますぞ。こう言った場とはいえ、ある程度の分別はつけていただかなければ……」

 

「いやすまんすまん。城にいるとこういうプライベートなことは話せんのでな。それも恋愛結婚の末に結ばれた二人の前となるとこれがもう珍しくて珍しくて」

 

 

 護衛でついてきたのだろうメレディスさんが、アレックス王の軽口を諫め始める。

 照れたように後ろ髪を掻くアレックス王。

 

 

「はぁ? 私とスレイの結婚は断じて恋愛結婚ではありませんが? これも全ては長年連れ添った仲間が政治の闇に呑まれないようにするための防衛手段というか? なんだかんだ旅の間お互いに支え合い、信頼しあったパートナーに対する慈悲というかですね?」

 

「はいはい、そこまでにしておけジュリア」

 

 

 そして例の如く噛みつき始めるジュリアさん。

 それを適当に宥めすかす。

 

 

「それにしても、こんなところに王様と騎士団長様が来るなんて、なんか場違いな感じがするというか……」

 

「こちらからすれば、世界を救った勇者殿と聖女様がのほほんと目の前に佇んでいる光景の方が違和感を覚えますよ」

 

 

 それなりに良い立地ではあるけれど、気軽に国のトップと軍のトップがやってきていい場所ではない。

 そう思ったのだが、メレディスさんが苦笑しながら反論してくる。

 確かに、事実だけを見たらそうなんだけども……。

 

 

「そっかぁ……世界救ったのか俺。今だに実感湧かねえなぁ」

 

 

 どうにも、それを俺が成し遂げたということが現実のものとして受け止めきれていない。

 それが目的の旅だったけれど、いまだに旅をしている最中の感覚が抜けきっていないというか。

 

 

「魔王にトドメを刺したのは紛うことなく貴方ですのに、本当にスレイはぼんやり勇者ですね」

 

 

 ジュリアが俺の頬を突っつきながらこき下ろしてくる。

 やめろ、喋りづらい。

 

 

「あれだけ壮絶な戦いをしていたというのに、トラウマを抱えることなく、あっさり日常に戻れるとは、スレイのメンタルはオリハルコンでできているのでは?」

 

「強心臓持ちのジュリアには言われたくないわ」

 

 

 此奴も俺と同じ環境にいたし、その後平然と俺との生活を送っているというに。

 何自分のことを棚上げしてるんだ。

 

 

「……やはり魔王との戦いは厳しいものだったのですか?」

 

 

 メレディスさんが、興味津々と言った様子で問いかけてきた。

 前の反応を見るに、この人の感性って子供っぽいところがあるし、無理もないか。

 うーん。でも、なんか自分の活躍を自分で言うのってなんか恥ずかしいな。

 ナルシストっぽい気がして。

 ここは、軽い感じで。

 

 

「まあしんどいと言えばしんどかったかな? 他の人たちの協力もあったから、なんとか頑張れたけど」

 

「そんな簡単な言葉で片付けられるものではないと思いますが……」

 

 

 俺の発言に、ジュリアがジト目で言い返してくる。

 そう言われたって仕方ないじゃないか。

 自分から『俺ってこんなすげーことしたんだぜ!?』って言うのもバカっぽいし。

 そもそも、俺たちが魔王を倒せたのは、俺達の力もそうだけど、俺達が色々な人に助けられた結果だとしか思えないのだから。

 

 

「実際、どうだったのだ?」

 

「……この国で、地震が頻発する日がちょっと前にありませんでしたか?」

 

 

 アレックス王の言葉に、俺に代わってジュリアが返答する。

 

 

「うむ。確かに半日ほど地震が続いた日があったの」

 

「多分それ、スレイと魔王の戦いの余波です。なんならスレイが被害を外に出さないように抑え込んでてそれですよ」

 

 

 あー、そんなこともあったな。

 魔王のやつ、俺たちとの戦いの最中に、人が住んでる場所を攻撃しようとするから困った記憶がある。

 なんとか直接的な被害が出ないように全部防ぎきったけど、衝撃自体は殺し切ることはできず……。

 地震ばっかりは俺でもどうにも出来ないからな……。

 

 

「冗談……ではないんでしょうね」

 

 

 それを聞いて、神妙な顔つきになるメレディスさん。

 

 

「あー、やっぱりそれかー。スレイは大丈夫だったか? そんな攻撃を受けて」

 

「ええ、ジュリアがすぐに治してくれましたから」

 

「スレイが今こうして生きているのは私のおかげですよ。ブイ」

 

 

 それとはうってかわってあっけらかんとしているアレックス王。

 そして得意げにピースしているジュリアがそこにいた。

 

 

「知っておられたのですか!? というか呑気ですね王様!?」

 

「知ってたというか、納得したという方が適切じゃな。世界を滅ぼすと言われる魔王なのだから、天変地異くらいは起こせてもおかしくなかろうし。そしてそれを倒した勇者がそれに並ぶ力を持っていても驚かんよ。というか、スレイの強さをまともな定規で測ると頭がおかしくなるし」

 

 

 メレディスさんがアレックス王に驚愕しながらくってかかるが、なんでもないように返される。

 あと、アレックス王の言葉は失礼じゃないか?

 頭がおかしくなるなんて。

 

 

「そんな……ドラゴンをあっさり倒した時から変だとは思っていましたが、まさかスレイ殿がそこまで規格外の戦闘力を秘めていたとは……!」

 

 

 ワナワナと震えながら、俺を見てくる騎士団長様。

 それを見て、ジュリアが俺の前に立ち、目の前にいるメレディスさんを睨みつけ、

 

 

「それで? 今の話を聞いた騎士団長様はどうするおつもりですか? やはりスレイは危険分子だと……」

 

 

 俺への敵意や恐怖がないか確認する。

 もしもここでメレディスさんが不穏なことでも言えば、差し違えてでも止める。そう思えるほどの気迫だった。

 が、

 

 

「そんなことなら! 私もその戦いが見たかった!! スレイ殿と魔王の激闘なんて、絶対かっこいいやつじゃないですかそんなの!!」

 

「え」

 

「え」

 

 

 なんか予想外の言葉を叫び、興奮なされていた。

 あの、その、どうした急に。

 

 

「そんな大決戦なら間近で見たかったですよ本当に! ああ、どれだけ派手なバトルシーンが見られたか! 本当に残念です!! 私がもう一人いたのなら、自分の仕事を押し付けてでも見に行くところでした!!!」

 

「もしかしてこの国変な人しかいない?」

 

 

 ジュリアといい、アレックス王といい、このメレディスさんといい、変な人ばかりじゃない?

 この国、本当に大丈夫かな……。

 

 

「それを言うならスレイも相当変ですからね」

 

「酷い!」

 

 

 まさかよりにもよってジュリアに言われるとは。

 かなりショックだ。

 

 

「まさかメレディス騎士団長がそこまでスレイ達に入れ込んでいたとは知らなんだ。そうであったなら勇者と一緒に魔王討伐の任務を与えてもよかったのだが……」

 

「いえ、私の役割はこの国を守ることです。中でも私は騎士団のトップ。そのトップが自分の趣味を優先して防衛の穴を開けるなど言語道断というもの。スレイ殿とジュリア様であれば魔王討伐も叶うと信じていたからこそ、我々騎士団も全力でその責務を全うできたのですよ」

 

 

 急に落ち着くな。ビックリするだろ。

 そしてかなりまともな事を仰っている。

 これこそ騎士団長の鑑というものだ。

 

 

「それで本音は? 儂の前だからって気にせずに」

 

「いいなー! 魔王討伐とか男だったら誰でも憧れるじゃん! せめてその光景だけでも見たかったなー!」

 

 

 すぐメッキ剥がれるじゃん、団長様。

 

 

「凛々しい顔立ちなのにそんな男の子全開のセリフを言わないでもらえますか? ギャップがすごいです」

 

「清楚ぶってるくせに毒舌まみれのジュリアがそれ言う?」

 

 

 これほど、お前がいうなという言葉が当てはまる状況はないだろう。

 

 

「そんな口を利いて良いんですか? 貴方の怪我をどれだけ私が治してあげたか忘れました?」

 

「それに関しては、本当にありがとうございました! 魔王討伐はジュリアがいないとダメだったよ!」

 

「ほ、ほう。そこまで感謝されるとは……まあ、その殊勝な態度に免じて許してあげなくもないですよ?」

 

「スレイ殿でも怪我をされるのですね」

 

 

 実際、俺の体質的にジュリアがいなかったら死んでたと思う。

 なんか照れてるジュリアをよそに、メレディスさんが訊ねてくる。

 ……怪我をするかどうかが疑問って、俺のことをなんだと思ってるんだ。

 

 

「火事場の馬鹿力って知ってますか? 俺って戦闘になるとすぐその状態になるので、いつも戦闘後はボロボロになってるんですよ」

 

「……え?」

 

 

 普通の人だと、全力を出そうとしても体が耐えられないため、リミッターというものを脳が勝手に掛ける機能がある。

 しかし俺には、それがない。

 いつでも全力を出すことができてしまう訳だ。

 

 ただ、当然だがそこにはリスクが存在する。

 俺の体は、俺の全力に耐えられるように出来ていなかったので、小さい頃から戦いが終わるとすぐにぶっ倒れるのが日常茶飯事で。

 下手したら、俺は自分の力のせいで命を落としていたかもしれないのだ。

 

 

「全身の複雑骨折は当たり前。筋繊維の断裂もしょっちゅう。そうでなくても、敵からの攻撃で内臓損傷や四肢が吹っ飛んだこともありますし」

 

「その割には、勇者殿はピンピンしておられますが……」

 

「そんなもの、私の回復魔法でチョチョイのちょいです」

 

 

 そこで出会いましたのが、この聖女様でございます。

 戦闘後にくたばった俺の体をジュリアが即座に回復してくれたおかげで、どうにか俺はリスクを踏み倒せるようになったってわけで。

 むしろ、死の淵から甦りつづけたせいか、戦いを重ねるごとに際限なく俺の力は強くなっていたほどだ。

 ……本当に、俺の体ってどうなってるんだよ。

 

 それ以上におかしいのが、

 

 

「そんな手軽に治せるもんじゃないんだけどな治療魔法での回復って。あんな重症だったら上級のプリーストでも1日かかるらしいのに、本当に片手間で治せるのおかしいだろ」

 

 

 ジュリアの治癒能力の方である。

 簡単に回復魔法とは言うが、その扱いは他の魔法に比べて、群を抜いて難しい。

 なんせ、正確に治す対象の人体の構造を把握していないと、最大限の効果を得られないのだから。

 更には、その魔力の操作には繊細な技術が要求されるため、結構な時間がかかる。

 

 

「ついでに儂の腰痛も治してもらえんかの? 事務仕事のせいで痛くて痛くて……」

 

「はいはい。……あーこれ椎間板がずれてますね。じゃあ元の位置に戻しておきますね。はい治療おしまい」

 

「おお! あれほどの痛みが綺麗さっぱり!」

 

「治すの速すぎませんか!?」

 

 

 それをジュリアは、こんな風に一瞬で治せる。

 やっぱり、俺以上におかしいってこの聖女様。

 

 

「これでも神に愛され、勇者に愛されまくってるアイドル聖女ちゃんですので」

 

「歴代の聖女でもここまでではなかったらしいけどな」

 

「これも全て愛の力ですよ。……別にスレイへの愛ではなく、神も含めた全人類が私に向ける愛の大きさの話ですので、まかり間違ってもスレイのことが大好きだとかそういう方向のものではないので、勘違いしないように」

 

「もはやポーズだけになってないかの。そのスレイのことなんて好きじゃないんですからねアピール」

 

「だまらっしゃい」

 

「本当にうちのジュリアがすみません」

 

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