勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

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「どんな人外魔境なんですか、貴方達の村って……」

「一応、私の方で勝手にその武具の破片は集めておいてあるんですけどね。さっきの倉庫に保管してあります」

 

「そんなことしてたのか!?」

 

 

 俺が壊したとは言え、そんな貴重なものを俺たちの家に置いといていいものか。

 

 

「戦いが終わった後にコッソリと。壊れたとは言え由緒あるものですし、王様やアナスタシア様にも、うちで所持しておいていいって許可もらってますよ」

 

「あ、あの! そ……それ、見させてもらってもよろしいですか!?」

 

 

 スヴェンが大きな声でジュリアに懇願した。

 あの、ジュリアに対しておっかなびっくりになるほどに人見知りのスヴェンが。

 見ると、リオも目を丸くしてスヴェンの顔を見つめている。

 

 

「砕け散っていますけど、それでもよろしければ、どうぞご覧になってください」

 

「あ、ありがとうございます! うわ、緊張してきた!」

 

「そのように気を張らないでください。そこにいるおバカな勇者様は遠慮なしに使い倒してたんですから」

 

「す、スレイの力に耐えられる物質の方が、珍しいから仕方ないんじゃないかなぁ……」

 

 

 おお、スヴェンがジュリアとちゃんと受け答えできてる……!

 やばい、感動で涙が出てきそうだ。

 

 

「スレイ! スヴェンが、スヴェンが!」

 

「ああ! 俺も今間違いなく目の当たりにした! あのスヴェンがちゃんと村の外にいる人間と会話できてる!」

 

「うん! 私、なんだかスヴェンが遠くに行ったみたいで、ちょっと寂しい気持ちにもなってるけど、それ以上に嬉しいよ!」

 

「もはや今日という日を記念日にするべきでは!?」

 

 

 たかが会話と言う勿れ。

 普通の人には大したことのない会話でも、スヴェンにとってはそれくらい大きな一歩なんだ。

 

 

「あの……二人とも聞こえてるから……」

 

「……その、親友や妻にこんなに想われて幸せ者ですね?」

 

 

 遠慮がちにそう呟く二人のことをそっちのけで、俺とリオはスヴェンの成長に盛り上がってしまっていた。

 

 

 

    ◇

 

 

 

「こちらが、その破片になります。粉砕しているとはいえ、取りこぼしはないはずですよ」

 

「こ、これが、あの伝説の勇者の装備……!」

 

 

 倉庫の端っこに、剣と鎧と盾の一式が置かれてあり、スヴェンがそれを見て感動している。

 それらは確かに俺にも見覚えがあった武器たちだ。

 折れていたり、引き裂かれていたりと破損は激しいが、なんとか元の形は分かる程度にはパーツが揃っている。

 なんなら、修理すれば元の形を取り戻せそうではあるが。

 

 

「これ、修理とか出せないのか?」

 

「それがなかなか難しい話でして。ここまで損壊が酷いと、一度装備そのものを溶かして鍛え直すしかないみたいで。果たしてそれで修復されたものを、元の武器として認識して良いのかという議論がされたようです」

 

 

 確かに、元々は同じ物体でも、形を損ねてしまったら別のものになったような気分になる。

 

 

「そもそも、これらを修復できる技術を持った人がいないんです。いかんせん元の素材が脆いから、こうして形にできたこと自体が不思議なことだそうで」

 

 

 その上加工も難しいと。

 しかも、繊細な技術は必要な方向で。

 

 

「千年前のものがちゃんと原型を保った状態で維持できてたっていうのは、相当すごいことじゃないか?」

 

「二千年以上前の銅剣とかも普通に剣だと分かる状態で出土するじゃないですか。保存状態が良ければ案外長持ちするもんですよ。結局壊れてしまいましたけど」

 

 

 俺が乱暴に使ったせいですもんね!

 本当にすみません!

 

 

「……これに関しては、スレイが気にすることじゃないと思いますよ。スレイが使ってなくても、あそこまで摩耗していたら自然と崩れていたでしょうし」

 

「でも、俺が闘いに使わずに持って帰ってたら……」

 

「というか、装備品に宿っていた精霊みたいなものも満足してましたよ」

 

 

 は? 精霊?

 この伝説の武器たちに精霊いたの!?

 

 

「え? 何々? ジュリアちゃんって精霊の声も聞こえるの!? 精霊って、普通の人の目に見えない、小さな神様みたいなもんだって聞いてるけど」

 

「概ねその認識で合ってますよ」

 

 

 精霊というのは、自然の成り立ちとかそういうものを司っている、超常的存在だ。

 代表的なもので言えば風の精霊とか炎の精霊とかにはなるが、ある程度大きくて、信仰が集まるようなものであれば精霊は発生するらしい。

 だから、その土地特有の精霊がいるし、中には、古い建造物なんかにも精霊が宿るというのは聞いたことがある。

 ただ、こんなに小さい物体に宿るのは珍しいはずだけど。

 

 精霊に興味が湧いたのか、リオがそのままジュリアに詰め寄って。

 

 

「そういうすごい存在がいるっていうのは知ってるけど、姿を見たことも、声を聞いたこともなかったから、こうして声が聞こえる人が本当にいるなんて思わなかった! じゃあ今もその勇者の武器に宿っている精霊達の声を聞いてたり?」

 

「彼らの声は、この形になってからは聞こえていません。おそらくもう宿っていないのではないでしょうか」

 

 

 俺には聞こえないが、ジュリアには精霊の声が聞こえるとのこと。

 他の誰にも確かめようがないので、真実かどうかが分からないが。

 

 

「じゃあ、あの剣の精霊はなんて言ってたんだ?」

 

「えーっと……『くっ! 今の衰えた俺では、黒龍王が表面に纏っている防御の膜を破壊するだけで精一杯か! だが、新たな勇者に振るわれ、その戦いの中で散るのであれば、かつての勇者の武器としての本懐を遂げられたというもの! 時代遅れになった俺にこんな大舞台を用意してくれて感謝する! 俺はここまでだが、頑張れ、新たな勇者よ!』って感じでしたかね」

 

 

 めちゃくちゃ黒龍王討伐に役に立ってるじゃないですか。

 そんな剣を使えない扱いした勇者がいるらしいですよ。

 はい、俺です。

 

 

「……うん。じゃあ、その鎧の方は?」

 

「『飾られてるだけの鎧とかただのインテリアじゃないですかやだー! え、新しい勇者の役に立てるんですか!? やったー! 僕の役割は、勇者へのダメージを代わりに引き受けることだから、身代わり扱いでも勇者が無事ならOKです! さあさあ最後の晴れ舞台、派手に散ってあげましょう!』と、なかなか愉快な方でした」

 

 

 良心が!

 俺の良心への呵責が酷い!

 

 

「…………盾の精霊は?」

 

「『ふーむ。魔物の攻撃力も上がっているし、実際この時代の人間が作った武具の方が耐久力も機能性も高いですからね。私の全ての力を使っても、魔眼を防ぐくらいしかできません。……ま、老害にならないうちに退場できてよかったと思っておきましょう。全く、最近の武具ときたら素晴らしい進歩を遂げていて私も安心できました。それではおさらばです』と言って、事切れました」

 

 

 それらの言葉を聞いて、俺は深々と勇者の武具達に頭を下げた。

 本当にありがとうございます。そして、本当にごめんなさい。

 

 

「装備品そのものは限界が来てましたし、そういうことができたのも、精霊達が残った力を振り絞った結果だったんでしょう。なのでむしろスレイは彼らの望みを叶えてあげたと言っても過言じゃないと思います」

 

「でも、俺かなり酷いことを言っちゃって……」

 

「大丈夫です。皆『それはそう』って納得してましたから」

 

 

 精霊の方々の心が広すぎる。

 

 

「なので、今ここにあるのは、精霊のいなくなった、古くて特別な力もない、ただの装備品です。もし修復しても、スレイの力には耐えられないでしょうし、このままゆっくり休ませてあげましょう」

 

「あー、出たよ。『武器壊しのスレイ』。お前、もうちょっと大切に武器は使えよな」

 

 

 スヴェンの言葉が耳に痛い。

 けれど、こればっかりはどうにもならないと言いますか。

 

 

「いつも大体の武器を使い潰してましたもんね。スレイの力に武器が耐えられず、損壊しては新しい武器を調達してってのを繰り返して」

 

 

 俺の膂力に耐えられる武器が、そもそもない。

 剣だけじゃなく、槍や斧、弓矢でも俺はある程度なら使うことはできるのだけれど、どれもこれも数回使うだけで壊れてしまう。

 何回も死にかけて、その度にパワーアップして。

 そのせいで、俺の力は際限なく上がっていたため、武器がその力に追いつかないのだ。

 ……マジでどうなってんの、俺の体。

 

 ただ、それ以上にすごいのが。

 

 

「その点、スヴェンは凄いよな。一回も剣を変えたことないんだし」

 

 

 スヴェンは、幼い頃から、あの愛用の剣を使っていたが、それが損壊したところを見たことがない。

 むしろ、どんどんと鋭さが増していっているような気さえする。

 

 

「まあ、小さい頃からのオレの相棒なわけだしな。毎日こいつのお世話をしてるんだ。ちょっと歪みがあれば、持っただけでわかるぜ」

 

「なるほどなるほど……あれ? ちょっと待ってください。今なんて言いました?」

 

 

 スヴェンの言葉に、ジュリアが何か引っかかったようだ。

 何か間違ったことを言っただろうか?

 

 

「今、小さい頃からって言いませんでした? 幼い頃にそれを手にして、それ以降武器は変わってないと?」

 

「え、えーっと……まあ、そういう感じっす……」

 

 

 また、少しだけ人見知り状態になった。

 ちゃんと受け答えできているだけ、成長しているけれど。

 

 

「え? スヴェンさんは、この大剣を、小さい頃から持ってたんですか? なんなら、これを振り回していたと? まだまだ子供の時から?」

 

「そ、そうなります……かね……?」

 

 

 ジュリアが、自分の身長よりもでかいであろうスヴェンの大剣を指差しながら問い詰めていく。

 その勢いのせいで、スヴェンが及び腰になっている。

 

 

「ジュリアちゃん? 何かおかしいことでもあった?」

 

「どう考えてもおかしいでしょう!? こんな大人でも振れなさそうな大剣を、どうやって使えたんですか!?」

 

 

 ……ああ、そうだった。

 普通の人だったら、スヴェンの愛剣なんて構えることもできないんだ。

 なんか、俺とリオは昔から見てたからそういうもんだと思ってたけど。

 

 

「小さい頃はスレイよりもスヴェンの方がめちゃくちゃ強かったからねー。なんなら今でもこの国の中ならスレイの次には強いんじゃないかな」

 

「スヴェンって七歳くらいの時に、ドラゴンとかデーモンとか余裕で倒してたもんな」

 

 

 スヴェンは化け物並みに強いんだ。

 リオの言う通り、大人でもどうにもならない魔物をどうにかしてしまうほどに。

 そうじゃなければ、俺だって大切な人に魔王討伐の旅についてきて欲しいとは思わなかったんだから。

 

 

「どんな人外魔境なんですか、貴方達の村って……」

 

「安心してジュリアちゃん。私たちの故郷でも、本当におかしいのはこの二人だけだから」

 

 

 リオの言葉にも、ジュリアは信じられないと言った顔をした。

 ……それは、まあ、そうだよなぁ。

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