勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

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「捕まえてごらんなさーい。というやつですね。それではお先です」

「でっかい墓だな。一人のためにこんな墓作るとか昔の人は何を考えてたんかね」

 

 

 砂漠の到着した時点で遠目には見えていたけれど、実際に目の前に来るとその存在感に圧倒される。

 ぱっと見ではあるけれど、王城よりもかなりデカい。

 王様と言えど、その人だけのためにここまでのものを作るとなると、相当手間がかかってそうだけど。

 

 

「権威の誇示じゃないですかね。国同士であれば面子というのは重要ですし。『こんなでかい墓を建ててもらえるくらい俺は凄いんだぞ! 恐れ入ったか!』って感じのアピールというか」

 

 

 ジュリアがそう解説してくれるが、なんか腑に落ちない。

 大昔であっても魔物の脅威はあったのに、こんな権力をアピールするために無駄な労力を割いている余裕があったのだろうか。

 ここ以外の王墓も多少は大きいとは言え、ここまで規格外ではない。

 なにか、別の意図があるのでは?

 

 

「ワンチャン、スレイの墓もこれくらいのものになるかもですよ。貴方には実感がないみたいですけど、世界を救った大英雄なのは紛れもない事実ですから」

 

 

 陰謀論に頭が支配されかかった俺に、ジュリアがこっそり耳打ちをしてきた。

 

 

「えー……俺、普通の墓がいいんだけどなぁ。大き過ぎたら手入れも大変だろ。実際、この王様のお墓は手入れできなくなってるわけだしさ」

 

 

 このお墓と同じようになったら、誰も墓参りに来てくれなくなってしまう。

 それは、なんだか寂しい気がする。

 

 

「そこは私の力でどうにかしますよ。死んだ後にスレイが不思議な力で蘇ったら大変なので、監視のために、あくまで監視目的のために、私も貴方のすぐそばに埋めてもらいますけど」

 

「おー、夫婦で仲良く同じお墓に入るっていう奴ー? スレイとジュリアってラブラブなんだねー」

 

 

 ジュリアの言葉をロビンが囃し立ててきた。

 が、俺は今、ジュリアはそれ以上の意味を込めているんじゃないかという疑惑に囚われている。

 なんせ、ジュリアは俺が思っている以上に情念深く、時折間違った方法で愛を示そうとしてくることがあるからなぁ。

 そして、今のジュリアのセリフで、少し引っかかった疑問について聞いてみた。

 

 

「えっと……それ夫婦として一緒の墓に入るって意味であってる? ちゃんと天寿を全うしてから埋葬されるってことか? まさかとは思うけど、俺が死んだら殉葬するつもりじゃないよな?」

 

 

 俺の言葉を聞いて、ジュリアが俺から視線を逸らした。

 

 

「スレイのくせに難しい言葉を知っていますね。それはさておき、このお墓に突入しますか。深くまで潜り込んで生きて帰ってきたものはいないという曰く付きの陵墓。気を引き締めていきましょう」

 

 

 おい。ちゃんとこっちの目を見て話せよ。

 ジュリアの正面に回り込もうとするが、視線が合う前にそっぽを逸らしてくる。

 ……え、これマジのやつ?

 

 

「ねえ待って。誤魔化さないで、俺の質問に答えてくれませんか? あの、ジュリア様? あ、おい! 逃げるな!」

 

「捕まえてごらんなさーい。というやつですね。それではお先です」

 

「本当に一人で勝手に行くな! というかちゃんと答えろ!!」

 

 

 王墓の方向へ駆け出していくジュリアを追いかける。

 

 

「うわぁ、聖女様の愛って怖ぁ……」

 

 

 そんな、真っ当すぎる恐怖を抱いたロビンを置き去りにしながら。

 

 

 

    ◇

 

 

 

「お待ちしておりましたスレイ殿、ジュリア様。今回の潜入には私も同行させていただきますので、よろしくお願いいたします」

 

 

 このクソ暑い環境の中、メレディスさんが涼しい顔をして待っていてくれた。

 よく見ると、メレディスさんの頭上にも、小さな雲が浮かんでいる。

 多分、これもロビンの魔法によるものだろう。

 ……持続力もあるのかよ。ヤバいな。

 

 

「王族関係の場所なんで、王様直属の方にもついてきてもらう必要があるみたいなんです。私たちは一応部外者になりますから」

 

「あぁ、なるほどな」

 

 

 もはや形骸化しているようなものではあるけれど、王家と俺たちは相互不干渉の形式をとっている。

 つまり、王族からしたら、俺たちはよそ者みたいな扱いになるわけだ。

 そんなやつらを、なんの監視もなく王族のお墓に入れる訳にはいかないってことか。

 

 

「しかし、それでも団長が来られるとはVIP対応って奴ですか?」

 

「いえ。私から希望してこちらに参りました。だって、勇者殿とこんな陵墓の中で宝探しとか、絶対面白いやつじゃないですか!!」

 

 

 すごく目をキラキラさせたメレディスさんが、そう主張した。

 ……ああ、この間アレックス王と一緒に来た時に言ってた監視云々はこのことだったのね。

 

 それでも、さあ。

 

 

「あの、キリッとした顔で子供みたいなことを堂々と言い切らないでくれません?」

 

「スレイ殿はテンション上がらないんですか? 宝探しですよ、宝探し! 恥ずかしながら、実は私、こういう冒険みたいなことに幼い頃から憧れていたんですよ!」

 

 

 実はも何も、そうだろうなとしか思えないです。

 

 

「もはやこの人取り繕うことも忘れてますね。この間はギリギリ体裁を保とうとしていたのに」

 

 

 ジュリアがメレディスさんの振る舞いを見て、素直な感想を述べる。

 それはそうなんだけど、ジュリアはそれを言える立場ではないと思う。

 

 

「もー! 二人とも先に行かないでよー!」

 

「あっ、悪い」

 

 

 置いてけぼりにしていたロビンが駆け足でやってきた。

 全力疾走と言った様子でこちらの方に駆け寄ってくる。

 

 が、様子がおかしい。

 なぜかロビンは速度を緩めるどころか、さらにスピードを上げてメレディスさんの方へと突っ込んで行き。

 

 

「ちょっ!? ロビンさ、ごふっ!?」

 

 

 メレディスさんへ体当たりした。

 かろうじて、メレディスさんは倒れることなくロビンを受け止められたが、タックルの衝撃で肺を圧迫されたのか、変な声が口から漏れ出ている。

 

 

「だんちょー、油断大敵ですよー? 不意打ちとはいえ、ボクの体当たりも余裕で止められないなんて、だんちょー失格じゃないですかー?」

 

「いきなり仲間がタックルしてくることなんて想定してないんですよ!」

 

「騎士団長たるもの常在戦場でしょー? そんな言い訳したらダメでーす」

 

「というか、なんでロビンさんは私に体当たりしてきたんですか!? 今する必要ありました!?」

 

「なんですかー。ボクが童心にかえってだんちょーとじゃれあおうとしちゃいけないって言うんですかー?」

 

「じゃれあおうとしないで下さい、こんなところで! そもそも不用心に私なんかに引っ付こうとしないでいただきたい!」

 

「ああ、一緒に騎士団に入った時のメレディスは優しかったのに、今じゃこんな反抗的になっちゃってー。ボクは悲しいですよー」

 

「そうやって、いじけるフリをするのはやめてくれ……やめて下さい! スレイ殿とジュリア様に変な誤解されたらどうするんですか!」

 

 

 物理的に置いて行かれたロビンが、今度は俺達を置いてけぼりにしている。

 どうしようかと考えていると、ジュリアが恐る恐る二人に近寄り。

 

 

「……メレディスさんとロビンさんは、随分と仲がよろしいのですね?」

 

「そうだよー! メレディスが騎士でボクが魔法使いだから、入団した時からなんだかんだで一緒に組むことも多かったんだよねー。今じゃ、お互いにそれなりの立場だから、こうやって一緒にお出かけするのも久しぶりでねー」

 

「お出かけ呼ばわりするな! 御二方との重要なクエストを!」

 

「あー、そのあたりは気にしなくて全然いいぞ。こっちもそこまで真剣って訳じゃないし」

 

 

 そもそも、さっきまでこの王墓に入ることにワクワクしていたメレディスさんもロビンと同類である。

 

 

「ま、まあ、ロビンさんはこんなお方ですけど、魔法の腕前ならこの国でもトップですので、同行しても問題ないかと存じますが……」

 

「私は光魔法と治癒魔法以外はあまり得意ではないので、攻撃魔法が使える方がいるのは助かると言えば助かりますが……」

 

「? どうかしたー? ボクの顔に何かついてるー?」

 

 

 しどろもどろにロビンの擁護をするメレディスさん。

 けれど、ジュリアの視線はロビンの方に注がれており。

 

 

「今のメレディスさんとのやりとりから推測するに、可能性はほとんどないことは分かっていますがあえて忠告しておきますね。スレイは私のものなので、色目使ったりしないで下さい。スレイが不貞を働こうものなら、この世から尊い命が消えてしまうことは重々承知しておくように」

 

 

 真面目な顔でとてもバカなことを仰った。

 

 そんなジュリアの言葉を受けて、流石のロビンも戸惑ったようで。

 

 

「……もしかしてボク、泥棒猫みたいに思われてますー? ボクそんな女じゃないですよー? ねー、だんちょー」

 

 

 目を瞬かせた後、メレディスさんにそう訊ねた。

 メレディスさんは微妙そうな表情を浮かべながら。

 

 

「ええ、それはもう私はよく承知していますのでご心配なさらず。……あの、ジュリア様に失礼なこととは重々承知の上ですが、そんなに警戒しないでいただければこちらとしても助かると言いますか……」

 

「本当にうちの嫁が嫉妬しいですみません」

 

 

 嫁が嫉妬するほど、旦那っていうのはモテないということを、ジュリアには肝に銘じていただきたい。

 そんなことを思いながら、俺はロビンとメレディスさんに頭を下げたのだった。

 

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