勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

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「一方的に自分の気持ちを相手に押し付けるとか笑止千万というもの。愛の押し売りはよくないです」

 あの後の流れはというと、分かりきってた結果ではあるが、俺たち四人で魔物の巣は殲滅できた。

 魔物の巣を潰したこと自体は俺もジュリアも初めてではないし、その時と比べても戦力が二人も増えているということもあってか、思ったよりも余裕な感じで。

 

 王墓に平穏がもたらされた後は、メレディスさん達は城に報告をしなくてはいけないとかでさっさと帰ってしまった。

 仕事熱心な人だな、全く。

 

 それで、俺達が得られた報酬はというと。

 

 

「結局価値がありそうなのはあの指輪くらいだったな。魔物の巣は潰せたけど、俺らの得になるようなことは何もなしと」

 

「その指輪も私たちが持って行くほどでもありませんでしたしね」

 

 

 特に何の成果もあげられませんでした。

 魔除けの指輪も俺たちには必要ないので、そのまま王様に献上することに。

 元々お金稼ぎが主目的で王墓に潜入したわけではないので、そこはジュリアも納得してくれている。

 ここは、国を脅かす脅威を取り除けたってところを喜ぶべきだろう。

 

 

「メレディスさんとロビンさんも満足そうでしたし、万事これでオッケーで終われてよかったです」

 

「あの騎士団長様、探索中ずっと楽しそうだったもんな」

 

 

 決して気を抜いていたわけではない。

 むしろ、いつどこから脅威が迫ってくるかに気を配っていたくらいではあった。

 けれど、その上でメレディスさんは間違いなく浮き立っていたと思う。

 本人が言っていたように、冒険するのが楽しかったみたいで。

 

 

「あの人、本当に年上なのかな……」

 

「なんなら、精神的な意味では一番若かったかもですね。……誤解しないで欲しいのですが、決して悪口のつもりで言っているわけではありません。むしろあの年齢になってもまだ活力に満ちているということはすごい長所ですから」

 

 

 それは本当にそう。

 その上で優しいし、普通に強いし、顔もいいし、物腰柔らかだし。

 ……天は二物以上のものを、あちこちの人に渡しすぎでは?

 ジュリアとか、スヴェンとか。

 

 

「メレディスさんが冒険を楽しんでいたってのは分かるけど、ロビンも満足してたのか? 思う存分魔法を使えてたから?」

 

 

 俺がそう言うと、ジュリアは深いため息をついた。

 やめろよそれ。

 なんか傷つくだろ。

 

 

「分からなかったんですか鈍感勇者。メレディスさんと話してる時、ロビンさんがあれほど嬉しそうに笑っていたのに?」

 

「…………同期同士で仲がいいなら普通では?」

 

 

 そう返すと、ジュリアはさらに深いため息をついた。

 だからやめてくれって。

 そろそろ泣くぞ。

 

 

「あのロビンさんの目つき、メレディスさんに対して友人以上の感情が混じってます。本人に自覚があるかどうかは怪しいですが」

 

「え、マジで?」

 

 

 俺の目には、ただの仲の良い友達くらいにしか見えなかったんだけど。

 それか、兄に甘えている妹のような関係かと。

 

 

「あの二人だいぶ歳離れてたぞ? 多分一回りくらいの差があるんじゃ?」

 

「愛に年齢は関係ありませんから」

 

 

 そういうもんか。

 ロビンも言及していたけれど、メレディスさんは顔つき自体は若々しいし、二人が並んでいてもそこまで年齢差は感じさせないところはあるが。

 ……いや、メレディスさんは落ち着いてる雰囲気があるせいで、結構活発なロビンとだったら、やっぱり大人と子供のように見えそうだ。

 

 そこは、本人達が納得できるなら外野がとやかく言うところではないので、メレディスさん達の好きなようにしたらいいと思うけど、本当にそういう仲かなぁ?

 最近ジュリアは恋愛小説を読んでるし、その影響を受けてるだけじゃ?

 

 

「まあ、勘違いしたお年を召した方が若い人に懸想した時、免罪符の如くその言葉を振り翳して言い寄るケースもあるみたいですが。本当に何を考えてるんですかね。年齢差がどうこうではなくて、互いに価値観を共有できていないのに、一方的に自分の気持ちを相手に押し付けるとか笑止千万というもの。愛の押し売りはよくないです」

 

 

 辛辣だな。

 俺も、その意見には賛成だけど。

 

 

「もしかしてジュリアもそう言う経験があったりするのか?」

 

「ありましたよ? 親子ほどの年齢が離れてる貴族の方に、そうやって口説かれたことがあります。……いや本当に無理でした。全く清潔感のない太ましい方で、生理的に無理なところに、自分の理屈だけ並び立てて……。あんなんだからいつまで経っても独身だったんですよ」

 

 

 自分の肩を抱き抱えながら、震える仕草をするジュリア。

 よっぽどその人が嫌いだったんだろう。

 見た目はそんなに気にしないと豪語している聖女様が、その容姿に言及するレベルには。

 

 

「清潔感っていうのが俺はよく分からないけど、俺は大丈夫なのか? ジュリア判定ではセーフ?」

 

「毎日体を洗って、歯磨きもして、髪の毛や髭はちゃんと整えて、毎日洗濯した服を着てれば大体オッケーです」

 

「……そんなの、当たり前のことでは?」

 

「世の中、当たり前のことをちゃんとすることが難しい人もいるんです」

 

 

 そりゃ火急の時は手が回らないこともあるけれど、余裕があれば誰でもすると思うんだけどなぁ。

 でも、ジュリアの言葉を信じるなら、その貴族様はそれができてなかったということなのだろう。

 

 

「その方はかなり例外中の例外ですが、他にも老若問わずに多くの殿方に声をかけられてきましたし。やはりこのダイナマイトボデーが男の下卑た欲望を刺激してしまうんでしょうか」

 

 

 ジュリアは腰をくねらせ、胸や尻を強調するようなポーズをとりながら、そう言った。

 その様子を見て、俺は一言。

 

 

「うわキッツ……」

 

「キツいとはなんですか失礼な!」

 

 

 ジュリアが顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。

 

 

「『そうやって言い寄られてた過去がキツかっただろうな』って意味で言っただけで、ジュリアのそのポーズに言及したわけじゃないぞ」

 

「そうですか……。なら、先程の私の悩殺ポーズの感想は?」

 

「うわキッツ……」

 

「ぶちのめしますよ!?」

 

 

 実際には全然キツくないのだが、面白そうだったのであえてそう言ったところ、ジュリアは予想以上に良い反応をしてくれた。

 本当にこいつ面白いな。

 

 

「でも、無理やり貴族の方々に手篭めにされなくてよかったな、本当に」

 

「おやおや、嫉妬ですか? スレイも知らないおっさんに私が手を出されてたらなんて想像したりしちゃったんですか?」

 

 

 先ほどとは打って変わって、勝ち誇るような表情を浮かべるジュリア。

 ……ジュリアの言う通り、そんな想像をするだけで俺は不愉快な気分にはなるけれど。

 

 

「何ニヤニヤしてんだよ。そりゃジュリアが他の下心のある男に触られてたら嫌な気持ちもあるけど、好きでもない異性に言い寄られる怖さってのは俺も微妙に知ってるから、共感したって言うか」

 

 

 と、そこまで言い切ると。

 

 

「は?」

 

 

 途端にジュリアの顔から表情というものが抜け落ちた。

 なんか、強い語気で、『は?』と言いながら。

 

 

「……つってもあれだぞ? 旅してる最中に寄った村とかで魔物討伐を頼まれたりしてたじゃん? そんで、それが終わった後の夜ぐらいに、その村の子とかが『魔物を倒してくれたお礼です』とか言って、俺が泊まってる部屋に来ることがたまにあってさ」

 

「は!?」

 

 

 なんだか、さらに語気が強くなった気がする。

 というか、ジュリアの表情が少し強張っているような。

 

 

「もちろん全部断ったぞ? 俺はそういう目的で頑張ったわけじゃないとか、ちゃんと報酬はもらってるからとか、相手からしても好きでもない男に触れられるのも嫌だろうとか言ってさ。それでも中には結構粘り強いと言うか、使命感に駆られている人もいてさ。説得するのに骨を折ったなぁって」

 

 

 最終的には『俺には好きな人がいるんで、そういうのはやめて下さい』って白状した時もある。

 あの時は、まだジュリアと結婚できるとも思ってなかったから、勝手にそういうことで持ち出すのも後ろめたかった気持ちもあったなぁ、なんて。

 ちょっとだけ昔を懐かしんでいると。

 

 

「は!?!?」

 

 

 完全にブチギレた様子で、こちらを睨みつけている聖女様の姿が目の前に現れた。

 

 

「あの、ちょっと怖いですよジュリア様……?」

 

「何がですか!?!?」

 

「いえ、なんでもないです……」

 

 

 ジュリアの剣幕に、俺はすごすごと引き下がる。

 いやだって怖いんだもん。

 

 

「そうですかそうですか。そういうことですか。こっちが少しスレイの嫉妬心を煽ろうとしただけなのに、それを無慈悲に百倍返しするのが勇者様のやり方というわけですか。随分調子に乗ってくれるじゃないですか浮気者勇者。いつまで経っても手を出してこないヘタレ勇者の気持ちを慮ってこっちから夜這いでもしてやろうか、いやでもやっぱり恥ずかしいし拒否られたら自決する他ないしなんて悶々としているあの時間にそういうアプローチを受けていたということですか。そこで拒否してるのは流石だと誉めてやりたいところではありますし、スレイとしてもそういう不貞は働かないというのは重々承知していますよ。承知していますけど、それはそれこれはこれという便利な言葉がございまして、私以外の泥棒猫がちょっかいかけてたということが腹立たしいことこの上ないと言いますか。とりあえず一旦ここは色々な手段を用いて上書きをせざるを得ないと思うんですよね。具体的にはドロドロでグチョグチョでヌレヌレでズチャズチャでデロデロな感じのものを刻みつけないといけません。おいスレイ、今すぐベッドに行くぞ」

 

「いや、まだそんな時間じゃ……」

 

「行くぞ」

 

「はい……」

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