勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

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「顔面偏差値で言えば、うちの勇者と比べたら月とスッポンですよ」

 あの後、結局あのオリハルコンの指輪の方は結婚指輪として購入することになったのだが。

 

 

「わざわざ喫茶店に連れてきてまで、俺達に聞きたいことってなんですか?」

 

 

 イザヤさんとギデオンさん、二人揃って俺達に相談したいとのことで。

 俺もジュリアもこの後の予定は特にないので、お二方の頼みを快諾したけれど、相談ってなんだろう。

 

 

「いやあ、よう考えたら人間関係の構築で悩んでるのは僕もイザヤ君も同じやと思うてなぁ? そこでスレイ君やジュリアちゃんに、その辺りのことを相談させてもらいたいんよ」

 

「オレは彼女が、ギデオンさんは友人が欲しいというところは微妙に違いますが、ほぼ一緒と考えても差し支えないかと。もちろん、ここのお代は出させていただきますから」

 

 

 ……なるほどなぁ。人と仲良くする方法を聞きたいってことか。

 

 正直なところ、俺だってそんなコツがあるなら聞きたいくらいだ。

 なんせ、いまだに小さい子供には怖がられてるんだから。

 俺の顔を見て、少し引き攣った表情を浮かべる幼子の顔を見るのは、なかなかに心に来るものがあるんだぞ。

 

 こういうのはジュリアの方が得意だろう。

 俺への態度を見てたらそうは思えなくなるが、外面モードになったこいつの対人能力はなかなかなものだし。

 

 

「そうですね……ギデオンさんはともかく、イザヤさんはなんでモテないんですか? 顔は悪くないですし、甲斐性だってかなりあるのに」

 

「ちょっとジュリアちゃん。僕はともかくってどういうことやねんな。……いややっぱええわ。深入りすると、返す刀でバッサリいかれそうやし」

 

 

 賢明な判断である。

 ジュリアの問いかけに、イザヤさんは少し苦々しい表情を浮かべながら、ボソリと答える。

 

 

「……とある人からは、見た目が軽薄そうで、すぐ浮気しそうだからとか言われましたね」

 

「あー……」

 

「納得しないでくださいよ!」

 

 

 悲痛な叫びを上げるイザヤさん。

 そりゃジュリアの納得したような相槌を聞いたら何か言いたくなるものだが。

 

 

「オレそんな酷いことしませんって! というか、自分のことを好いてくれてる人のことを蔑ろにするって人として最低じゃないですか!?」

 

「ならナンパするのやめたらいいんじゃ? ナンパ男なんて軽い人の代表格じゃないですか」

 

 

 それはそう。

 さっきから話している限り、イザヤさんはかなり実直で真面目な人だ。

 なんなら、ナンパなんて行動に走ったこと自体に違和感を覚えるくらいである。

 ジュリアの素朴な疑問に、イザヤさんは苦笑して。

 

 

「いやぁ……実はオレも昔好きだった人がいたんですよ。小さい頃から仲良くって、お互いの家族の仲も良くて。なんとなくオレもこの子と結婚したいなぁ、なんて思ったりして」

 

 

 そこで一息入れると。

 

 

「ただ、その子はオレのことを異性と見てなかったみたいで、振られちゃったんですよ。なんなら『男らしくないし、積極的でもないし、地味なあんたと男女の仲になるとか無理』とか言われて。結局、その子は女の子にガツガツ行くタイプと付き合ったらしいですし、ことあるごとにその彼氏とオレを比較してくるもんだから、モテるためにそれに倣おうとして踏襲した形ですかね」

 

「傷口を抉ってしまってすみませんでした」

 

 

 話を聞き終えたジュリアが、即座に頭を下げた。

 でも仕方ない。

 まさか、そんなところに地雷が埋まってるとは思わないもん、普通。

 

 というか、イザヤさんの好きだった人があまりにも酷すぎる。

 彼氏さんと比較するとか、仮にも友達相手にするようなことじゃない。

 

 そう思っていると、隣から鋭い殺気のようなものが突き刺さる。

 何事かと横を振り向くと、そこには明らかに不機嫌ですと言ったようなギデオンさんがいた。

 

 

「酷いことを言う人もあったもんやねぇ。その人、よっぽど自分が上等な人間やと思ってはるんやろうか。そんなすごい人なら僕も一度お目にかかってみたいもんやわぁ。そこまで自信があるんやったら、それはもうとんでもない別嬪さんなんやろなぁ」

 

 

 やたらと嫌味ったらしく、そう言い放つギデオンさん。

 いくら鈍感と言われている俺でも分かる。

 だいぶ頭にきてるよ、この人。

 

 

「お、怒らないでくださいギデオンさん。貴方が何かやったら事件になりますよ?」

 

「そない言われんでもなんもせんよ。せやけど僕の友達をバカにされたら腹立つやん? それにそういう陰湿なこと僕嫌いなんやわ。言いたいことがあるなら、そういうねちっこいやり方やなくてすっぱり言ったらええのに。まあ、よかったやないのギデオン君。付き合ってからそんな本性出されてたら、もっとしんどかったやろうしなぁ」

 

 

 まあ、ギデオンさんの言うことも一理あると言えばあるんだけど、その……言い方と言いますか……。

 

 

「ギデオンさん。今の貴方の発言がまさにねちっこい言い方になってますよ。怒るのは良いんですけど、それで皮肉マシマシな喋りになってしまうから周りの人に怖がられるのでは?」

 

 

 容赦のないジュリアの一言に。

 

 

「ゲフゥ!」

 

「ギデオンさんが血を吐いた!?」

 

 

 ギデオンさんは、精神的に致命傷を食らってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

「イザヤさんは今はそんな風に言われる見た目じゃないんですけど、そんな過去があったんですね」

 

「全くです。顔面偏差値で言えば、うちの勇者と比べたら月とスッポンですよ」

 

「なんで今俺を引き合いに出した? 浮気か?」

 

「ほう。逆説的に言えばスレイは顔の良い女がいたら浮気をしてしまうと。そう言いたいのですか?」

 

「そんなんで浮気とかしないって。そもそもジュリア以外には考えられないから」

 

「その言葉をそっくりそのまま返しますよ」

 

 

 やたらと俺が浮気することには神経質なのに、逆の立場になった途端あっけらかんとしている聖女様。

 元から、ジュリアが浮気するとは思ってはないけれど。

 

 

「そりゃあ必死になってスキンケアとか体作りをしたもんですから。商人として頑張って金も稼いで、女性を口説こうって段階になったんですけど、先ほどのようなことを言われてしまい……」

 

「金もあって、見た目も良くて、さらっと口説こうとするから女慣れしてるように見えてまうと。低みから高みに上り詰めすぎたんやねぇ」

 

 

 しみじみと感慨深そうにそう呟くギデオンさん。

 イザヤさんの親なのかと思うほどの貫禄である。

 

 

「全然そんなことないんですけどね! 女性と会話するだけでエネルギーを大量消費するくらいですから! なんならサラッと言わないとすぐどもっちゃうくらいですし!」

 

「そんなんで異性の客さんと会話できるんですか?」

 

「その場合は男女関係なくお客様ですから」

 

 

 プロ意識高いな。

 

 

「では、先ほど私に声をかけたのはかなり体力を使ったのでは?」

 

「ええ。手汗でびっしょりでしたし、背中もダラダラでしたよ」

 

 

 そこまでなのか。

 俺も女性と喋るのは得意な方ではないけれど、変にガチガチになったことがないからよく分からない。

 緊張したことなんて、小さい頃にジュリアと初めて会った時と、勇者になって再会した時くらいだろうか。

 

 

「難儀な性格やなぁ。でも僕は君のそう言う真面目なところは好きやで? 素直な子は可愛いからなぁ」

 

「だから、裏がありそうな喋り方しないでくださいよ……」

 

 

 ジュリアがボソリと苦言を呈したが、それよりも気になることが。

 

 

「そういうギデオンさんはお付き合いされた方とかいらっしゃるんですか?」

 

 

 ギデオンさんも顔立ちは整っている方だし、そういう関係になった女の人がいてもおかしくないはず。

 なので、興味本位で聞いてみたら、ギデオンさんは突然遠い目になって。

 

 

「……スレイ君は優しいなぁ。人付き合いができへんどころか怖がられ、仲良ぅなったら下ネタ話す男がモテる訳がないって考えに至ることがないんやからなぁ」

 

「す、すみません……」

 

 

 とても悲しいことを、空元気で笑いながら言い放ったのだった。

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