勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

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「とりあえず、お二人は色々な意味で新しい出会いを求めているということですよね」

「また嫌味な言い方みたいになってますよギデオンさん」

 

「ごめんごめん。今のは本当に怒ってるわけちゃうんよ。スレイ君の発想が本当に優しい人の考え方やなって思っただけやから」

 

「怒ってるとは欠片も思ってませんが……」

 

 

 ジュリアの容赦ない指摘に、ギデオンさんが慌てて補足する。

 そんなことを言われなくても、普通にギデオンさんは悲しんでたんだろうなとしか思わなかったけど。

 

 

「それならええんやけどね。……なんで僕は素直な言葉のつもりなのに裏があると思われるんやろうかなぁ」

 

「雰囲気もそうですけど、声も原因かと」

 

「え? なんでですか? ギデオンさんって、すごく良い声してるじゃないですか」

 

「イザヤさんの言う通りだ。ギデオンさんの声は落ち着いてるというか、澄んだ高めの声というか、少なくとも悪い声じゃ決してないじゃないか」

 

 

 イザヤさんの咄嗟の反論に俺も同意する。

 ギデオンさんの声は悪いものでは決してない。

 むしろ、聞いているとリラックスできるような良い声なのに。

 

 

「そうです。良すぎるんですよ。あまりにも良すぎて、聞いているうちにますます怪しく聞こえるほどに。正直暗躍してる悪役みたいな、なにか裏で碌でもないことを考えてそうな声に聞こえます」

 

「えぇ……」

 

 

 良い声だからダメとか酷くない?

 そんなことを言い出したら、イザヤさんはもちろんだがジュリアだって含まれそうなものだけど。

 

 

「そんなん言われても、僕にはどうにもできへんやん。ジュリアちゃんってほんまに困ったこと言うお方やわぁ」

 

 

 声なんて持って生まれたものを今から変えるなんて相当大変だろうに。

 流石のギデオンさんもこれには完全にお手上げである。

 

 ……いや待てよ。

 

 

「それなら、逆に低俗なことを言えばバランスが取れていいのでは!?」

 

「それだ! ちょっとギデオンさん、さっきおっしゃってたように遠慮なしで喋ってみてくださいよ!」

 

 

 確か、仲良くなると下品なことを言い始めるとか語っていたはず。

 下ネタを喋っている人だったら、怪しまれなくなるだろう。

 そんな期待を込めてギデオンさんに促すと。

 

 

「そうやなぁ。……じゃあ聞くけど、皆はもう童貞は捨ててるん? さっきの話聞いたら分かるけど、僕まだ童貞なんよね。上の剣の方は百戦錬磨で負け知らずやのに、下の剣は戦い知らず。ある意味どっちも敵はおらんから無敵と言い張ってもええんやないかな。ま、どっちもスレイ君には勝たれへんのやろうけども」

 

「……結構フルスロットルですね」

 

 

 あのジュリアがドン引くほどの言葉の洪水が溢れ出した。

 ギデオンさん、こんなことをあの冷静そうな顔つきの裏で考えてたのか……。

 

 

「恥ずかしながら童貞です。そうじゃなかったらこんなこと相談してませんし」

 

 

 ギデオンさんの問いに、イザヤさんが乗っかり始める。

 あの、これ俺も答えないとダメなパターンのやつ?

 でも、言い出しっぺの俺が無視するのも悪いしなぁ……。

 

 

「ついこの間まではそうでしたね……」

 

「かーっ! これだからスレイ君はあかんのや! 富も名声だけなら勇者様やから当然やとして、女までジュリアちゃんなんていう最高の相手を見つけてるとか、人の心とかないんかスレイ君は! そんな高みに至ってしまったら、僕達みたいな持たざる者の気持ちが分からへんくなるやろ! 弱者の味方であるべき勇者が強者側に立ったらダメやないか! 自分の操を守れない勇者に何が守れるっちゅうんやって話やわ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「そんなこと言われても……。まあ、一旦この話は置いておきましょうよ、ね?」

 

 

 急に二人揃って俺を糾弾し始めたが、俺はどう返したら良いんだろうか。

 勝ち誇るのはもちろん良くないし、『そんな結婚なんて大したことないですよ』なんて謙遜したら、結婚相手であるジュリアまでもを貶めることにもなる。

 なので曖昧な表情を浮かべて、話を流そうとした。

 

 

「そうやって逃げるんは良くないんとちゃうかなスレイ君? 僕らはこうやって自分の隠してたことも曝け出したっていうのに、ここに来ても自分の本性を隠し続けるとかアンフェアやん」

 

 

 が、ギデオンさんが逃してくれなかった。

 

 

「曝け出したのは、ギデオンさんの自己責任でしょ!? というか、俺に隠してる本性も何もないですし!」

 

「またまた冗談ばっかり上手いなぁ、スレイ君は。男なんやから、実はえっぐい性癖とか隠しとるんやろ? ああ、勘違いしてほしくないんやけど、ここでいう性癖って言うのは、人の性質上の偏りや癖の方の意味やなくて、性的嗜好の方やからな?」

 

「可能であれば、前者の方の意味であって欲しかった……!」

 

「ちなみに最近の僕の趣向は、清楚で優しくて周りから完璧そうに見られている女の人が、実はその内心では周りからの期待や羨望の視線に対して少しだけ重荷に感じてしもてて、裏では心の許した人の前でだけちょっと砕けた喋り方で表には出せんような愚痴を言いながら甘えてくるというシチュが好みやで。ああ、でもここが重要なんやけど、砕けた喋り方とは言うても乱暴な言葉遣いやなくて、年相応のどこにでもいるような女の子みたいな口調くらいなんがええね。そこまで行ったら別ジャンルになりそうやし」

 

「性癖の開示……全力ですね、ギデオンさん。ならば、オレも語らなければ無作法というもの……!」

 

 

 やめてくださいイザヤさん。

 そんなマジな顔で下ネタを語ろうとしないで下さい。

 これ以上は俺の能力で処理できるキャパを超えちゃうから。

 

 

「ギデオンさんってこんな感じだったんですか……。まあ、お二人がどうしたいのかは良く分かりました」

 

 

 そして、まさかここまでギデオンさんが明後日の方向にハジけ出すとは思っていなかったであろうジュリアだが、そんな中でも解決策を考えていたようだ。

 普段、俺に対しては無理難題をふっかけてくる聖女様ではあるが、こういう俺以外の人間の悩みには割と真摯な解決策を提示してくれるはず。

 というか、なんでも良いから、この混沌まっしぐらな流れをぶった斬って欲しい。

 

 

「とりあえず、お二人は色々な意味で新しい出会いを求めているということですよね。でしたら私に良い考えがありますよ」

 

 

 ジュリアは人差し指をピンと立てると。

 

 

「私の教会での先輩に、相手がいない方が何人かおりますので、その人達を連れてきて食事でもしてみますか? ギデオンさんやイザヤさんと同じ歳くらいの人たちですよ」

 

 

 思ってた通り、割と真っ当な解決策を提示してきた。

 その提案に、イザヤさんが恐る恐るといった表情を浮かべながら、訊ねる。

 

 

「えっと……教会の人たちってことは、つまりシスターさんってことですよね? その、教義的には大丈夫なんですか? 異性と交流するっていうのは」

 

 

 かつての俺と似たような質問をするイザヤさん。

 けれど、ジュリアは慈愛を込めた笑みを浮かべながら告げる。

 

 

「基本的に我々は自由恋愛なので問題ありません。なんなら誰かいい男紹介しろとせっつかれてるくらいですし、好都合ですよ」

 

「貴女が神ですか!」

 

 

 イザヤさんが祈るかのように手を組みながら、ジュリアに本気の感謝を捧げた。

 けれど、ジュリアは首を横に振り。

 

 

「いいえ聖女です。私の方が神より上ですのでお間違いなく」

 

「不敬がすぎる!」

 

 

 いつものように、神様に対してあまりにも罰当たりなことを宣い出した。

 もう何度目の暴挙だろうか。カウントするのもバカらしくなってくるけど。

 

 

「いわゆる、合コンってやつやな。あーあ、着ていく服とかどないしよ。せっかく来てくれるんやし、こっちもそれなりの格好をせんといかんよなぁ。変な見た目で笑われでもしたら、悲しくて悲しくてお暇させてもらうことになってまうし」

 

 

 どことなくテンションが高いイザヤさんとは対照的に、先程までの勢いはどこへ行ったのか、落ち着いた様子のギデオンさんが顎に手をやりながら考え込んでいる。

 

 

「せめてお友達くらいにはなれたらええなぁ。まぁ、そこまではいかんでも、僕のことを怖がらへんかったらええんやけど」

 

 

 凄く良い人であるギデオンさんが怖がられるなんて全くおかしな話であるが、そこは本当に重要なところだ。

 折角の機会なのに、結局怖がられておしまいなんてことになったら目も当てられない。

 

 

「……なあジュリア、本当に大丈夫か? その人達は勘違いしたりしないよな?」

 

 

 少し不安に思い、ジュリアに確認するが。

 

 

「多分大丈夫ですよ。というか、あの人たちなら結構似たもの同士かも知れないですし」

 

「はい?」

 

 

 何やら妙なことを口走った。

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