勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」 作:匿名希望
やっぱり、人の役に立つのって嬉しいなぁ。
「ふー……木材を切るのも一苦労だな……うわぁ!? あんた切るの速すぎねえか!?」
「ありがとうございます。あ、そろそろ丸太がなくなりそうですね。ちょっとあっちの森で数百本伐採してきます!」
「ちょっと待て! なんか桁がおかしいぞ!?」
それは俺が『勇者』になる前からそうだった。
「……あれ? もう石材がなくなってますね。おかしいな、計算だと全部なくなるにはもう数日は、」
「すみません。道路に敷く分の石がもうなくなって……あ、在庫もない感じですか?」
「え、あ、はい……もしかして、全部使い終わりました?」
「ええ。言われた通りに並べてましたが、すぐ終わっちゃいまして……。石がないなら、俺が採掘場まで行って採掘してきますよ」
「いやいやいや!? ここから採掘場までどれだけ距離があると思ってるんですか!?」
皆が喜ぶ顔が好きで。皆が悲しむ顔が嫌いで。
「うわーっ!? 魔物が出たぞー!!」
「ワーウルフとキラービーの大群だ! お前ら逃げろ!」
「は、早くアンタも逃げろよ! あんな群れ、俺達の手には……!」
「ご心配ありがとうございます。ですが安心して下さい」
だから、平和な世の中になるためなら、俺はどこまでも頑張れた。
「俺は勇者スレイ! この俺が立っている限り、ここにいる人々には誰一人として手出しはさせん!」
「ゆ、勇者!? 勇者だって!? なんでそんな人がここに!?」
「この事業には勇者も関わってるって噂には聞いてたけど、あれは本当だったのかよ……!」
そして、その気持ちは今も変わっていない
「さあ、かかってこい魔物共! 俺が相手をしてやる!」
ああ、やっぱり、人の役に立つのは嬉しい!!
◆
「やりすぎです」
「はい。すみませんでした」
魔物の群れを討伐した後、俺はジュリアに叱られていた。
しかも正座で。
「久々に仕事ができてテンションが上がるのは分かります。ですが、貴方だけが頑張っても周りの人はついてこられないのですよ。見てみなさい。貴方がとんでもないスピードで完成させてしまったこの道を」
「……あれの何がダメなんですか?」
ジュリアが指差した先には、俺が全力で組み立てた道路が伸びている。
自分で言うのも何だけど、木材は指示された通り注意して組んだし、石材も丁寧に並べているけど。
怒っているジュリアに恐々と敬語で問いかけると、聖女様はため息をつき。
「この仕事は出来高制ですよ? 貴方が全力で取り組んだ結果、一日で材料も底をついてしまったせいで数日間この人たちは仕事にありつけなくなりました。そればかりか、道路を拡張しすぎた影響で魔物から守るための衛兵さんの数が足りなくなってるんですけど、どうするんですか」
「材料は俺が取ってくるし、魔物に関しては俺が守れば……」
「だから、そうやって勝手に人の仕事を奪わないでください! 魔物への警備については、これはもう貴方が責任を取らないといけない案件なのは確かですけども!」
「はい、すみません」
……張り切りすぎた。
「……まあ、工事をする予定の人たちには、採掘などの別の仕事が与えられることになりましたし、現場の人たちは貴方に感謝しているみたいですし、今回はこれで切り上げますが、もうちょっと周りに目を向けて下さいよ?」
「肝に銘じておきます……」
仕事というのは、早く終わらせた方がいいと思っていたのに、どうやらそうでもないようだ。
まさか。誰かと働く経験が少なすぎた影響がこんなところに出るとは。
これは俺も反省しないと……。
「あらあら、ジュリアが怒っているのはそれだけじゃないでしょう?」
「何ですかソニアさん。私には隠していることは何もありませんよ」
自らの行いに深く反省していると、先ほど受付をしてくれたセリーナさんとはまた別の、どことなく怪しげな微笑みを浮かべているシスターさんがやってきた。
ソニアさんというのだろうか。
結構背が高い人だな。ギデオンさんほどではないけれど。
「そうですか? この仕事は出来高制であることを執拗に訊ねて来ていたではありませんか」
「仕事内容を確認することは至極真っ当だと思いますが」
「そうですね。その後に『ひゃっほう! これならスレイが時間に拘束されずに済みます! どうせあの勇者様のことですから、あっという間にノルマ達成するでしょうし、そしたら余った時間を私とイチャコラすることに費やせます。まさに我々の結婚生活のために生まれて来たような業務内容、都合が良すぎにも限度あり、しかしその性質は誉高い』なんて言っていたではありませんか」
「惑わされないでくださいスレイ! これはソニアさんの捏造です!」
こんな頭のいかれたフレーズが混じった文言を平然と宣う奴がジュリア以外にいたら、もはやこの世の終わりだと思う。
「他の人への迷惑ももちろんですが、スレイさんが夜間の警備をしなくてはならなくなったことで、拗ねている面もあるのです。全く……」
そこまで言うと、ソニアさんは先ほどから浮かべている笑みをさらに深めて。
「可愛らしいことですねぇ? ジュリア?」
「くっ!?」
ジュリアの方に向き直り、そう溢す。
その表情からは、尋常でないほどのプレッシャーを感じる。
その様は、なんか、こう、ジュリアから借りた本に出てくるような、悪辣な令嬢のような光景だった。
「あの……俺のことを助けてくれたのは嬉しいんですが、あんまりジュリアのことをいじめてやらないであげてください」
「はて? いじめているつもりはありませんが?
尚も微笑みを浮かべながら、首を傾げるソニアさん。
これはあれか? 旅先でよく出会ってた、嫌味な感じの貴族様と同じタイプの人間か?
そう訝しんでいると。
「スレイ。悩んでいるところ悪いのですが、ソニアさんの言葉は全てそのままの意味です。変な可愛がられ方をしている真っ最中の私が言うのも変ですが」
「そうなの!?」
当のいじられているジュリアから、ソニアさんを擁護するような発言が飛び出した。
マジで?
こんなに、怪しい笑顔を浮かべているのに!?
「同じような人物をスレイも知ってるでしょう。ソニアさんは、ギデオンさんと同じタイプの人間なんですよ。怖がられないように笑顔でいるのに、その笑顔がちょっとアレなせいで逆効果になる感じの」
「ちょっとジュリア?
そ、そうなのか?
でも、ギデオンさんとは違って、マジモンの重圧みたいなものを感じたんだけど。
「ソニアさんから滲み出るオーラが、完全に魔王とかそういう系統の強者と酷似しているものですから。特別戦闘力が高いとかでもなく、普通レベルの強さなのに」
「そ、それは大変申し訳ありませんでした!」
「……いいんです。昔から、なぜかこうやって怖がられてますから。このせいで、子供達からも近寄るだけで泣き叫ばれて……うう……」
あ、そこはちょっと親近感。
俺も子供には逃げられるタイプの人相してるし。
「顔も美人すぎて怖いんですよね。もはや人間離れした美貌すぎて。まあ、この世界からも神からも愛されるほどのプリティフェイスを持ったこの聖女ちゃんほどではありませんが」
「それ褒めてるの? 貶してるの?」
「これ以上なく褒めちぎってますが?」
ジュリアの中では、自分の容貌が最上位である以上、その通りなのだろう。
実際、俺の中でもジュリアがこの世で一番可愛いし綺麗だとも思っているし、そこに異議を唱える気は起きない。
「あと、ワードチョイスが誤解を招きやすいものばかりなのもよろしくないですね。私は慣れてますけど、今のスレイみたいに裏を勘ぐってしまいかねないものですから」
「
そうだったんだ……。
「まあまあ、そんな怯えられてばかりのソニアさんに朗報です」
「……なんですか? この友人が少なく、異性との付き合いもない惨めな
あ、この流れはさっきも見たぞ。
「貴女、合コンに興味はないですか?」
「詳しく、聞かせてください。今
……シスターさんも、大変なんだな。