勇者「魔王、倒せたな…」聖女「二人でイケるもんなんですね」   作:匿名希望

51 / 51
「この世界からも神からも愛されるほどのプリティフェイスを持ったこの聖女ちゃんほどではありませんが」

 やっぱり、人の役に立つのって嬉しいなぁ。

 

 

「ふー……木材を切るのも一苦労だな……うわぁ!? あんた切るの速すぎねえか!?」

 

「ありがとうございます。あ、そろそろ丸太がなくなりそうですね。ちょっとあっちの森で数百本伐採してきます!」

 

「ちょっと待て! なんか桁がおかしいぞ!?」

 

 

 それは俺が『勇者』になる前からそうだった。

 

 

「……あれ? もう石材がなくなってますね。おかしいな、計算だと全部なくなるにはもう数日は、」

 

「すみません。道路に敷く分の石がもうなくなって……あ、在庫もない感じですか?」

 

「え、あ、はい……もしかして、全部使い終わりました?」

 

「ええ。言われた通りに並べてましたが、すぐ終わっちゃいまして……。石がないなら、俺が採掘場まで行って採掘してきますよ」

 

「いやいやいや!? ここから採掘場までどれだけ距離があると思ってるんですか!?」

 

 

 皆が喜ぶ顔が好きで。皆が悲しむ顔が嫌いで。

 

 

「うわーっ!? 魔物が出たぞー!!」

 

「ワーウルフとキラービーの大群だ! お前ら逃げろ!」

 

「は、早くアンタも逃げろよ! あんな群れ、俺達の手には……!」

 

「ご心配ありがとうございます。ですが安心して下さい」

 

 

 だから、平和な世の中になるためなら、俺はどこまでも頑張れた。

 

 

「俺は勇者スレイ! この俺が立っている限り、ここにいる人々には誰一人として手出しはさせん!」

 

「ゆ、勇者!? 勇者だって!? なんでそんな人がここに!?」

 

「この事業には勇者も関わってるって噂には聞いてたけど、あれは本当だったのかよ……!」

 

 

 そして、その気持ちは今も変わっていない

 

 

「さあ、かかってこい魔物共! 俺が相手をしてやる!」

 

 

 ああ、やっぱり、人の役に立つのは嬉しい!!

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

「やりすぎです」

 

「はい。すみませんでした」

 

 

 魔物の群れを討伐した後、俺はジュリアに叱られていた。

 しかも正座で。

 

 

「久々に仕事ができてテンションが上がるのは分かります。ですが、貴方だけが頑張っても周りの人はついてこられないのですよ。見てみなさい。貴方がとんでもないスピードで完成させてしまったこの道を」

 

「……あれの何がダメなんですか?」

 

 

 ジュリアが指差した先には、俺が全力で組み立てた道路が伸びている。

 自分で言うのも何だけど、木材は指示された通り注意して組んだし、石材も丁寧に並べているけど。

 怒っているジュリアに恐々と敬語で問いかけると、聖女様はため息をつき。

 

 

「この仕事は出来高制ですよ? 貴方が全力で取り組んだ結果、一日で材料も底をついてしまったせいで数日間この人たちは仕事にありつけなくなりました。そればかりか、道路を拡張しすぎた影響で魔物から守るための衛兵さんの数が足りなくなってるんですけど、どうするんですか」

 

「材料は俺が取ってくるし、魔物に関しては俺が守れば……」

 

「だから、そうやって勝手に人の仕事を奪わないでください! 魔物への警備については、これはもう貴方が責任を取らないといけない案件なのは確かですけども!」

 

「はい、すみません」

 

 

 ……張り切りすぎた。

 

 

「……まあ、工事をする予定の人たちには、採掘などの別の仕事が与えられることになりましたし、現場の人たちは貴方に感謝しているみたいですし、今回はこれで切り上げますが、もうちょっと周りに目を向けて下さいよ?」

 

「肝に銘じておきます……」

 

 

 仕事というのは、早く終わらせた方がいいと思っていたのに、どうやらそうでもないようだ。

 まさか。誰かと働く経験が少なすぎた影響がこんなところに出るとは。

 これは俺も反省しないと……。

 

 

「あらあら、ジュリアが怒っているのはそれだけじゃないでしょう?」

 

「何ですかソニアさん。私には隠していることは何もありませんよ」

 

 

 自らの行いに深く反省していると、先ほど受付をしてくれたセリーナさんとはまた別の、どことなく怪しげな微笑みを浮かべているシスターさんがやってきた。

 ソニアさんというのだろうか。

 結構背が高い人だな。ギデオンさんほどではないけれど。

 

 

「そうですか? この仕事は出来高制であることを執拗に訊ねて来ていたではありませんか」

 

「仕事内容を確認することは至極真っ当だと思いますが」

 

「そうですね。その後に『ひゃっほう! これならスレイが時間に拘束されずに済みます! どうせあの勇者様のことですから、あっという間にノルマ達成するでしょうし、そしたら余った時間を私とイチャコラすることに費やせます。まさに我々の結婚生活のために生まれて来たような業務内容、都合が良すぎにも限度あり、しかしその性質は誉高い』なんて言っていたではありませんか」

 

「惑わされないでくださいスレイ! これはソニアさんの捏造です!」

 

 

 こんな頭のいかれたフレーズが混じった文言を平然と宣う奴がジュリア以外にいたら、もはやこの世の終わりだと思う。

 

 

「他の人への迷惑ももちろんですが、スレイさんが夜間の警備をしなくてはならなくなったことで、拗ねている面もあるのです。全く……」

 

 

 そこまで言うと、ソニアさんは先ほどから浮かべている笑みをさらに深めて。

 

 

「可愛らしいことですねぇ? ジュリア?」

 

「くっ!?」

 

 

 ジュリアの方に向き直り、そう溢す。

 その表情からは、尋常でないほどのプレッシャーを感じる。

 その様は、なんか、こう、ジュリアから借りた本に出てくるような、悪辣な令嬢のような光景だった。

 

 

「あの……俺のことを助けてくれたのは嬉しいんですが、あんまりジュリアのことをいじめてやらないであげてください」

 

「はて? いじめているつもりはありませんが? (わたくし)はただ、夫婦仲睦まじい様子のジュリアの言動が愛おしく思っているだけですのに……」

 

 

 尚も微笑みを浮かべながら、首を傾げるソニアさん。

 これはあれか? 旅先でよく出会ってた、嫌味な感じの貴族様と同じタイプの人間か?

 そう訝しんでいると。

 

 

「スレイ。悩んでいるところ悪いのですが、ソニアさんの言葉は全てそのままの意味です。変な可愛がられ方をしている真っ最中の私が言うのも変ですが」

 

「そうなの!?」

 

 

 当のいじられているジュリアから、ソニアさんを擁護するような発言が飛び出した。

 マジで?

 こんなに、怪しい笑顔を浮かべているのに!?

 

 

「同じような人物をスレイも知ってるでしょう。ソニアさんは、ギデオンさんと同じタイプの人間なんですよ。怖がられないように笑顔でいるのに、その笑顔がちょっとアレなせいで逆効果になる感じの」

 

「ちょっとジュリア? (わたくし)の笑顔がアレとはどう言う意味ですか? ことと次第によっては、詳しく話を聞かせてもらうことになりますよ?」

 

 

 そ、そうなのか?

 でも、ギデオンさんとは違って、マジモンの重圧みたいなものを感じたんだけど。

 

 

「ソニアさんから滲み出るオーラが、完全に魔王とかそういう系統の強者と酷似しているものですから。特別戦闘力が高いとかでもなく、普通レベルの強さなのに」

 

「そ、それは大変申し訳ありませんでした!」

 

「……いいんです。昔から、なぜかこうやって怖がられてますから。このせいで、子供達からも近寄るだけで泣き叫ばれて……うう……」

 

 

 あ、そこはちょっと親近感。

 俺も子供には逃げられるタイプの人相してるし。

 

 

「顔も美人すぎて怖いんですよね。もはや人間離れした美貌すぎて。まあ、この世界からも神からも愛されるほどのプリティフェイスを持ったこの聖女ちゃんほどではありませんが」

 

「それ褒めてるの? 貶してるの?」

 

「これ以上なく褒めちぎってますが?」

 

 

 ジュリアの中では、自分の容貌が最上位である以上、その通りなのだろう。

 実際、俺の中でもジュリアがこの世で一番可愛いし綺麗だとも思っているし、そこに異議を唱える気は起きない。

 

 

「あと、ワードチョイスが誤解を招きやすいものばかりなのもよろしくないですね。私は慣れてますけど、今のスレイみたいに裏を勘ぐってしまいかねないものですから」

 

(わたくし)はただ、幸せそうにしているジュリアの姿が、見てて微笑ましく思っていただけなのに……。数少ない、(わたくし)の友人ですから……」

 

 

 そうだったんだ……。

 

 

「まあまあ、そんな怯えられてばかりのソニアさんに朗報です」

 

「……なんですか? この友人が少なく、異性との付き合いもない惨めな(わたくし)にどんな幸運が舞い込んでくると?」

 

 

 あ、この流れはさっきも見たぞ。

 

 

「貴女、合コンに興味はないですか?」

 

「詳しく、聞かせてください。今(わたくし)は平静を保てそうにありません」

 

 

 ……シスターさんも、大変なんだな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

メインヒロインより可愛いモブの田中さん(作者:3pu)(オリジナル現代/恋愛)

突然だが、現代を舞台にしたアニメや漫画に出てくるモブのレベルは高い。▼ 主人公やメインヒロインと同等の美男美女なモブが出てくることもしばしばある。▼ しかし、それだけの容姿を持っていても主要キャラではないせいか何故か彼氏がおらず、モテもしない。▼「いや、いやお前ら正気か!?田中さんが一番可愛いだろうが!?」▼ そのことに気が付いた俺 中山透はメインヒロインを…


総合評価:9308/評価:8.68/連載:31話/更新日時:2026年02月23日(月) 22:42 小説情報

恋愛要素ありの死にゲーに転生して鉈を振り回す転生者(作者:エヴォルヴ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

エロゲーとギャルゲーの皮を被った死にゲーと名高いゲームの世界に転生した男。▼最大コンテンツたるハクスラ(最大コンテンツではない)とメインヒロイン(ヒロインではない)と導きのメインウェポンに脳を焼き尽くされた男は恋愛要素など知ったことではないと言わんばかりに突き進む。▼え?関わってきた人達の好感度ですか?(彼にとっては)知らない子ですね。子ではない?じゃあ、そ…


総合評価:17017/評価:8.3/連載:101話/更新日時:2026年03月12日(木) 23:36 小説情報

カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている(作者:暁刀魚)(オリジナル現代/日常)

【書籍発売中!】▼ カードゲームで世界が滅ぶのはカードゲームの世界だと定番だ。▼ そんな世界に転生した俺、棚札ミツルは念願かなってカードショップの店長になることができた。▼ カードバトルをする人たちが楽しそうなこの世界で、それを近くで眺めていたかったのだ。▼ しかし、そんな俺は端から見ると大きな事件を解決し、先達として子どもたちを見守る前作主人公のように見え…


総合評価:49529/評価:8.92/完結:374話/更新日時:2026年06月27日(土) 18:13 小説情報

異世界転生周回プレイもの(作者:にーしち)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

主人公「なぜ俺が選ばれたんですか?」▼女神様「貴方には素養があります。私の願いを叶えるのに必要不可欠な素養が」▼主人公「それは......?」▼女神様「貴方がどんなゲームも100%達成トロコンしないと納得できず千回だろうと一万回だろうと周回して全てを遊び倒す究極クソ廃人だからです」▼主人公「なるほど!」▼※2026年7月20日、オーバーラップ文庫様より「異世…


総合評価:28688/評価:9.16/連載:30話/更新日時:2026年06月26日(金) 18:45 小説情報

TSメス堕ち俺っ娘スライムと作る宇宙最強ハーレム(作者:最条真)(オリジナル現代/冒険・バトル)

▼青春ボーイ・ミーツ・エイリアン異能バトル。(ラブコメとハーレムもあるよ)▼なんにでも変身できるスライムと出会い、恋に落とすことで宇宙最強のハーレムを構築していく話。▼通称:スライムハーレム▼なろう・カクヨムにも同時投稿。▼週1~2投稿▼※タイトル模索中▼カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/822139843928473732▼作者…


総合評価:8736/評価:9.24/連載:74話/更新日時:2026年06月30日(火) 01:53 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>