───【ファースト・パンデミック】
10年ほど前に起きた未知のウイルス『
発生源となったのは、『PN(:Peple Next)』と呼ばれる、物体に感染するウイルスを調べていた研究所でした。
1999年現在、人類は壁に囲まれた地上コロニーを作り、その内部で暮らすのであった。
【日本/広島/コロニー外 [現地時間 10:00]】
窓ガラスが飛び散った住宅街。電線からは金属が剥げており、道路には元気な新芽が芽吹いています。
ふと、若芽が揺れます。風は自然ではなく、人為なもの。
路面を通り過ぎるは、少女の細足。
「────こ、こないでッ!!」
缶詰をボロ布につつみ、煤だらけのワンピースを揺らす少女。
幼い少女は地面を縫うように走り、“なにか”から逃げるように息をあげる。
「「「────ゥ!」」」
背後からの叫び声。遠目に見えるは大勢の人影。
道路を蹴り、砂埃を巻き上げ、迫りくる集団は異様の一言であった。
「そんな……、まだ追って来るよぉ……」
少女の息は絶え絶え。足はもつれ始め、それでも進むことを止めない少女。
全てはこの缶詰を家族に届けるために。お腹が減った家族にこの食料を届ける為に。
「「「────ツゥ!」」」
だが、彼女の希望を裏切るように、異様な集団との距離は短くなっていく。
舞う砂埃が少女の鼻を捉え、集団の叫び声は少女の耳にハッキリ聞こえる。
「「「────パンツゥ!」」」
砂埃をまとい走るは全裸の男達。否────正確にはパンツだけを履いた男達。
彼らの足もとは既に血まみれ。腕も瓦礫に切り裂かれ、両腕すらない者もいる。
だが、彼らは追いかけることを止めない。
「だめぇ、このままじゃ下着ゾンビに追いつかれちゃう……」
少女が口にするは男達の総称。そう、彼らが纏っているのはウイルスに感染した感染維パンツ。
彼らはパンツに体を支配された
「あっ⁉」
一瞬、宙に体が浮く少女。次に感じるのは、地面の硬い感触。
コロコロと転がる缶詰、そして音とともに顔から地面に倒れ込んでいる少女。
だが不運だったのは転んだことではない。少女のボロ布が捲れ────“イチゴ柄のぱんつ”がゾンビの眼に映ってしまったことである。
彼らは繊維(主にぱんつ)を媒介として、仲間を増やす。そんな連中に餌を見せてしまったのである。
つまり、結果は火を見るよりも明らか────
「「「パンツ!、パンツ!!」」」
眼を血走らせ、加速する下着ゾンビ達。
汚染から免れたぱんつ。彼らからしてみれば同族を増やしてあげようとする慈善の気持ちなのだが。
少女からすればそれは地獄への招待へとなんら変わりはない。
「痛い、痛いよぉ、お母さんっ」
缶詰の事など忘れ、頭を打ち付けた痛みを嘆く少女。そして走るゾンビ達。
ようやく腕に力を入れ始める少女。しかし、迫るゾンビ達。
立ち上がる少女。だが────背後のゾンビ達。
「「「パンツゥ⤴ パンツゥゥゥ⤴⤴」」」
起き上がった少女の眼に映るのは、視界を埋め尽くすほどのゾンビ達。
ああ、ぱんつを汚されるんだな────散り際にして少女の思考は酷く冷静であった。それは叫び声をあげても助からないという一種の諦め。
世界も、神も、運でさえも見捨てた彼女を一体誰が助けてくれようというものかッ!
「────いいやッ、その気持ちは私に届いたッ!!」
閃光一閃。路面に刻まれるのは炎ォの軌跡。燃えるように切り裂かれるは下着ゾンビのパンツ。
パンツという名の支配部を砕かれたことから、ゾンビは地面に倒れ、物言わぬ死体と化す。
「お、お姉さんは⋯⋯誰?」
「
残心の如く剣をふり切り、大胆なスリットが入った赤いドレスを翻す、身長160cm女性。
手に持つ剣は、燃えるの炎ォのように彼女の意志を示します。
「パンツァーズって、あのラジオで聞いた」
「そうだな……ラジオで流れるほど有名になったかもしれないな」
国連軍第601特殊部隊。ゾンビによる被害を抑えるために、国連によって設立されたゾンビ討伐部隊。
国連からは超広範囲の特権を与えられており、国家に対して事後承認で、道路の封鎖、街の摘発、等の法規措置が可能である。
世界各地に部隊は派遣されており、彼女601が派遣された先は日本。
「その、お姉さんは、寒くないの……?」
「いや、コレは寒いとか、そういうことは無くてな」
少女の純粋な疑問に、困惑しながら返答する赤ドレス女性。
彼女たちは各色のショーツを履き、みえそうで見えない衣装を身にまとう。
それは彼女たちが痴女だからか────否、そうではない。
「にしても次から次へと……」
壁を乗り越え、地面の中や、家を突き破って現れる、多数の下着ゾンビの集団。
爆音か、少女のぱんつか、何に釣られたのかは不明だが、彼女らを囲むようにゾンビは群を成す。
「お、お姉さん……」
「安心しろ、装衣解放を使う」
「そ、それでなんとかなるの」
「なんとかしてみせるのが私の役目だ」
彼女はスカートをふわりとうかせ、剣を構える。
赤スカートから見えるは、透明なスリットをとおしての生足。そしてその上部には大胆にも公開される白いショーツ。
「うっ(ポッ)」
彼女の羞恥心は、内部に搭載された装置で増幅され、剣の炎ォとして噴き出していく。
周囲の温度が上昇。心の温度も上昇。そして心臓に撃鉄が撃ち込まれる。
【Fシステム起動を確認】
[感情概念:装填完了]
[出力解放:規定範囲の50%を想定]
[超必殺技・レベル2までの範囲で使用許可]
【周囲の安全に気をつけて使用してください】
熱量によって黒くなった剣先からは、銀に輝く
「────焼き切れ、フラムベルジュッ!!」
炎刃一閃。刃渡り上に存在する、ゾンビ、電柱、住宅街、に太刀傷がほどばしる。
0.1秒後。切断された断面が、切断された事に気づく。
0.2秒後。その場に立っているのは、少女と赤ドレスの女性だけ。
0.3秒後。雪のように降りそそぐ灰が、彼女たちの足元に積もり始める。
「わ、私、本当に生きてる⁉」
「まっ、私にかかればこんなものさ」
高らかに笑う赤ドレスの女性。炎ォも高らかに燃えていきます。
少女の眼にはその姿が。いえその生き方がとてもカッコいいモノに思えたのでした。
ここまでよんでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告があると作者が喜びます。
あと特に続きません。