ただ一度、君の名を   作:K4R4SU

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3話 消えぬ火

 

 

 

 

 

 

ステインを縄で拘束後、戦った少年たちのもとに数名のヒーローが駆けつけた。

 

怪我の心配。

そして、なにがあったのか、そんな会話をしていた最中──緑谷出久が羽をもつ脳無に攫われた。

 

一瞬のことではあったが、ヒーローのうち誰かは──誰もが動こうとしたのかもしれない。

 

 

 

だが、誰よりも、何よりも早いのはこの男だった。

 

赤黒血染――ヒーロー殺し、ステイン。

 

 

 

武器はすべて奪われたはずだった。

だがステインは、懐から隠し持っていたナイフを抜き、縄を断ち切る。

誰の静止も追いつかない速度で、一直線に駆け出した。

 

空を舞う脳無へ跳躍。

一切の躊躇もなく、その刃を脳に突き立てる。

 

脳無は硬直し、高度を失う。

鷲のような足が緑谷を掴んだまま弛み、落下しかけた。

 

ステインは緑谷の服をつかみ、体を引き寄せる。

その勢いのまま脳無の体を下敷きにし、衝撃を殺すように着地した。

 

 

折れた肋骨が肺に突き刺さっている――常人なら動けぬはずの負傷。

それでも、ステインは薄れゆく意識をただ、己の意志で保ち続ける。

 

いたずらに力を振り撒く敵も彼の制裁対象だ。

 

「全ては正しき社会のために──」

 

躊躇のない殺害と、救出。

その姿は、英雄にも、狂人にも見えた。

 

一瞬、誰もが動けなかった。

 

息を呑み、ただ、その姿に圧されていた。

 

 

 

そこへ──

 

「何を一塊になっている!

こちらにヴィランが逃げてきたはずだが」

 

低い怒声が、建物の影から突き抜ける。

建物の影から噴き上がる炎が闇を押しのけ、赤い影が現れる。

圧そのものが熱を帯びて迫り、空気を一変させる。

 

エンデヴァー。

その背に従うように、一人の少女の姿があった。

 

サイドキックの一人が声をかける。

 

「あちらは、もう?」

 

「多少手荒になってしまったがな。

 して、あの男はまさか──」

 

言葉が途切れる。

彼の眼光が、前方にいる“存在”を射抜いた。

 

そのとき。

 

「うぅ…放っ…せ…!」

 

ステインに掴まれた少年が暴れながらそう口にする。

途端、少女はエンデヴァーの指示を待たずに声を発する。

 

「緑谷くん」

 

その声が、夜気を震わせた。

 

パッと、ステインの手元から重さが消える。

振り返った視線の先、少年はすでに少女の背後へと引き寄せられ、

庇うように立つ彼女の影に隠されていた。

 

ステインはその姿を見て、胸の奥でざらりとした違和感を覚えた。

 

違う。

それはなんだ。

その装いは、あの夜、己が見た「在り方」ではない。

 

誰にも気付かれぬように、誰かの隣に寄り添う子供だったはずだ。

 

 

街灯の光に照らされたその衣装は、ヒーローのために仕立てられたコスチューム。

その表情も、声も。

 

その姿は、“英雄(ヒーロー)”を名乗るにはあまりにも薄っぺらく──

贋物(にせもの)の列に並ぶ者にしか、見えなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

その姿を見たのは数年前のこと、

薄暗い公園で、ブランコに座り込む制服の少女が目に留まった夜があった。

 

そこへ足音を殺し近づいていく子供がいた。

足音もなく、まるで影がすべるように近づいた。

一言も声をかけぬまま、鞄の中身を拾い集める手は、音を立てることすら避けるように──

そして置いていった瞬間、そこにいた痕跡さえ消すような静けさがあった。

 

 

助けるでも、慰めるでもない。

 

無言で置いて去った。

 

それは、ヒーローと呼ぶには“信念”が足らない。

けれど、確かな意思を彼は感じ取った。

 

 

 

 

以降、彼は活動の最中、ふと足を止めるようになった。

それは以前子供を見かけた公園であったり、誰かの救いを求める人間を見かけた時にほんの少しだけ。

 

 

そして、ある日、再び。

あの子供を見かけた。

 

ベンチに座り込む幼子の隣に座っている姿を見かけた。

リュックを背負った幼子、時計はすでに0時を回っていた。

 

泣き出した幼子に対しても何も言わず、何もしない。

ただ、ひとりにしないようにとでも言うようにそばにいるだけ。

 

そして、その子が泣き止むと腰を上げようとして──幼子が服を引いた。

子供は一瞥することもなく、何事もなかったように腰を下ろし直す――不気味なほどに無干渉。

 

 

 

正義とも、偽善とも言えない。

 

意図も、見返りもない。

 

ただ“選択を失いかけた人間”に、

それだけではないと、なにかを差し出すような行動。

 

──けれど、自己犠牲と称するほどではない。

 

 

だからステインは、理解できなかった。

 

 

 

子供を見定めようとする男。

ただうつむく幼子。

隣に座るだけの子供。

 

そうして、ただ、夜が更けていく。

 

 

 

この子供は何のために──

“罪滅ぼし”か? “自己満足”か?

 

「悪」とも「偽善」ともつかず、

けれど──あれは決して“正義”じゃない。

 

ならば、あれはなんだ。

 

あれは、信念の形すら持たない在り方。

 

あれこそ、最も得体が知れぬ“在り方”だった。

 

 

 

 

瞬間、こちらの視線に気付いたのか。

 

──子供と目が合った。

 

 

静かな目。

 

黒い瞳が街灯を吸い込み、夜を映していた。

そこにある熱が、何のためのものか──

 

その目に射抜かれ、呼吸を忘れた。

けれど、彼は己のすべきことのために、再び夜の街に溶けていく。

 

 

 

 

 

 

あれは、誰かを救う者ではない。

罪を背負った者でもなければ、贖う者でもない。

 

打算も、覚悟も感じ取れない。

だが決して──逃げてはいない。

 

選択を失いかけた誰かに、選択はまだあるとも言わず、ただ、気付くきっかけを置くだけの在り方。

 

慈悲とも、偽善ともつかない。

“正義”とは……呼ばない。

 

「あれは、違う」

「正義には──覚悟が要る。信念が、必要だ」

 

……だが。

 

街灯に濡れた黒い瞳が、闇を吸い込むように静かに俺を見据えていた。

 

その顔におおよそ感情と呼べるものはなかった。

 

だが、確かにその目に宿っていた。

灰に埋もれた芯火のような、微かな熱。

 

信念と呼ぶには脆く、償いと呼ぶには薄い。

 

けれど──確かな決意。

そしてその火は……紛れもなく、“本物の匂い”がした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

そして今、視界の端に、贋物──エンデヴァーを捉えた。

熱も、誇りもない。

ただ、力を振るうだけの“偽り”。

 

だが──その背後に、あの日、己が見逃した“火”。

あの日から彼に、答えの出ない疑問を刻んだ存在が、確かに立っていた。

 

ヒーローの(ころも)をまとうには──その目は、あまりにも静かだった。

その静けさの奥に、ステインは得体の知れぬ違和を覚えた。

 

 

「……貴様も、“贋物”に成り下がったか」

 

 

吐き捨てた。

──あれは、ただ隣にいることを選び、名も称号もいらずに“在った”火だったはずだ。

なのに今はどうだ。

 

偽りの鎧を着て、贋物の影に付き従うその姿。

ステインの思想が最も憎む、「真似事」そのものだった。

 

「“正義”の形を真似るな……!」

 

ステインの声に、明確な怒気はない。

ただ、思想に反するものを前にした拒絶の熱があった。

 

その瞬間──

 

少女の目が揺らいだ。

奥底が覗く。あの夜と、同じ目。

 

黒く、深く、何も語らぬようでいて、

ただ己の在り方だけを、確かに見据えていた。

 

呼吸を忘れた。

 

 

 

見誤ったのは己だった。

 

その目に、まだ──あの夜と同じ“熱”が宿っていた。

燻り、燃え、消えずに在り続ける火。

 

刃は向けぬ。言葉は、試練。

見る。試す。見届ける。

──それが、彼という“思想犯”の在り方。

 

だから、問う。

あの目に、あの()に──

 

言葉ではなく、裁きでもなく。ただ、“正義”という名の試練として。

 

「貴様は……“英雄(ヒーロー)”ではない」

「だが──その()は、消えていなかった」

「見せてみろ。その(わざ)が、いずれ“信念”たりうるかを──」

 

息が、熱と共に漏れる。

声と共に血が喉を満たす。

 

少女は体を強張らした。

それでも、ステインの視線から目を逸らさない。

 

 

──その目はステインを見る。

 

曖昧にのぞいた先ほどとは違う──あの夜と同じ熱を見た。

 

なりを潜めようと、あれは──消えぬ火だった。

 

己すら欺いてもなお、燻り続ける火種。

それを見誤るほど、彼の目は鈍っていない。

 

 

その確信が生まれた直後、視界を断ち切る影。

 

“贋物”──エンデヴァー。

 

 

 

ただ力を誇り、結果を掲げ、 己の信念さえ語れぬまま、英雄の座にしがみつく者。

 

──その炎に、魂はあるのか。

 

「贋物……」

 

それは怒気であったのだろうか。

ただ、咆哮よりも重い“裁き”の声音。

 

「正さねば……」

「誰かが……血に染まらねば……!」

「“英雄(ヒーロー)”を取り戻さねば!!」

 

視界が赤く染まる。

意識は既に限界を超えている。

 

だが、声は止まらない。

怒りが、信念が、身体を立たせていた。

 

 

「来い……来てみろ、贋物ども──!!」

「俺を殺していいのは、本物の英雄(オールマイト)だけだ……!!」

 

 

 

血の匂いを含んだ風が流れる。

誰も声を発せず、街路のざわめきが凍りつく。

 

誰もが気圧される気迫。

声ではなく、圧だけで全身を縛られるような錯覚。

 

ステインという男の在り方に、ヒーロー達はただ言葉を失った。

その場の誰ひとりとして──動けなかった。

 

そして如月夕紬も──

 

強すぎる思考に打たれ、体は震えていた。

周囲のヒーロー達と同じように、その場に縫いつけられたように視線を逸らせずにいた。

 

恐怖ゆえではない。それは──敬意だった。

逸らせなかったのではなく、逸らしてはいけないと思ったからだ。

 

出来たからしたのではない。

ただ、“しなければならない”と感じたから。

震える身体を、意志の力だけで起こしているに過ぎない。

 

 

──あの人は、私の何を見て、そう称したのだろう。

 

 

わからない。

理解できないけれど、それでも見るべきだと思った。

例え今、あの人が私を見ていなくても──あの人は確かに、私の在り方に何かを見ているのだから。

 

息が詰まるような時間が流れる。

ほんの数秒なのだろう。けれど、永遠にも思えた刹那の時間。

 

─音が、消えた。

 

 

 

 

 

カラン。

張りつめた糸が切れるように、終わりを告げたのは、

彼の手からこぼれ落ちたナイフが地面に触れた音だった。

 

「気絶、してるのか…?」

 

グラントリノの声で、ようやく力を抜いていいのだと理解した。

 

体が崩れ、片膝と片手を地に突く。

もう片方の手で胸を強く握りしめる。

 

──息が止まっていたのだと気づいた。

必死に吸い込む。酸素が肺を焼く。

やっと、呼吸を取り戻す。

 

「如月さん!!」

 

膝をついた彼女の姿を見た瞬間、緑谷の体は勝手に走り出していた。

 

自分だって怖かっただろうに、それでも彼は動いた。

 

怪我した足に痛みが走る。

けれど、止まれない。

前のめりに地面を蹴り、近づこうとする。

それは走る、というより駆け寄るに近い。

 

「っ、ちょ、待って、今──っ!」

 

言葉は途切れ途切れ。

足を庇いながら、転ばないように。

 

「大丈夫……!? どこか──」

 

そう言って、心底心配そうな顔で夕紬を見ていた。

彼女は胸元を掴んだまま、深く息を吸い込み、呼吸を整える。そのまま後ろに座り込む。

わずかに笑みを作り、顔を上げた。

 

「うん、もう大丈夫」

 

当てられちゃった、と弱々しく笑う。

緑谷は言葉を探すように視線を伏せた。

 

「ほんとに、大丈夫…?」

 

その眼差しに、心からの心配が滲んでいる。

だから夕紬は、記憶をそっと棚にしまい、いつもの仮面を被る。

 

「平気だよ、ほんと、びっくりしただけ」

 

笑う。けれど普段どおりだと嘘っぽいから、ほんの少しだけ元気なさげに。

 

「無理しないでね……って、僕が言うのも変だけど」

 

自分の傷だらけの体を思い出し、緑谷は苦笑した。

 

「確かに、緑谷くん、いつも怪我してるよね。

 私は君のが心配になっちゃうよ」

 

夕紬も苦笑で返す。

そして立ち上がり、彼に手を差し伸べる。

 

「立てる?」

 

「…あっうん、ありがと」

 

肩を貸して、ふたりはプロヒーローたちの元へと歩いていった。

夕紬は隣で顔を赤くする緑谷には気付かない。

 

ヒーローたちだけでなく、飯田も、轟も、

二人に「大丈夫か」と声をかける。

 

だが、その瞳には言葉にできない疑念や不安が滲んでいる──夕紬には、それが理解できてしまった。

 

「……念のため。ここにいる皆さんには伝えておきます」

 

一言で視線が集まる。

……嫌いな注目。けれど、必要だから口を開く。

 

「彼との面識は、一度きりのはずです。

昔、迷子の子と一緒にいたときに……目が合いました。

怖い目で、忘れられませんでした。

でも、まさか相手に覚えられているなんて……」

 

そう言いながら、体をわずかに震わせ、自分の腕を抱きしめる。

 

本当は──捨てられた少女と一緒にいた時だった。

恐怖など感じてはいない。

だから、夕紬は曖昧な嘘を交える。

あまり覚えていないというのは、確かに事実だから。

 

声に力はなく、視線を伏せたその姿に、場が一瞬、沈黙に包まれる。

 

その静けさを破ったのは、轟だった。

 

「なぁ如月、それって悪い事なのか?」

 

夕紬は顔を上げる。彼の目を見る。

 

一瞬、本気に意味が分からなかった。

 

「……お前がしたことって、“助けた”だけだろ。

なんで、そんな“悪いことした”みたいな顔してんだ」

 

その目は真っすぐで、曇りがない。

 

 

夕紬は思わず自分の顔に触れた。

──そんな顔をしていたのだろうか。

 

いや、違う。

あれは悪いことだ。

見られてしまった。覚えられてしまった。

ヒーロー科の生徒でありながら──疑われる要因を作った、それだけで十分に。

 

けれど、夕紬の思考を打ち消す声は、一つではなかった。

 

 

「そうだよ!」

 

緑谷が叫ぶように同意し、続いて飯田も力強く言葉を投げた。

 

「如月さんがなにか責任を感じる必要はない!と僕も思う」

 

 

そのやりとりを、プロヒーローたちは黙って見守る。

問いただすことも、否定することもせず──ただ「大人として」。

世間の好奇と疑念の目に晒されぬよう、黙して受け止める。

 

それが、彼らの選んだ“正しさ”だった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

その後、轟、飯田、緑谷は病院に運ばれた。

 

夕紬は負傷はしてないが念のためと簡易的な診断を受けた。

そっちはどうだった?という轟の質問へ、素直に人命救助中に敵に襲われてエンデヴァーに助けられたと伝えれば彼はなんとも言えない顔で、そうか…と呟くだけだった。

 

それから、簡単な事情聴取を受け、その日は宿に戻る。

 

エンデヴァー事務所のサイドキックが心配と安堵のこもった労いの言葉をくれた。

夕紬は笑顔でそれに答えたが──

ひとりベッドに横たわったとき、胸の奥に小さな居心地の悪さを抱いたまま、眠りに落ちた。

 

──後日。

夕紬は轟よりも一足先に職場体験に戻った。

轟は軽傷という事もあり、緑谷、飯田より早い帰還。

 

夕紬と轟はエンデヴァー事務所で待機している間、控えめに声を落とし、事件当時のことを語り合った。

 

 

 

 

 

 

 

エンデヴァーはふと、事務所内で息子と話す少女──如月夕紬を見た。

 

雄英1年A組。

職場体験のためにオファーを出したのは彼自身。

 

元は焦凍以外にオファーを出す気はなかった。

しかし、雄英高校の体育祭を見てその判断は変わった。

 

彼は“力”を最も重要視する。

理由は決まっている、彼の目的はオールマイトを超えること。

 

(──いい個性だ)

 

そう思ったのをエンデヴァーは思い出す。

希少なワープ系。

汎用性が高く、本人の判断力も申し分ない。

 

サイドキックとして使える。

 

そう判断した。

 

故に、招いた。

そして、その子供は期待通りの働きをした。

保須事件時にエンデヴァーは共に活動していなかったが、サイドキックが言っていた。

 

「あの子のおかげで助かりました」

 

要救助者の救出。

敵の攻撃による周囲の倒壊から市民を守った、など──

 

その後、敵に捕まり、エンデヴァー自身が助ける事になったとは言え、十分すぎる仕事を果たしている。

 

あの無線があの子供がしたと聞いた時は彼も自分の少し耳を疑った。

 

自分より遥かに大きな敵に鷲掴みにされ、高所に連れ去られた直後に、あれを自発的に行なったという。

 

 

 

ヒーローには、“すべて”が求められる。

戦闘も、救出も、支援も──何一つ欠けてはならない。

しかし、どうして向き不向きの“個性”はある。

 

あの子供は自身の力を最大限発揮していたと言っても過言ではないだろう。

 

よく、出来た子供だ。

 

出来すぎるほどに。

 

鍛錬の痕跡もない。努力で積んだ色も見えない。

むしろ、特筆すべき存在にならないよう、自ら抑えている節すらある。

 

だが、それすらも──“余裕”に見えた。

まるで努力をせずとも“初めから備わっていた”ような完成度。

だからこそ、なおさら不気味だった。

 

やはり、あちら側の子供だとエンデヴァーは理解した。

 

 

そして──

 

あの子供はヒーローではない、と切られながらも、何かを託されていた。

 

犯罪者の戯言だと、口にしても飲み込めない何かが奴にはある。

エンデヴァーを贋物と称するステインはオールマイトこそを絶対の英雄とした。

それはオールマイトを越すために自らの人生を。

そして、家族の人生すらも捧げている男には無視できない言葉だった。

 

 

ヒーロー殺しが……焦凍ではなく、あの子供に目を向けた。

 

その事実が胸の奥をざらつかせるのを、エンデヴァーは自覚していた。

 

 

 

あの言葉の意味を、エンデヴァーはわかっていない。

 

だが、だからこそ、その絶えぬことなき向上心…執念と呼ぶべきものに変化したそれを抱く男は答えを求める。

 

この子供のどこに、“火”があるのか。

 

 

それが、No2とNo1を分かつものの正体かもしれないと、ただ見据える。

 

──だが、それだけではない。

 

息子を失ったあの日から、

願望は、いつしか執念へと形を変えていた。

 

この子供の中に、答えがあるのなら──

 

見据える理由の本質は、燃え滓のような、名もなき祈り。

 

 

 

 

 

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