狐のおまわりさん   作:無名の作者

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誤字脱字報告ありがとうございます!
自分だと見逃しちゃうことがあるので本当に助かります…それにしたって柴関を芝関って書くのは無いでしょうよ。


第十二項

 

電車を乗り継いでD.U中央駅へと向かう、サンクトゥムタワーや各機関の重要施設が軒を連ねるエリア、アビドスから乗っていたおかげで席に座ることは出来たがそれでも駅に着く頃にはもみくちゃにされていた。

押し出されるように駅のホームへ出てそのまま地上へ向かう、目的地最寄りの出口まで歩くよりも地上に出てしまった方が早い。

 

外はアビドスに比べ過ごしやすい温度だが人通りが凄まじい、お昼時ということもあり連邦生徒会の制服を着た生徒やスーツをきっきり着こなした大人たちが闊歩している。

人波に揉まれながらも何とか目的地付近へと歩みを進めていく。

 

13時ジャスト、3階建てビルの1階部分に入っているレンガ造りで緑色の看板が目印の洋食屋、相手が指定した場所と時間だった。

時代の流れを感じるレバーノブを回し扉を開くと来店を告げる鈴の音が響く。

 

店内はお昼時ということもありかなり混み合ってはいるが窮屈な印象は無い。

左手側のカウンター席は満席、右手側にはテーブル席6卓ほど並んでいるがこちらも満席、店員が申し訳なさそうな顔で近寄ってきた。

 

「すみません、ちょうど今満席で…」

 

「こっちよ」

 

1番奥のテーブル席から青髪の少女が顔を覗かせた、店員に一瞥しその席へと向かう。

どうやら既に注文したものが届いていたようでテーブルにはオレンジジュースとハムと卵のサンドウィッチが置いてあった、向かい側へと腰を下ろし水を持ってきた店員へ同じものを注文した。

 

「ずいぶん急な呼び出しね、私だってもう暇じゃないのよ?」

 

お昼のランチタイムを邪魔されたからか少し機嫌が悪そうな扇喜アオイがこちらを見ていた。

2年生ながら連邦生徒会財務室長を務める超がつくエリート、1年前に当時の窓口が利益欲しさに自壊しどうしたもんかと悩んでいたところに向こうから接触してきた。

 

以降は自分でネタを持って来たりこちらからの依頼でも必要以上のリスクは犯さないなど当時から相当な手腕を持っていた、ぶっちゃけちょっと怖い。

 

「久しぶりだねアオイちゃん、室長になってからはずいぶん忙しそうじゃん」

 

「おかげさまでね、でも忙しいのはお互い様でしょ?話は聞いているわ、分かりやすくあちこちでも動きもあるし」

 

「お、儲かってるかい?」

 

「逆よ、不審な動きは一切ない。ただあちこちでリスクを分散させる為に移動させていたり株の売り買いの動きが活発になっていて仕事だけが増えているわ」

 

「どこもかしこも大変だねぇ、問題が片付いたらすぐ交番に帰るのに」

 

「サクラ先輩はもう少し自分の立場を理解した方がいいと思うわよ、財務室でも要注意人物リストの1番上は貴方になるよう設定しているもの」

 

そう言ってサンドウィッチを頬張る、表情から見るに美味しいようだ、柴関でのモーニングラーメンを邪魔され空腹のせいかより美味しそうに見える。

 

「そこまでのことしたかなぁ?悪徳企業をぶっ潰して回ってたのもSRTとしての任務だったしボク個人にヘイト向くのおかしくない?」

 

「流れたお金の行先まで洗って末端まで潰し回ってたのは先輩くらいよ、私はそのおかげでいい思いをできたわけだけど」

 

「どうせやるなら根元からってね」

 

「お待たせ致しました、ハムタマサンドとオレンジジュースです」

 

運ばれてきたサンドウィッチとオレンジジュース、サンドウィッチには珍しくパンはこんがりと焼かれ、ほのかな香ばしさが漂っており中にはジューシーなハムとふんわりとした卵が挟まれている。

隣に置かれた澄んだ琥珀色に輝くオレンジジュースのグラスには結露が浮いていた、戦闘で火照った体にはこれくらいキンキンに冷えた飲み物ちょうどいい。

 

一口頬張ると外側のカリッとしたパンの食感、直後にパンそのものの香ばしい香りが口いっぱいに広がる、どちらかといえばホットサンドに近い雰囲気。

中に挟まれたハムはジューシーで薄くスライスされていながらしっかりとした旨味を持っており、逆に卵は甘めの優しい味わいでその塩気を調和している。

ごくシンプルな味付けだが、その素朴さが返って一層の満足感を与えてくれる。

 

「それで、今日はどう言う…」

 

「ムホッ」

 

「…飲み込んでからでいいわよ」

 

あまりの美味しさに二口目に齧り付いた所だった。

慌てて咀嚼し飲み込む、横に置いておいたオレンジジュース口に含むと濃厚なオレンジの風味と適度な酸味が舌を包む、もう少し落ち着いて飲めばよかった。

 

「ふぅ…ごめんごめん、朝から爆発に巻き込まれて朝食抜きだったからお腹ぺこぺこでさ」

 

「冗談よね…?」

 

「なら良かったんだけどね…本題なんだけど、実は手伝って欲しいことがあってさ」

 

「内容は?もうあの頃と違って下手に動く訳には行かないのよ?」

 

「カイザーPMCの株を空売りして欲しい」

 

「ムホッ」

 

今度はアオイがむせた、ちょうどサンドウィッチに齧り付いたところだったらしい。

先程のオレンジジュースを飲み落ち着くのを待つ、やっぱり他のとこのより美味しいな、ヴァルキューレの自販機に置いてくれないだろうか。

 

「…本気で言ってるの?」

 

「マジマジ、ボクの見立てが合っていれば数日も経たないうちに結構下落するよ、それもかなりの勢いで」

 

「なに?カイザーに戦争でも売って来たの?」

 

「どっちかと言うと買った」

 

「何してるのよ…」

 

「ま、難しい判断になると思うから返事は今じゃなくても…」

 

「空売りに関してはこっちで手配しておくわよ」

 

「下手に動く訳には行かないとか言ってなかった?」

 

「えぇ言ったわ、カイザーレベルの企業相手に空売りするのは信頼と失敗した時のリスクを考えれば普通はしない」

 

ストローをくわえてオレンジジュースを飲み干すと真剣な表情で続けた。

 

「それでも、先輩が絡んでる以上普通が通用しないのは私がいちばん理解している、それなりの対応を取らざるを得ないわ。何よりあなたの言動にいちいち振り回されているようなら大人しく話を聞いていた方がマシ」

 

「まぁ、そっちに損させる気はないけどさぁ…ボクのこと面倒事の化身かなにかだと思ってない?」

 

「違うの?」

 

「甚だしい程の名誉毀損だね、こうして街の人が少しでも快適に過ごせるよう交番を飛び出して汗水垂らしながら走り回ってるのにさ」

 

「撒き散らしてるのは汗水じゃなくてガソリンでしょ、下手したらこっちまで燃やされかねないんだから」

 

酷い言われようだ、事実だから何も言えないんだけど。

先程話は聞いていると言っていた辺り他の室長にも話は入っているはず、よく行政官もOKを出したものだ、おかげでボクが酷い目にあってる訳だが。

 

「さっきの空売りの話も下手すればこっちが燃える案件なのよ、なにか保険があってもいいと思うのだけど」

 

「そう言ってもねぇ…うーん、アビドス内で実績のある建設会社とかは結構美味しいかもね、なんならアビドス高等学校に支援を行うのも一つの手かも」

 

「前者はともかく、後者に関しては全く話が読めないのだけど?確かアビドス高等学校ってもう廃校寸前で生徒数も少なかったはずよね?」

 

「まぁね、確かにリターン自体は少ないかもしれないけど元マンモス校だから廃校後の維持管理とか大変だよ?それこそ数億円規模になるし放置しておけば不良どもの隠れ蓑になるのは間違いない、最悪七囚人共の拠点にされてもおかしくは無いと思うんだよね」

 

少し考えるような素振りを見せるアオイ、サンドウィッチを頬張って間を置きオレンジジュースで喉を潤す。

 

「それなら廃校寸前だとしても少人数で維持管理しておいてもらった方が得策だと思うんだ、今後の流れによっては在校生も増えるかもしれない、全盛期までとは行かなくてもね」

 

「随分先の話を見ているのね」

 

「短期的な利益を追わず成長性や将来性を見て総合的に判断する…株式の基本だったかな?」

 

「これまで先輩がやってきたことを知らなければ首を縦に振っているところね。株式の操作に情報操作、1番最悪だったのは裏工作、七囚人なんかよりよっぽど囚人に向いてるわよ」

 

「仕事柄真っ白なままいるなんて無理だったもんでね、罪状換算したらボク一生矯正局に籠ってなきゃ行けなくなっちゃうよ」

 

「それはそれでまた面倒なことになりそうね…とりあえず、アビドスに関する支援は様子を見ることにするけど空売りに関しては戻ったら直ぐに手続きを進めておく」

 

「助かるよ、かなり面倒なことになる予定だから何かあれば引いてくれて構わないからね」

 

「何を今更…こうして先輩と話してるのだって周りに知れたら面倒なことになるんだから、次回からはもう少し早めに連絡をちょうだい」

 

「ならなんでこんな街中の洋食店集合にしたのさ」

 

「こんな所で財務室長がどっかのお巡りさん情報交換しているだなんて誰も思わないでしょ?」

 

「てっきりこのサンドウィッチとオレンジジュース目当てかと思ったけど」

 

「まぁ、それもあるわね」

 

千円札をテーブルに置いて席を立つアオイ、外には既に連邦生徒会の車が待機していた。

 

残っていたサンドウィッチを口に放り込み残り少ない平穏の時間と共に噛み締める、これでカイザーも動かざるを得なくなる。

あとはアビドス連中が踏ん張ってくれている間にコッチは証拠集めに奔走するだけ、まぁその時間はホシノがいれば何とか確保してくれるはずだ、そう簡単には崩れないだろう。

 

悩みの種があるとすれば例の裏金関係だろうがこっちも手がないわけではない。

どの道カイザー相手に立ち回る必要があるため非常に面倒くさい、叩きすぎてもダメ、弱めすぎてもダメ、加減を考えて追い詰める必要がある。

気がついた時にはオレンジジュースも飲み干していた、ストローには軽く噛みしだいた痕があった、悪い癖だ。

 

 

 

会計を済ませて外に出ると人混みは少なくなっていた、お昼休憩は終わり各々また自分の戦場に戻ったのだろう。

直接こちらを照り付ける陽光に目を細める、程よく吹く風もアビドスとは違い乾燥しておらず砂も混じっていない。

 

そういえばここ最近は休日扱いのくせに働かされてばかりだったな、直近の予定は無い、明日カンナに報告する内容は考えなければならないがそれだけ。

 

そういえば最近D.U地区にゲヘナのコーヒー豆を使ったコーヒーが飲めるカフェが作られたと聞いた、今日くらいはのんびり過ごしてもバチは当たらないだろう。

軽く伸びをしてから歩みを進める、今日はもう疲れた、カフェではもう何も起こらないことを祈ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なおこの後めちゃくちゃ爆発した

By 美食研究会

 




皆さま百鬼夜行の水着イベの結果はいかがでしたかね、私は無事天井突破する羽目になったのでね…次の周年イベを震えて待ちますね。

次回から5~6話ほど番外編に突入しますので本編は一時停止します、肝心の内容としてはアプリと被ってしまったんですが百鬼夜行の夏祭りイベになります。
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