ブルーアーカイブ×SCP単発小説

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第1話

「お嬢さん、そんな所でどうされたのですか?」

「…大切な人を、待ってました」

黒い紫の髪を持つ少女は、手元の端末を弄りながら俯いた笑みを浮かべていた。

「…好きな人、だったんです。私の恩師で、何かと無駄遣いしたり徹夜したりで、色々とだらしない人だったんですが…」

「…何故、来ないと?」

右手に傘を持つ白鬚の老人は、公園の四阿の下にて隣に座った。

「…結婚報告が、来たんですよ」

「…あぁ、成る程」

「いつか迎えに来ると思って、私はこの公園で…思い出の一つの公園で待っていたんですけど…」

「…失恋というのは、酷く虚しいものですね…」

「…えぇ…」

雨音が増し、銃声が聞こえなくなっていく。

「ここは物騒で仕方ないが…流石に雨の中では風流な時が流れるものですね」

「そうですね…雨の時は、静かです」

「私は此処に来て日が浅くてね…毎度銃声に怯えながら暮らしているよ。銃なんか持てる気がしない」

「大丈夫なんですか?それで」

「老い先短い老人は愚問と言うものですよ」

「そうですか…」

ヘイローを持たぬ者がキヴォトスに来るなんて、基本的には自殺行為である。

何か目的があるのだろうか。

「いや何。最近私の知人がここにおられるとの事なのでね。会いに来たということなのですよ」

「へぇ…わざわざキヴォトスに?」

「終活、と言うものですよ」

そう言いながら鬚を整える老人。何処か気品さを覚えるその出で立ちに、少女は見入っていた。

「すみませんねぇ…こんな老人の戯言に付き合ってくれて…」

「いえ、そんな…」

「お嬢さん、名前は」

「あ、ハイ。早瀬ユウカです」

「早瀬…貴方も早瀬と言うのですか」

「え?」

「いやぁ、私も早瀬と呼ばれておりましてね。と言っても、身内の中だけなのですが…」

「へぇ…」

「おっといけない。話しすぎましたか…」

「いえ大丈夫です。…逆にそのほうが、有り難かったので」

そういうユウカの目には、涙が浮かんでいた。

「失恋を忘れられるから、ですか」

「…えぇ」

早瀬ユウカにとって、先生という存在は彼女の芯の一つと言っても…過言ではなかった。

先生の為に動き、先生の為に戦う。先生の為に叱ることもあるし、先生がいたから楽しかったこともあった。

だからこそ、先生が別の女性を選んだことは、自身の芯が折れたのと同義であった。

「…どうすればよかったのでしょうか」

「さぁ。私のような老人には、そのような淡い話はもう何十年前だか」

「ハハハ…ですよね」

「ですが、紛らわす方法はありますよ」

「え?」

「私と共に来て頂けますか?」

 


 

「久しぶりですねぇ、橋詰さん」

「早瀬さん、貴方が来るとは知らず…私は抜けた身ですのに…」

「いえいえ。仕事の都合上でしょう?まだ席は開けておりますよ」

早瀬は布包を抱えながら橋詰と呼ばれた男と並んで歩く。

「しかし…貴方も中々の事を言いますね。こんな辺鄙な地で会おうだなんて…」

「申し訳ないです…余りそちらに戻れそうもなく…」

「場所は」

「この地下に」

そう言って雑居ビルの地下に向かう。貸し切りのキッチンには、1人の女性が居た。

「椎名さん、お久しぶりで」

「橋詰も、元気そうで何より。腹に穴空いたんだって?」

「えぇもう治りましたが」

「それは良かった。アンタのこともいずれと思っていたからね。で、今日のはどれを?」

そう言うと早瀬は包を開ける。そこには一塊の肉塊があった。

「今日の()()だ。両後ろ足。神の写し身とも言われている個体の物だからな。味はまだ分からんが、上物であることは間違い無い。締めたばかりだから、刺し身でもいけるだろう」

「そう?なら刺し身と焼きにしちゃおうかしら」

「お願いします」

じゅう、と肉の焼ける音が響く。次第に肉の香りが辺りに漂ってくる。

「それにしても、良かったのですか?橋詰さん」

「…えぇ…私が望んだことですので」

やがて磁器製の器に乗せられた刺し身と、鉄板に乗せられたステーキが出される。

「さぁ、新鮮なうちに頂きましょうか」

早瀬は刺し身を取り、口に入れる。他の柘榴に比べ味が濃く、甘みが強いと感じた。

「これは…中々のものね…」

「ほぅ…これは素晴らしい…久々に上等な柘榴に出会えたよ…」

早瀬と椎名は感嘆の声を上げる。しかし、橋詰は違った。

「?泣いておられるのですか?橋詰さん」

「いえ…余りにも美味しくて…その分、辛いのです…」

 

"私の生徒を食べてしまったという絶望感が"

 

"でも、この絶望感すら、美味しさに思えてしまう…なんて素晴らしいんでしょうね…"

「それはそれは…いいことではありませんか。柘榴の真骨頂はそれですので」

"そうですね…"

そう言いながら橋詰(先生)はステーキを切り分けた。ミディアムレアに仕上げられており、柘榴特有の香りが鼻腔を擽る。

"あぁ…美味しい…本当に美味しい…"

「どうですか?自身に恋愛感情を持っていた異性の味は」

"最高です…あぁ…ありがとう、ユウカ。君のことは忘れないよ…"

 

柘榴倶楽部(せきりゅうくらぶ)。人肉を柘榴と呼び、それを愛する10人の愛好家(狂人)達。

彼らの(惨劇)メインディッシュ(被害者)は、夜の帳と共に隠れていくのだった。




柘榴倶楽部
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