カレリアの赤い星 雪の中のマオイスト達   作:リン二等兵

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  主なキャラクター設定

名前 概要

ユハ・カッレネン 主人公。カレリア出身の父を持つ退役軍人の息子。民族的誇りと社会正義に燃える青年。思想的には独自の社会主義。
レーナ・ホンカ 大学の同級生で新聞部員。最初はユハを批判するが、次第に共鳴。情報戦と国内外への広報を担当。後に離反するが最後に再会。
ミッコ・タルヴァス 怒れる労働者階級の出身。戦闘班のリーダー格。暴力主義に傾く危険人物。最終章でユハと対立。
リーサおばさん 農村の古老で、彼らの拠点村の最初の協力者。ゲリラを「若い者の理想」として静かに見守る。
リュウ参事官 中国大使館の文化担当官。実質的にNLFの連絡係。毛沢東の意向を伝えるが、真意は読めない謎の人物。












第一章 遺された戦争

第一章:遺された戦争

 

カレリアの冬は長い。夜が長く、雪は深く、沈黙が続く。

 

だがユハ・カッレネンの家では、その沈黙の中に、戦争の痕跡が静かに息づいていた。彼の父、タッパリ・カッレネンは元兵士であり、冬戦争と継続戦争を生き延びた数少ない退役軍人だった。彼の額の深い皺は、カレリアを離れるときに刻まれたものだった。

 

1961年、ユハは東部フィンランドの小さな村で育ち、兵役を終え、ヘルシンキ大学に入学した。だが、都会の喧騒と西側風の学生生活に、どこか自分の居場所を見いだせなかった。

 

フィンランドは戦争には勝たなかった。だが、完全に負けたわけでもない――そう歴史は語った。けれど、現実はどうか。カレリアは帰ってこなかった。国境の東にはソビエトがいて、西側からは中立を強いられていた。大学では「現実的外交」としてフィンランド化を肯定する声が強かった。

 

そんな中で、ユハはある学内集会に出席する。演壇には、反体制的な歴史学教授が立っていた。

 

「君たちが中立を語るとき、忘れてはならない。われわれの民族は故郷を売り渡されたのだ!!そして現在の我が国の政府は反共をタテマエとしつつ我が国を侵略したソビエト連邦に従属し続けているのだ!!また我が国は連合国と敵対したとして敵国条項に刻まれているのだ!!我が国はソビエト連邦との戦いにおいてあれだけ奮戦したにも関わらずだ!!ソ連兵500人を射殺したスナイパーもいる!!予備衛兵一個師団で正規軍2個師団を包囲殲滅した小学校の校長もいる!!なのに今のこのザマは何だ!?」

 

その言葉に、ユハの胸が焼けた。祖父の農地を奪われ、父が黙って耐えてきた記憶が、彼の心を突き動かした。

 

その夜、ユハは同じ講義を聴いていた若者たち――ミッコ、レーナ、サリらと初めて言葉を交わした。思想はばらばらだったが、一つだけ共通していたのは「このままでは駄目だ」という焦燥感だった。

 

そして、彼らはひそやかにグループを結成する。

 

名を「北の解放戦線(Nordic Liberation Front)」。

 

それは反共をタテマエとしつつソ連に妥協し続ける現在の政府の思想でも、祖国を侵略し故郷を奪ったソ連式の共産主義でも無く、「農村から都市を包囲する」という中国・毛沢東式の共産主義思想を持ったグループである。そして中ソ対立に乗じて中国共産党からの支援を受け、フィンランドを真の独立と自由に導くという目的で結成された組織である。

 

その始まりは小さな読書会だった。だが、やがてそれはフィンランドの歴史に刻まれる“もう一つの戦争”の火種となっていく。

 

第一章・了

 

 

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