カレリアの赤い星 雪の中のマオイスト達   作:リン二等兵

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第三章 雪の中の共和国

ヴァルカウス通信中継所襲撃から3日後、フィンランド内外の新聞がこぞって報じた。

 

> 「正体不明の武装集団、ソ連駐留通信施設に襲撃」

「声明には“カレリア回復”の言葉も。過激民族主義か?」

「政府、沈黙。モスクワは“反革命的テロ”と断定」

 

 

 

しかし当の「北の解放戦線」はすでに姿を消していた。ユハたちは、クオピオ郊外の廃村を拠点に選んだ。第二次大戦で焼け落ち、戦後再建されることもなかった農村だ。そこに電気を通し、井戸を掘り、小学校の教室を再建することから始めた。

 

「共和国を作るんだ、ここに」

ユハの声は雪に吸い込まれるように静かだった。

 

 

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■ 旧村、再び灯る

 

村の名前は“ポホヨラン・ヴァパウス(北方自由村)”と名付けられた。ここを「実験的な共和国」に仕立てるのがユハたちの構想だった。

 

・集落は民主的自治を採用し、村の運営方針は住民会議で決定。

・文字教育、読み書きの指導を無償で実施。

・病人や子どもには元医学生のレーナが簡易医療を提供。

・村の外では「北の声(Pohjolan Ääni)」という秘密放送が流され、政府やソ連への批判が訴えられた。

 

農民たちは最初は警戒した。だが、誰も年寄りを追い出さず、畑を耕しながらラジオ塔を建てる若者たちに、やがて敬意を持つようになる。

 

 

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■ 対するヘルシンキとモスクワ

 

ユハの動きは、政府内部でも割れを生んでいた。

 

「これは革命などではない。テロだ!」と叫ぶ内相。

「だが、民衆の支持がつきはじめている。弾圧すれば反発を生む」と沈痛な面持ちの首相。

「彼らの標的はソ連軍だ。我々の敵とは言い切れん」という軍の一部幹部。

 

一方、ソ連の大使館は激怒していた。

 

「フィンランド政府がこの集団を制圧しないなら、我々の手でやることになる」

 

冷戦下、クレムリンからの“無言の圧力”は、国家の空気を凍らせた。

 

 

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■ 謎の接触者

 

ある夜、雪の積もる村に黒い影がひとつ、そっと入り込んだ。彼は軍用パーカーをまとい、無言のまま村の放送室へとやってきた。

 

「貴様、誰だ」と警戒するミッコに、男は小さな箱を差し出す。中には一冊の赤い冊子と、奇妙な刻印のされた小型ラジオ。

 

「北京の声だ。君たちに、関心がある」

 

その言葉に、ユハは一瞬息を呑んだ。

 

「中国……?」

 

「モスクワの“偽の革命”ではなく、真の人民の解放を信じる君たちへ。毛主席も言った。“反帝国主義と民族解放は不可分だ”」

 

その夜以降、村の放送塔には不思議な混信が混じるようになる。北京語で話される何かの声明。モスクワではなく、極東からの息吹だった。

 

 

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■ 父との対面

 

ある日、ユハの父、ヴァイノがふらりと村に現れた。旧陸軍中尉。今は退役して沈黙を守る世代。

 

「お前は……また戦を起こす気か」

 

「違う。俺は、お父さんが守ろうとした国の続きをやってるんだ」

 

「俺たちは敗けたんだ。それを忘れるな。理想だけじゃ国は守れん。雪は血を飲む」

 

ユハはうなだえながらも言った。

 

「でも、俺たちは今、血を流さずに人の心を取り戻してる。少なくとも、ここでは」

 

 

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■ 次なる作戦へ

 

ユハたちの次なる標的は、ラップランドにあるソ連軍燃料集積所だった。破壊ではなく“移送妨害”――資源の流通を遮断し、経済的圧力をかける。

 

だが、それは同時に、モスクワを本格的に“本気にさせる”ことを意味していた。

 

 

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