カレリアの赤い星 雪の中のマオイスト達   作:リン二等兵

4 / 4
カレリアの雪に火を灯す

承知いたしました。

それでは、『カレリアの赤い星』第四章「カレリアの雪に火を灯す」を1000文字以上の本格小説文体でお届けいたします。

 

 

---

 

『カレリアの赤い星』第四章:カレリアの雪に火を灯す

 

 東カレリアの森はまだ深く凍りついていた。1971年の冬、祖国の冷え切った沈黙を破るように、ラウリたちの小隊は密かに動き出していた。

 

 ラウリ・ホンカラは、今や“森の軍隊”と呼ばれ始めた抵抗勢力の中心人物だった。彼はWW2退役軍人の父の下に育ち、フィンランドの過酷な運命を幼い頃から肌で感じていた。祖父の代から語り継がれてきたカレリア喪失の悔しさと、ソ連に対する警戒心。兵役後、大学に進んだ彼は、学内での政治活動に傾倒する一方、次第に「言葉だけの闘争」に虚しさを覚えていった。

 

 学生デモは続いていた。ヘルシンキでは反米・反戦の叫びが飛び交っていたが、ラウリにとってそれは表層の憤りにすぎなかった。「俺たちが本当に戦うべき敵は、目の前にいるソ連軍じゃないのか?」。そう口にしたとき、同じような疑問を抱えていた仲間たちと出会った。

 

 そしてその夜、ついに“始まり”の日が訪れた。

 

 雪の降る夜、彼らは森を抜け、国境近くのソ連軍前哨基地に向かった。白い防寒ケープに身を包み、身を屈めて進む彼らの姿は、まるで冬戦争の亡霊だった。合図は三度の梟の鳴き声――それがラウリの小隊にとって、最初の戦闘の火蓋を切る合図だった。

 

 銃声は静寂を破った。敵の監視兵が倒れる音は、雪に吸い込まれていった。彼らは迅速に物資を奪い、監視所の通信機器を破壊、捕虜にした兵士に簡単な尋問を行った後、何事もなかったかのように森へと消えた。

 

 ラウリたちが身につけていた軍服は、**第二次世界大戦期のフィンランド陸軍制服(M/36)**だった。祖父の代から保管されていたもので、軍服のウールはやや縮み、袖や襟元には擦れた跡が見えたが、彼らはそれを「誇り」として着用していた。

 

 「この服は、父たちが国のために立ち上がった証だ。ソ連に屈した今の政府には真似できない」と、ラウリは仲間たちに語った。その言葉に若き同志たちはうなずき、装備を調整した。帽子はM/36型に似た六角帽を基にし、正面には白いライオンと赤い星を組み合わせた“革命の紋章”を刺繍で施していた。

 

 青灰色で立折襟に4つポケットそして規格帽とそれは中国共産党軍が日中戦争で日本軍相手に戦った時の軍装にデザインが似ていて、彼らの思想的にも通じる。

 

 襲撃の成功は、農村部に波紋を広げた。かつて冬戦争・継続戦争に従軍した退役兵や農民たちは、新聞では「過激派テロリスト」と報じられた彼らにひそかに共感を寄せた。政府が「フィンランド化」を維持するためにソ連の顔色をうかがい続けるなかで、彼らの行動は祖国の誇りを取り戻す小さな灯となりつつあった。

 

 「都市に残った仲間は、デモをしている。けど、ここでは俺たちが本当の戦争をしている。銃声だけが通じる世界だ」と、仲間のヴィッレが語った。

 

 ラウリはうなずいた。「ここから始まるんだ。ヘルシンキじゃない、カレリアの森から」

 

 春に向け、彼らはさらに深く潜伏し、村人たちとの信頼を築き始めていた。学校の再建、診療所の設置、子どもたちへの授業――ただのゲリラではなく、“解放軍”として存在するために。

 

 雪解けの地に立ち、ラウリは北の空を見上げた。

 そこには、まだ遠く小さな、けれど確かな“革命の星”がまたたいていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。