宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第十話 残照・新たなる旅立ち

 

【第10話】

 

 

 

ガミラス・イスカンダル両星の消滅は、地球時間5月初頭の段階で最高機密に指定され、

地球連邦・共和政ガミラス両国の政府と軍中枢、及び現場に居合わせた者のみが

知ることを許され、ガミラス国内の軍の他部隊や民間に情報が洩れて

パニックを引き起こすことが無いように、固く箝口令が敷かれた。

 

サレザー恒星系における一連の動きは、同星系が一般には封鎖されていることもあり

表向きは近く予定される観艦式の予行演習の一つとして誤魔化すことができた。

 

こうした情報統制は、戦勝記念観艦式や遷都・移民計画の主段階完了式典など

共和政ガミラス首都惑星における催事が一通り終わった5月末まで続けられ、

その後に『突発的天変地異によるガミラス星の崩壊』と

『双子星崩壊に伴うイスカンダルの危険地帯化・同惑星から王族が避難する際

 王族側の希望で、同惑星に遺置された危険物処理のためイスカンダル星を

 デスラー砲によって爆破処分した旨』が公表されることになる。

 

 

これら隠蔽工作の甲斐もあって、共和政ガミラスが新たな首都に定めた

ラドン=エジラ恒星系第三惑星・(ノエン)ガミラス軌道空域において、

地球時間西暦2205年5月8日、『対ガトランティス戦勝二周年記念観艦式』が挙行された。

 

特一等戦闘航宙母艦『デウスーラⅢ世』を御召艦として、近衛艦隊の任にあり

『狼の後継者』フォムト・バーガー少将率いる第六空間機甲旅団艦隊や

首都星系の警備を任務とする第一空間(増強)師団艦隊など、

選抜されたガミラス国防軍の精鋭艦隊が参加して見事な艦列を組み、

両マゼラン銀河の秩序を守る鋼鉄の軍団の威容を、内外に誇示する。

 

そして、ガミラスの盟邦・地球連邦(テロン)との安保同盟・友好関係を喧伝するため、

遥々16万8000光年の彼方からやって来た、宇宙戦艦『ヤマト』を含む地球艦隊、

第六十五任務部隊が特別参加艦隊として観艦式会場宙域に現れ、

ガミラス軍のそれに負けず劣らずの練度で艦隊行動をとって見せる。

 

式典宙域の中心に占位する真紅の観閲艦『デウスーラ』艦橋では、

アベルト・デスラー総統が侍従武官ガルヒ・ダークナス少将と

移民計画本部長ガデル・タラン大将を従えて立ち、行進する艦隊を眺めている。

その傍らには、来賓として招いた(ということにした)スターシャ女王の姿があった。

 

 

デスラー総統は、御召艦の前を行進する深緑色の艨艟に視線をやりながら、

やっとの思いで滅びゆく星から助け出した、イスカンダルの女王に向け言葉を紡ぐ。

 

「……スターシャ。 まだ、あの時の問いに答えられていなかったね。」

 

「……!」

 

スターシャは、あの時___『サンクテル』の記憶庫で、

大罪を負った自分たちイスカンダル人を救うのか、と問いかけた時のことを思い出す。

 

「あの時は動転して、しかも()がすぐに引き取ってしまったから、

 終ぞ答えられなかったが……ここで言わせてもらう。

 『それでも、救う』と。」

 

ようやくデスラーは、スターシャへ顔を向ける。その表情は柔らかいものだった。

 

「……何故なら、私は___君を愛しているからだ。

 イスカンダルの女王としてではなく、一人の人間として。

 私は、この感情が、ガミラス人の遺伝子にインプットされたものに

 基づいたものではない___そう確信している。」

 

「アベルト……」

 

艦橋内にいるのは、デスラーが信を置く二人の将官と、

総統座乗艦の士官として技能に加え忠誠心の面でも選抜された者達である。

そのためデスラーは、何も臆すことなく想い人に本心を打ち明けることができた。

 

「……今更の事になってしまうが、ね。 信じてくれるかは君に___」

 

「もちろん、信じるわ」

 

食い気味に即答したスターシャに、デスラーは予想外の表情を浮かべて固まった。

当のスターシャは微笑みを浮かべて、幼少の頃から見守ってきた

大ガミラスの指導者へ、そう断言するに至った心境を語る。

 

「……あの時……通信で避難を呼びかけてきたときも、

 『サンクテル』まで説得に来た時も、

 私たち王家のエレメントを星外から運び出すときも……あなたは本気だった。

 本気の行動で、あなたは『私たちを救う』ことを選んでいる、

 どんな真実があっても……そう、信じ切ることができたの」

 

「そう、か……」

 

「また、新しく始めていきましょう。

 過去は変えられないけれど……それでも、未来は続いているのだから。」

 

星と運命を共にするはずだったスターシャ・イスカンダル女王。

彼女は、アベルト・デスラー総統共々、大小マゼラン銀河圏の諸市民の

統合の象徴として、改めて亡き母星が抱えた罪滅ぼしに生きることを決意する。

また、自らが紡いだ命を見届けるために……。

 

「……地球(テロン)艦隊、本艦前面を航過開始」

 

デスラーとスターシャの会話が一段落したためか、

『デウスーラ』艦橋士官が平静な声で報告を行った。

その通りに、赤い戦闘空母の眼前を明灰色を基調とする地球艦隊が行進する。

その艦列の中央には、周囲の艦と塗装も艦形も異にする戦艦が一隻。

 

「……思えば、私たちの運命の曲がり角には、いつもあの(フネ)がいた。」

 

「えぇ。___ある意味で、特異点なのかもしれないわね……」

 

地球連邦防衛宇宙海軍に属する、宇宙戦艦『ヤマト』。

同惑星の旧時代の水上艦を模したような形状は、際立った他艦との差異だ。

デスラーとスターシャは、万感の思いと共に、かの艦に敬礼を送った____。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

地球連邦が派遣した友好使節団も来賓として招かれた、

移民・遷都計画の主用段階が無事に完遂されたことを祝す式典は、

観艦式の翌日、地球時間5月9日に催された。

 

新ガミラス星首都の広大な会場で曽根川使節団長は、移民計画に際する各種支援を

例に挙げて地球とガミラスの友好の重要性を喧伝し、今後の友好・同盟関係の継続を

ガミラス国民へ訴え、大小マゼラン銀河の連邦構想を引き続き地球が支持する内容の

演説を行い、連邦政府・外務局が彼に帯びさせた本来の任務を完了させる。

 

同夜には地球使節団をもてなすパーティーが予定されており、

その時刻まで曽根川は、共和政ガミラスの民主政府首班レドフ・ヒス首相の公邸で

非公式の会談をに臨むこととなった。

 

 

「___今後、スターシャ女王猊下とユリーシャ皇女殿下、サーシャ姫殿下には

 新たな御所となる地が確定するまで、この星に移築された総統閣下の別荘に

 行宮していただくこととなります。詳細は今後、詰めていくことになりますが」

 

「左様ですか。」

 

現在ではガミラスの事実上の統治者となっているヒス首相は、2203年の時点で

デスラー総統の生存と彼の真意をデスラー派組織『救国軍事会議』を介して

知ることになり、彼と和解を果たしていた。

そしてデスラーと協力してガミラス星の危機を国民に周知し、移民計画を推進。

彼ら政府関係者は、ガミラス星からの完全退去時には最後まで星に留まり、

住民の避難を見届けてから整然と専用艦に乗り、ガミラスを後にしている。

 

そんな彼と応接間で曽根川は、

地球から輸出されたというオルタリア原産の茶葉で淹れられた紅茶を振る舞われた。

 

「これは、かつて親衛隊の暴虐で壊滅した惑星オルタリアから

 辛うじて持ち出された品種を、地球で栽培したものです。

 オルタリア茶の復活には、貴国の外務部門トップの方に尽力いただいたと

 ドロッペ外務相から聞いております。」

 

「はい。私も、エバット前外務長官よりそうした旨を伺っております。

 彼は、新設される交易局の輸出奨励部門に移り、貴国との商業活動の拡大に

 従事することになっています。」

 

茶を汲み交わす中で、大使館経由では聞きにくい、

鮮度の高い両国情報の交換が行われる。

この会話で両人が確認したことは、地ガ交易が今後も活発化するということだった。

 

「お茶のお代わりをお持ちしました」

 

"ザルツ系"だろうか、地球人と同じ肌の色をした可愛らしい少女が、

ワゴンを持って入室し、曽根川とヒス首相のカップに再び紅茶を満たしていく。

その際、少女が青肌で禿頭の執政官を『おじさま』と小さく呼んだのを、

曽根川は聞き逃さなかった。

 

 

「……養女です。

 かつて貴国との不幸な戦争時に、親を失った子を引き取りました。」

 

「___消えない傷を受けたのはお互い同じということは理解しています。

 だからこそ、両国が二度と戦火を交えないよう、友好・同盟関係を

 継続・強化し、市井レベルで浸透させていくことこそが

 生き残った我々の使命である、というのは、両国の共通認識と存じております」

 

「……えぇ。」

 

曽根川は、あの時とは打って変わって、穏やかにヒスの言葉に応じた。

それこそが、曽根川と亡弟が目指した、外交官のあるべき姿と信じて……。

 

聞けば、ヒス首相の養女はヒルデ・シュルツ。

かつて地球に遊星爆弾を降らせた冥王星基地の司令官の遺児だそうで、

ユリーシャ・イスカンダル皇女の従者を務めていたこともあったという。

そのため、総統別荘に行宮するイスカンダル王家に再び従者として仕えるのだそうだ。

 

曽根川にとって弟一家の仇の子ということになるが、

それを知ってもなお、彼の心は穏やかに凪いでいる。

既に曽根川には、ガミラス(及びイスカンダル)に対する憎悪の念はない。

弟・常次、姪・真珠、そして婚約者__家族の誰も、

自分が負の感情で人生を空費することを望んでいない___そう思えたためだ。

改めて彼は、イスカンダルの地下聖域で、裡に溜まった怨嗟を吐き出すことで

自分の心に区切りをつけられて良かったと実感している。

たとえ、その代償として、自身の外交職としての未来が閉ざされたとしても。

 

この後行われるパーティー、そして在(ノエン)ガミラス地球大使館との事務が、

自分の外交官としての最後の仕事になるであろうことは理解していたが、

それが予想していたより心安らかなものとなることは、もっけの幸いだった。

 

 

そうした透き通ったような精神状態で、曽根川は公邸応接室の壁一面を占める、

(ノエン)ガミラス星の海を臨む、防弾防爆仕様の巨大な窓に視線を転じ、

思わず感嘆の声を漏らした。

 

「……美しい日没ですなぁ」

 

「全くです。 サレザーの夕焼けを見ることはもう叶いませんが、

 安住できる新天地で見るラドンエジラの夕陽も、負けず劣らず美しい。」

 

ヒスの言葉に、曽根川は微笑と共に頷く。

こんな夕日を美しいと感じることができる感性をお互い持ち続ける限り、

地球とガミラスの友好関係が揺らぐことはない筈だ___

合理的とは言えない感想だが、曽根川の心は満たされた。

 

 

やがて、紅く燃える水平線の彼方に、恒星ラドン=エジラは姿を消す。

それでも、これまた美しい残照が、彼らの目に焼き付けられるのだった。

 

 

 

_______________________________________

 

 

 

 

時は流れ、地球時間換算で西暦2205年5月20日となるこの日。

 

(ノエン)ガミラス星の海洋に設けられたガミラス国防軍航宙艦隊の泊地にて、

地球連邦の親善派遣艦隊・第六十五任務部隊(TF65)が出港準備を行っている。

 

本来、親善艦隊と使節団は観艦式など新ガミラスにおける催事の後、

イスカンダル星に寄航・表敬訪問する予定だったが、同惑星が消滅したため

予定を変更し、新ガミラス出航後、そのまま地球へ帰還することになった。

 

……これに先立ち、艦隊司令官ルーベン・ワード少将は、

ガミラス星消滅・イスカンダル王族救出作戦と連続した予想外の非常事態に、

頭を抱え胃痛を患うことになったが、情勢が漸く落ち着き、胸をなでおろしている。

しかし、外交使節団からの報告を大使館経由で受け取った地球連邦政府と

防衛軍司令部からの伝達が、またしても彼の心の平穏をぶち壊した。

 

 

 

「やっぱり不満か?」

 

「はい、正直言って承服しかねます」

 

「だろうな。俺も同じだ」

 

宇宙戦艦『ヤマト』艦内にて、二人の若い男性軍人が険しい顔で艦内通路を歩く。

二人の制服の差し色は赤、彼らの所属は戦術科である。

 

一人は、『ヤマト』戦術長を拝命した、北野哲也特務大尉。

2199年の最初の航海から『ヤマト』に乗艦する戦術科のベテランである。

もう一人は、本航海から『ヤマト』乗組となった宇宙防衛大38期生、土門竜介准尉。

後者はかつて防衛大生時代に、私用で外出していた"ヤマトの英雄"古代進と森雪に

握手を求めたことがあり、憧れ続けた『ヤマト』への乗艦は夢が叶った形となる。

防大首席卒業の経歴と才覚が評価され、新乗員で唯一艦橋士官の交代要員に

選ばれるほどの『有望株』だ。

そんな彼らが憤る理由が、他ならぬ防衛軍司令部による"辞令"であった。

 

 

地球連邦政府・防衛軍の最上層部が、イスカンダル星救援作戦後に

共和政ガミラスへ派遣された艦隊・外交団へ対して下した指示は、以下の通り。

 

・古代進中佐の宇宙戦艦『ヤマト』艦長の任を解き、

 在新ガミラス地球大使館付武官に任ずる。

・森雪少佐の外交使節団員及び防衛軍司令部付国防局間連絡士官の任を解き、

 在新ガミラス地球大使館付武官に任ずる。

・真田志郎大佐の外交使節団員及び科学局出向士官の任を解き、

 在新ガミラス地球大使館付技術参議官に任ずる。

・新見薫少佐の宇宙戦艦『ヤマト』技術長の任を解き、

 在新ガミラス地球大使館付技術参議官に任ずる。

 

・宇宙戦艦『ヤマト』は島大介副長が艦長代理として運航し、

 第六十五任務部隊に付随して地球へ帰還せるものとする。

 同艦の技術長職は桐生美影情報長が代行せるものとする。

・使節団に特例帯同せる民間人・古代美雪は両親の転任に伴い

 地球大使館が生活・医療ほか各種の世話を預かるものとする。

 これに伴い、科学局の『乳幼児の宇宙航海による影響の観察』は中止する。

・大使館付技術参議官に任ずる二名は、共和政ガミラス当局と協同し

 地球人と異星種族間に誕生せる生命の観察・調査・研究を行うものとする。

 

 

……同辞令には、地球連邦による政治的思惑が多分に込められていた。

 

第一に、曽根川使節団長によって特級の要秘匿情報として地球に報された

『イスカンダル星の真実』を直接聞いた曽根川以外の三人の隔離と、

ガミラスのお膝元で管理することによる同国への配慮。

 

第二に、ガミラス人から広く崇敬の念を集めるイスカンダルの要人と、

故人とはいえ地球人が子を成したことによる同国世論の動揺への備え。

これについてはイスカンダル女王の傍に義弟一家を置くことによる

一種のメンタルケアと古代一家の身柄保護が図られており、

加えて故・古代守大佐の旧友である真田大佐・新見少佐を、

彼の遺児の観察・保護要員として付けることで、

地球人と異星人間の生殖に対する情報収集を行うという意図もあった。

とはいえ、ガミラス側の意向で、暫くスターシャ女王の娘である

サーシャ姫に関する情報は伏せられることになったが……。

 

 

……つまり、イスカンダル救援作戦の後始末のため、

四人の現旧『ヤマト』乗組員+αは、ガミラスへの居残りが命じられたのだ。

 

あくまで一部の団員が離脱するだけの外交使節団はともかく、

艦のトップと重要な幹部乗組員を引き抜かれた『ヤマト』としては、

不満が出て当然であった。後は帰路だけで僚艦の存在もあるとはいえ、

訓練中の乗組員も多い同艦としては運用に不安が残る。

 

しかし、辞令の伝達と反対意見の説得役を押し付けられたワード少将らの労苦と

転任する古代艦長らがあっさりと転属命令を受け入れたことで、

艦内で不満は燻っているにしろ、指令は実行されることになったのだ。

 

 

そして、今。

島副長や北野戦術長ら『ヤマト』幹部乗組員と、

土門准尉のような艦長から呼び出しを受けた新乗組員の目だった面々は

下艦する古代艦長を見送るため、『ヤマト』艦尾の内火艇格納庫に集合した。

(既に新見技術長は別件で離艦済み)

 

「……残念ながら小官はここで、『ヤマト』の航海から離れることなる。

 だが、ここまで『ヤマト』を指揮する中で、艦長なしでも『ヤマト』は

 十分に地球帰還までの運用を行えるものであると確信を得ることができている。

 特に、新乗組員諸官の乗艦後の練度向上には目を見張るものがある。

 それだけに、最後まで航海を共にし、その全成果を見届けることができないのは

 無念の一言に尽きるが、諸君は小官の不在を気負うことなく、

 航海を無事に完遂してほしい。___艦長としては、以上だ。」

 

古代は、標準内火艇に乗り込む前に、

自身の下艦を惜しんでくれる乗員らに、艦長として最後の訓示を行った。

 

それから、『ヤマト』乗組員・古代進として、各位に別れの挨拶をする。

 

 

「島、山崎さん、平田さん、坂巻さん、榎本さん、北野、西条、桐生、林、市川、

 星名、篠原隊長、山本、永倉隊長、佐渡先生、それとアナライザー。

 ……みんな、『ヤマト』を頼みます」

 

「……土門、京塚、揚羽、徳川、坂東、坂本、雷電……

 君たち新乗組員こそが、この先の『ヤマト』の軸になる。

 今日までの航海で培ったものを、より高めていってほしい。」

 

古代に名を呼ばれ、『ヤマト』を託された面々は頷き、古代を凝視した。

 

「心配するな、古代。

 お前がここまで育ててきた『ヤマト』だ。大丈夫に決まってる」

 

乗組員代表で、古代の親友であり、艦長代理として『ヤマト』を預かる島大介が、

親友として、第一の部下として、締め括る。

 

「総員、古代艦長に、敬礼!」

 

乗組員たちの敬礼に返礼し、古代は艦載内火艇へ移った。

 

 

席に着いて程なくして、浮揚感を感じ、『ヤマト』を下艦するのだと実感する。

複雑な思いを抱きながら、彼は私物を入れたバッグを開き、

タブレット型デバイスを取り出す。

 

五式標準内火艇は『ヤマト』を、TF65を離れ、

地球大使館の車が待ち受けているガミラス軍泊地の地上発着場へ向かう。

 

その中で彼は、『ヤマト』を降りる一抹の寂しさを紛らわせるべく、

デバイスに表示させた一枚の写真を見て、微笑した。

その写真は、イスカンダル星の破壊から程ない頃、

補給母艦『アスカ』艦内で撮られ、送られてきたものである。

 

そこには、

古代の伴侶・雪が抱く黒髪の赤子___愛娘・美雪が、

救出されたスターシャ女王が抱いている金髪の女の赤子___

スターシャと兄・守の娘、自分の姪であるサーシャと、

手を握り合っているという、可愛らしい瞬間が映し出されていた。

 

 

 






〈第一章:サレザー事変〉 完


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