宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第十五話 交錯

 

【第15話】

 

 

時に、西暦2205年12月11日。

 

テヴァン・マガロク提督が率いるボラー連邦軍・不明勢力調査艦隊の一群は

オリオン腕宙域深部へのワープを敢行したが、何らかの干渉を受けて

跳躍予定距離にまるで満たない位置に現出を余儀なくされた。

 

そこには、彼らボラー連邦の傘下勢力の艦とも、

同軍が追跡する不明勢力"バルメーダ"の艦隊とも異なるシルエットを有する、

ボラー連邦にとって本当の意味で"未知"の勢力の宇宙艦隊が待ち受けていた。

 

そして、ボラー艦隊の眼前に展開していた緑と灰色の航宙軍艦群から

赤く塗装されたマガロクの旗艦『ボルボガフ』に、電文が打たれる。

 

『貴艦隊、"ボラー連邦軍"ナリヤ』

 

ボラー語で綴られた電文は、

マガロクを、ボローズを、調査艦隊司令部の全員を震撼させた。

 

 

「___マガロク提督、直ちに艦隊に戦闘態勢を命じるべきです!」

 

「……落ち着け、政治将校。」

 

マガロクは全身が総毛立つのを感じながら、ヴィルキ・ボローズ___

つい先日まで艦隊による調査行を出世に利用してやろうという野心を覗かせていたのが

嘘のように、明らかに狼狽している艦隊付きの政治将校___を諫めた。

 

ワープアウトして間もない調査艦隊は、"バルメーダ"艦隊との遭遇を警戒して

予め警戒態勢を取っていたが、遭遇したのが"バルメーダ"と異なる勢力という事態なのは

マガロクとしても予想の優先順位的に低かったため面食らい、

しかもボラー連邦(自分たち)が把握していない勢力がボラー語(自分たちの言葉)を操り___

自分たち(ボラー連邦)のことを知っているとなれば、剛毅なマガロクと言えども驚愕を禁じえない。

 

"バルメーダ"と異なる未知勢力の艦隊に遭遇・光学観測で確認した当初は、

ワープへの干渉・強制転出が彼らの仕業であることが状況的に確定していることから

二つの勢力の混成らしい艦隊が"バルメーダ"の属国・傘下勢力である可能性に思い当たったが

敵対的な"バルメーダ"に与する相手にしては攻撃の意思を見せないため、この可能性を捨てる。

そも、攻撃するのであればワープアウト直後に襲撃してくるはずだ。

 

恐らく、彼らは敵ではない。()()()()()()()___

そんなマガロクの考えを、未知の艦隊から発せられた追伸が肯定した。

 

 

『我々ハ "地球連邦" 並ビニ "共和政ガミラス" 。

 此方ニ敵対ノ意志ナシ。責任者同士デノ対話ヲ希望スル』

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

「ファーストコンタクトは上手くいったようだな」

 

地球連邦防衛軍統括司令長官キンメル大将は、首都複合庁舎内の執務室にて

宇宙海軍艦隊司令長官マーカス・J・パエッタ大将の報告を聞き、安堵の息を吐いた。

 

第一報は副官を通じて、正式なものはパエッタから渡された報告によれば、

"事前に得られていた情報"に基づいて、天ノ川銀河中心方面に臨む

地球・ガミラス安保同盟勢力圏外縁部に派遣した、連邦防衛宇宙海軍・第八任務部隊の一群と

同艦隊からの通報で急遽来援した共和政ガミラス国防軍・第五八空間師団艦隊の分遣隊は、

勢力圏への接近が確認された星間国家『ボラー連邦』の宇宙艦隊と平和裡のうちに接触に成功。

 

ボラー艦隊側と指揮官同士で対話を行い、情報交換がなされた結果、

同艦隊の目的が、ボラー連邦にとって未知の勢力"バルメーダ"___

かつて地球・ガミラス連合軍が太陽系を舞台にした総力戦で撃破に成功した星間国家、

白色彗星帝国こと帝星ガトランティスの追跡調査であったことが判明する。

 

ボラー連邦側の責任者である艦隊指揮官テヴァン・マガロク提督には、

彼らの言う"バルメーダ"が既に銀河系から駆逐されたこと、

接触宙域より先は地球・ガミラス同盟の領域であることを説明すると共に、

ボラーとの国交を開設する準備がある旨を告げ、本国政府への伝達を要請した___との事だ。

 

そして今のところ、

ボラー艦隊が要請を無視して地ガ勢力圏への侵入を図る素振りは見られないという。

 

鉄面皮と称されるキンメルをして相好を崩すほどの、

星外文明との接触の第一段階としては歓迎すべき結果であった。

 

 

「しかし、問題はここから……ボラー連邦本国政府が、どのような判断を下すかです。」

 

楽観は禁物だ、と釘を刺すように言ったのは、パエッタと共に入室したもう一人の将官。

防衛軍指揮系統でキンメル司令長官、パノムヨン副司令官に次ぐ第三位に位置する

防衛軍参謀総長、楊于建(ヤン・ウーチェン)大将である。

 

「___そうだな。

 状況がどちらに転ぶにせよ、対応できるよう準備は進めねばならん」

 

突然冷や水を浴びせられた形になるが、

参謀総長と同じく慎重派のキンメル長官は、不機嫌になることなく表情を引き締めて

東亜管区出身の高官が語る厳しい見通しに頷いた。

 

ボラー側の判断次第で、同国との戦争勃発もあり得る。

これは、長官執務室内に集まった三人、否、地球上層部全員の共通見解であった。

 

「パエッタ提督、即応体制移行はどの程度進んでいる?」

 

キンメルは、万が一ボラー連邦と開戦した場合、地球防衛軍は即座に対応可能かを

対外宇宙戦争の主任高位指揮官・宇宙艦隊司令長官たるパエッタ大将に問う。

 

「はっ。

 わが軍に於きましては、問題の接触宙域に近隣するガミラス入植天体への疎開船手配、

 周辺航路の封鎖準備、迎撃計画の策定、戦力の動員・集結、物資の集積………

 『対ボラー連邦接触計画(Operation-CWB)』の開戦シナリオに基づき、滞りなく進めています。」

 

パエッタは、自信を滲ませた表情で答えた。

それに満足したのか、キンメルは二・三度頷くと、今度は楊参謀総長に視線を転じる。

 

「ガミラス側はどうだ?」

 

「銀河系駐留軍司令部及び大使館(グアム)からは、

 『共同策定した計画通りに諸事を進めている』……との事です。

 実際、ガミラス軍は対応計画に基づき、銀河間航路守備軍の予備戦力となっていた

 第一八空間機甲師団艦隊をαケンタウリのシュルツ基地に入泊させました。」

 

外部への情報パイプを多く持つ参謀本部を束ねる楊大将は、努めて平静な声で告げる。

 

ガミラス側も対応について順調に事を運んでいるという安堵できるような報告に反して、

キンメルは表情に若干の憂慮の色を浮かべ、呟いた。

 

 

「……ガミラスから仕掛ける、などということは考え難いか。」

 

「は……。」

 

パエッタも楊も、キンメルが言わんとしているところを機敏に察し、顔を強張らせる。

彼らの懸念は、去る一カ月前に起きた『第二次サレザー事変』に端を発していた………

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

同時刻、グアム島・共和政ガミラス駐地球大使館。

 

扁平なドームを重ねたような、ガミラス特有の意匠の建造物の深部にある大使執務室では、

在任期限も遠からず見えてきたガミラスの初代駐地球全権大使メフィルス・ミューラーが

側近の大使館付武官長クライクァルス・ノルティオ大佐、大使館付参事官ローレン・バレル共々

とある人物らと通信を交わしていた。

 

 

「お二人とも、御足労をおかけします」

 

我が国(ガミラス)友邦(テロン)の未来を左右する重大事です。 この程度、何ということもありません。』

 

『貴女にそう言われては、私もそう答える他ありませんな、ハハハ』

 

大使の執務机前に置かれた二台の大型立体投影式モニターに映し出されたのは、

二人のガミラス人男女。

 

喪服のような黒い衣装に身を包んだ女性、エリーサ・ドメル未亡人と、

文官であることを示す茶色のガミラス公務員制服を着こんだ老人、コスタン・ノエンラート。

二人とも、ミューラー大使にとっては見慣れた顔である。

前者は自分の外交官としての師匠の娘(かつガミラス民主化運動の中心人物)で、

後者は外務省時代の元上司___ヤヒメル・ドロッペの前任の外務相だ。

 

どちらも外交分野に関わりのある人間であり、地球大使館上層部が面会する相手としては

全く不自然ではないが、こうして通信を行っているのには理由がある。

 

 

「確かに、その通りではあります。

 『ボラー連邦』との平和で対等な国交の樹立には、お二人の力添えが不可欠でしょう」

 

この時、ドメル未亡人とノエンラート元外務相は、ボラー連邦との交渉に備え、

外交特務を帯びた航宙戦艦『シャングリ・ラー』に乗艦し、地球(テロン)へ向かっていた。

彼らは、ボラー連邦が地球・ガミラスとの国交条約締結に舵を切った場合、

同国との交渉役を担うことになっている。

 

形式的な挨拶、外交団の地球到着日程や到着後の動きなど、確認事項が一通り終わると、

ミューラーはさっそく本題に入った。

 

「……どうです、本国の様子は」

 

『大使や、地球側が懸念するほどの事態にはなっていません。ただ……』

 

『そういった声も決してない訳ではない。

 口に出していない人間を含めれば、相当な数が思っているだろうな』

 

眼光鋭く、立体投影された対ボラー交渉団トップにミューラーが問い掛けたのは、

ボラー連邦との国交樹立について(ノエン)ガミラスの政府・議会・省庁、そして軍の高官が

どのように受け止めているか、である。

ミューラー大使の「本国がボラー連邦を敵視して動いているのではないか」という

深刻な懸念に基づく質問だった。

 

 

ガミラスとボラーはこれが初接触であるため、敵視に繋がるような因縁はない。

一部の例外___『第二次サレザー事変』で出現し、ガミラス共和連邦に組み込まれた、

元はボラー連邦の総督に支配されていたというガルマン星を除いて、だが。

 

問題は、圧政を受けていたそのガルマン星が、ガミラスの主流層である

青肌ガミラス人の故郷であり、旧母星ガミラスとイスカンダルを失った彼らにとり、

新たなナショナリズム的シンボルの役目を担い始めていたことである。

 

そうした一部の層が、ガルマンに圧政を敷くのを許していたボラー連邦に対し

悪感情を抱くのは無理からぬことだが、それに煽られて国家が動くのは由々しき事態だ___

ミューラーの胸中には、そんな不安が巣くっていた。

 

 

『とは言え、政府もその風潮に乗って動くほど馬鹿じゃない。それに民主化が成り、

 ガトランティス戦争、遷都が終わって、ようやく落ち着いてきたんだ。

 ボラーと事を構えるのは国民が許すまい。

 ___あくまで、向こうが仕掛けてこなければ、な。』

 

『……外交団としては、出番があるよう、かの国が穏健な判断を下すのを願うばかりです』

 

「…………全く、同感です」

 

ノエンラート外交団長から現在の本国のスタンスを聞かされ、

ミューラーは多少表情を晴らすが、それに続く一言に再び硬直する。

一方が剣を抜かずとも、相手が抜けば戦いは始まる___

改めて"平和"の限界を突き付けられた思いをしながら、通信は終わった。

 

 

「____」

 

嘆息して、ミューラーは天井を仰ぐ。

地球からの離任も見えてきたところで、新たな対外戦争の危機に直面するとは、

自分もよくよく運のない___そう思わずにはいられなかったが、無理矢理思い直す。

 

(むしろ、少しでも状況を制御(コントロール)できそうな立場にいることに感謝すべきですね)

 

大使は首を下げ、目を開き、部屋にいるノルティオ武官長とバレル参事官に告げる。

 

「……地球(テロン)政府・防衛軍と協同で作成した対応計画___ボラーと開戦した場合の措置について

 どこまで準備が進んでいるか、報告していただけますか?」

 

「「ハッ!」」

 

大使直属の二人は、威儀を正して報告を始めた。

 

「……ボラー艦隊との接触宙域に近い、銀河中心方面寄り最外縁の入植惑星群には

 既に疎開船が到着しており、第二線の植民星にも順次到着する見込みです。

 また、必需品の輸送以外の目的でそれらの惑星に向かう船舶に対し、

 我が航路管制当局より運航制限を布告しています。」

 

バレルは、開戦という、あってはならないがあり得ることを認めざるを得ない事態に際し

ガミラス民間人を保護する方策が、地球側と協力し進行中であることを大使に語る。

 

「国防軍銀河駐留軍団司令部からの報告では、昨日第一陣がシュルツ基地に到着し

 その後も戦闘団単位で銀河系に移動中である第一八空間機甲師団艦隊に加え、

 バランに展開するヘルム・ゼーリック機甲師団艦隊や、外洋機動艦隊の抽出部隊なども

 この銀河系へ配置すると連絡が入ってきております。」

 

続いて、軍事面での助言者であるノルティオ大佐が、

万一のボラー艦隊の侵攻を迎撃するガミラス艦隊戦力の集結について報せる。

 

「しかし、これらの到着は早くて一か月後です。

 それより早くボラーが開戦の肚を決め、我が入植圏内に攻め込んできた場合、

 銀河駐留軍団は手持ちの三個師団を以て迎撃する他ありません。

 地球軍の支援を得て、どうにか持ちこたえられるかという所でしょうか。」

 

同時に武官長が、ボラー側が戦端を開いた場合の見通しの厳しさも大使へ伝えると、

ミューラーも冷や汗を浮かべながら、コクリ、と頷く。

共和政ガミラスが得た天ノ川銀河の新領土と、その入植民がどれだけ危険な状況にあるか、

よく理解した___そう言いたげな表情に見えた。

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

地球・ガミラス側がボラー連邦によるオリオン腕侵攻を警戒し、

着々と戦備を整えているのを知ってか知らずか、ボラー連邦軍不明勢力(バルメーダ)調査艦隊司令部では。

 

 

「……提督、本当に連中の言い分を信じられるおつもりですか?」

 

彼の背後で、上司が過激な発言をしないか気が気でない様子でいる秘書官レバルズを尻目に

政治将校ボローズは、衆前であるにもかかわらず非難がましい口調で調査艦隊司令官に問う。

 

現在、ボラー連邦軍の調査艦隊は、地球・ガミラス艦隊と最初に接触した位置から

動いておらず、同じく不動の構えを崩さない地ガ艦隊と静かに睨み合っている格好だった。

 

ボラー艦隊旗艦艦橋にいる艦隊付き政治将校の彼が不満に感じているのは

不明勢力バルメーダを追跡するためのワープを遮る形でボラー艦隊の前に現れた、

艦隊針路の彼方に国家領域を有する、『地球連邦』と『共和政ガミラス』を名乗る

未知の勢力が語る内容を、ボローズの一応の上官たる艦隊司令マガロクが

安易に信じ込んでいると思わしいことについてだ。

 

二つの未知勢力、『地球』と『ガミラス』の尖兵が言うには、

ボラー艦隊の追うバルメーダ(正式名称をガトランティスというらしい)は既に

地球・ガミラスと交戦し敗北・銀河外へ追放されたため存在しないこと、

地ガ両国はバルメーダ(ガトランティス)より戦利品として得た偵察情報からボラー連邦の存在を知り、

接触の日に備えボラーの領域が存在する銀河中心方面を注視していたこと、

基本的に両国は、ボラーと平和かつ対等、友好的な関係構築を望んでいるとのことらしい。

 

これを受けて司令官マガロクは、彼らが望む通りにボラー連邦本国へ向け、

未知の星間国家との接触と、相手が平和的国交を希望している旨を伝え、

中央の管理委員会から渉外要員の派遣を要請している。

 

しかし疑り深いボローズには、異星人の語り口を言葉通りに吞み込むことはできなかった。

 

 

「バルメーダに与しているにせよ、いないにせよ、

 未だに彼奴らが我が連邦に対し害意を持っていないとは言い切れないと考えます!

 今この瞬間にも、連中の艦隊が我が艦隊を襲ってきても何ら不思議はありません!

 せめて一時、本国への報告を名目に艦隊を後退させるべきではないでしょうか!?

 さすれば、後続する部隊(グループ)と相互支援が可能です!」

 

自分が率先してこの分艦隊を調査艦隊全軍の最先鋒にしたにも拘らず、ボローズは言い募る。

が、マガロクの返答の前にばっさりと切り捨てられた。

 

「___駄目だ。

 貴官の言う通りに彼らが我々に害意を持っているならば、

 今更後退を試みたところで、それを許すはずがない。

 いくら精兵であっても、あれほど数に開きがあれば限界というものがある。

 敵前の撤退戦となっては、特に。」

 

マガロク提督はボローズに、見ろ、と言わんばかりに、

旗艦艦橋の上方にあるモニターへと顎をしゃくった。

 

「……!」

 

釣られてボローズがモニターへ視線をやると、

そこには地球・ガミラス・ボラーの艦隊が略図となって映し出されている。

ボラー艦隊を示すアイコンに比べ、地球・ガミラス艦隊のアイコン数はおよそ倍。

探知圏外にも別の艦隊が存在することは想像するに容易く、

それを含めれば隻数の差はさらに広がるだろう。

 

そして相手側に、どんな仕組みかは不明だがワープを阻害する装置がある以上、

戦闘となれば逃げることもできず多勢に無勢で全滅するのは火を見るより明らかだった。

マガロクは話を続ける。

 

「彼らが敵対意志を持っていなければ、後退という選択肢はさらに不味い。

 こちらから戦端を開く意図があると受け取られかねんのだ。」

 

「……しかし……!」

 

合理的な反論を上官から突き付けられてもなお、ボローズは何かを言おうとする。

 

一介の政治将校である彼だが、

今後の栄達のためにキャリアに大きな瑕疵をつけるわけにはいかない___

ボラー連邦という国家を脅かす外的要因(バルメーダ)を発見・排除するために送られた艦隊が

強力であることが予想される完全に未知の星間国家(しかも複数)という

より深刻な外的要因を持ち帰ってきたとなれば、その部隊を指揮した司令部の人間が

永久管理機構中央から色よい評価を得られるのか、そんな不安に駆られていた。

 

期せずして未知の星間国家と接触することになった不明勢力調査艦隊の指揮官

テヴァン・マガロクは、ボローズ政治将校の内心を透視したのか、告げた。

 

「兎も角だ、政治将校。

 事態は半ば、我々の手を離れている。現場の人間がどうにかできる段階は過ぎた。

 かくなる上は、向こう側が本気でボラー連邦(われわれ)との友好を望んでいると仮定して動く他ない。

 中央が送ってくる渉外専門の人間に、大過なく引き継ぐことができれば、

 管理委員会も決して悪い評価をつけはすまい。」

 

「は……。」

 

マガロク提督は、観念したようにうなだれたボローズを横目で見ると、

旗艦『ボルボガフ』艦橋後方の壁へと視線を転じた。

 

 

(そう、最早、我が艦隊がどうこうできるものではないのだ……)

 

マガロクの視線の先、後部情報の壁には、

ボラー連邦の国家元首、最高管理委員長ベルム・フォン・ベムラーゼが

正面を向いた、風格ある肖像画が飾られていた。

 

ボラー連邦にとり未知なる勢力、"地球"と"ガミラス"に如何に対応するのか、

そして、マガロクの率いる艦隊が生きて祖国に戻れるかの一切は、

この硬く厳つい相貌をした男の判断に委ねられている。

 

(……如何なる判断を下されるだろうか)

 

マガロク提督は、肖像画に映るベムラーゼ委員長が旗艦の舳先の彼方___

即ち地球とガミラスの艦隊を、厳しく睨みつけているように見えてならなかった……

 

 

 

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