宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第二十六話 新戦艦『アリゾナ』

 

【第26話】

 

 

宇宙戦艦『ヤマト』の正面至近――迎撃不能距離に突然出現した宇宙魚雷は、

近接信管で起爆するよう設定された、融合弾頭搭載のものであったらしい。

その数、なんと30発。

 

『ヤマト』は魚雷と正対したまま差し違える形ですり抜けようとしたが、

演習システムネットワークは空間魚雷群のうち2発が『ヤマト』の両舷、

艦左右の超至近距離で起爆したと判定。

 

波動防壁の再展開が(判定上)間に合わなかった『ヤマト』は爆発をまともに受け、

船体及び艤装に甚大なダメージを負ったということにされた。

 

 

「―――コスモレーダー、ブラックアウト!

 艦首メインレーダーマスト及び、艦橋レーダーアンテナ損壊の模様!

 各部センサーも大半が使用不能!」

 

「艦内各部に破孔と空気漏出、火災発生! 死傷者多数との判定!」

 

「くっ……被害局限(ダメコン)及び損害箇所への救援急げ!

 第二撃の恐れがある!波動防壁はまだ使えないのか!?」

 

「先ほどの攻撃で展開システムに重篤な損害が発生!

 艦首部から中央部にかけて展開不能との事です!」

 

「エネルギー伝導部にも損傷!機関、出力低下!」

 

「本艦速力、第一戦速まで低下!なお減速中!」

 

直撃・轟沈判定を辛くも免れた同艦の第一艦橋内では、警報(アラート)音が鳴り響く中

島艦長ら幹部乗組員たちが、降って湧いたような窮地から艦を救おうと

懸命に状況把握・対処に追われており、艦内でもクルーたちが

演習システムが設定した状況に対応するべく駆けずり回っていた。

 

 

だが、そんな気息奄々の『ヤマト』の前に敵艦隊が立ちはだかった。

 

『――右舷前方10000より、敵宙雷戦隊接近!』

 

『こちら後部観測所! 後方30000に「アルフェラッツ」を確認!』

 

島艦長の元には、辛くも損壊判定を下されなかった各部の索敵機能から

振り切り、躱した敵が再度迫りつつあるという絶望的な報告がもたらされる。

 

深手を負い、逃走も反撃もままならなくなった『ヤマト』に対し、

前門の虎・後門の狼とばかりに、敵宙雷戦隊と敵戦艦が前後から迫る。

さらに、先ほど突然出現した謎の魚雷。

 

(このまま戦闘を継続していても、結果は明白―――)

 

艦長として、最後まで守らなければならないものは、何か。

『ヤマト』艦長・島大介中佐は決断した。

 

 

「機関停止。敵艦隊に発光信号。―――『我、降伏ス』だ。」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

地球時間(日付変更線標準時刻)で、5月6日午前。

火星・木星軌道間小惑星帯(アステロイドベルト)宙域で行われた戦闘演習は

宇宙戦艦『ヤマト』の降伏という形で幕を閉じた。

 

実戦に即した形式で展開された熾烈な演習に終止符が打たれ、

演習システムが解除される『ヤマト』や、演習相手の襲撃艦隊構成艦。

 

「『アンドロメダ』の第一艦隊長官より入電。

 『各艦は「ヤマト」を中心に、逐次集まれ』とのことです。」

 

「……やっぱり、相手は山南長官だったか。」

 

かつての上官、第二代『ヤマト』艦長であった

演習相手役の指揮官の、飄々とした面持ちを思い浮かべると

島艦長は宇宙服のヘルメットを脱いで露わにした顔で、深い溜息をつく。

数十年選手のベテラン軍人と、俄仕立ての代理艦長たる自分では、

かくも差があるものか――そんな思いが頭を離れず、嘆息を禁じえなかった。

 

 

「本艦前方2000、次元境界面より浮上する艦艇!」

 

「「「!!」」」

 

そんな中で、皆と同じく宇宙服ヘルメットを脱いだ西条船務長が報告する。

その内容にある"次元"の単語に幹部乗組員、特に島艦長など古参の者ほど

耳敏く拾い聞き、反応を見せた。

 

それと同時に、『ヤマト』前方の宇宙空間の一角でワープアウトのそれとは

また異なる空間波紋が立ち、緑がかった光の中から一隻の宇宙軍艦が姿を現す。

曲線を基調とするその艦影は、現行の地球軍艦と大きく異なる姿をしていた。

 

「あれは……ガミラスの次元潜航艦!」

 

「地球に供与されたとは聞いていたが……そんな艦まで投入してくるとは……」

 

驚きに目を見開く『ヤマト』艦橋クルーと、

演習で突如現れた空間魚雷の正体を悟り、呆れ交じりに感嘆の声を漏らす島。

彼らの前に現れたのは、ガミラスが設計・建造し昨年半ばに地球に供与され、

薄灰色の塗装に地球軍のマーキングを施されたUX型次元潜航艦の末妹であった。

 

だが、次元潜航艦の周囲には、同艦に接続されたような形で

箱や俵に近い単純(シンプル)な形状で次元潜航艦の1/3程度(=大型舟艇クラス)の

サイズの人工物四つも、亜空間から浮上していた―――

 

 

「『亜空間雷撃コンテナ』、一号から四号まで問題なく通常空間へ浮上。」

 

次元潜航艦の船体左右に重力アンカーで固定され

亜空間から帰って来た、前部に六門しか魚雷発射管を持たないUX型に

30発もの魚雷を射たせられた代物の、正式名称を伝えたオペレーターが乗る

地球軍の次元潜航艦『UX-13』改め、次元潜航艦『ノーチラス』。

 

同じくかつてガミラス供与の宇宙空母『アーガス』(旧『バルメス』)同様

地球連邦防衛軍・技術本部麾下の実験艦隊に所属する『ノーチラス』は、

昨年夏に地球へ回航された後、数カ月にわたり各種データ収集・試験が行われ

現在でも様々なテストを行っている他、練習艦の側面も有している。

 

今回の『ヤマト』襲撃演習への参加も将来の次元潜航艦乗員の養成に加え、

次元潜航艦に曳航され亜空間へ潜航し、潜航艦からの有線エネルギー供与と

操作を受けて通常空間への攻撃を行う次元潜航艦の攻撃力増強兵装、

『亜空間雷撃コンテナ』の運用データ収集を兼ねたものであった。

 

「よろしい、通常航行に切り替えろ。

 ……しかし、あの『ヤマト』を相手に成功を得られたとは、僥倖だな。

 あの艦は次元潜航艦との交戦経験も持ち合わせていたはずだが……」

 

そんな重要な艦を預かるのは、北米管区宇宙艦隊きっての俊英と呼ばれた男、

アーネスト・S(スコット)・ベイツ中佐。

尉官時代にガミラス戦争に従軍・戦傷を受け、若くして予備役に退いていたが

対ガトランティス戦争の勃発によりドレッドノート級戦艦の副長に任じられ、

その後に地球軍初の次元潜航艦の運用責任者という大任を拝したのである。

 

そんな彼はその職務を十全に果たしており、

今日もまた、訓練ではあるが、かつて地球を救った英雄と呼ばれる船相手に

雷撃を敢行・有効打を与えたという判定を得たのだった。

 

 

……かくして、演習を終えた『ヤマト』と襲撃艦隊は一群となり、

演習に投入した無人機や兵器などの回収を火星から進発した支援艦艇に任せ、

今度こそ木星圏の指定座標へ向かうべくワープを実施した……。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

数時間後、"抜き打ち"演習に参加した各艦はガニメデ泊地に入泊。

『ヤマト』やA級など宇宙戦艦は、基地では数少ない大型艦用埠頭(バース)に接岸する。

 

疲労困憊した各艦の乗組員たちには休息が許されたが、

その一方で島大介『ヤマト』艦長は艦を降り、

演習相手部隊の旗艦であった宇宙戦艦『アンドロメダ』へと足を運んだ。

 

『アンドロメダ』は白色彗星戦役後の2204年に大改装が行われ、

前後四基の主砲をアポロ級後期型(『アルフェラッツ』『アークトゥルス』)と同じ

50.8cm三連装収束圧縮式衝撃波砲(ショックカノン)に換装した他、機関出力を強化して

上記のA級新造艦と同等の性能を得、第三重戦艦戦隊を編成していた。

 

そんな《地球最強の戦艦》艦内に入った島中佐は、

"サチベエ"こと三代目『アンドロメダ』艦長の(みゆき)兵衛(ひょうえ)大佐に

島を呼びつけた演習相手方指揮官、山南修中将が待つ司令官執務室へ案内される。

 

 

「『ヤマト』艦長・島大介中佐、入室します!」

 

幸艦長は、山南が一対一での話を望んでいると島に語り

入室することなく去ったため、島は単独で部屋へと入っていった。

 

「よく来たな。まぁ、かけてくれ」

 

室内では、山南が応接用のソファに腰かけており、

その前のローテーブルには香しい紅茶が入ったカップが二つ置かれていた。

山南に勧められるがまま、島もソファへと対座する。

 

「演習の正式な反省会は先ほど伝えた通り、このあと基地の作戦室で行うが、

 その前に君と二人で意見の交換を行いたいと思い、呼ばせてもらった。

 ――それとこれは、私のとっておきのオレンジペコだ。ぜひ飲んでくれたまえ」

 

「は、はぁ……頂きます。」

 

山南が手ずから淹れた高級茶葉の紅茶で喉を潤してから、

二人の小反省会が幕を開けた。

 

「まず、貴官の指揮と運用についてだが……上出来だと言わせて貰いたい。」

 

「……恐縮です。」

 

山南の話は、演習全体での『ヤマト』の動きについてから始まる。

十年以上艦船勤務を続けてきた山南中将から見ても

島艦長が演習時に下した判断は殆どが適切・合理的であり、

小惑星帯に張り付かせた無人機の伏撃を損害なく凌いだことと

《アステロイドシップ》ことシステム《ARGO》の利用の仕方は見事との評価だ。

 

「……ですが、山南長官が『ヤマト』を右へ、敵潜宙艦が待ち伏せていた

 あのポイントへ誘導していることにはもっと早く気付くべきでした。」

 

島は渋い顔をしながら、脳内に置いた図上で彼我の配置と動きをトレースする。

山南による"誘導"は、『ヤマト』が小惑星密集エリアでの敵無人機の伏撃を

打ち破った後、"三重戦"を二手に分けて挟撃を図った所から始まっていた。

 

わざとニ対一、戦力を不均衡にすることで見せかけの弱点を作り出し

『ヤマト』が右へ転舵して『アルフェラッツ』を叩くように仕向け、

その先に予備戦力となっていた宙雷戦隊を配置しておくことで

さらに『ヤマト』が進路変更するよう誘導、そこを攻撃圏内としていた

敵潜宙艦『ノーチラス』に襲わせ足止めし、追いついた艦隊が『ヤマト』に

トドメを刺せる状況を作り出していたのである。

 

「まぁ、な。―――いつ気付いた?」

 

「演習の後、アステロイド帯を脱出しかけた時、

 宙雷戦隊が『ヤマト』の()()から向かってきていたことを思い出して

 山南中将の作戦に気が付きました。」

 

「ああ……。

 確かに、普通は宙雷戦隊を小惑星帯の外で待ち伏せさせておくにしても

 『ヤマト』がアンドロメダ級に追われているなら、盾代わりにして通ると

 予想しやすい小惑星の密集エリアに近い位置に配置しておくからな。

 その場合、『ヤマト』が面舵を切った際に()()から追ってくるのが自然だ」

 

満足そうに紅茶のカップに口をつけつつ、島中佐の推理を肯定する山南。

あの演習において『ヤマト』は、山南の掌の上で転がされていたのである。

 

「それに、対空戦・対艦戦を織り交ぜてきた以上は、

 対潜戦闘の可能性を考慮すべきでした。」

 

「そこはまさか、技術本部付きの試験艦を動かすとは思わないだろうからな。

 同じ立場と状況であれば、あの奇襲を予想するのは無理だと

 サチベエ―――もとい、(みゆき)大佐も言っていた。私も同感だ。」

 

実質的に『ヤマト』を"撃沈"した、次元潜航艦の襲撃の可能性を

思い至らなかった点を悔やむ島に対し、山南はフォローを入れる。

その一方で、山南は真剣な表情で告げる。

 

「……ただ、現状における仮想敵――ボラー連邦軍が次元潜航艦技術を

 有していないとは言い切れない。ワープ阻害装置についてもな。

 こうした襲撃に備える上で、あらゆる可能性を考慮しなければならん。」

 

戦場で生き残ってきたベテランの忠告に、島も神妙に耳を傾け、頷いた。

そうして話題は、より細部……戦術や兵器についてのことに移る。

 

「今回の演習で、艦隊規模で優勢な敵による奇襲を受けた場合、

 『ヤマト』単艦では防御・自衛能力に限界があるということが

 ある程度分かってきたが、艦長としてはどう対策すべきだと考える?」

 

「は……一番はやはり、"ワルゴニア"の時のように護衛艦隊を

 つけてもらうことだと思いますが、あの時はあの時で制約がありました。

 それに、情勢如何で護衛をつけることが叶わない可能性もあります。

 よって防御面について、特に艦底部の波動防壁制御部の防御強化、

 それと、"四式波動防壁展開弾"の配備を具申したいと考えます。」

 

「波動防壁弾か。あれは確か、活性波動共鳴波の発振装置が

 継続運用に欠かせないと技術本部から報告されていたと思うが……」

 

「一時の攻撃を防ぐだけなら、発振装置なしでも可能ではないでしょうか?

 防壁弾を使い捨てる形とはなりますが、外交特務艦であれば

 防御でそれだけのことをする価値はあると考えます」

 

今後の外交派遣も視野に入れ、演習結果をこの先の『ヤマト』に

どう反映させるか議論を交わす島と山南。

その中で、山南はあることを思い出し、口にした……。

 

 

「……島中佐。君は先程、『護衛艦隊の配備が最善』と言ったな?」

 

「はい、申し上げましたが……」

 

山南は記憶の中のデータベースをまさぐりながら、勘案交じりに語る。

 

「現在、宇宙艦隊では新たな『無人艦隊』計画が進行している。

 ガトランティス戦争時のフェデラル(FE)級改造型のようなものではない、

 船体も武装も新設計した、より正面戦闘に適した無人艦の開発計画だ。

 それらを有人艦から制御し運用することを想定している。」

 

「……それを、『ヤマト』の随伴護衛艦隊とする、と?」

 

「相手が認めるかどうかは外交次第だろうが……一案ではないかな?」

 

「なるほど……」

 

将官ゆえ、艦艇の開発・配備計画の情報にも明るい山南の話に、

島艦長は聞き入り、思わず胸中に期待感が湧くのを実感していた。

その一方で、懸念点も口にする。

 

「……無人艦隊の配備は、いつ頃になるでしょうか?」

 

「早くて、今年の夏以降だろうな。

 既に、新型無人艦のテストベッドとなる艦は就役している。

 それらのデータを反映して運用のための準備を整えるには、

 それくらいの時間が要るだろう。

 ひょっとすると、今回の演習の戦訓も組み込まれるかも知れんな。」

 

「そうですか……」

 

急場に間に合わない、とならなければ良いが……そう脳裏によぎらせつつ

島艦長は、山南の口を出た『テストベッド艦』のことが気になり、尋ねた。

 

「……その艦というのは、もしや……」

 

「鋭いな、島中佐。

 ……お察しの通り、呉の工廠で艤装工事をしていた北米管区の艦。

 宇宙戦艦『アリゾナ』だよ。」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

奇しくも同時刻、太陽系第三惑星地球・極東管区西部の呉宇宙海軍基地にて。

 

同基地のメインバースに接岸していた、北米管区に籍を置く

新型宇宙戦艦『アリゾナ』を防衛軍の重鎮たちが視察に訪れていた。

 

「ようこそ、我が『アリゾナ』へ。」

 

「うむ。出迎えご苦労、オニール艦長。」

 

視察にやって来たのは、

地球連邦防衛軍 統括司令長官ウォルター・I(アイザック)・キンメル大将、

同宇宙海軍艦隊司令長官マーカス・J(ジェフリー)・パエッタ大将、

宇宙海軍艦政本部長谷鋼三中将の三人。

 

彼らを誇らしげな表情で歓待したのは

宇宙戦艦『アリゾナ』艦長に任じられたチャンス・P(ピルズベリー)・オニール中佐。

彼は30代という若手ながら宇宙戦艦『アルデバラン』戦術長、

宇宙巡洋艦『サンフランシスコ』艦長を歴任している北米出身のエリートだ。

彼の同期にはベイツ『ノーチラス』艦長など有望な士官がおり、

士官学校で彼らの代は"北米軍の当たり年"と呼ばれていた。

 

そんなオニール艦長の案内で、三人の防衛軍高官は『アリゾナ』艦内を見学。

新造艦らしく、まだ各種塗装材などの所謂"新品の匂い"がしている艦の

あちこちを見て回る中、キンメル長官は思わず感嘆の声を漏らした。

 

「これが『アリゾナ』か……大した艦だ」

 

「えぇ。我々宇宙海軍が進めております『H計画』の雛型となる艦ですからな」

 

キンメルの言葉に、

自分まで鼻高々というような弾んだ調子で応答したのはパエッタ宇宙艦隊総司令。

彼が口にした『H計画』こそ、新型無人宇宙艦隊整備計画のことである。

パエッタに同調・補足するように、谷艦政本部長も説明した。

 

「パエッタ総司令の仰る通りこの『アリゾナ』は、対ボラー防備増強の一環として

 現在各方面艦隊に属する、2201年就役の改設計型の護衛艦を置き換えるのを

 主目的とした新型無人戦闘艦の試作艦、技術実証艦となっています。

 特に、新たなブロック工法での大型宇宙艦建造のノウハウ取得とデータ収集、

 無人艦に実装するユニット式兵装及び艤装・機関の試験運用を担う予定です。」

 

谷の説明に、キンメルも頷く。

彼は、手持ちのタブレット型デバイスを開き各種データを見るまでもなく、

そうした情報が頭にインプットされていた。

何を隠そう新型無人艦隊整備計画『H計画』は、谷中将ら宇宙海軍艦政本部の他、

キンメル大将ら防衛軍北米派閥が主導して推進していたのである……。

 

 

キンメル同様"北米管区"の軍人であるオニール艦長も、会話に参入した。

 

「それに『アリゾナ』は、ヤマト型同様"外交特務艦"としても整備されました。

 いわば北米管区版『ヤマト』とも言えます。

 サンディエゴ工廠で艤装中の『ペンシルバニア』ともども、

 『ヤマト』『ムサシ』に劣らぬ働きをして御覧に入れましょう。」

 

「うむ。ガミラスにはヤマト型、ボラーにはアリゾナ型を、

 外交派遣用特務艦として主に運用する構想となっている。

 貴官らの任務は、地球の安全保障上において極めて重要だ。頼むぞ。」

 

「ハッ!」

 

会話の通り、『アリゾナ』及び二番艦『ペンシルバニア』の建造には

地球が相対する星間国家がガミラスとボラーの二カ国に増えたことで、

ヤマト型二隻では外交派遣任務への従事と整備・訓練のローテーションが

回らなくなってしまったことも、背景として存在していた。

 

 

「……北米版『ヤマト』か。

 確かに『アリゾナ』は、ある意味では『ヤマト』の同世代艦ですからな」

 

「……! そう言えば、そうでしたな。」

 

キンメルとオニールの会話を聞き、パエッタが何かに気付いたように呟く。

谷中将もその言葉を反芻し、頷いた。

 

実は『アリゾナ』は、ガミラス戦争末期のイスカンダルからの使者到来後、

旧国連各管区で建造された移民船群のうち、北米管区で建造されたが

戦後2200年に廃棄・資源に転用され解体された艦の設計データを基礎に、

A級・D級のデータを反映して設計・建造されているのだ。

 

これは防衛軍北米派閥が、自管区の『ヤマト』となり得た艦の復活を

画策したものという噂もあったが、公式には『早急な配備のため』とされる。

その証拠というべきか、早急な建造・配備を実現するために

アリゾナ型の主砲は、『アンドロメダ』大改装時に換装され降ろされた、

三連装長砲身40.6cm収束圧縮式衝撃波砲を転用・積載していた……。

 

 

そんな話をしていた彼らはやがて、『アリゾナ』の格納庫へとたどり着く。

その中には、一機の大型航空間機が格納されていた。

 

「……これが、特務仕様の"コスモガネット"か。」

 

「左様です。今後、ヤマト型も格納庫を改装し搭載する予定ですが、

 我が『アリゾナ』ではそれに先んじて、初めての搭載艦となりました」

 

上方から見れば、旧世紀のスペースシャトルなどを想起させ、

前方から見れば、二十世紀中葉の複発爆撃機を連想させるようなデザインで

従来の戦闘用航宙機とは任務を別にすることが一目でわかる大きさの機体。

その名も 五式空間輸送機『コスモガネット』、

2205年に正式採用されたばかりの新鋭機だ。

 

計画段階では『コスモハウンド』の呼称が用意されていたが

九七式空間輸送機(SC-97)『コスモシーガル』の後継機であることから、

海鳥の名を冠した方が良いという意見もあり、紆余曲折の末に

カツオドリを意味する『ガネット』に命名を変更された同機種。

だが、『アリゾナ』に配備された機体はその中でも一層特別だった。

 

 

「……正直、にわかには信じ難いな。

 この機体が、ガミラスのUX型のように次元潜航できるなど……」

 

キンメルが腕を組み、機体を見つめながら唸った。

外交特務艦『アリゾナ』艦載機となった五式空間輸送機コスモガネットは、

有事における派遣先での外交関係者など要人救出任務を視野に入れ

『UX-13』などガミラスが供与した次元潜航艦技術を参考に開発された

次元潜航ユニットを装備した、外交特務艦用仕様の機体だった………

 

 

 

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