宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第三十話  北オリオンの長城

 

【第30話】

 

 

太陽系第三惑星『地球』の衛星『月』。

その表面の一角とそれに面する重力圏一帯、軍港施設が設営され、

ガミラスが技術を供与した防護エネルギーフィールドによって

有害な宇宙線などから守られた地球連邦防衛宇宙海軍の艦隊泊地にて。

そこでは今まさに、同地に展開する第一艦隊の一部艦艇が出航を始めていた。

 

三重戦(HD3)旗艦『アンドロメダ』、出航します!」

 

「ウム!」

 

「…………。」

 

それを見守るのは、E級宇宙巡洋艦『コルドバ』。

防衛軍司令部直属の"総旗艦"には、二人の防衛軍最高級指揮官の姿がある。

白色彗星戦役の英雄にして現・宇宙艦隊司令長官マーカス・J・パエッタ大将と、

北米管区出身の防衛軍トップ、統括司令長官ウォルター・I・キンメル大将。

共に、険しい顔で暗黒の外海へ旅立つ艦を見つめている。

まるでその前途が、決して明るいものではないことを示すかのように―――

時に、西暦2206年8月21日のことであった。

 

 

これに先立つ19日、地ガボ三カ国代表者協議の後、地球連邦政府は

ボラー連邦における『()()()()』が今後拡大することで

混乱がオリオン腕地ガ共同開発宙域へと波及するのを抑止するため、

連邦防衛軍宇宙海軍に対し、一定の戦力規模を有する新艦隊の編成と

宙域北方(銀河中心方面)外縁への派遣・展開命令を発した。

 

この命令に基づき地球連邦防衛軍・宇宙海軍は、

共同開発宙域北方外縁部における警備を主任務とする『第七(方面)艦隊』、

通称『北銀河方面部隊』を、既存の各部隊から艦艇・人員を引き抜き

異動させる形で新編。主な戦力抽出元となったのは、防衛宇宙海軍内で

最有力の艦艇が多い『系内部隊』こと『第一(方面)艦隊』及び

『系外部隊』こと『第二(方面)艦隊』で、少なくない数の艦艇が新艦隊に移された。

 

そうして新編された第七艦隊は、

A級宇宙戦艦『アンドロメダ』『アルフェラッツ』『アークトゥルス』の

三隻で構成される第三重戦艦戦隊、D級宇宙戦艦『ドイッチュラント』

『デアフリンガー』『デモクラティ』『エトワール』から成る第五戦艦戦隊、

D級宇宙戦艦『ツタンカーメン』『イリアン』『サラディン』

『デーヴァ』を有する第七戦艦戦隊、改D級宇宙空母『ガルーダ』と

改FE級宇宙軽空母『ケツァルコアトル』『フェンフアン』で成る第二航空戦隊、

第一・第四・第一二・第一五巡洋艦戦隊のE級宇宙巡洋艦15隻、

第九・第一〇宙雷戦隊のF級宇宙駆逐艦32隻、その他支援艦艇という陣容で、

これにボラー連邦との平和的初接触に貢献した宇宙海軍艦隊司令部直轄の

"第八任務部隊"及びその後身で共同開発宙域北方外縁にてボラー連邦がある

銀河中心方面を観測・監視する"北方警戒戦隊"に属していた

改D級宇宙探査艦『アマテラス』『アクエリアス』と改FE級探査艦群が加わる。

 

そしてそれらを統括指揮する第七艦隊司令長官には

かつて彗星帝国撃破を成し遂げ白色彗星戦役を終結に導いた山南修中将が、

1F長官の椅子をアブドゥル・ファイサル中将に預けて着任した

(なお、これに伴い1F戦艦戦隊群司令官職はジェフ・C・クラッチレー少将が

継承することとなり、重戦艦戦隊群は1F司令部直轄となった)。

山南司令長官の下には、「北米軍の当たり年」の一角で

その出世頭である北米管区出身の若手エリート士官ダニエル・カーバー大佐が

第六艦隊宙雷群司令官から第七艦隊参謀長として就くことになった他、

副司令官格として第一艦隊教導群(練習艦隊)司令官だったベテラン指揮官

アレクサンドル・アラルコン少将が第七艦隊戦艦群司令官に、

白色彗星戦役でメダルーサ級戦艦三隻を沈めた『火竜狩り(サラマンダー・キラー)』こと

ルーベン・ワード少将が宇宙艦隊司令部付き幕僚から巡洋艦群司令官に、

第二艦隊宙雷群からアンジェロ・カンピオーニ大佐が宙雷群司令官に転任。

 

防衛軍第七艦隊は今後、北方警戒戦隊(旧第八任務部隊)が拠点としていた

共同開発宙域内最北端に位置すると言っても過言ではない射手座ガンマⅠ星系に

廃鉱山小惑星や居住用スペースコロニーなどをO級重量物輸送艦で移設した、

ハンス・ゲルデン少将が基地司令を務める前進泊地『サルタ基地』を

活動拠点として、開発宙域北方外縁での対外警備任務につく予定であった……。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

同様の動きは、ガミラス側も見せている。

 

地球から8万光年余りを隔てた銀河間空間にある自由浮遊惑星バラン。

ガス惑星を囲む、赤い人工の環状構造体に2基接続された超空間転送用

亜空間ゲートネットワークシステム、通称『ゲシュタムの門』。

その片方―――西暦2199年の地ガ戦争末期に生じた戦災によって損壊して以来

長らく不通となっていたマゼラン銀河方面に通じるゲートは今、

丸く開かれた門扉の外周に『稼働状態』であることを示す

巨大な青い光の輪を浮かべている。

 

それは、超文明の遺物を一応ながら運用していた星間国家ガミラスが

威信をかけて実施した大修復事業が、相対的に重要性が低いゲートを解体して

部材を流用したり、白色彗星(ガトランティス)戦役の勝利に伴い戦利品として得た技術情報によって

重要箇所の復元が可能となったことなども手伝って結実したことをも意味した。

 

そんな『ゲシュタムの門』の扉・通常空間と亜空間の境界から、

水煙にも似た、次元の境界が揺らいだことにより放出された残余エネルギーを

周囲に散らしながら、深緑色をした宇宙戦艦が次々に現れる。

 

 

それは、共和政ガミラス国防軍に属する第一四空間機甲師団艦隊。

その先頭をゆく旗艦、ハイゼラード級航宙戦艦『マーデラス』艦橋の中央では

艦隊を率いる師団長ウァルト・マーデル中将が腕組みして仁王立ちしていた。

 

「前方25000に友軍艦艇。―――第六空間機甲師団旗艦『ワルニミウス』です」

 

「ワルニム中将がお出迎えか。」

 

索敵オペレーターの報告の通り、

艦橋のモニターに自艦『マーデラス』と同じ姿をした戦艦の姿が映し出される。

それは、先んじてバラン星に配されたガミラス艦隊の旗艦で、

マーデル将軍はその艦に乗っているであろうハンゲン・ワルニム中将の顔を

脳内で思い描き、相好を崩した。

 

「『ワルニミウス』より入電。

 『我、貴隊ノ着陣ヲ歓迎ス。"バラン" ニ ヨウコソ』です!」

 

「そうか―――では、返電しろ。

 『我、貴軍ト轡ヲ並ベラレル事ヲ光栄ニ思フ。以後ヨロシクオ願イシタシ』。」

 

「ハッ!」

 

旗艦の後方では依然として、

第一四空間機甲師団に属する戦闘・補助艦艇が亜空間の旅路を終えて

通常空間に現れ続けており、長大な隊列を旗艦と門との間に形成している。

師団全艦の転移が終わった時には、その総数は五百隻を数えていた―――。

 

 

 

数時間後、新バラン鎮守府司令部にて、

ようやくマーデルとワルニムは顔を会わせることになった。

 

「現時点を以て、第一四空間機甲師団はバラン鎮守府に着任。

 これより銀河方面軍及び第一〇空間機甲軍団の指揮下に入ります!」

 

「長旅ご苦労、マーデル将軍。

 君の艦隊の来援を、非常に心強く思う。」

 

ワルニムに加え、バラン星の主・銀河方面軍司令長官シー・フラーゲ大将ら

方面軍の重鎮たちもまた、マーデルの着任報告を聞き届けた。

 

それからフラーゲは、マーデルに対し申し訳なさげに口を開く。

 

「まずはゆっくりと身を休めて欲しいところだが、

 どうにもそういうわけにもいかんでな、早速で申し訳ないが……」

 

「緊迫した情勢下であることは理解しております。

 どうぞ、お気になさらず。」

 

マーデル、フラーゲ、ワルニム、方面軍参謀長エーリク・へプラー中将ら

方面軍首脳陣は、そのまま現状の天ノ川銀河における軍事情勢の議論へ移った。

 

「……参謀本部が地球(テロン)の大使館経由で取得した情報に基づいて判断するに、

 やはりボラー連邦は現在内戦状態にあり、それがオリオン腕……

 共同開発宙域に"飛び火"するか否かは予断を許さぬ状態であるとしている。

 "飛び火"の可能性としては、『ボラー叛乱軍が正規軍に追い詰められて

 共同開発宙域に退避してくる』シナリオが主に考えられていたそうだが、

 この点、どうもボラーの叛乱軍は現状、正規軍と互角以上に戦っているらしく

 そうしたシナリオが実現する確率は低いようだ」

 

「……それでも、戦闘が波及してくる潜在的な危険性に変わりはない、と。」

 

フラーゲによる説明に、マーデル中将がぼそりと呟くと、

会議の場となった新バラン鎮守府作戦室を将校らの唸る声が満たす。

現状ではボラー連邦の内戦は対岸の火事だが、いつ共和政ガミラスの

銀河系への橋頭堡・共同開発宙域に引火してもおかしくはない。

それを回避するために軍人たち―――特に、彼らのような高級士官らは

頭を働かせる義務があった。

 

「……既に、現地の第一四機甲軍団は動いている。

 アクション中将からの報告では、ヘルム・ゼーリック機甲師団を

 開発宙域北方外縁に向かわせ、それに続いて第一八機甲師団も

 バルナーテ星からガミロニアⅤの基地まで前進させているとの事だ。」

 

「また、同盟国地球(テロン)も、宙域北方における警戒に当たる部隊を新編し、

 『アンドロメダ』級など相当数の戦力を同方面に移動させました。」

 

フラーゲ長官やへプラー参謀長が神妙な顔で端末の情報を読み上げる。

作戦室に置かれている、テーブル型投影モニターに映された

共同開発宙域を表す宇宙地図にアイコンが現れ、移動した。

ヘルム・ゼーリック機甲師団や地球(テロン)艦隊を示すアイコンが動いた先――

宙域北方外縁には、既に別のアイコンが3つ置かれている。

 

「これにより、以前より宙域外縁周辺で警備任務に従事していた

 第五八・第一四一師団に加えて同方面に展開する我が軍の戦力は

 およそ1000隻となります。」

 

「また、機密保持上詳細を話すことはできんが、

 同宙域を作戦範囲にできる位置には我が次元潜航艦の秘密拠点がある。

 同地に展開する次元潜航戦隊も、ボラー側への早期警戒・対処のための

 有力な手段(アセット)として数えられるだろう」

 

上官の言葉を受け、同じく銀河系に配備された次元潜航艦の機密を知る

へプラー参謀長の視線は自然と、その秘密基地(ブンカー)が建設された、

同盟国からは『射手座ニューⅠ星系』と呼ばれる恒星系があるであろう

簡略化された宇宙図の一点へと向いたが、それに気付く者はいなかった。

それを尻目に、フラーゲ大将は室内の全員を見渡し、宣言するように告げる。

 

「だが、これらの兵力移動は、あくまで当面の措置であると言えよう。」

 

その発言に、作戦室中から耳目が彼に注がれた。

フラーゲはそれに一切動揺せず、冷静に語り始める。

 

「政府と国防軍最高司令部は既に、現在の事態を準・有事であると見なしている。

 それに伴って、ガス惑星で動態保管(モスボール)中の予備警察艦隊の派遣を決定した。」

 

説明を受けた軍人たちは目を見開き、どよめく。

上層部が下した判断の内容よりも、その早さに驚いているようだった。

 

―――『予備警察艦隊』。

共和政ガミラス国防軍が接収した旧航宙親衛艦隊は、親衛隊討伐艦隊として

運用された後、ガス惑星大気層内に係留・秘密裏に動態保管(モスボール)されており、

同じく保管した機械人形(ガミロイド)兵を乗員とし、有事の際の兵力供給源となっていた。

それを動かすことは、上層部が現状を『戦時』であると認識していると

公言するのとほぼ同義だった。

 

動員する数にもよるだろうが、国境へ配備される艦隊が急増すれば

正規軍・叛乱軍問わず内戦中のボラー側に対し

『介入の意志あり』と受け取られ無用の刺激をしかねない。

政府や軍上層部も熟議の末に出した結論ではあろうが、いざ"その時"が来れば

矢面に立たされる軍人の身としては、心配を禁じ得なかった。

室内の士官らの動揺を見てとったのか、フラーゲは咳払いと共に続ける。

 

「……例の無人艦隊を動員するとは言っても、諸君らも知っての通り、

 保管されているのを再稼働させる都合上配備までには時間がかかる。

 ボラー側を刺激せぬよう一ヶ月後から順次、

 一~二週間おきに一個師団程度が銀河系へ配置されることになっており、

 最終的に九個師団6600隻、三個軍団分が送られる予定だ。

 それまでに情勢が急変する見通しは、あくまで現状のものではあるが低い。

 ……万一があった場合は、かねてよりの策で現地部隊に時間を稼いでもらい

 予備警察艦隊全軍を銀河系へ送り込む計画である。」

 

整然としたフラーゲ司令長官の語り口に

いくらか将校らの動揺も落ち着いたようだったが、今度は緊張が頭をもたげる。

それは、へプラー参謀長による補足説明でより強いものとなった。

 

「……しかし、想定される戦場が共同開発宙域に留まるとも限りません。

 状況の進行によっては、銀河間航路の要衝たるこのバラン星も、

 攻撃を受ける可能性が存在しています。」

 

今この時にも起動し、ガス惑星から発進している予備警察艦隊も含め、

マゼラン銀河方面から天ノ川銀河系に向かう宇宙艦船にとってバラン星の

亜空間ゲートネットワークは欠くべからざる存在である。

それが万一、敵性勢力の攻撃・破壊工作を受ければ甚大な損害を出すことは

つい数年前という、歴史と呼ぶには些か近い実例が証明している。

オリオン腕の地ガ共同開発宙域への防備・抑止力増強に当たっては

遠いバラン星に在する我々も決して他人事ではない……

それを誰よりも肝に銘じていたらしい男が、口を開いた。

 

「――そのために、我が第一四機甲師団がバラン星へ増派されたという訳です。

 共にバランの守り、ひいては同盟国(テロン)との共同開発宙域の防備構築を、

 確たるものといたしましょう!」

 

「頼もしい限りだ、マーデル中将。」

 

 

……こうした一幕を挟みつつ、新バラン鎮守府での戦略議論は続く。

 

 

時に、西暦2206年の夏。

地球・ガミラス安保同盟軍は着々とオリオン腕北方への防衛陣構築を進めつつあった―――。

 

 

 





オリジナル設定紹介

・シー・フラーゲ(イメージcv.神谷明)
 共和政ガミラス国防軍 銀河方面軍司令長官(大将)。58歳相当。
 癖のある前髪と右目の眼帯が特徴的な、ガミラス屈指の優秀な将軍。
 白色彗星戦役時における銀河系駐留軍団司令官であり、
 『ガミロニアⅧ海戦』では陣頭指揮を執って敵艦隊の打破を果たした。
 地球軍との共同作戦でガトランティス戦争を終結に導いた功績で
 大将に昇進し、参謀次長に転出したヘルム・ソトの後任として
 銀河方面軍司令長官の座に就く。軍内ではディッツ派閥に属している。
 元ネタは旧作『2』登場のガミラス残存艦隊の将軍、容姿もこれに準ずる。

・エーリク・へプラー(イメージcv.成田剣)
 共和政ガミラス国防軍 銀河方面軍参謀長(中将)。45歳相当。
 ガトランティス戦争時は第一五空間機甲師団艦隊司令官を務めており、
 『バラン星沖海戦』で敵遠征艦隊迎撃を指揮した他、銀河系駐留軍団への
 増援部隊としてオリオン腕に赴き、白色彗星先遣艦隊と戦った。
 戦後は中将に昇進し、ザフィーア管区軍司令官に転じた前任者
 フドリク・バウル将軍に代わって銀河方面軍参謀長に就任する。
 容姿イメージは『リリカルなのは』のジェイル・スカリエッティ。
 肌を青くして、40代相応に老けさせてご想像願い〼。
 名前の元ネタはWW2期ドイツ軍の将軍、エーリッヒ・ヘープナー。

・ハンゲン・ワルニム(イメージCV.田中亮一)
 共和政ガミラス国防軍 第一〇空間機甲軍団司令官
 兼 共和政ガミラス国防軍 第六空間機甲師団艦隊司令官(中将)、51歳相当。
 勇将エルク・ドメル亡き後、彼が率いていた精鋭艦隊・
 第六空間機甲師団の大部分の指揮を引き継いだ将軍。
 容姿イメージは『石黒版 銀河英雄伝説』のハンス・ベルゲングリューン。
 肌を青くしてご想像願い〼。
 名前の元ネタはWW2期ドイツ軍の将軍、ハンス・ユルゲン・アルニム。

・ウァルト・マーデル(イメージcv.村山明)
 共和政ガミラス国防軍 第一四空間機甲師団艦隊司令官(中将)、50歳相当。
 ディッツ提督の下で戦ってきたベテランの軍人で、貴族層にも顔が利く。
 対ボラー有事に備え銀河方面軍の予備戦力に配され待機していた。
 容姿イメージは『石黒版 銀河英雄伝説』のアクセル・ビューロー。
 肌を青くしてご想像願い〼。
 名前の元ネタはWW2期ドイツ軍の将軍、ヴァルター・モーデル。

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