宇宙戦艦ヤマト3199 If 激浪への挑戦者   作:モアンゴル

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第三十二話 援ボ船団始動

 

【第32話】

 

 

時に、西暦2206年9月6日。

 

地球連邦政府と共和政ガミラス政府が、駐地球北米管区アラスカの大使館を通じて

ボラー連邦政府(永久管理機構)より『民生用非軍事物資の供与援助』を

要請したいという意向を伝えられてから、およそ五日が経とうとしている。

 

 

そんな情勢下にある地球連邦の首都・極東管区新都メガロポリスはこの日、

夏の名残たる残暑を洗い落とすかのような、土砂降りの大雨に見舞われていた。

 

新都地下に備えられた排水システムは盛んに作動し、浮揚車用道路の冠水を防ぐ。

数年前に建ったばかりの復興都市ビル群の外壁には雨水が束となって叩きつけられ

2199年末以来地球が青い「水の星」に戻ったという大自然の喧伝を受けている。

それは、首都メガロポリス内で頭一つ抜きん出た巨躯を有している、

連邦政府複合主庁舎ビルも例外ではなかった。

 

同庁舎の一室では、外からかすかに響いてくる雨音を伴奏に楽しみながら、

一組の男たちが、折り畳み式の長机数台を組み合わせたテーブルを囲んでいる。

 

「……いやぁ、こんな寒い日には、熱い汁物を飲むに限りますネ。

 (ぬく)まる、(ぬく)まる。」

 

「同感です。

 "例の国"には寒い星が多いと聞きますから、

 そうした場所の人々には有難がられるでしょうね」

 

「君たち、上司の手製なのだから味について褒めてもバチは当たらんぞ?

 ……まぁ、ほとんど即席(インスタント)食品ではあるのだが」

 

テーブルと共に設えられた折り畳み式の椅子に着き、

温かい汁物料理が入っているらしく湯気を発する椀を匙と共に手にするのは、

彼らがいる部屋、給湯室が属するフロアに配置されている連邦政府の部局、

即ち『外務局』に籍を置く者。しかも、局を仕切る高官たちであった。

 

外務局長官、クロード・ヴェルニー。

外務局ボラー連邦大使館開設準備部長、黄潤李(ホワン・ユンリー)

そして()()から復帰し呼び戻された外務局次官、曾根川恒夫。

 

テーブルの上には、彼らが食べている料理の材料となったであろう、

無地の特殊セラミック製缶や銀色の化学樹脂パックなどで包装されていた、

雑多な加工食品の数々が置かれている。

 

宇宙戦艦『ヤマト』にもOMCS停止時の非常用食料として搭載されていた

ブロック型食糧を想起させる固形熱糧食『カロリーブロック』。

穀物類を押し固めて乾燥させるなどした、チップス型・パフ型の炭水化物食品。

『プロテインダイス』や『ステーキシート』、『モックフィッシュ』やら

『ダミーチキン』などのラベルが貼られた固形蛋白質食。

缶から赤や緑色の残滓が覗く『固形乾燥野菜入りビタミンペースト』。

味付けに使われたらしい、小袋入りの調味料・香辛料粉末やチューブ入りの油脂。

 

これらはみな、地球・ガミラス大戦後・CRS(コスモリバースシステム)で環境が回復した地表への

復員事業開始直後である2200年頃に、再入植に伴う開発で出た伐採材など

再生された地球環境で得られた有機物原料を用いてOMCSで量産され、

今日まで軍や政府機関・各管区に備蓄されていた長期保存用非常食。

本来は数か月後、規定の保管期間を過ぎて食品用途としては廃棄され、

再びOMCSで非常用保存食を作るための有機物に回される予定のものだ。

 

それが今、こうして、ヴェルニー外務局長官の手によって料理され、

黄や曽根川の舌鼓を打たせているのには、れっきとした理由がある。

 

それはこれらの食品が、同じく地球連邦政府機関が放出する

非常食用カップ麺製品など密封保存食品、緊急栄養食・医療食品など食糧や

医薬品、包帯・消毒液など医療用品、医療機器、衣類・毛布類、

さらには発電機、暖房機器、浄水器、下水処理インフラなどと共に、

目下内戦中の星間国家『ボラー連邦』に対する援助物資として供与されることが

政府と議会によって決定されたためである。

 

外務局高官の三人が食べているのは、物資供与についてのボラー側との協議で

ボラー側に紹介した供与予定である長期保存食品の試供品の一部であり、

協議を終えて残っていたものを三人が昼食として貰い受けたのだった。

 

 

「……しかし存外、円滑(スムーズ)に事が運びましたナ。

 政府も議会も、もっと渋るものと考えていましたガ……」

 

スープを飲み干した黄部長が、ボラー連邦からの物資供与要請を

地球連邦(及び共和政ガミラス)が想像よりも早く容れたことについて

意外の感を隠しもせず言った。

 

ボラーと地球(及びガミラス)とは、国交締結時に国内問題への相互不干渉を

約しているため、『特例』としてでもそれに反することは

後に禍根を残すのではないかと懸念する声も大きかったのだ。

それを半ば封殺して、供与要請に応える向きへ連邦が舵を切ったのは、

黄としては少々予想外だったらしい。その言葉に、ヴェルニー長官が応える。

 

「連邦政府ではピット長官が、議会においては彼女に加えて

 ジョースター議員が供与要請の受諾に向けて積極的に働きかけたらしい。

 次期大統領の呼び声も高いピット女史が言うとなれば、なびく奴も多かったろう」

 

「ピット長官が、ですか」

 

続いて、去る昨年5月の『第一次サレザー事変』で『デスラー偽物論』の

機密を漏洩したため『サナトリウム送り』の形で更迭されていたものの、

外交人材不足から呼び戻された曽根川外務局次官が反応した。

ヴェルニーは「うむ。」と頷きを入れ、地球連邦の物資配給局・交易局の長官を

歴任した女性閣僚が対ボラー物資供与への働きかけたワケを推察し始める。

 

「第一に、選挙対策が念頭にあるだろう。物資供与を行うことで得られる

 『人道を重視する平和主義者』という肩書は彼女にとって魅力的な筈だ。」

 

「――確かに。 こちらが物資供与援助を呑むにあたって、

 ボラー側に提示した"条件"と"題目"を思えば、援助が成功した暁には

 その立役者になる彼女をそう呼ぶことができるでしょうからね。」

 

曽根川が納得――と言うには、新鮮さの欠ける反応を返した。

給湯室にいる三人が持つ情報はほぼ共有され尽くし、各位の見解は現状において

殆ど一致している。昼食がてらのこの議論は、彼らにとり再確認に過ぎない。

 

そうした中で曽根川が発した、ボラー側の物資供与要請を受け入れる上で

地球・ガミラス側が提示した物的援助における"条件"とその"題目"。

それを提案したのは、この三人を中心とした地球連邦外務局であった。

特に"題目"に関しては、連邦上層部がボラーの援助要請を認めるにあたって、

大きな役割を果たしたと言えるかもしれない―――

 

 

その、地ガ側がボラー連邦体制側へと課した物資供与に際しての条件とは、

『もしも今後、対立勢力「統治再建機構」側も

 地球・ガミラス側に対し物資供与援助を求めてきた場合、

 これに地球・ガミラスが応じることを認め、阻まないこと』。

 

そして、この条件を課した"題目"は、

『現状、情報の不足につき内戦中の両ボラー勢力の主張のどちらが正しいか

 地球・ガミラス両政府は判断がつかず、過度な介入は内戦前のボラー連邦と

 国交締結時に互約した条項「国内問題への相互不干渉」に反する。』

『そのため、地ガ両国はあくまで「人道的見地」に基づき、

 両勢力の支配下に置かれる「ボラー連邦人民」に対する支援に限って行う。

 民生物資供与援助は、その一環である。』

『今回は、ボラー連邦政府側からの要請があったためこれに応じるが、

 今後、統治再建機構側からの同様の要請があったとしても、

 上記の精神に基づき、地球・ガミラス両政府はこれに対しても応じる。』

―――というものであった。

 

 

これなら、ボラー連邦の体制側を支援したとしても、

反体制側『統治再建機構』からの反発を抑え込むことができ、

さらにこの内戦で最終的にどちらが勝ったとしても、

ボラー連邦市民からの地球とガミラスに対する心象を損なわずに済ませられる、

というのが地球連邦政府、ひいては地球連邦外務局の目算である

(ガミラス側は地球連邦が要請に応じる姿勢を見せたことで受諾へ転じた)。

 

連邦外務局としては、地ガ関係に潜む爆弾・『デスラー偽物論』周りで

何か勘付いたのではないかという懸念があるミハール・ドゥハデス将軍が率いる

ボラー反体制側に付け入る隙を与えたくなかったため、

彼らがボラー内戦に地ガの介入を呼び込もうとする動きに制限を加えるべく、

あえて統治再建機構側にも援助を行う準備がある姿勢を見せたのだ。

 

「……ピット女史にしてみれば、自分が大統領になってから、

 対ボラー関係が険悪になった、などという事態は避けたいでしょうからナ。

 この条件と題目は、政府としても議会としても、良い逃げ道になったかト。」

 

いつの間にかスープのお代わりを椀に入れ、具のOMCS製人工蛋白肉を食べていた

黄部長も、自分たちが作った援助の条件・題目が

物資供与を円滑に承認させた要因であろう、と満足げな顔を見せる。

外務局長官ヴェルニーもそれに同意しつつ、さらなる事情の推理に移った。

 

「それにピット女史は大統領になる前に、

 ボラー連邦との接触、同国での内戦の勃発で半ばオジャンになった

 『カルタゴ計画』の代わりになる"箔付け"を欲しているのも、

 物資供与に前のめりな理由かもしれん。」

 

給湯室にいる三人の脳裏には、旧国連欧州英国管区行政局長・

地球連邦物資配給局・同交易局と、要職を歴任してきた妙齢の白人女性が現れる。

 

次期連邦大統領の最有力候補である女性閣僚メアリー・ピットは

2205年まで、太陽系を中心とするオリオン腕地ガ共同開発宙域に

共和政ガミラスの民間資本を呼び込まんとする大計画『カルタゴ計画(プロジェクト・カルタゴ)』を

自らが領袖である交易局にて推し進めていたが、その年末に

銀河中心を支配する大国・ボラー連邦と地球・ガミラス両国が初接触。

一時、星間戦争の勃発が危惧され、共同開発宙域の投資回収不能リスクは

一気に跳ね上がり、ピットは計画の大幅な修正を余儀なくされた。

そして計画が練り直された半年後・2206年夏には今回の内戦勃発であり、

事実上『カルタゴ計画』は頓挫したと言わざるを得ない。

 

ピットが『カルタゴ計画』に代わる政治的偉業を成すため、

ボラー連邦への物資供与援助実施による同国との将来的な友好の確立を

狙っているというヴェルニーの推測は、説得力を持つものだった―――

 

 

「ともあれ、物資供与へ向けての動きは順調に進んでいます。

 ボラー大使館側も援助物資の内容については一応満足したようですし、

 当座の供与物資の積載も8割がた済んだという報告を聞いています。」

 

「ま、当面の供与品は各管区が溜め込んでいた非常食や、

 地表復員初期に使われていた物資の余りや中古品が主体ですからナ。

 それが払底する頃には、時間断層やらの工場が動き出して供与物資を

 生産し始めますし、供与物資の方については心配無用ですナ。」

 

「ああ。――後は、輸送手段。

 これに関してはガミラス側が、本邦が移住計画のために供与した

 輸送船団のうち、ガミラス政府が保管したものを使うことになっている。

 ……が、いかんせん稼働させるには時間がかかるらしくてな」

 

食後の茶を啜りながらヴェルニー、黄、曽根川の三人は、

彼らがいる首都含め、現在地球各地で進められているボラー連邦への

物資援助計画の進捗について語らう。

その中で外務局長官が懸念点として挙げたのが、

援助物資をボラー連邦側へ供与する上で使用される宇宙輸送船についてである。

 

ヴェルニーが言う通り、地球・ガミラス両政府からの供与物資は、

ガミラス国防軍が旧親衛隊討伐艦隊(=航宙親衛艦隊)をガス惑星で秘密裏に

動態保管(モスボール)していたのと同様に、ガミラス星からの移民事業が一段落した後、

共和政ガミラス政府が自国の造船産業などを保護するため一括で管理下に置き、

非常時の際の輸送インフラ『国家予備商船隊』としてガス惑星大気層内に係留・

動態保管(モスボール)した、地球連邦が供与したFE級・O級宇宙輸送艦群が担う予定だった。

 

ところが、これもガミラス軍の旧親衛隊艦隊転用無人艦隊と同様、

保管状態にあった輸送艦群を再稼働させるには相応の時間を要したのである。

船団の稼働開始は早くて地球時間10月初頭だが、対ボラー援助は一刻を争うため

ガミラス側は別の輸送手段を講じることにしたらしかった。

 

「……結局、保管輸送船が稼働し始めるまでは

 ガミラス政府が自国の一部民間輸送船を傭船して、

 供与物資の輸送に充てることになっているが……現状、一社の独占状態だな」

 

ヴェルニーが説明を続け、傍らのカバンからタブレット型デバイスを取って

テーブルに置き、曽根川次官と黄部長に彼が話した情報が映る画面を見せた。

 

それは、ガミラス政府が手配したガミラスの民間宇宙貨物船のリストだ。

数十隻にも及ぶ船の、艦名など船舶情報の欄の隣にある『所有企業』の欄は、

一つの会社の名前で埋め尽くされていた。

 

それを見て、黄も曽根川も感心したように唸る。

 

「――なるほど、納得ですナ。

 地ガ共同開発宙域での事業に積極参入している以上、

 この近辺で動かせる船を他社よりも多く持っているのは想像に難くない。」

 

「まさかこの展開を予想していたのですかね、『ツァインフェルテ社』は。

 この傭船契約で相当な利益を得る筈ですが……」

 

ボラー連邦への供与援助物資を運ぶことになったガミラス宇宙貨物船は、

その悉くが『ツァインフェルテ星間宙運社』に籍を置いていたのであった……。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

その『ツァインフェルテ社』を率いる若き伯爵令嬢、

ユノール・ヴァム=ツァインフェルテはこの時、地球軌道上に居た。

 

正確には、軌道上にて漂泊する、緑色の葉巻型宇宙客船の船内に、だが。

その傍らには、従者として付けられたクラウス・キーマンの姿もある。

 

彼らのいる宇宙客船内の一室――船外展望室の床面まで延びた巨大な窓からは、

太陽に照らされた地球の大地と海洋を眼下に望むことができた。

 

『……つくづく、美しい星だ。』

 

感嘆の声を発したのは、太く重い、中年男の声。

ユノールでも、キーマンのものでもない。――映像通信越しに地球を眺める、

立体投影されたセグドル・ヴァム=ツァインフェルテ伯爵のものだった。

 

養女(姪)に会社経営について助言するため、彼は定期的に通信を交わしているが

今回は伯爵の希望で、地球を望める位置に私有船を停め、会話の場としたのだ。

彼は前回の地球訪問で、青く美しい星の姿を気に入ったらしかった。

 

『この美しい星を、

 一時(いっとき)は我が国の軍が焼き払っていたと考えると、何とも言い難いが……』

 

通信越しの伯爵は唸るように続け、それにユノール令嬢が返した。

 

「でも、軍人の方は命令に従ってやらされていただけですし、

 故郷の地位向上に必死だったことを思えば、あまり責められません。

 悪いのは偽者の総統と、それを操っていた親衛隊ですわ!」

 

『うむ、その通りだ……』

 

そんなツァインフェルテ一族の二人の会話を側で聞きながら、

上院議員秘書クラウス・キーマンは瞑目する。

 

(―――これでいいのだろう、きっと)

 

叔父、アベルト・デスラーの真意を知る彼は、

2199年での追い詰められた彼の暴挙が、「偽物の仕業」で片付けられる度に

形容しがたい引っ掛かりを覚え、何か一つ言いたくもなったが、

地球とガミラスの平和を維持するためには他に致し方ない故の方策であり、

当の叔父本人や被害者たる地球人たちも(一部除き)それを容れている以上、

自分が口を挟むことではないと受け入れていた。

 

キーマンが思索を巡らせていると、セグドル伯爵とユノール令嬢の話題は、

近頃俄にオリオン腕共同開発宙域を騒がせている『ボラー連邦の内乱』に移る。

聞けば、地球とガミラス両政府は内戦中のボラー政府の要請に応じて

民間人向けの食糧や物資の供与援助を行うとのことである。

それに乗じ、『ツァインフェルテ社』は新たなビジネスを目論んでいた……。

 

 

『――この援助計画について、例の「国家予備商船隊」が動き出すまで

 当面の物資輸送を我が社の宇宙貨物船団が請け負うことには成功したが、

 この計画、まだまだツァインフェルテの益になる可能性はあると見ている。』

 

「ふむ……おじさまはどうお考えなのです?」

 

叔父の考えに従い、供与計画に自社商船隊を投入したユノール社長は、

伯爵が更に一歩進んだ構想を持っていることを薄々察していたのか、

静かに次の言葉を待つ。

 

『実はな、我がガミラス議会では、ボラー連邦へ供与する物資の手配を

 全て地球(テロン)に頼るのは如何なものかという意見が出ている。

 ――つまりは、ガミラス製の物資を輸送・供与する船団を

 独自に編成すべきだということだ。』

 

「なるほど。『国家予備商船隊』が保有する膨大な数の地球(テロン)製輸送船なら

 地球とガミラスの双方がそれぞれの物資を運ぶ船団を持ってたとしても

 十分賄えますわね。」

 

『近く、ガミラスは独自の船団を編制するだろうというのが、私の見立てだ。』

 

ガミラス側は有り余る宇宙輸送船を活用し、

地球との共同でボラー連邦に援助物資を送る船団とは別に、

自国製の供与物資をボラーへ送る船団を編制する動きが進められているようだ。

その理由を、セグドル伯爵はこう話す。

 

『……ボラーの内戦がどんな形で決着するにしろ、

 あの国が脅威であるのと同じくらい、いやそれ以上に、

 魅力的な市場であることに変わりはあるまい。

 ガミラスの商売人は皆、ボラー連邦の将来的な自国製品の市場化の布石として

 物資援助計画に注目している。

 我が国の製品を送り込んで、その品質の高さをボラー人に認知させるのに加え

 ガミラスの食文化を輸出して、味に慣れさせることを狙っているのだ』

 

彼の話を神妙に聞くユノールとキーマン。

自分たちに害が無い限り、他所の戦争さえも商機と捉える商人の逞しさに、

呆れ交じりに感嘆しているようだった。

 

『そこでだ。

 我がツァインフェルテ社には、ボラーへの援助物資にするために

 製品を増産するガミラス企業を狙って天体開発業で整備した資源天体やらを

 売りつけたり、製造された援助物資を集積地まで運ぶ中間荷役をやる

 余地があると考えている。―――どうだ、ユン。商機とは思わんか?』

 

「―――ええ。この後すぐ、役員会に諮ってみますわ。」

 

『ウム。』

 

姪の答えを聞き、伯爵は満足そうに頷いた。

 

(……全く、抜け目のない御仁だ。ツァインフェルテ伯爵は……)

 

ツァインフェルテ社を裏で操るセグドル伯爵の意向ならば、

役員会など事実上通ったも同義だろう……と、キーマンは考えを巡らせる。

 

そんな中、ツァインフェルテ家私有の宇宙客船の船内放送が、

二人(+通信越しの伯爵)しかいない船外展望室に響き渡った。

 

『社長、キーマンさん。

 もうすぐ本船右方を、地球(テロン)軍の艦隊が通過いたします。

 我がツァインフェルテ社のボラー援助船団を護衛する艦隊との事です!』

 

船長からの言葉を聞いて、展望室にいた面々の視線は一斉に窓の外へと向く。

 

やがて窓の外には、虚空の彼方から一群の宇宙軍艦が姿を現した。

旗艦であろうか、一隻の大型戦艦を中心として、それよりは小型で、

ガミラスで言えば巡洋戦艦や駆逐艦サイズの護衛艦が取り巻いている。

 

隊列の中心にいる地球軍艦の姿が鮮明になると、

セグドル伯爵とユノール令嬢は喜色の滲んだ驚きの声を発し、

キーマンは静かに口端を吊り上げた。

 

 

『おお、あれは!』

 

「まあ!」

 

「――――久しいな。」

 

 

後に『援ボ船団』として知られることになる、対ボラー連邦供与物資船団。

 

その護衛を担うことになった地球連邦防衛軍・宇宙海軍の艦艇には、

宇宙戦艦『ヤマト』の姿もあった―――。

 

 

 





今年最後の投稿になります。
モアンゴルからの少し早いお年玉と言うことで、一つ。

本年も応援ありがとうございました!
皆様、よいお年をお迎えください!

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